極卵 (小学館文庫 せ 2-7)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094062502

作品紹介・あらすじ

食の安全を問い糾す、衝撃ミステリー作品!

天使の卵か悪魔の卵か……。
吉祥寺にある有名自然食品店で売られている卵は、極上の味、『極卵(ごくらん)』と呼ばれて大人気の商品だった。しかし、この極卵を原因とする、食中毒事件が発生。時間がたつうちに幼児の感染者が次々に死亡していく。餌、衛生管理は完璧だったはずなのになぜ汚染されたのか。
疑惑を追い始めた元新聞記者の瀬島桐子。桐子の同級生だった野々市純子の長男も中毒患者のひとりに。純子はカリスママダムといわれブログ上では著名な存在だった。被害が拡大していくなか、過激なまでに業者を糾弾していくモンスター消費者の広告塔に祭り上げられる純子。話題性抜群と、事件を煽る新聞、テレビメディア各社。そして事件の裏には遺伝子組み換え食品を手がける大企業の影が……。
偽装食品、遺伝子組み換え食品など時代を揺るがす事件が多発する現在、食品の安全とは何かを鋭くえぐる社会派ミステリーの登場。「これは、私の最高傑作」著者仙川環が言い切る傑作ミステリー作品。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代に飼われていた地鶏「相州地鶏」を研究機関が復活させ、その卵が高値で販売を開始した。
    ところが、「極卵」と名付けられたその卵を食べた人たちが次々と中毒症状を起こす。
    死者の数も増えていき、メディアは面白おかしく騒ぎたてる。
    厳正な検査の結果、飼育をしていた養鶏場には、環境・設備等の問題は何らないことが判明。
    いったいなぜ、卵はどこで汚染してしまったのか?
    マッチポンプ野郎と呼ばれる記者を筆頭に、養鶏場を中毒事件の元凶だと決めつけ、次には研究機関に原因があると糾弾していくメディア。
    声高に国による隠ぺいだ、陰謀だと叫ぶ自然食品ネットワークの主催者たち。
    本当の原因は何か?国民の安全のためには真相解明を!
    だが、騒ぎたてる人たちはまったく別のことを考えている。
    記事に注目を集めるにはどうすればいいか。
    自分たちの要求を通すためにはどうすればいいか。
    彼らに利用されていく女性たちにもイラッとした。
    自分が同じ立場になったら・・・仕方がないと思う反面、こんなときだからこそ冷静にと思ってしまう。

    真実が明らかになったとき、あってはならないことだが、実際にあっても少しもおかしくはない出来事だと思い怖くなった。
    本来の目的を見失い利に走ったとき、人はここまで醜くなれるのかと薄ら寒い思いがしてしまった。

  • 近年、とみに注目度が高まっている"食の安全"をテーマとし、そこにジャーナリズムやいわゆるフード左翼の動きなどを絡めて仕上げられている。
    篠田節子氏の「ブラックボックス」や相場英雄氏の「震える牛」などを髣髴ともさせる。
    サスペンスタッチのエンターテインメントとして、充分に読み易い作品ではあるが、肝心の感染経路やメカニズムに関する科学的背景の書き込みが弱いような印象も受けた。
    もう少しコアめな設定をブチ上げて深く掘り下げていった方が、より骨太なものに感じられたかもしれない。

  • 読みやすく、一気に読める感じの本です。健康志向の私ですが、なかなか陥りやすい人間関係のことなどもうまく描かれています。ありがちな内容ではない話なので、斬新で良かったです。この著者の他の小説も読んでみたいと思いました。

  • 食に関わるものとして「食品の安全とは何かを鋭くえぐる社会派ミステリー」という惹句には惹かれるものがあって、手に取ってみた。
     巷に蔓延っている「食べてはいけない」系のあまり科学的とは言えない、煽るだけ煽って逆に食の安全を脅かしている言説と、モンサントに代表される遺伝子組み換え産業の、生命や自然に対する畏れのなさ、科学的謙虚さのなさ、そしてジャーナリズムの全くジャーナリスティックではない無節操さ。そういう諸々を批判的に、そして単純化してものすごくわかりやすく提示している、ということでは成功している。フィクションだけど、「食の安全をめぐる社会の構図」をおおまかに知るにはいい感じ。生産者だけが、なんの比喩もなく完全に美しいものとして描かれているということに関してはちょっと違和感があるのだけど。

  • 初めて読む作家さん。面白かった!!
    ミステリーだけどちょっと変わった切り口。社会派?
    グイグイ読んだ。
    結構最後の方まで真相がわからなくて「これはホントに真相が解明されるのか?」と、ちょっと心配になった(笑)
    でも、久々に深夜になって「もう寝なくちゃ…」と思っても止まらなかった。
    「仙川環さん」覚えとこう。
    (2023/10/8、他の読書管理サイトからお引越し。レビューは読了当時の記録。)

  • 食の安全よりも、メディアの情報の正確性を考えさせられる作品。
    書かれた文章が全て真実とは限らない。やはり、情報の正確さを判断する能力は大切だと感じた。

  • ふむ

  • 自然の形で育てた鶏から生まれた卵「極卵」その卵を食べた人から毒素の強い菌が発見された。
    すでに何人か亡くなっている。
    自然食をこよなく愛する人気カリスマブロガーも購入し息子が感染し生死をさまよう
    生産者の環境は調査の結果問題ない。
    いったいどこから菌が発生したのか。
    昔の鶏を復活させた研究機関が発表したが問題はない。
    ジャーナリストは菌の出どころを突き止める。

    卵に関する仕事についている為
    タイトルを見て購入しました。
    今現在、世の中ではコロナを含めていろいろな菌に翻弄されています。
    本のような事が絶対怒らないとは言えない。
    なかなか身に染みた内容でした。

  • 食の安全はもちろんのこと、報道の公平性についても考えさせられる一作でした。私たちが普段目にしている情報や記事は、もしかしたら事実の一部分だけをピックアップして報じているだけに過ぎず、過信してはいけないのだと改めて痛感。

    また、実際に自分が見てきたわけではないのに、過ちをおかしたとされる人を「悪」だと決めつけ、「正義の鉄槌」という名のエゴを叩きつけることがいかに残酷で、改善されていくべき悪習か。本作で痛いほどわかりました。

  • 自然食の卵が汚染されていた。まずまず面白い。

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著者プロフィール

せんかわ・たまき
1968年東京都生まれ。大阪大学大学院医学系研究科修士課程修了。大手新聞社在籍中の2002年に書いた小説『感染』が第1回小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビュー。その後執筆活動に専念し、医療問題を中心に社会性と娯楽性を兼ね備えた作品を発表する。著書には『転生』『繁殖』『誤飲』『疑医』『鬼嵐』などがある。本作は『幸福の劇薬』に続く「医者探偵・宇賀神晃」シリーズ第二弾!

「2020年 『偽装診療 医者探偵・宇賀神晃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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