ぴしゃんちゃん (小学館文庫 の 7-1)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094060812

作品紹介・あらすじ

ジョーハツ男としずくの女の子の心の交流

仕事も恋愛も、途中で重たくなって逃げ出してしまう”ジョーハツ男”は、万年水たまりのある小さな借家に住み、薬草を売って暮らしている。そんな彼のもとに突然現れたしずくの女の子、ぴしゃんちゃん。好奇心旺盛でおしゃまな彼女には、蒸発できないなんらかの”しずく的事情”があるらしい。一緒に過ごすことになった二人は、心を通わせていくが――。

「この本は、幼い子どもたちのために書かれた童話ではない。しずくが話をするなんてことは、物理的に絶対にありえないことを知ってしまっている大人の――それもある程度人生の苦さを知ってしまった――の、それでもなにかを真剣に信じてみたいと願う心に潤いを取り戻し、現実をやわらかく受け止め直すための、ひとときの白昼夢としての物語なのである」(東 直子)





【編集担当からのおすすめ情報】
著者みずから描き下ろしたカラーイラストを多数収録。ジョーハツ男とぴしゃんちゃんが過ごした春夏秋冬を、絵でもお楽しみください。

感想・レビュー・書評

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  • 読み始め…16.4.14
    読み終わり…16.4.15

    社会の中で期待されるようなことがあると消えてしまいたくなるぼくは「ジョーハツ」と呼ばれている。仕事からも恋愛からも逃げ出してしまう男。ある日、その男のもとに好奇心旺盛でおしゃまなしずくの女の子が現れます。水滴がこぼれてぴしゃんと跳ねる音から名がついた「ぴしゃんちゃん」。何からも逃げ出してしまう男に対して、しずくのぴしゃんちゃんは蒸発して消えてしまう自分の身の上をきらっていつまでもしずくのままで遊び続けていたいとしずくたちの仲間から離脱してしまった女の子。一見して立場が真逆のような二人(?笑)だけれど自分の置かれた身の上から逃げ出して、行き場を失いかけている孤独さを持っているところでは共通している二人です。

    こまっしゃくれておしゃまなぴしゃんちゃんが、ジョーハツするなんてことはありえないとばかりに草木の葉っぱの上から水たまりに向かってすべり落ちてはぴしゃんと跳ねて遊び続ける様子に、何をやっても長続きせずジョーハツすることが常となってしまっていたぼくの心は揺さぶられます。

    一方ぴしゃんちゃんはある日の月を見て「お月さんが小さく欠けちゃったら、そこにいるものはどうなっちゃうのかしら。ちっちゃくなるたびに片側に避難しなくちゃならないとしたら、たいへんじゃない?」と言うのに対して、月はじつのところ欠けたり小さくなったりはしていない。見えないだけで実際はそこにあるんだよ。というジョーハツくんからの答えにぴしゃんちゃんの気持ちは大きく変わっていくのです。そして二人は二人がともに苦手としている海に行こうと決心して...。

    野中ともそさんのすてきなイラストが散りばめてあり、絵本仕立てになっている大人ための絵本。二度読みしましたが読むたびに感慨深いところがみつかります。フンコロガシや生薬商のおじいさんの話などにも。

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著者プロフィール

作家、イラストレーター。ニューヨーク在住。98年「パンの鳴る海、緋の舞う空」で小説すばる新人賞受賞。主な著書に『フラグラーの海上鉄道』『宇宙でいちばんあかるい屋根』『カチューシャ』『世界のはてのレゲエ・バー』『おどりば金魚』『チェリー』『犬のうなじ』『ぴしゃんちゃん』『鴨とぶ空の、プレスリー』『海鳴屋楽団、空をいく』『つまのつもり』など。

「2016年 『虹の巣 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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