世界からボクが消えたなら 映画「世界から猫が消えたなら」キャベツの物語 (小学館文庫 わ 9-13)

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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094062878

作品紹介・あらすじ

今年いちばん泣ける映画、もうひとつの物語

余命わずかと宣告されたご主人さまは、自分と同じ姿をした悪魔と取引をした。「この世界からモノを一つ消す。そのかわりに、キミの命を一日ぶんだけ延ばす」と。電話、映画、時計……。モノが消えていくたびに、ご主人さまと
結びついていた人の記憶までが失われていくようだ。そして悪魔は、世界から猫を消すと提案する。ボクのことなんて消してしまっていいんだよ、ご主人さま……。最後に、飼い主が選択した決断とは!?
百万部突破! 感涙のベストセラー原作の映画『世界から猫が消えたなら』を、主人公の飼い猫であるキャベツの視点で描いた、感動の物語。


【編集担当からのおすすめ情報】
原作ファンも映画ファンにも楽しめる、ひと味違った物語です。

感想・レビュー・書評

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  • 2024.2.19 読了 ⭐︎9.0/10.0


    『世界から猫が消えたなら』の主人公の飼い猫・キャベツ視点のアナザーストーリー。
    前作を読んでいるから、その軸を別の軸から客観的に読めるので、また違った味わいがあります。

    本作も、心に響く言葉がたくさんありました。


    "いつも不思議に思うんだ。どうして人間は、自分で勝手に決めたきまりに縛られて、それを「苦しい」とか「辛い」とか言ってるんだろうって。朝は何時に起きなきゃいけない。一週間のうち五日間は決まった場所にお勤めに行かなきゃいけない。自分の都合で勝手に休んだりしちゃいけない。
    食べたいものを好きに食べちゃいけないっていうのも妙な話だと思う。お腹が空いてもそれが決められた食事の時間じゃないと行儀が悪いと言う。肉ばっかり食べちゃいけないバランスよく野菜も食べなきゃいけない。過食はいけない。小食すぎるのもダメ。運動もしなきゃたくさん歩かなきゃ。太りすぎはダメ。痩せすぎもダメ。毎日決まった時間に眠らなきゃいけない。健全でつつがない人生を送るためには、これらたくさんの「自分で勝手につくったきまり」を守らなきゃいけない。挙げ句それを「ストレスだ」とか言ってる。
    だったら守らなきゃいいじゃないかと思う。会社に行くのなんてやめて、好きなものを好きなときに食べて、好きなときに好きな人に会いに行けばいい。人間はなぜか「そんなことできない」と思い込んでいる。すぐ身近に猫という実践者がいるというのに"


    確かになぁ。。社会で生きていく上で守らなきゃいけない最低限のルールは確かにあるけど、勝手に自分で作って自分に課してる無意識のルールもあるんだろうなぁ、無自覚なだけで。

    もっと自由に、心の赴くままに、楽しい予感のする方へ、動いても良いんだよなぁって感じます。



    "僕はね、母さんにかける一本の電話よりも、目の前の着信履歴にかけなおすことに目一杯になってた。いつでもできるって思い込んで、本当に大切なことを後回しにして、目の前にあるさほど重要ではないことを優先して毎日を生きてきたんだ。ほんのちょっと考えればわかるのにね。どっちの電話の方が重要か。どっちの電話の方が大切かなんて、わかりきっていることなのにさ。
    何だってきっと同じなんだよ。映画を観られる残りの数。好物を食べられる残りの数。大切な人に会える残りの数……
    きっと数えてみると、それは想像しているよりずっとずっと少ないんだと思う。いつでもできると思い込んで、大切な、本当に大切な人や物を、僕はずっとほったらかしにしてきたんじゃないかなって怖くなった"



    「どうせまた会える、またできる、また行ける」

    その"また"には何の保証もないこと。
    分かってるのになぁ、それが出来ないのが人の性なのかもしれない。。。
    両親にありがとうを言うこと、友達に会いにいくこと、恋人に想いを伝えること
    気づいた時に行動すること。当たり前の存在に想いを馳せ気づく、感謝する癖をつけよう




    "あなたのおかげで、この世界がかけがえのないモノでできているのを知ることができた。そして、それらかけがえのないモノたちが、僕という人間を形作っているんだってことも知ることができた。
    確かに、死ぬのは怖いです。だけど……僕は自分の寿命を知らされ、それをちゃんと受け入れて死ねる。これって、ちょっぴり幸せなことじゃないかと思うんです"


