小説王 (小学館文庫 は 18-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094065886

作品紹介・あらすじ

小説をめぐる熱きドラマ、ついに文庫化

大手出版社の文芸編集者・俊太郎と、華々しいデビューを飾ったものの鳴かず飛ばずの作家・豊隆は幼馴染みだった。いつか仕事を。そう約束していたが、編集長の交代で、企画すら具体的にならないまま時間だけが過ぎていく。やがて、俊太郎の所属する文芸誌は、社の経営状態から存続を危ぶまれ、豊隆は生活すら危うい状況に追い込まれる。そんな逆境の最中、三流編集者と売れない作家が、出版界にしかけた壮大なケンカの行方は!?
小説の役割は終わったのか? 物語に生かされたことはあるか? 単行本刊行時、作家・編集者・書店員の方々など業界の内外をざわつかせた問題作が、ついに文庫化。 『イノセント・デイズ』で大注目の作家が放つ、小説をめぐる、男たちの熱きドラマ!!

【編集担当からのおすすめ情報】
解説は、作家の森絵都さんです!!

感想・レビュー・書評

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  • ⚫︎感想
    久しぶりのエンタメ小説。青春、友情、仕事への真摯な思い、子育て、恋愛・・・編集者と作家の熱い仕事ぶりが垣間見れて最後まで面白く読めた。特に女性たちのキャラクターが際立っていて、それぞれ魅力的だったのが良かった。
    森絵都さんが解説をされていて、この物語が生まれたエピソードを知ることができた。森絵都さんの本も読みたくなった。

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)

    本の概要
    小説をめぐる熱き物語、ドラマ化!

    大手出版社の文芸編集者・俊太郎と、華々しいデビューを飾ったものの鳴かず飛ばずの作家・豊隆は幼馴染みだった。いつか仕事を。そう約束していたが、編集長の交代で、企画すら具体的にならないまま時間だけが過ぎていく。やがて、俊太郎の所属する文芸誌は、社の経営状態から存続を危ぶまれ、豊隆は生活すら危うい状況に追い込まれる。そんな逆境の最中、三流編集者と売れない作家が、出版界にしかけた壮大なケンカの行方は!?
    小説の役割は終わったのか? 物語に生かされたことはあるか? 単行本刊行時、作家・編集者・書店員の方々など業界の内外をざわつかせた問題作が、ついに文庫化。 『イノセント・デイズ』で大注目の作家が放つ、小説をめぐる、男たちの熱きドラマ!!

    【編集担当からのおすすめ情報】
    解説は、作家の森絵都さんです!!

  • レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。

    前半は、小学校の同級生だった編集者の小柳俊太郎と小説家の吉田豊隆が、二人でなんとか豊隆の小説を連載に持ち込もうと奮闘する過程で、はっきり言って少し前の青春ぽくて、退屈気味でした。
    しかし、中盤で、豊隆が文壇バーのホステスだった晴子と結婚し、豊隆の小説『エピローグ』が完成したあたりから、物語は、さまざまな展開をみせて面白くなりました。

    そしておそらく小説好きな方なら頷けるような名言、名場面がたくさん盛り込まれています。
    俊太郎の中学生の息子の悠(しずか)も小説を書き始めているし、豊隆の元カノで女優の大賀綾乃も、豊隆の小説『エピローグ』の映画の主演が決定して、大活躍します。

    私は、好きな作家の方に単行本についているアンケートはがきに「○○さんの小説で、世の中を変えてください」と書いて送ったことがあります。
    世の中を変えるのは小説ではなく、政治かもしれないけれど、小説の歴史をたどると、小説にもそういう力が絶対にあると思います



    以下ネタバレですが、心に残った登場人物のセリフ。
    「いい小説とは何か。『すごい小説』という評価に優る物はきっとない」
    「小説って何なの?誰が読んでるの?」
    「小説なんて誰のものでもないからな。読んでくれる人だけのものだ」
    「だとしたら俺たちは盛大に失敗しているよ。世界は1ミリも動いてないぞ。革命はいまのところ失敗だ」
    「自分たちの書くもので世界をひっくり反すんだって。これはペンによる革命だって」
    「確証があるわけじゃないけど、物語が必要とされる時代はきっと戻ってくるはずだから。つまりいまある物語が通用しなくなる時代ってことだ。終戦直後のように、みんなが共有していた指標を一気に失うとき」
    「じゃあ、どうして書いたの?」「誰かが必要としてる気がしたから」

  • 中盤から一気に読み進めてしまった。普通の状況で聞いたら何とも思わない言葉の数々が、この本の中ではとても輝いており、魅力的にみえます。
    私はいつも心に残った言葉を都度フレーズ登録しているのですが、この本に出てくるフレーズでそれをやろうとすると切り取った瞬間、魅力がなくなってしまう。小説から切り離すと駄目な言葉ばかりでした。
    フレーズが格好良くて面白く、心に残る小説に巡り合うことも貴重ですが、このようなタイプの本には更に巡り会うことは少ないので嬉しい読書体験でした。

