- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094061017
作品紹介・あらすじ
感動ドキュメント「書店員たちの3.11」
本書では、大宅賞作家・稲泉連氏が、被災地における書店の「歩み」を記録することで、ネット注文や電子書籍が一般化しつつある昨今の出版界における、書店の「存在意義」そして、紙の書籍の「尊さ」を再発見していく。
文庫版には、震災から3年半を経た東北の書店の「現実」を綴った補章と、本書にも登場する元書店員・佐藤純子さんの特別手記が収録されている。
感想・レビュー・書評
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これは「本屋の話であるけれど、本屋だけの話ではない」「被災地の話であるけれど、被災地だけの話ではない」と感じます。
「自分が、何故そこに居るのか?」を本屋や被災地を通して問いかけてくれるお話し。
未曾有の災害を被ったとき、最初に必要なのは確かに衣食住のインフラを再構築することでしょう。 でも、人はそれで生きていける訳ではない。
本書で印象的だった言葉は「親たちは、子供達の笑顔を必要としている」
そう、人が生きる勇気を、前を向く希望を感じるのは、そんな「心を満たされる瞬間を得るため」だと、本書は語り掛けてくれます。
そして自分と重ね合わせ、自分が満たされるモノは何だろう。自分が必要としている事はなんだろう。 と気づくことができるのだと思います。
本好きの方にはもちろんですが、「生きる勇気」を与えてくれる素敵な本だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本(書籍、紙、文字)の持つあたたかみを心底感じた作品、ルポルタージュ、ノンフィクションです。東日本大震災で被災した沢山の書店、苦難を乗り越えて営業を再開、開店前から長蛇の列、あらゆる種類の本が買い求められたそうです。街の書店が持っているある種の安らぎ、本自体が醸し出す癒し。本は、私たちにとって趣味の世界であると同時に、趣味を超えた衣食住と同レベルのものと、そんな気持ちを抱きました。本に囲まれた暮らし、本当に幸せなことですね!稲泉連 著「復興の書店」、2014.11発行(文庫)。
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本に関わる人たちによる、被災地で書店が、本がどのような役割を担っていたかや、書店経営再開や被災地で書店を始めた人たちにスポットをあてたドキュメンタリー。
正直、美談のような話が多く感じられてバイアスかかってるように思われましたが、私も本が好きなのでそこは目を瞑りながら(汗)…
被災地で本が求められたエピソードについては、人間はどのような境遇にあっても、あるいは被災地のような極限的な状況だからこそ(本のような)心の安らぎを感じられる存在を求めるのかなぁ、と思いました。また「本」という存在が我々にどのように関わっているのか、今後どのように関わっていくのかについて考えさせられました。
個人的には「ほんの村いいたて」のエピソードを別の本(3.11 あの日を忘れない)で少しかじっていたので、そこに登場する書店員さんの名前を見た時「リアルスターシステムや!」と妙なワクワク感を覚えたのが印象に残りました。
「事実は小説より奇なり」じゃないけど、現実世界でがんばっている人はフィクションのヒーロー/ヒロインと同じくらいの存在感・影響力があるんだろうと思うと、少し感動しました。 -
3.11後、必要とされた、本。
出版業界が厳しい昨今、紙の本の存在感に鼓舞させられる内容だった。
そうして、書店員さんたちが「自分たちは必要とされている」と感じたことも、嬉しかった。
便利であるということが、必ずしも必要であるということでは、ないのだと思う。
「だから、少しでもいいから本を持ってくればよかった、と思ったんです。だって、周りを見渡すとね、皆さんプライバシーがない上に、人によってはじっとしていなければならないんです。テレビも体育館全体で一台しかないし、やっているのは震災のニュースばかりでしょう。本だったら、個人個人が自分の好きなたった一人の世界に入り込むことができる。週刊誌でも絵本でもいい、ここでは本が必要とされているんだ、と」
感情と、経営と、時間の推移。
それらがいつも、同じニーズをもたらす訳ではない難しさも分かる。
中でも、後書きにおけるジュンク堂仙台店の店長さんからのメッセージはちょっとしたショックだった。
本の中では、あれほど奮闘し、また励まされながら経営を続けたエピソードが載っていたのに。
昨年の夏に閉店したという結末。どのような事情があったにせよ、残念である。
それでも、本に携わる喜びを語る彼女に、また書店員として生きて欲しいと、個人的に願っている。
本そのものも人が作り出すのだけど、どんな本を選び、棚を作るのかにも、人の思いや手が加わっていることだから。 -
被災してほんの少ししか経たない間に、人々は本を必要と感じるとは意外でした。
しかし「たった一人の世界に入って心を充電するためのツール」として本を求めたのではないかという文を読んで、そうか、なるほどと思いました。
本が心を充電するためのツールだというのは、平時の自分にも当てはまることではないか。本の役割の重要性を身に染みて感じました。 -
本は不要不急ではなく、生きるために必要なものだ。人は食べ物だけでは生きられない。
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書店で働きたいと思った最初の日のこと思い出した。
日々のルーティンに追われて大切なことをわすれていたことに気づかせてくれた。
書店員には是非読んでほしい一冊 -
田口久美子『増補 書店不屈宣言 わたしたちはへこたれない』(ちくま文庫)p221で紹介。