ガラパゴス (上) (小学館文庫 あ 16-6)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094065329

作品紹介・あらすじ

大ベストセラー『震える牛』ふたたび!

警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、メモ魔の窓際刑事。同期の木幡祐司に依頼され、身元不明相談室に所蔵されている死者のリストに目を通すうち、自殺として処理された案件を他殺と看破する。不明者リスト902の男の発見現場である都内竹の塚の団地を訪れた田川と木幡は、室内の浴槽と受け皿のわずかな隙間から『新城 も』『780816』と書かれたメモを発見する。田川が行った入念な聞き込みにより者不明者リスト902の男は沖縄県宮古島出身の派遣労働者・仲野定文と判明した。田川は、仲野の遺骨を届け、犯人逮捕の手掛かりを得るため、宮古島に飛ぶ。仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた……。
現代の生き地獄を暴露する危険きわまりない長編ミステリー!


【編集担当からのおすすめ情報】
聞こえるか。人間の壊れてゆく音が。
古い団地の一室で、自殺に偽装して殺害された心優しき青年。
彼は、遠く故郷を離れ、日本中を転々とする派遣労働者だった。
大企業にとって、非正規労働者は
部品と同じである。

感想・レビュー・書評

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  • 1 この相場氏の著書は、震える牛(食品偽装問題がテーマ)に続く作品です。ガラパゴスとは、南米エクアドルの沖合にある島々です。題名のガラパゴスは、日本の製造業が国際標準からかけ離れ、競争力を失っている状態を揶揄した言葉です。
    2 相場氏は、「デフォルト」でダイヤモンド経済小説大賞を受賞。その後の「震える牛」は、ベストセラーになりました。
    本書は、主人公の田川刑事が活躍するサスペンス小説です。勿論、警察小説として、迫力があります。また、派遣労働者と正社員との処遇格差を赤裸々に訴えた労働問題小説の一面もあります。
    この「ガラパゴス上」は、田川刑事が、派遣労働者の自殺事件を他殺と判断し、被害者の特定と周辺を洗い出していく物語です。
    3 私が、書中で心に留めた事を私見を加えて、3点書きます。
    (1)「他社の幹部達は、社員は家族などと甘い考えを平気で垂れ流していたが、松崎(トクダモーターズ社長)は、こうした情緒的な気分を社内から徹底的に排除する事に努めた」 ●私見⇒過去に欧米の人事がもてはやされ、信賞必罰の成果主義を取り入れた企業が多々ありました。結果は失敗したケースが多く、家族主義的雇用制度に戻したそうです。日本の風土(年功序列等)を充分考えた対応が必要です。関係者の意見をよく聞いて、時間をかけるテーマです。
    (2)「従業員の個人的な時間や性格などは、はなから経営陣の眼中にはありません。洗脳して、ロボットにしてしまえば、後は企業の好き放題です」 ●私見⇒こんなに極端かつ資質に欠ける経営者がいるとは思えません。経営陣のレベルの低さは救い様がありません。熟慮して、退職した方がよいかも?
    (3)「我々(請負・派遣労働者)は部品や備品と同じ扱いで、外注加工費としてカウントされている。我々は部品以下の扱いでした。正社員に、“お前はクズだ、ゴミだ”と罵倒され、耐えてきました」 ●私見⇒迫真を狙った、やや誇張表現です。私が勤めた会社にも、非正規社員が多くいました。職場での差別的な扱いはありませんでした。処遇差はあったと思います。しかし、社員登用制度があり、正社員になった人も多いいました。
    4 まとめ:
    ガラパゴス上では、警察小説として、自殺を他殺と断定し、犯人を追い込んでいきます。そのプロセスの中で、日本社会の暗部を掘り起こし、読者に問題提起します。
    日本企業の発展の背後には、労働環境の二重構造(正社員✖️非正規社員)があります。私達は、よくスポーツなどで、“勝ち組、負け組”と口にする時があります。しかし、生活面では、区別の無い社会が良いですね‼️

  • Amazonオーディブルで聴いた。
    半分くらい過ぎてやっと面白くなってきた。
    初めは話が動かなくてちょっと苦痛だった。

    派遣社員の過酷さにずっと顔をしかめつつ聴いてた。

    でも捜査一課のベテラン捜査官が派遣や偽装請負、自動車の燃費の嘘等について、こんなに知らないわけないと思うんだけど(^_^;)
    警察小説というより啓蒙小説だねぇ。

