こんなにも優しい、世界の終わりかた (小学館文庫 い 6-4)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094062908

作品紹介・あらすじ

世界が終わるなら、誰に想いを伝えますか?

いまさらながらに、みんなようやく気付いたのかもしれない――もとより、ぼくらに残された時間なんてそんなになかったってことに。

突然、世界は鉛色の厚い雲に覆われた。
雲間から差す青い光が注がれた町は、ひとも獣も、鳥も木も、土も水も、すべてが動きを止めてしまう。誰にも理由はわからない。あっという間に世界は冷えて、どこもかしこもが冬のようになった。
そして凍った町は少しずつ成長していた。
「ぼく」は「彼女」に会いに行くと約束した。最後に電話で話したとき、彼女はとてもおびえていた。
「もう、町には誰もいないの。」ぼくは、ならば「ぼくがそこに行くよ。そうすればもう怖くないよね?」と言った。
これを最後に電話はまったく通じなくなった。むしろこのとき繋がったことのほうが奇跡に近かったのかもしれない。
彼女の住む町まで直線距離で500キロ。
青い光を逃れ、ぼくは彼女に会うことができるだろうか。
彼女はそれまで、青い光に染まらずにいられるだろうか。

『いま、会いにゆきます』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『そのときは彼によろしく』と、累計250万部を超えるベストセラーを連発した著者による、3.11以降究極のラブストーリー。
恋人、家族、友人など、たくさんの愛が描かれた最高の愛の物語です。

【編集担当からのおすすめ情報】
市川拓司さんご本人による本書紹介動画や、ご本人直筆の、本書シーンのイラストギャラリーが掲載された特別サイトが開設されています。小説をお読みいただくと同時に、小説世界のイメージもぜひお楽しみください。

http://www.shogakukan.co.jp/pr/takuji-gallery

感想・レビュー・書評

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  • 解説にある、にごりのない小説、まさにその通り。
    終末ものなのに、悪い人は誰ひとりいない。皆が優しくって、優しい気持ちのまま凍りついている。
    吉沢優くんと白河雪乃さんの見てるのがもどかしい愛。優くんのお父さんとお母さんの愛。親子の愛。
    少しだけ希望の持てる終わり方をしてくれて良かった。

  • 世界は確かに終わりに向かってるのに、感じるのは人の優しさ、愛情だけで、とても澄んだきれいなお話。

    「人生が一冊の本だとしたら、できることならそのすべてを愛の言葉で埋めてしまいたい。」
    という文中の言葉が大好きです。

  • なんて哀しくも美しい物語だろうと思った。
    自分はここまでの状況に追い込まれたことはないが、どんなに難しい境遇に陥ろうと、真実の愛があれば人間はこんなに強くなるものなのだろうか。
    主人公の男女は奥手で内気、読んでいて歯がゆく思うこともあるが、それゆえに読者の心を打つような、美しい愛を奏でられるのではないだろうかとも思う。

  • 世界が終わるなら、誰に想いを伝えますか?

    いまさらながらに、みんなようやく気付いたのかもしれない――もとより、ぼくらに残された時間なんてそんなになかったってことに。

    突然、世界は鉛色の厚い雲に覆われた。
    雲間から差す青い光が注がれた町は、ひとも獣も、鳥も木も、土も水も、すべてが動きを止めてしまう。誰にも理由はわからない。あっという間に世界は冷えて、どこもかしこもが冬のようになった。
    そして凍った町は少しずつ成長していた。
    「ぼく」は「彼女」に会いに行くと約束した。最後に電話で話したとき、彼女はとてもおびえていた。
    「もう、町には誰もいないの。」ぼくは、ならば「ぼくがそこに行くよ。そうすればもう怖くないよね?」と言った。
    これを最後に電話はまったく通じなくなった。むしろこのとき繋がったことのほうが奇跡に近かったのかもしれない。
    彼女の住む町まで直線距離で500キロ。
    青い光を逃れ、ぼくは彼女に会うことができるだろうか。

  • 初めは何を言おうとしてるのか、何を語ろうとしてるのかわからない内容だった。
    読み進めて行くうちに、自分の生き方、今までの人生、恋、愛、人間関係といったものを世界の終わりを通して改めて考え、その上で主人公がどう変わっていくか、何に価値を置くかが徐々にわかってくる。それを自分に置き換えて考えるととても深い内容だなと感じる。

  • こんなにも優しくて、美しくて、少し悲しく幸せな物語があるだろうか。
    世界が終わるとしたら、こうなふうに、静かに美しく優しく、終わっていくのかもしれない。

    エヴァンゲリオンのクラシックを聴きながら読んでいたが、世界観に実によく合う。パッヘルベルのカノンとジーク、バッハのチェロ組曲第一番プレリュード、バッハのG線上のアリア、主よ、人の望みの喜びよ。
    ここらあたりがとても世界観によく合う。むしろ世界観そのままである。

