雷電本紀 (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094033137

作品紹介・あらすじ

凶作、飢餓、貧困に悪政が追い打ちをかけた天明、寛政年間、後世まで語り継がれる一人の力士が彗星のように現れた。巨人のような体躯、野獣のような闘志で、生涯にわずか十敗。豪快に相手をなぎ倒すこの男の相撲に、抑圧され続けてきた民衆は快哉を叫び、生きることへの希望を見いだしていった。実在する伝説的相撲人・雷電の一生を、雄大な構想と綿密な時代考証をもとに、足かけ六年の歳月を費やして執筆。いずれも粒ぞろいの飯嶋和一の歴史小説だが、その嚆矢として作家の名を鮮やかに読む者の脳裏に刻み込んだ、感動の歴史大作である。

感想・レビュー・書評

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  • 躍動感溢れる筆致が印象的でした。


  • 蒼竜篇
    朱雀篇
    白虎篇
    玄武篇

    著者:飯嶋和一、1952-、山形県、小説家)
    対談:久間十義、1953-、北海道新冠町、小説家)
    解説:倉本四郎

  • ★2008年1冊目読了『雷電本紀』飯嶋和一 評価A

  • 相撲界は相変らず問題続きで、ワイドショウの恰好の餌食となつてをります。では角界といふのは、昔は良くて最近急に駄目になつたのか。いやいやさうではありますまい。
    例へば暴力問題。昔は「兄弟子はムリ偏に拳骨」と呼ばれたやうに、とにかく口より手が先に出る指導だと言はれてゐます。暴力の無い日はなかつたでせう。弟弟子は「なにくそ、今に見てをれ」と、歯を喰ひしばつて耐へたのであります。そして自分が兄弟子になると、「俺もかうして強くなつたのだ。これは後輩の為の愛のムチなのだ」と信じ込み、今度は後輩に鉄拳指導・制裁を加へるやうになるのでした。

    当時は問題にもならなかつたでせう。しかし時代は暴力(体罰含む)否定であります。昔と比較すれば遥かに民主化された相撲部屋ですが、それでも一朝一夕に暴力根絶とは参りません。八角理事長は頑張つてゐるとは思ひますが、兎に角相撲協会憎しの逆風は強い。その反動で、世間はあの貴乃花親方を擁護したのでせう。しかしどう考へても協会より貴が悪い。白鵬ふうに言へば、本来子供でも分かる事なのに、相撲協会に反発する一派に喝采を送ることで世間は溜飲を下げてゐたのでせう。
    序でに申せば、やはり風当りの強い池坊氏の発言も、わたくしは至極当然の常識的なものだと考へます。

    さて、何かと伝統伝統と強調する相撲界。しかし実態はどうだつたのか。改革なくして、現在までこの興行が続いてゐるとは思へぬのですが。
    本書『雷電本紀』の時代は、力士は各藩お抱へで、スポンサアである藩の意向が色濃く土俵に反映されてゐました。
    その為には拵へ相撲もするし、勝負が明らかな一番に物言ひを付けて、強引に預りや引分にしたりするのです。
    そんな時代に一人敢然と立ち向かつた雷電。折しも世は飢饉続きで庶民は飢餓寸前、更に悪政が拍車をかけてゐた正にその時、民衆はこの雷電に希望を託したのであります.....

    生涯に僅か10敗しかしなかつたといふ強豪力士を主人公にした、骨太の評伝小説であります。あくまでも小説なので、実在しない人物も出れば、時代背景に目を瞑つた部分もあります。しかし改革者の孤独といふものは時代を問はず、普遍性を持つものでせう。同時にその足を引張る一派の愚劣さも同様ですね。
    最後の釣鐘新造騒ぎは、純粋な雷電の心持が政争に利用された感があり、眞に腹立たしい。この世渡り下手では、如何に強くても「ヨコヅナ」の称号は遠かつたのでせう。
    さはさりながら、力士として以前に、人間として実に魅力的な人物を創造した本作は、細いかも知れないが長く読み継がれるのではないでせうか。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-745.html

