歩を金にする法 (小学館文庫 R ま- 8-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094030365

感想・レビュー・書評

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  • もともとは昭和38年の発刊。2002年に文庫が出て、いつの頃かに買ったまま本棚の隅に眠っていたのを、海外転勤の際に持ってきてようやく読みました。期待以上に面白かったです。

    「新手一生」の升田幸三。大山康晴名人の兄弟子でもあり、将棋小僧なら知らない人はいないという有名な方。将棋界の最後の勝負師らしい雰囲気を持った勝負師といっていいのではないでしょうか。本書では、将棋から彼が得た人生訓を勝負師らしい鋭い切り口で紹介しています。

    中でも、将棋の駒のそれぞれの特徴を熟知し、一見関係なさそうな場所の駒も含めて全て活かすことができるのがプロの技であり、それはビジネスや人生にも通じるということが繰り返し強調されているのが印象に残りました。特に、歩について。会社を訪問すると、偉い人を見るよりも、受付や一般社員といった歩の人たちの態度、振る舞いを見ると、その会社の現状や将来までもだいたいわかってしまうとのこと。なるほど、そうかもしれない。歩の強さって、日本企業の強さの源泉であったかもしれない。

    また、高段者が他と違うのは、頭ではなく身体で相手との間合いを感じ取ることができることなのだそうです。当時まだ若手だった、加藤一二三さんや二上達也さんを、まだまだ頭で将棋をやっていると評価しているのは将棋ファンとしては興味深いエピソードでした。

  •  本書には<桂馬なり、金なり、しるしでわかるが、人間にはしるしがないからわからない。だから、人間をあつかうのはむずかしい(P16)>と書かれてある。

     天才と呼ばれた棋士、升田幸三は、将棋とは違う人間の難しさを認めているという事なのだろう。

     考えてもみると、将棋は奥深いとはよく言われる。だがその人が無自覚であれ、将棋よりも複雑なゲームを演じているのが実は人間であったりもする。

     かといって別に将棋を否定するつもりは私には毛頭ない。本書からは将棋感覚を通した人生論が繰り出される。

     <将棋では、各駒の持ち味を活かす長所を発揮さすことが大切である(P17)>とある。将棋の駒の種類は、歩兵、香車、桂馬、銀将、金将、角、飛車、王将、とある。強力な駒を使うばかりではなく、それらそれぞれの駒の長所を活かし、短所を補うのが大事であり、上手な人ほどそういうのがよく分かっている。

     そうした事を、本書は教えてくれる。

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著者プロフィール

1918年3月21日、広島県双三郡三良坂町(現・三次市)の生まれ。1932年、故木見金次郎九段門。1936年、四段。1947年、八段。1958年、九段。 1951年、第10期名人戦でタイトル戦初挑戦。52年、第1期王将戦で初タイトル獲得、木村義雄名人を半香に指し込む。さらに56年、第5期では大山康晴名人を指し込み、香落ち番も勝つ。57年、九段位を奪取。同年、念願の名人位を獲得。史上初の三冠独占を達成する。79年、引退。88年、実力制第四代名人。タイトル戦登場23回、獲得は名人2、九段2、王将3の合計7期。名人・A級には連続31期。ほか棋戦優勝6回。通算成績544勝376敗。 73年、紫綬褒章受賞。78年、関西将棋会館建設委員。91年4月5日、心不全で死去。享年73歳。

「2015年 『升田の研究~鬼手と石田流~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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