    素晴らしいと思います。
    最後に『ありがとう』で終わる人生を送りたいと、そう思いました。




    "もし、この世界から猫が消えたなら、世界はどう変わるのでしょうか。
    そして、世界から僕が消えたなら。
    叶えられなかった夢や想い、生きている間にできなかったこと、やり残したこと、後悔がきっとたくさん残るのでしょう。
    けれど、僕がいた世界と、僕がいなくなった世界は、きっとちがうはずだと僕は信じたいのです。本当に小さな、小さなちがいかもしれないけど、でも、それこそが僕が生きた証だと思うのです。もがいて、苦しんで、時々喜びながら、途切れずに生きてきた証。
    それを知っていてくれる人がどこかにいるというだけでいい。ここではないどこか自分ではない人生じゃなく、今生きているこの世界で、僕という人間として、生きてきたことを良かったと思えるのです"



    最後のこの言葉と場面には、涙が止まりませんでした。


    よく、「自分やあの人がいなくなったって世界は何も変わらず今日も回ってる」なんて悲観的な言葉を目にしますが、それは世界を「たった一つの客観的なもの」と見た時の感想なんだと思います。

    でも厳密には、この世に生きる一人ひとりに、いや人間だけじゃなく全てのあらゆる生き物に、一つひとつの世界があって、その世界が変わるんだと思います。

    あの人にとってはこの人の喪失は無関係なのは仕方がないこと。それを嘆くのではなく、自分の世界の中で全て捉えて良いんだと思います。だって人それぞれにそれぞれの世界があって、それぞれの日常が、感情があるのだから。

    だからこそ、もし自分がいなくなった時に誰かが悲しんでくれること、誰かのその世界の中で何かが動くこと、揺さぶられること、『ありがとう』を伝えられる人がいること、逆に『ありがとう』を伝えてくれる人がいること


    そんな人生を送りたいなぁと、心からそう思わせてくれる本でした。



    最後に。


    「世界から本が消えたなら」




    想像もできないなあ。
    でも一つ言えることがある。


    「僕の人生と出逢ってくれて、心からありがとう」

  • 世界から猫が消えたならのキャベツバージョン!
    ご主人様の苦しみを客観的に見た本。
    自分自身のこととして捉えるのとは違う悲しさがあって涙

  • 余命わずかと宣告されたご主人さまは、自分と同じ姿をした悪魔と取引をした。「この世界からモノを一つ消す。そのかわりに、キミの命を一日ぶんだけ延ばす」と。電話、映画、時計…。モノが消えていくたびに、ご主人さまと結びついていた人の記憶までが失われていくようだ。そして悪魔は、世界から猫を消すと提案する。ボクのことなんて消してしまってもいいんだよ、ご主人さま…。最後に、飼い主が選択した決断とは!?
    百万部突破!感涙のベストセラー原作の映画『世界から猫が消えたなら』を、主人公の飼い猫であるキャベツの視点で描いた、感動の物語。

  • 何かを得る為には、何かを失わなくてはならい。
    僕と猫と陽気な悪魔の忘れられない7日間の物語…。

    脳に悪性腫瘍がみつかり、余命僅かと宣告されたご主人様は、
    自分と同じ姿をした悪魔と取引をした。
    「この世界からモノを一つ消す。そのかわりに、キミの命を一日ぶんだけ延ばす」と。
    電話・映画・時計…。モノが消えて行く度にご主人さまと結びついていた人の
    記憶までが失われて行くようだ。
    そして悪魔は、世界から猫を消すと提案する…。

    主人公は猫のキャベツ。
    キャベツは飼い猫でご主人様がいる。
    ご主人様が悪魔と取引をし、キャベツは悪魔と会話が出来る。
    キャベツの視点で描かれているので、猫が話せたらこんな風に思っているのかなぁと、
    思えて猫が大好きな私には楽しかったし、面白かった。
    最初の、猫は猫であり自分の住みかと食事に人間を利用している。
    人間に飼われている猫などいない。
    猫の方が、人間のそばにいてやっているだけなのだって思ってるキャベツ。
    うん、そうかも~って、微笑ましかった。
    しかし、このお話はとっても深かった。
    自分って何なのか…生きるって…存在するって…。
    電話・映画・時計…モノがなくなるだけでなく、モノの関わった思い出や感情
    関わる何もかもが無かった事になる。全てがリセットされて消えてしまう。
    とっても、とっても残酷だ。
    一方通行の想い出は想い出じゃない。
    誰かと共有できない想い出には、何の意味もない…。
    ご主人様と同様にキャベツも深く考える様になっていく姿も良かった。