  • 何度も心をズキズキさせられ、涙を滲まされ、涙をこぼさせた。
    出版、文芸の時代的な厳しさが背景ではあるものの、仕事への向き合い方、人との向き合い方、人生…様々考えさせられた。

    2020年がキーワードの一つになっているけれど、この本が書かれた頃には、誰も予測しなかった2020年が過ぎ去った現在、確かに物語は必要かもしれない。

    『カラマーゾフの兄弟』読んでみよう。『エピローグ』が読めないのは残念だが。

  • 著者の作品を読んだのはこれで5冊目かな。私の中では今のところ『イノセント・デイズ』を超える作品には出会えていない。なかなかの熱量で物語の中に引き込んでくれるのだが、男性目線のご都合主義がちょっとね...。
    「言っとくけど小説なんて誰のものでもないからな。書いた人間のものでもなし、ましてや編集者のものでもない。読んでくれる人だけのものだ。」

  •  小説家が書く小説家の物語。出版不況の現状と、暑苦しくもロマンあふれる創作の現場を描く本書は、小説好きを語る以上は避けて通れない一冊ではないかと。

     小説を書く人、作る人、売る人、読む人。
     その最後にいる私はプロの書評家でもなく、ただ単に本が好きで気の向くままに読みたい本を読み、気軽に感想を書いたりしている一読者ですが、この小説を読んで、小説というのは途方もない忍耐とロマンの塊なのかもしれないと思いました。

     主人公は、10年前に文学賞を受賞して以来鳴かず飛ばずの作家 豊隆と、その幼馴染で文芸編集者の俊太郎。出版不況が叫ばれる中、十数年ぶりに再会したふたりは、日本の文芸界を変える一冊を目指して二人三脚で奮闘していく。

     小説家が小説家を描くというテーマは斬新なものの、ストーリー自体は比較的単調で、主人公の二人が一冊の小説を通して成長する過程やその結末も、そこまで新鮮味のあるものではなかった、というのが正直な感想です。
     ただきっとこの本は、作家や編集者だけでなく、文芸に携わる全ての人を代弁するような小説なのではないかと。だからきっとドラマ化、漫画化までされたのではと思います。

     巻末の解説で森絵都さんも触れられていましたが、この本を読んで一番歯がゆいのは、豊隆と俊太郎がこれほどまでに情熱を注いだ小説『エピローグ』を読むことができないこと。数年前に流行った漫画「響」の『お伽の庭』に対してもそうでしたが、実在しない小説とわかっていながら、作中でその本を手に取った読者に嫉妬してしまいます。

  • 出版業界についての話で、出版されるまでの書き手と書き手を支える人々の物語でした。
    自分も仕事をする中で孤独になりがちですが、周りを信じて、周りに支えられて仕事ができてるんだなぁと考えさせらました。

