日本の戦争(小学館文庫) (小学館文庫 た 2-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094050028

作品紹介・あらすじ

少年時代に敗戦を体験した著者が、長年にわたって抱き続けてきた疑問-。日本はなぜ、世界を敵にまわし、「負ける戦争」を始めてしまったのか。明治維新で国家を建設し、西欧を懸命に追いかけてきた日本は、はたして何に成功し、何を、どの時点で失敗したのか?長年の疑問に著者自らが正面から取り組み、「富国強兵」「五族協和」など七つのキーワードをもとに、日清・日露戦争、満州事変、そして「大東亜戦争」へと突き進んでいった近代日本の謎を解き明かす。今、新たな岐路に立つ日本人が振り返るべき分岐点を、鮮やかに照らし出す著者渾身の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新~太平洋戦争まで、日本がいかにして戦争に突っ走っていったのかを総括。
    興味深いのは二二六事件の背景として、今までよく大不況や農民層の疲弊が原因と言われていたが、実はそうではなかったのではないか、という提言。 それから、統帥権という化け物。近衛文麿という戦争直前の首相であるが、首相としての資質がまったく欠如していたのではないかと思われること。
    んんん、勉強になった。
    終戦記念日にもういちど戦争を振り返るための良書。

  •  日本はなぜ負ける戦争をしてしまったのか、そのような疑問を子供の頃から抱いた著者が、大学教授との対談や調査を通じて1冊にまとめたのが本書である。
     まず大日本帝国の誕生まで遡る必要がある。ペリーの黒船来航をきっかけに、江戸幕府の権威が揺らぎ始め、そこから明治維新が起きるのが大まかな流れであるが、黒船来航以前から国防の重要性を説いた人物がいくつかいた。そのうちの一人が島津斉彬であった。島津は清国のアヘン戦争より、日本にも同様の危機が迫ると警告を鳴らす。そのために、「富国強兵」が必要といい、それに関連する洋学を学ぶべきだと主張した。ちなみに、富国強兵そのものはほかにも会沢正志斎も唱えたが、島津は開国派であった。ただし、この改革は、あくまで江戸幕府の封建制をもとにした改革であったために、不十分であった。
     実際、本格的な富国強兵に着手したのは大久保利通であった。大久保は島津斉彬含む薩摩藩の先輩から、富国強兵の話や文には触れていたが、それは頭の中で想像した観念でしかなかったが、薩英戦争を通して軍備の重要性を知った。とはいえ、不平等条約の改正は依然進まず、それが成功したのは日清、日露戦争に勝利してからであった。
     戦前の日本では、天皇を元首とした国家であったが、このような制度は実は近代から、すなわち明治政府による政策であり、とくに教育勅語は、政府が新しい国作りの核となるものとして起草したのであった。その一方、政府とは別に自由民権運動が盛んになった。これは板垣退助や後藤象二郎を中心に発展した。
     明治、大正と日本は着々と帝国主義を拡大していったが、昭和、特に世界恐慌そして満州事変から雲行きが怪しくなる。とりわけ二・二六事件は全国に衝撃を与え、それ以降、軍が政府中枢に介入するようになった。今回、本書を読んで驚いたのが、その当時の経済状況である。敗戦後から10数年後の経済白書で「もはや戦後ではない」という有名なフレーズがあるが、それによると、1956年は、二・二六事件が起きた1936年と同等の経済水準であった。つまり、1936年の経済状況は敗戦直後と比べて幾分マシであったと言える。
      そのような状況下が延々と続いて、近衛文麿内閣が誕生した。意外なことに、当時、近衛は右派、左派、メディア、政党、国民と、あらゆる方面から人気があり、支持されていた。しかし、中国の対処を誤り、その結果、日中戦争は泥沼化してしまい打開策が見つからなかったが、ナチスドイツの勢いが増すと、それに乗り遅れないかのように、日本はそのあとについた。その後、東条英機内閣では、東条が軍後からを抑制するために複数の大臣を兼任したが、日本の情報収集能力が欠けたせいで、アメリカに宣戦布告した。第2次世界大戦では、石油の確保が戦略上欠かせないが、そのうちの8割がアメリカで残り2割が蘭印、ボルネオである。つまり、日本は十分な石油を保持しないまま戦争に突入してしまった。
     このように、かの戦争は、日本の状況を俯瞰、客観視することできぬまま、無謀な戦争に挑み、砕け散った。

  • [ 内容 ]
    少年時代に敗戦を体験した著者が、長年にわたって抱き続けてきた疑問―。
    日本はなぜ、世界を敵にまわし、「負ける戦争」を始めてしまったのか。
    明治維新で国家を建設し、西欧を懸命に追いかけてきた日本は、はたして何に成功し、何を、どの時点で失敗したのか?
    長年の疑問に著者自らが正面から取り組み、「富国強兵」「五族協和」など七つのキーワードをもとに、日清・日露戦争、満州事変、そして「大東亜戦争」へと突き進んでいった近代日本の謎を解き明かす。
    今、新たな岐路に立つ日本人が振り返るべき分岐点を、鮮やかに照らし出す著者渾身の一冊。

