- Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094062748
作品紹介・あらすじ
逞しく成長していく若き幕末商人の熱き物語
長年仕えた店主に気に入られ、勘七は養子になって日本橋の紙問屋永岡屋の主となった。その頃、小諸藩から藩札を納めるという依頼が舞い込んでくる。大仕事に沸き立つ永岡屋だったが、藩には跡継ぎを巡って二分する内紛があった。ある日、店は襲われ藩札は奪われてしまい、父親の善五郎はその時のけががもとで、亡くなってしまう。小諸藩からはわずかばかりの金が払われただけで、2千両もの借金を背負ってしまった。
桜田門外の変で殺された親友の直次郎の墓に詣でた勘七は、紙の手配で話を交わしていた弘前藩のご祐筆・松嶋に会う。直次郎は、松嶋の従弟だった。松嶋は、本名のお京となって実家の日本橋松嶋屋に戻ってきていた。仕事の話をするうちに、二人は心を通わすようになる。
官軍との戦争が始まると噂される江戸は、景気と治安が悪くなる一方だった。勘七は、新三郎や紀之介、勝麟太郎、浜口儀兵衛といった人々との交流を通じて、商いを学んでいく。巨額の借金をどう返済していくのか。
そして、お京との仲は。
友情あり、恋あり、涙あり。熱い思いに満ちた、幕末青春ビジネス小説。
『旅立ち寿ぎ申し候』で刊行された単行本の書名を変更しました。
感想・レビュー・書評
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永岡屋の店主に見込まれて養子となった、若旦那の勘七。
小諸藩から持ち込まれた大仕事に、一丸となって取り組むが……。
『旅立ち寿ぎ申し候』の改題。
紙問屋のビジネスがメインかと思ったら、勘七を取り巻く、幕末という激動の時代という問題のウエイトが、意外と重かった。
本人の努力だけでは難しい状況に、心が折れそうになることも。
それでも自分の商いの道を模索し、よりよい方へと進もうとする姿が爽やか。
生真面目で、相手のことを思って行動できる、勘七のまっすぐさ。
善良な義父の善五郎。
常識の枠にとらわれなず、みんなを楽しませる幼馴染の紀之介。
はっきり物申す、元奥女中のお京。
勘七とまわりの人物が魅力的で、人情味があった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小諸藩が出てくるとのことで読む。
桜田門外の変、小諸藩の御家騒動など歴史に翻弄されながらも逞しく成長していく江戸商人の物語。
一気に読めました。 -
幕末に生きる勘七、新三郎や紀之介、直次郎の4人の幼なじみである若者たちの友情あり、恋あり、涙ありの青春ビジネス小説。テレビドラマを観るかのようにさくさくと読めた。
冒頭で、仲間だった一人・直次郎は武士に憧れ商人(あきんど)から彦根藩下級武士になり桜田門外の変で命を落とす。彼は悔いていないかのように笑みを浮かべていた。主人公となる勘七は20歳間もなく店を継ぎ若旦那となった初仕事で2000両もの借金を背負ってしまう。藩の内紛に巻き込まれ歯ぎしりする思いで店を立て直すのに奔走する。紀之介は老舗の実家を飛び出し小糸の元へ走るという現代的な男。新三郎は武家の生まれだが三男坊だったために札差になる。
札差? 武士は俸禄として直接、金子をもらっていたのではなく、石高を渡され札差で金子に変えて生活をしていたらしい。へえ~っ、そうだったのか!
どの時代でも、それぞれの生き方がある。
6月に訪れた近江商人の「売って良し、買って良し、世間良し」の三方良し。このフレーズにまた出会えたのも奇遇だったが、江戸の庶民にとって薩摩藩士は芋侍と嫌われていたとは・・・(と・ほ・ほ・ほ)