  • 内容の前に、大変にリーダブルな小説だということを、まず強調したいです。
    相性もありますが、これほどスイスイと読める小説は滅多にない。
    食事が終わって「そろそろ食後のコーヒーが欲しいな」と思った次の瞬間にコーヒーが運ばれてくるようなジャストインタイムな読み心地。
    これは高い技量がなければ出来ないことだと思うんです。
    早見和真さんの作品は初めて読みましたが、相当な巧者だということが最初の2~3ページを読んだだけで分かりました。
    つまり、小説家として信頼できる。
    そしてそのことは、「小説家」を題材にした本作を書く上で、とても大事な資質だろうと思いました。
    本作は、華々しいデビューを飾ったものの瞬く間に落ち目になった作家・豊隆と、豊隆とは幼馴染で大手出版社に勤める編集者・俊太郎が主人公。
    二人三脚で「いい小説を世に送り出そう」と奮闘する感動作です。
    一度でも小説を書いた人なら、2~3ページに一度は心を動かされる箇所に出合うに違いない。
    私は、気になる箇所があるとページの下端を折る癖がありますが、折り過ぎて下の角だけ厚くなってしまいました。
    たとえば。
    「直前まで恐怖の対象だったはずの『書けなくなる』ことが、途端に『もう書かなくてもいい』という希望に化けた」
    「夢にすがっているだけで、せめてそのフリをしているだけで、とりあえず『いま』を留保することはできるのだ」
    「どうして目の前の一作にこそ全精力を込められないのだという不満を、多くの作家に対するのと同じように、俊太郎は豊隆に対しても抱いている」
    『申し訳ないですが、吉田さんの小説はテクニックばかりで、ひりつくような熱を感じません。率直に言わせてもらえば、読者が期待しているのは〝人称〟の問題なんかじゃないんです」
    「小説にかかわることでしかもたらされない孤独は、書くことでしか解消されない」
    「物語がなかったら人間はもうとっくに滅んでいるよ」
    「もはやよほどの売れっ子か、資産家、あるいはパートナーにしっかりとした稼ぎがあるか、パトロンでもいない限り、専業作家など成り立たないと気づいていた」
    「作品を読んでもらうことってその人の時間をもらうのと同じことなんだ。自己顕示欲が先立ってしまっている彼らにその覚悟があるとは思えない。少なくともプロはそこに対する自覚はあるよ」
    「メインキャラクターの人物造形を変えていくことは、決して簡単なことではない。それでも絶対的に良くなるという確信がある以上、どんなに手のかかる作業だとしてもやらないわにはいかない」
    「読者の心を捉えるのは、誰かが書いたそれっぽい美文ではなく、本人が記す熱しかない。同じ『おもしろい』の一語であっても、本気で思っているのとそうでないのとでは伝わり方がまったく違う」
    「考えてみれば、デビューするまでは父に対するエネルギーだけで書いていたのだ。それがいざデビューしてみると、今度は読者や編集者の評価ばかり気にするようになり、怯えながら書いてきた。編集者たちに散々ぶつけられた『自分をさらけ出していない』という指摘は、きっとこのことに起因している。傷つくのがこわかった」
    「俊太郎自身は早く書き始めることが正しいとは思っていない。中学生には中学生の、高校生には高校生の〝経験しなければならないこと〟があるはずだ」
    「ある程度じゃダメだ。もうこれ以上直しようがないというところまで追い込んで、追い込んで、それでも直すところがイヤになるほど出てくるのが小説だ。ある程度なんていう失礼なことは許されない」
    「太陽が昇っていく様を心の中で描写してみろ。カメラには切り取れない美しさが絶対にあるはずで、それをお前自身がフィルターになって映し出すイメージだ。本当に作家になりたいと思うなら、これからそういうクセをつけるんだ」
    「そうなんです。書いている最中から、自分はどうしてこんなに日本語に不自由なんだろうって、どうして伝えたいことを素直に書くことができないんだろうって、そんなことばっかり思っていて。それで次はもっといいものを書けるはずだと思っちゃって」
    「脱稿した瞬間だけは信じられないくらいの快感があるんだよね。そのときだけは何ものにも代えられない喜びをいまでも感じる。ご褒美のようだし、麻薬のようでもあって。実は信頼している編集者とさえ共有できないものなのかもしれないけど、その気持ちを覚えているからまた書こうって思える気がする」
    「最後にもう一つだけ言わせてもらえるなら、書くことはやっぱり楽しいよ。やっぱり書いて生きていきたいと感じて、自分の人生を背負えると思える日がいつか来たらこっちに来ればいい。楽しいよ」
    「出版社など編集も営業も関係なく、しょせんは本好きの集まりだ。これは……と思える作品に出会いさえすれば、何かしたくなるに決まっている。会社に対する不満は少なくないが、その点に対する信頼は強くある」
    「小説家は書き続けるしか道はない。休むのは干されてからいくらでもできる。いいわね、書きなさい」
    「とりあえず今日だけ生きてみようと思いました。明日もそう思える気がします。吉田先生の次の作品が楽しみだから」
    「小説にとっての春はすぐそこまで来てるよ。また物語が必要とされる時代は、たぶん僕たちが思うよりもすぐ近くにまで迫っている。だからみんな急いで準備しなくちゃいけないし、焦らなきゃいけないんだ」
    キリがないですね笑。
    書き写しながら、胸が熱くなりました。
    そして、早見さんに対する信頼がますます増しました。
    小説を書いている人、これから小説を書こうとしている人、そして何より、心から小説を愛する全ての人たちに読んでほしい小説です。

  • 小説の売れなくなった時代に、編集者と作家が小説に魂を捧げる様に、編集者は支え、作家は書く。
    この時代にどう売るか。
    作家は売るために書くのではないと思うが、売れなくては生きていくのも難しい。
    その中読み手は、これ面白いという作品に出会いたいだけなのかな。

  • 疾走感のある小説で読むことを止めるのが難しかった。何度、通勤電車で目的地を通り過ぎそうになったことか。早見さんが書く主人公の表情、編集者とのやり取りがこちらまで熱くなった。また主人公以外にも魅力的な登場人物がおり小説がより面白くなった。編集長や内山、美咲、晴子など。あと、共感したのが電車の中ではスマホばかりで小説に見向きもしないという項目。小説がいかに面白いものかを証明して欲しい。

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著者プロフィール

1977年神奈川県生まれ。2016~2022年に愛媛県松山市で執筆活動に取り組む。現在は東京都在住。2008年に『ひゃくはち』でデビュー。2015年に『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞とJRA馬事文化賞を受賞。その他の著作に『95』『あの夏の正解』『店長がバカすぎて』『八月の母』などがある。

「2023年 『かなしきデブ猫ちゃん兵庫編  マルのはじまりの鐘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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