    生きる上で、大切なものって何だろうって深く考えさせられた。
    当たり前に毎日が続いていくって、思っているとつい見失ったり、
    忘れてしまったりするけれど、本当に自分の大切なものが何かって気付かせてくれた。
    色々な人や物と繋がりそして自分の世界ができている。
    今を大切に、大切だと思う人を大切に。
    改めて、自分に人生に役立てながら自分らしく生きていけたら良いなぁっ思った。
    軽いタッチで描かれていますが、とっても心に響く言葉か沢山ありました。
    やはり、所々ウルッとしたし、最後の父への手紙には涙が零れました。
    原作の「世界から猫がきえたなら」も読みたい!映画も観たい!

  • 原作と続けて読みました。

    猫目線のお話。
    わたしも犬を飼っているからこんな風に思ってくれてるのかなって考えながら読んだらクスッと笑えるシーンがあったり、ジーンと感動するシーンがあったりと、原作と同じくらい好きになりました。

    ご主人様が大好きで、ご主人様のために生きてくれるキャベツ君がとっても愛おしいです。

  • 原作を、表紙の猫に惹かれて何年も前に読んでおり、今になっての映画化ということで、その波に乗って登場したのですよね、この作品は多分。
    人に薦められなかったら原作の文庫本だと思ってスルーしていました。あ、キャベツ側からの話なのねって言われるまで表紙見ても気づきませんでした。

    どなたかも書かれてましたが、私も当初キャベツの語り口調、悪魔の語り口調、馴染めなくて若干もやもやしました。
    でも読み終わってみたら、何だろう。
    何年も前に読んだ原作よりも「いい」と思ってしまいました。もちろん原作読んだ上でのキャベツ側からのストーリーということでいいと思えるのだと思うのですが、それでも単純に「こっちのストーリーテラーのがいい」と思ってしまった。
    読み手である自分が、原作を読んだ時よりも多くの人を喪ってきたせいか、それともこちらの著者である涌井学さんの文章力のせいかもしれません。

    「ご主人様」とその大切なものとの関わりや繋がりがせつない。もちろんキャベツとの繋がりとキャベツを拾ってきた父さんや母さんとの関わりも。
    「海の上のピアニスト」私のこれまで観た中のナンバーワン映画です。死ぬ前に観るなら自分なら「海の上のピアニスト」です。その映画が登場したこともじんと滲みたポイントの大きな一つ。

  • ◾️record memo

    いつも不思議に思うんだ。どうして人間は、自分で勝手に決めたきまりごとにしばられて、それを「苦しい」とか「辛い」とか言ってるんだろうって。

    健全でつつがない人生を送るためには、これらたくさんの“自分で勝手につくったきまり”を守らなきゃいけない。挙げ句それを「ストレスだ」とか言ってる。

    だったら守らなきゃいいじゃないかと思う。会社に行くのなんてやめて、好きなものを好きなときに食べて、好きなときに好きな人に会いにいけばいい。人間はなぜか、「そんなことできない」と思い込んでいる。すぐ身近に猫という実践者がいるというのに、まるでそれが見えていないみたいだ。

    だけど人間は変な生き物でさー。人間って、生まれ持った“自分”がないんだよ。まわりのいろんなものをくっつけて一つにまとめて、ようやく“自分”を作り上げてるみたいなんだよね。


    猫は人間とちがって、まだ子猫のうちから自立し、独立した生活を営むものだ。だからボクは、ボクの母猫と暮らしていたという人間が、ボクとその兄弟四匹をそれぞれダンボールに入れて、「もらってください」と書かれた紙切れ一枚といっしょに路地裏に放置したことを恨んでいない。居場所は自分で勝ち取るものだと母猫に教わったし。

  • 本編より好きかもしれない。

  • 当時中学生、学校で泣きそうになったのを覚えています( ˊᵕˋ ;)
    帰って涙ダラダラで改めて読み返しました。

  • キャベツの視点から描かれていて、前作では描かれなかった場面から切なく感じることがたくさんあって泣けた。「人や物、世界とのつながりそのものが、「自分」なのだ」この世界に溢れるかげかえのないものに感謝して生きようと考えさせられた。

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