    この世界はあまりにも美しすぎて、登場する全ての人物にも一切の不純物がない、穢れが無さすぎる。SFだから現実味を求めなくて良いところにこのできすぎなくらいの美しい世界が成り立っている。

    教会で聴くようなうっとりするほど綺麗な、世界の調和を知らせる音楽。壊れたパイプオルガンのような、世界の終わりを知らせる音楽。洋幸くんの不思議な夢の中の世界観がすごく好きだ。

    瑞木さんの言葉。「小説はいわばよく出来た嘘なのさ」「だが、注意深く読んでいくとその嘘の中にこそ真実が隠されているんだってことに気付くんだ。」「たっぷりケツが痛くなるまで机に向かってお勉強してきたことの上澄みを、おれはこんなふうに寝っ転がりながらいただくってわけさ。お手軽すぎて申し訳ないくらいだよ」
    このスタイルで本と付き合っていくのはとても良いな、と思った。覚えておきたいのでリマインド。

    吉沢くんと白河さんが再会してから、街を歩きながら至るところでかつての3人を見かけたり、言葉にはしなくてもいつもそばにはもうひとりの「うん、ちっとも優しくない。」と返す洋幸くんがいた。心があったかくなる。

    瑞木さんが望まれた形でなくとも彼女と再会し、涙でぐしょぐしょになった顔で初めて愛を告白した初な若者のように少しだけはにかんで最後を迎えたのは、少し寂しく悲しくもありながらなんとも幸せで微笑ましい終わり方だろうかと思った。

    瑞木さんとの別れ、父との別れ、白河さんの母との別れ、たくさんのお別れがある。
    父との別れは思わず泣いてしまう。

    最後は静かに穏やかに幸せに包まれて、美しさに泣いてしまいそうなくらいの感動と共に終わる。
    こんなに美しい物語があるだろうか。

    図書館でたまたま手に取った本だが思いがけない素晴らしい出会いだった。近々、この本を購入してずっと傍において置こう。
    そう思える素敵な物語だった。

  • ベッタリと雲に覆われた空、そこから降り注ぐ青い光。
    世界は凍りついていく。気紛れに、けれど確実に。
    この物語に登場する主な人達は、優しい人だ。つましく、奢らず、謙虚で、親切で、互いを認め合う。世界が終わりを迎え始める前から、みんな優しかった。そして、優しくない世界に「優しくないね」と言っていた。
    世界が終わりを迎えると知って、主人公のテレビの向こうにいたあの大人達はどうしたのだろうと読み終わって思った。欲のために誰かを利用することも罵ることもやめて、愛する誰かのもとへ駆け出したのだろうか。せっせと溜め込んだお金も、地位も名誉も捨てて、満ち足りた気持ちで終わりを迎えられたのだろうか。いつか交わした約束は、果たされたのだろうか。
    そうだったらいい。怯えながら迎える終わりなんて、そんなの悲しいし、優しくない。
    ひとまずは、私にも訪れるかもしれない世界の終わりに備えて、優しい欠片を集めたい。きっとそこらじゅうにあるはずなのだ。家族も、友人も、優しい人たちだから、きっとたくさん散りばめているはず。優しい欠片をありがとうを言いながら拾い集めたら、私も少しは優しくなれるだろうか。世界の終わりに、会いたいと思ってもらえるような誰かに。


  • 世界に降り注ぐ青い光。その光に照らされた者はそのまま固まり動かなくなる。青い光はどんどん広がり、世界はゆっくりと終わっていく。世界が終わる前に君に会いたい、その思いで旅に出る優。旅先で会うたくさんの人たちの優しさと彼らの終わり。市川拓司作品特有の、不器用で世界と馴染めない男性と、彼を理解する素晴らしい女性との純愛、そして主人公を暖かく見守る優しいお父さんに涙が出た。

  • にごりが少ない小説、にごりが少ない主人公。
    少しファンタジックな市川拓司の作風が出ている作品だと思った。
    今世界が終わってもいいように、後悔なきように走らなければならない。

  • 世界がまさに終わろうとしてる時、
    誰もがやっと本当の愛と幸せに気付いて、
    ただそれを全うするために力を尽くす。
    純度が高くて少しの濁りもなかった。
    登場人物 全員 愛おしい。
    個人的には父親の、亡くなった妻と主人公への愛の形が、台詞の全てがとても好き
    好きな小説でもかなり上位作品

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。獨協大学卒業。'97年からインターネット上で小説を発表。2002年1月、「Separation」で出版デビュー、いきなり同作がTVドラマ化される。次作「いま、会いにゆきます」は映画化され、100万部を超えるベストセラーに。他の著書に「恋愛寫眞――もうひとつの物語」「そのときは彼によろしく」「弘海――息子が海に還る朝」「世界中が雨だったら」がある。

「2009年 『きみはぼくの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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