- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094060737
作品紹介・あらすじ
原爆、帰還兵、原発。核をめぐる真実のルポ
2011年3月。福島第一原発事故により、それまで原発依存の生活を送ってきた日本人は、改めて生活のあり方を問われるようになった。事故から3年以上経つ現在も、故郷に帰れない人々がたくさんいるという現実。それほど、「放射能汚染」の被害が甚大であることを、私たちは日々実感させられている。
本書は、2009年のオバマ大統領の「核なき世界」という演説に端を発した「核」をめぐるルポルタージュ。この演説後もアメリカ政府が年々核兵器関連予算を拡大していること。劣化ウラン弾による被曝の後遺症に悩まされながらも、何の補償も与えられないどころかその声すら無視される帰還兵たちの存在。戦争勃発以降、イラクで増え続けるがん患者や先天性障害児。そして唯一の被爆国として、広島・長崎を中心に反核メッセージを世界に発信し続けながらも、原発輸出に力を入れ続けてきた日本。それらの現実を、著者は丹念に取材しながら、「核」とはいったい何を指すのか、その根本からを考え直すべきだと訴える。
文庫化にあたり、原発事故を経た現在の視点で、著者が新たなメッセージを加筆。いまこそ日本人が読むべき、真実のルポ。
感想・レビュー・書評
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核というものがある限り、被爆する人が増え続けていることを忘れてはいけない。
核は、広島、長崎だけの話ではない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
堤氏の本は今までのアメリカシリーズと繋がっており、覇権国家であるアメリカが中心に書かれている。アメリカの学校教育の偏りにより、核兵器の現実が知らされていないこと、「はだしのゲン」のような話はアメリカ人はほとんど知らないことなど。今後のメディアのあり方が問われている。
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沈みゆく大国~政府は必ず嘘をつくなど、作者の一連の著作を読んだ。
過去にアメリカで起きた原発事故や劣化ウラン弾によるイラクの汚染、日本が非核国の中で最大のプルトニウム保有国であるということなど、政府が隠していること、マスコミが報道しないこと(できないこと?)は予想以上に多いんだな、と言うことをこの本で知った。
でも、まだ心のどこかに「本当?」と言う思いがあるのも事実。
我ながらかなりのお人好しだと思うけど、事実はともかく、この「違和感」のもとを自分なりに調べて行きたいと思わせてくれた、読んでよかった本でした -
堤さんの本は、問題ばかりを扱い、救いを見出す記述は少ないから、読むと苦しい気持ちになる。
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核廃絶を目指す人類の前に、二つの難題が立ちはだかる。一つは核被害者の多様化。もう一つはオバマがプラハ演説で触れた<核なき世界>の意味。一つ目の意味は、もはや被爆者は広島・長崎だけではないということ。湾岸戦争での劣化ウラン弾被害、チェルノブイリ原発事故といった、被曝者が多様化したことで、被害者目線で見た核への考え方も複雑化している。二つ目のオバマの<核なき世界>はその真意を巡って世界が大混乱させられている。「核廃絶」という言葉だけが独り歩きする前に我々は、こうした難題に対してしっかり議論し、考える必要がある。
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世界に於ける核の事態に迫るルポルタージュ。
我々日本人はアメリカの二度の原子力爆弾攻撃で地獄を味わい、さらにはアメリカ主導の原子力発電推進の結果、東日本大震災で福島第一原発事故という生き地獄の真っ只中に放り出された。
悪い核が原爆なら、良い核が原発であり、互いが表裏一体の双子の関係にあるという事実、湾岸戦争でアメリカが使用した劣化ウラン弾による被曝被害の事実、被曝国でありながら世界に原発を輸出し続ける日本…人類が技術的に核を完全にコントロール出来ていない中で、結果だけに執着し続けた結果が、今の事態を招いているように思う。
アメリカが隠蔽する劣化ウラン弾による被曝、日本が隠蔽し、後出しで公表する福島第一原発事故による放射能汚染の実態…どちらも同じであり、まるで麻薬使用者のように抜け出せない地獄は続く。