  • 織田裕二主演でドラマ化されており、なかなかテンポ良く面白かったため、原作も読んでみた。
    ドラマと原作とでは、ずいぶんと内容は異なるものの、それぞれのよさがあった。
    本作は、現代版蟹工船。派遣労働者とは、正社員とは、現代社会をテーマにしており、今の世の中に対するアンチテーゼのような内容に、考えさせられる作品。
    上下巻で大変ボリューミーな圧巻の作品である。

  • 「震える牛」に続く田川刑事のシリーズもので「ガラケー、分厚いメモ帳、切り出しナイフで削った鉛筆」の3点セットは彼のトレードマーク。このアナログ環境があるからこそ解決にこぎつけられる、と確信できるほど威力のある素材だ。自殺として処理された人物が実は他殺だったことを見抜いた田川が、非正規従業員の雇用問題に切り込むと同時に、大企業のコストカットの実態に迫る。

    上巻では自動車会社社長、派遣会社の社長、そしてさまざまな機関と関係を持つ鳥居刑事が登場するが、まだどんな関連があるのかがはっきりとはわからない。ただこの3名、グレーゾーンにいることは確か。

    事件解決にこぎつける過程に、捜査だけでなく田川の日常生活にもヒントが隠されているところに、ドラマ性を感じる。奥さんが運転する車や、たまたま近所で知り合った派遣従業員だった工藤という男性の言葉などだ。前途多難のようだが、なぜか人情厚い田川ならきっと解決してくれるだろう、という安心感がある。下巻に期待!

  • 相場英雄『ガラパゴス 上』小学館文庫。

    あの社会派ミステリーの傑作『震える牛』に続く、シリーズ第2作。

    今回、取り上げられるテーマは『雇用』である。タイトルの『ガラパゴス』と『雇用』とがどう結び付いていくのか、この先が興味深い。また、埋もれた他殺事件の背後に見え隠れする大企業と急成長した人材派遣企業、悪徳刑事の姿……こちらはさらに気になる。

    切れ者であるが故に窓際に追いやられた警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は同期の木幡祐司の依頼で不明者リストに目を通すうちに自殺処理した案件が他殺だと看破する……

    作中に登場する自動車メーカーや電機メーカーはあそこだろうなと容易に連想出来る。今や多くのメーカーは固定費である社員を極限まで削り、変動費という形で派遣や請負社員を雇うことで生産や利益の調整を行っている。企業存続のために海外企業に事業を売却したり、工場閉鎖を行うメーカーも多い。もはや労働者にとって雇用はおろか最低限の生活が出来る保証はなくなったのだ。政府が失業率を下げるという数字だけの馬鹿なまやかしを行った結果なのだろう。

  • 自殺だと思われていた事件が本当は隠蔽工作の為の殺人だった。
    少しずつ真相が暴かれて行く。
    続きが楽しみですね。

  • 大ベストセラー
    メモ魔の窓際刑事のミステリー感が面白い。

  • 震える牛があまりにも面白かったため、続けて拝読。
    テーマは派遣労働者とエコカー問題。
    派遣労働者を物として扱う企業の姿勢を強調しており、少し過激な内容。
    「人間は置かれた環境と歳月で激変する」
    同感。

  • 派遣労働者の現実に驚愕するばかり

  • とある事件からストーリーが企業の人材派遣労働者への非人道的な問題へと発展。
    刑事ものかとおもいきや、前作「震える牛」を彷彿とさせる。
    後篇の展開に期待!

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著者プロフィール

1967年、新潟県生まれ。専門学校卒業後、時事通信社へ。経済部記者を務める。2005年『デフォルト 債務不履行』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー。『震える牛』がベストセラーに。『血の轍』『ガラパゴス(上・下)』『不発弾』『トップリーグ』他、映像化作品多数。主な著書に『ファンクション7』『偽金 フェイクマネー』『復讐の血』『共震』『アンダークラス』『Exit イグジット』『レッドネック』『マンモスの抜け殻』『覇王の轍』がある。

「2023年 『心眼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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