東京帝大叡古教授 (小学館文庫)

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レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (518ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094062823

作品紹介・あらすじ

日本初! 文系の天才博士が事件を解決!

物語の主人公・宇野辺叡古(うのべえーこ)は、東京帝国大学法科大学の教授である。大著『日本政治史之研究』で知られる彼は、法律・政治などの社会科学にとどまらず、語学・文学・史学など人文科学にも通じる”知の巨人”である。
その知の巨人が、連続殺人事件に遭遇する。
時代は明治。殺されたのは帝大の教授たち。事件の背景には、生まれたばかりの近代国家「日本」が抱えた悩ましい政治の火種があった。
他を圧倒する「知の巨人」が開示していく事件の真相は、まさに予測不能。ラストは鳥肌モノ!!
第153回直木賞候補作、早くも文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 1905年8月2日。
    19歳の私が、熊本の第五高等学校から東京帝大の法科の宇野辺叡古教授(文庫解説によると作者の好きなウンベルト・エーコをもじった名前だそうです)を頼って上京してきます。
    私と叡古教授が待ち合わせた大学の図書館で、いきなり高梨力衛教授が何者かに殺されてしまい叡古教授が犯人かと疑われてしまいます。叡古教授の周りには国民新聞の松崎天民、徳富蘇峰などもいて事件の真相を探っていきます。
    そしてまた、二度目の殺人が起こり東京帝大の元教授の鳥居久章が殺されます。犯人は東京帝大英文科講師でホトトギスに『吾輩は猫である』を連載していた、夏目金之助(漱石)であるという噂が流れます。
    そして三つ目の殺人で中倉金吾博士が殺され、殺しをやった実行犯はすぐに元旗本のおちかという女性の係累(母と弟たち)だということが判明しますが、一連の事件は日本に日露戦争をさせた七博士を殺そうとしている事件であると断定されます。
    叡古は、この事件には黒幕がいると睨みます。
    最初は、盛岡弁から原敬が怪しいと思われましたが、どうも違う方向へ事件は展開します。
    巻末の文庫解説では「歴史を知らなくても楽しめる」とありましたが、私は全く無知だったので、どこまで真実でどこからフィクションかわからず困りものでした。少し検索してみたら七博士はすぐ出ましたが、殺されたというようなことは出てきませんでした。
    しかし、主人公の阿蘇籐太(叡古のつけた仮名)と叡古の娘のさくら子との関係が『三四郎』のモデルであるとか、ありえない小話は面白く楽しめました。
    最後に明かされた、籐太の本名の検索をしたら、かなり有名な実在の人物で、日本史に詳しい方には面白い作品ではないかと思います。

  • 熊本から東京帝大の叡古教授を訪ねるために上京した高校生、19歳の「私」は、長旅の後宿で教授からの、「翌朝大学の図書館で会おう」旨の手紙を受け取る。ところが翌日、図書館で教授らしい人を見つけ声をかけたところ、その人はすでに亡くなっていて、叡古教授と対立している教授だった。駆け付けた叡古教授と対面した「私」は、その場で阿蘇藤太と名付けられ、彼とともに事件の解決を試みる。

    数々の事件を解決しながら、当時の日本を震撼させる出来事も絡ませていく政治ミステリー。




    *******ここからはネタバレ*******

    素晴らしい頭脳の持ち主でありながら、ユーモアと温かさを備えた教授と、発展途上ではありながら明晰さと素直さを併せ持つ藤太との掛け合いが楽しい。

    一つ一つの事件がホームズやコナンのように着々と解決されていきながら、またそこから別の大きな事柄への糸が見つけられていき、飽きさせない。
    教授や藤太、さくら子や蘇峰、天民という知識階級の人たちだけでなく、おはつやおちかという庶民も存在感があって、物語に厚みを与えている。

    最後に「私」が、あの重光葵だと明らかにされるが、国歌斉唱中だから爆弾が投げ込まれた時に逃げなかったというエピソードも、この物語を読むと納得できたりする。

    何のために勉強するのか?と思っている子どもたちには、ぜひ読んでもらいたい。

  • 帝国大学叡古教授の元へ訪れ、書生として、殺人事件解決への手助け役として過ごす阿蘇藤太。

    他の作品を挟んでかなりの時間がかかり読了。

    時代設定やキャラクター設定は好き。
    でもこれは一体なんなのだろうと思いながらダラダラ読んでしまった。

    なのに読後は時代や人物への興味が止まらなくなった。

  • 日露戦争の終結間際の頃、日比谷界隈は、東京帝国大学は、徳富蘇峰や、桂太郎や原敬は何をしていたのだろうか。未来の日本のエース外交官は何をしていただろうか。ああ、こういう絵柄だったのかもしれないな、と門井の「画力」に賛嘆。



  • 日露戦争前後。
    ポツダム宣言受諾に調印した重光葵の話。
    日露戦争、ポーツマス条約、日比谷焼き討ち事件、帝都大学教授殺人事件。
    フィクションではあるが、史実に限りなく近い。さすが、門井慶喜氏。相変わらず、その博識ぶり、徹底ぶりには舌を巻く。
    彼の作品はどれも、学ぶこと、知ることの楽しを教授してくれるものが、実に多い。
    本作は前知識なくても、まぁ面白いが、歴史が頭に入ってる方が何倍も楽しいだろうな。

  • 歴史+ミステリ。

    近代史に詳しければあの本名にもぴんとくるんでしょうな・・・。

  • (収録作品)図書館の死体/洋装の古代神話/電報十四字/字が書けるということ/トーストの上の暗号表/帝都騒擾/われは藤太にあらず

  • 最近になって門井さんの作品をいろいろ読み漁っているが、これは一番楽しめなかった…。歴史×ミステリなのに、私が歴史に疎いせいか?しかしミステリとしてもなあ…。
    ほかの門井さんの作品がとてもリーダビリティが高いのに、今作はなかなか読み進められなかった…。

  • 歴史とミステリが融合していてまさに本当に起こった事件であるかのように思えるのは解説のとおり。しかし、ミステリとしてはちょっと雑なので歴史とサスペンスつて感じで読む方が面白いかも。
    藤太の正体には、まったく気がつかなかったので、おおっとなった。さすが。

  • 実在の人物と、創作した人物が登場する物語。もちろん叡古教授は後者の方ですが、中々生き生きと描かれています。

    ですが、それよりも、この物語の語り部の正体が驚き。話自体は創作ですが、語り部は実在の人物、重光葵なんですよねぇ。ビックリ。そう言う設定ですかと。この物語の頃は、明治時代ですが、後年の昭和。重光葵が、外務大臣として連合国への降伏文書に署名したことは周知のこと。そんな人物を使うとはね。ビックリです。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。16年『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年、咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年『銀河鉄道の父』で直木賞受賞。他の作品に『東京帝大叡古教授』『家康、江戸を建てる』『屋根をかける人』『自由は死せず』『東京、はじまる』などがある。

「2020年 『銀閣の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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