  • 後半からグイグイ引き込まれる。江戸時代のお相撲さんの話かと思いきや、町民文化的なディティールと生き様的な漢っぽさに読み応えたっぷり。

  • 大作、力作であることは疑う余地のないところ。

    ただ、話の流れが前後するため、流れがつかみにくい。

    20歳の頃の話のあとに、18歳の頃の話になり、
    別の人の話がはじまり、26歳の頃の話になるという調子で
    編年形式ではない点が難点だった。

    資料がないなかで人物像を浮かび上がらせるため
    いろんな周辺人物で脇を固めているものの、
    ややもすると雷電の物語なのか、雷電周辺の人の物語か
    わからなくなってくる。

  •  モンゴル勢に土をつけ来場所綱取りがかかる大関琴奨菊、なんと10年ぶりの日本人力士の優勝だった。TVを観ていて感動した。相撲つながりでこちら『雷電本紀』を手にする。

     なんと雷電は21年間現役相撲人生で10回しか負けていない、勝率.962で、大相撲史上未曾有の最強力士(wiki参照)と言われている。ただ強いだけではない涙あり笑いありの自伝である。強い力士といえば、『ああ播磨灘』さだやす圭による日本の漫画作品がある。憎らしいほど強く無敵だ。実在した力士、朝青龍は強くても好きくないな(笑

  • 伝説の大関「雷電」本紀。
    浅間山噴火による天明飢饉の鬱屈とした時代を背景に稀人雷電の傑出した相撲人としての姿を描く。
    江戸時代の相撲文化や興行のあり方も分かる傑作。
    雷電は貴ノ浪に押しの強さを加えて磐石にした感じのイメージで読んでいました。

  • [ 内容 ]
    凶作、飢餓、貧困に悪政が追い打ちをかけた天明、寛政年間、後世まで語り継がれる一人の力士が彗星のように現れた。
    巨人のような体躯、野獣のような闘志で、生涯にわずか十敗。
    豪快に相手をなぎ倒すこの男の相撲に、抑圧され続けてきた民衆は快哉を叫び、生きることへの希望を見いだしていった。
    実在する伝説的相撲人・雷電の一生を、雄大な構想と綿密な時代考証をもとに、足かけ六年の歳月を費やして執筆。
    いずれも粒ぞろいの飯嶋和一の歴史小説だが、その嚆矢として作家の名を鮮やかに読む者の脳裏に刻み込んだ、感動の歴史大作である。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 全1巻。
    個人的にちょっと雷電を調べる必要があって読んでみる。

    それほど相撲に興味が無くても引き込まれる
    迫力ある取り組みの描写はすごかった。

    また、雷電が伝説的強さと優しさを兼ね備えた
    魅力的な人物として描かれているのも好感。

    ただ、個人的には小説としては....な感じだった。
    雷電の話と思って読んでみると、
    ずいぶん長く別の人物の描写にページを割いていて、
    その人物と雷電の友情が軸に物語は進むのだけど、
    時間も人物も行ったり来たりで混乱する。
    著者が小説っぽい書き方を嫌っているようだったけど、
    それにしても話が見えなく、
    イマイチはっきりしない印象だった。

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著者プロフィール

小説家。1952年山形県生まれ。1983年「プロミスト・ランド」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。88年「汝ふたたび故郷へ帰れず」で文藝賞受賞。(上記の二作は小学館文庫版『汝ふたたび故郷へ帰れず』に収録)2008年に刊行した単行本『出星前夜』は、同年のキノベス1位と、第35回大佛次郎賞を受賞している。この他、94年『雷電本紀』、97年『神無き月十番目の夜』、2000年『始祖鳥記』、04年『黄金旅風』(いずれも小学館文庫)がある。寡作で知られるが、傑作揃いの作家として評価はきわめて高い。

「2013年 『STORY BOX 44』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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