胡蝶殺し (小学館文庫 こ 5-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094063158

作品紹介・あらすじ

歌舞伎子役と親同士を巡る、心理サスペンス

市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。花田屋の中村竜胆の急逝に伴い、その息子、秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演「重の井子別れ」で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫(しらべひめ)役を俊介にやらせることにする。しかし、初日前日に秋司のおたふく風邪が発覚。急遽、三吉を俊介にやらせることに。そこから、秋司とその母親・由香利と、萩太郎の関係がこじれていく。そしてさらなる悲劇が……。サクリファイスシリーズから、ビストロ・パ・マルシリーズまで、幅広いジャンルで傑作ミステリーを発表しつづける著者が、長年あたためてきた作品がいよいよ文庫に。歌舞伎に詳しくなくても存分にスリルと感動を味わえる。

感想・レビュー・書評

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  • 梨園が舞台のミステリー。さりげない説明も交え、歌舞伎に詳しくなくても澱みなく読み進められます。さすが近藤史恵先生。「今度、博多座に行ってみようかな」と実際の舞台にまで興味が喚起されます。

    本編については、作者自身のあとがきのとおり。

    「子役を描くからには、才能を描きたかったが、だが才能と努力の二項対立などにはしたくなかった。少しだけでも、読んでくださる方の期待を、心地よく裏切ることができれば作家冥利に尽きる。」

    はい、心地よく裏切られました。とっても面白かったです。

  • 真っ先に思ったのは、ドラマ化して欲しいだった。

    ガチの歌舞伎役者達で…。

  • 近藤史恵氏の歌舞伎もの。ただ今泉文吾シリーズのような殺人は起きない、と言うか、はっきりとミステリ的な事件も起こることはない。奇妙な因縁で、急に息子が二人になったような主人公の困惑と覚悟を、歌舞伎という特殊な世界を背景に描かれると思えばいい。作者の後書きによると子役を描きたかったのだそうだ。実際の歌舞伎を見ても、正直良くわからないのだが、物語の背景としてはやっぱり面白いねえ。

  • 図書館で。ミステリーというよりは小説かなぁ。
    自分もこの数年、歌舞伎を観るようになり俄ではありますが多少は演者の名前や演目も覚えるようになりました。というわけで大分楽しく読みました。まだまだ見たことない作品が多いなぁ。

    それにしても梨園の世界は入り組んでいる。特に親戚・姻戚関係がむっずかしい。襲名すると父の名を継ぐから何代目かってのが又難しい。でもそうやって受け継がれてきた世界なんだよなぁというのはなんとなくしみじみ思うわけです。

    若いころに後ろ盾を失くした御曹司…今も昔もよくある話なんだろうなぁ… そして上手い人よりはそれなりに名のある人や縁の人がお役を勤める事が多いから…大変だろうな。個人的には歌舞伎座こけら落としの時のような、劇団や部屋を越えて共演してくれたらいいのになぁなんて素人は思ったりもします。ただそうすると一座の人の出番が無くなっちゃうからそれはそれで難しいのかなぁ~

  • 剣呑そうなタイトルとは違って、歌舞伎役者である父を亡くした子役の後見となる別の歌舞伎役者の人生が静かに進行していく内容であった。毒親は毒親だけど同情も無くはないな。

  • 歌舞伎の家・芸に興味があり、芸道小説に目がない自分には、うってつけの小説。父を亡くし歌舞伎界の天才孤児秋司、彼の後見人となった女形荻太郎、その明るく屈託のないボンボンの少年俊介。荻太郎は息子のみならず秋司の才能に目をかけるが、秋司は歌舞伎界から失踪し、10年がたって・・。芸に対する厳しい目、親子の情などを丁寧に書き、吸い込まれるように読んだ。そして、子の親に対する思いが判明するラストシーンには落涙。彼らのその後が猛烈に読みたい。この作者の「サクリファイス」がそうであったように、続編を期待する。

  • 歌舞伎役者・市川萩太郎は、急逝した先輩役者の息子、7才の少年の後見人を任される。
    後見人と言っても世間一般のそれとは違い、名ばかりではなく、実際に歌舞伎役者として育て上げることも意味する。
    萩太郎には、少年と同じ学年の息子がいた。

    梨園という特殊な世界では、伝統芸能を後世に伝えていくために、男子は生まれた時から、役者として生きることを運命づけられ、幼児の頃から、必要な稽古をみっちり仕込まれる。
    学校よりも家業が優先されるという、これも今時特殊である。
    そこに生まれた男子に、芸能の才が無かったら?
    向いていなかったら?

    実の息子と、託された「義理の息子」を抱え、萩太郎はさまざまに悩むこととなる。
    子育てが父親の視点で描かれるのは、現代物では珍しいだろう。
    一般的な父親は、子育ては妻に任せきりだから。

    義理の息子には、天才的な踊りの才と共に、子供を守りたい一心の病的なまでに神経質でヒステリックな母親という疫病神が付いて来る。
    彼女の浅はかな行動が問題を起こす。

    萩太郎の誠実な性格、少年たちに注ぐ真摯な視線が、ドロドロになりそうなストーリーを浄化している気がする。
    やはり、近藤さんの伝統芸能物は好きだ。
    少年たちの今後も見たい。

  • 読みやすく、わかりやすい内容で面白く読みました。子供どうしの確執などがない分、ストーリーの面白さに集中できました。

  • 市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。先輩にあたる中村竜胆の急逝に伴い、その幼い息子・秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演『重の井子別れ』で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫役を俊介にやらせることにする。しかし、初日前日に秋司にトラブルが。急遽、三吉を俊介にやらせることに。そこから、秋司とその母親・由香利と、萩太郎の関係がこじれていく。そしてさらなる悲劇が……。幅広いジャンルで傑作ミステリーを発表しつづける著者が、子役と親の心の内を描く白熱心理サスペンス!
    (2014年)

  • 殺人事件の話かと思ったけど、誰も死ななかった。
    拍子抜けでも期待はずれでもなく、いい意味で裏切られた気持ちだ。
    いい終わり方だった。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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