    [ 目次 ]
    第1章 富国強兵―「強兵」はいつから「富国」に優先されたか
    第2章 和魂洋才―大和魂とはそもそも「もののあはれを知る心」だった
    第3章 自由民権―なぜ明治の日本から「自由」が消えていったか
    第4章 帝国主義―「日清・日露戦争」「日韓併合」は「侵略」だったのか
    第5章 昭和維新―暴走したのは本当に「軍」だけだったか
    第6章 五族協和―「日本の軍事力でアジアを解放」は本気だった?
    第7章 八紘一宇―日本を「大東亜戦争」に引きずり込んだのは誰か

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 田原総一郎氏( @namatahara )が国民学校(現小学校)5年生の時に、終戦した第二次世界大戦までの長い戦争。

    なんでそんな負けるとわかっている戦争を起こしたのかというのが本書。
    軍部が暴走したやら、アメリカ陰謀説やらありますが、それら諸々を江戸・明治・大正・昭和と4つの時代にまたがりまとめたのが本書。

    世界の流れの中で、支配するものか、支配されるものか、の2択しかなく、日本が支配する側を目指さなければ、ただ単に欧米露に支配されて終わってただけ…
    そう考えると、難しいけど、反省し繰り返してはいけないけど、しょうがないのかと。
    その流れを断ち切る力はないだろうし。
    ただ、まだ100年も経ってないんですよね。世界にその流れがあった時代から。
    その流れを日本人としては知っとくべきで、本書は読まれるべき本だと思います。

    気になった部分だけ引用。
    ・今も昔も日本人は事なかれ主義。
    ・自分たちの言葉に酔うだけの青年将校
    ・日本はゴロツキを韓国へ、英国は尊敬すべき人間をインドへ。
    ・国際連盟離脱はそんなに問題じゃない。
    ・決定的な情報格差。
    ・三国同盟の先の四国同盟…
    ・海軍の国益よりも予算拡充。

    田原総一郎さんのことは、TVでしか知らないけどただの口が回るだけのおじさんかと思いきや、粘り強いインタビュアーでもあり、丁寧なライターでもあったんですね。脱帽。
    600ページ弱の文庫ですが是非。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)135
    戦争・歴史・天皇

  • 戦争責任の所在を明確にするために、著者は当時の状況を克明に記す。責任者は戦争をする決断をした者と断定できないのが苦しいかぎりだ。満州事変から日本の悲劇が始まる。日中戦争、太平洋戦争は周辺国からも、侵略戦争として位置づけられる。

    勝てない戦争になぜ参戦しなければいけなかったのだろう。興味深いことに当時の新聞論調も参戦賛成とすると部数が増え、反戦を記事にすると新聞は売れなかったのだそうだ。日清、日露戦争の勝利が日本国民の目を暗くし、現実を誰もが直視できなくなってしまった。

  • ・特定の史観に頼ることをせずなぜ日本は先の戦争に突入したかを探る大変興味深い一冊。この特定の史観に頼らない、ということがどれだけ難しいか読んでみてよく分かる。
    ・歴史は本当に面白い。面白いまでに全てが繋がっている。本書に取り上げられたどの場面でも何か一つが違えば先の戦争もなかった気もするし、それでもやっぱりあったような気もする。かと言って維新以来の必然だったと断言するつもりもないし、そのように本書は述べてもいない。個人的には否定したい史実の解釈も含んでいるけれども、非常にバランス感覚に優れた内容だと言える。
    ・「富国強兵」「和魂洋才」「八紘一宇」などの言葉を一体誰が最初に言ったのか、という所から探るアプローチも非常にわかりやすい。著者自身謙虚に史実を拾い上げようとする姿勢が非常に好ましく思えた。田原総一朗と言うとテレビに出ている姿しか知らなかったので驚いた。
    ・戦前は軍人に選挙権が無かったという重要な事実を本書を読むまでは知りもしなかった。良書。

  • 学校でさらっと流される近代史。「何で大国アメリカに挑んだんだろう」といった様々な疑問がだいぶ解決されます。

    • su-marchさん
      学校でさらっと流される近代史。
      「何で大国アメリカに挑んだんだろう」といった様々な疑問がだいぶ解決されます。
      学校でさらっと流される近代史。
      「何で大国アメリカに挑んだんだろう」といった様々な疑問がだいぶ解決されます。
      2008/11/12
  • 以下のページで感想かいてます。http://blog.livedoor.jp/subekaraku/archives/50041976.html

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著者プロフィール

ジャーナリスト/1934年滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社、64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年からフリー。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、放送批評懇談会35周年記念城戸又一賞を受賞。現在も「激論!クロスファイア」(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ、ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『創価学会』(毎日文庫)、『さらば総理』(朝日新聞出版)など多数。

「2023年 『会社が変わる!日本が変わる!! 日本再生「最終提言」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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