夜行 (小学館文庫 も 24-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094067033

作品紹介・あらすじ

怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語

「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語。

春風の花を散らすと見る夢は
さめても胸の騒ぐなりけり
--西行法師


【編集担当からのおすすめ情報】
第156回直木賞候補作にして2017年本屋大賞ノミネート作品。
「ダ・ヴィンチ」プラチナ本オブ・ザ・イヤー2017 第1位。
第7回広島本大賞受賞。
数々の栄冠に輝いたベストセラー、ついに文庫化!

感想・レビュー・書評

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  • 第一夜から、四つの旅先(尾道、奥飛騨、津軽、天神峡)での怪異変譚がそれぞれの人間から語られた。

    4人の話の共通点は、知り合いの長谷川さんが大学時代、鞍馬の火祭りの最中失踪したということ。話の中に何故か、岸田道生の銅版画の連作「夜行」(タイトルは尾道、奥飛騨、津軽、天神峡)が、姿を現すという事。

    これは「四畳半」シリーズの森見登美彦の文体が封印された、「きつねのはなし」に通じる、京都怪異変譚の変化系である。ただし、京都が舞台になるのは「最終夜 鞍馬」のみ。

    読んでいて、おそらくレビュアーの評価は賛否両論あるだろうと推測した。何故ならば、連作短編集ではあるが、繋がっているようで明らかに繋がっていないからである。「これは話が破綻しているのではないか」と訝(いぶか)る人もいるのではないか?と思ってレビュー読んだら殆どいなかった(^ ^;)。不思議話は不思議話として、そのまま受け止める日本人の「心性」があるのかもしれない。それこそ、古代から綿々と。

    それはともかく、読み進めていくと、上記以外に或るキーワードが登場する。

    彼女と話していると、心を見透かされているように感じることがあった。それでいて彼女は余計なことを一切いわなかった。どちらかと言えば内気で、自分だけの「夜の世界」を胸に秘めているような人だ。そういうところを俺は好ましく思っていた。
    俺はそんな事を岸田に話した。
    岸田は「興味深い人だね」と言った。
    「そういう人は『神隠し』に遭いやすい感じがする」
    「天狗にさらわれたとでも言いたいのか?」
    「場所が場所だからね。それに祭りの夜でもある。」(第四夜 天神峡より)

    どうして『夜行』というタイトルなのか分かるかい。百鬼夜行の夜行だよ。岸田の描いた女はみんな鬼なのさ。だから顔がない。(第四夜 天神峡より)

    旅先でぽっかりと開いた穴に吸い込まれる。その可能性は常にある。(最終夜 鞍馬より)

    「世界はつねに夜なのよ」と彼女は言った。(最終夜 鞍馬より)

    「神隠し」「天狗」「鬼」「ぽっかりと開いた穴」「夜」‥‥。
    柳田国男「山の人生」において、中世から明治時代の「今」までに、鬼や天狗に攫われ、あるいは婚姻させられ、ぽっかりと穴に入る如くいなくなり、数年経って現れてくるいう現象は無数にあったことが「証明」されている。勿論その原因は、ホントの天狗かどうかは疑わしく、この小説でも微かに示されている如く、夫婦の危機なのかもしれず、姉妹の確執なのかもしれず、人格分裂症なのかもしれず、いや、そもそもいつも責任回避をしている人生態度そのものだったかもしれないが、本書発行当時の2019年現在においても、宇宙の「本当の暗闇」の向こうには、現代の今もわからない夜=謎があることは確かなわけだから、本書もやがて後世の歴史家は、一つの「山の人生」の伝説の「語り直し」として評価するのかもしれない。



  • 登場人物が語るどの話にも結論がなく、何となくモヤモヤしながら読み進めて、ちょっと待って、それでどうだったの?と誰も聞かないまま不思議な感じでストーリーが終了し、次の話へ。
    昼夜二つの世界が同時にあって、結局、失踪したのは、どっちだったんだろう?
    読み終えても、??が解消しなかった。モヤモヤ。
    あースッキリしたい。

    夜行列車から見える寝静まった街の雰囲気や車窓から見える深い暗闇の中の光とか、もの哀しい描写はとても良かった

    • hibuさん
      おはようございます。
      スッキリしない気持ちよくわかります。
      こんだけ人が戻らなかったら、温泉入りよる場合じゃないやろー!
      ってツッコミたくな...
      おはようございます。
      スッキリしない気持ちよくわかります。
      こんだけ人が戻らなかったら、温泉入りよる場合じゃないやろー!
      ってツッコミたくなる場面が散見されたのが原因かと…。
      2023/07/16
    • おのひろさん
      hibuさん、コメントありがとうございます。
      そうなんですよねー
      何ヶ所か読み返しても分からないんですよね
      不思議なんですよー
      hibuさん、コメントありがとうございます。
      そうなんですよねー
      何ヶ所か読み返しても分からないんですよね
      不思議なんですよー
      2023/07/16
  • 摩訶不思議なパラレルワールドが謎を深め、その謎が不気味さを生み出す。
    ぞわりとするのに魅惑的な夜だ。
    当たり前のように過ごしているこの世界も魔境なのかもしれないと考えると、またぞわりとする。

  • これは一体何の話かと思いました。
    学生時代に京都の英会話スクールで一緒だった仲間たち。そのうちの一人、長谷川さんが十年前の秋「鞍馬の火祭」で姿を消しました。
    その仲間たち男性4人、女性1人が集まって、もう一度「鞍馬の火祭」を見に行く旅をします。
    そして第一夜から最終話まで五人がひとつずつ不思議な旅の話を語ります。
    場所は、尾道、奥飛騨、津軽、天竜峡、そして鞍馬。
    いなくなった妻を探す旅、人の未来をみる女性、もうひとりの自分、大人のような女子高校生。
    そして、すべての話に登場する銅版画家で、五年前に48作の『夜行』という作品を残して死んだ岸田道生がでてきます。
    とても不思議で、怖い話ばかりでしたが、よくある思い出話と話の中では語られています。




    以下完全にネタバレですので、これから読まれる方は読まないでください。

    最終話で話は全部ひっくり返ります。
    失踪したのは長谷川さんではなく、物語の語り手のわたしだったことがわかります。
    十年間行方不明になっていたのはわたし。
    『夜行』は永遠の夜。
    『曙光』はただ一度の朝を描いたはずだった…。

    そしてそれも事実ではなかった。
    岸田道生は生きていて、失踪したはずの長谷川さんと五年前に結婚して、二人で旅した場所の『曙光』という作品だけしか描いていなかった。
    「きみは長谷川さんが好きだったろう、大橋君」
    入れ替わった朝と夜の絵。
    入れ替わった失踪者と人の生死。
    私も昔住んでいた、京都の街の何とも言えない、摩訶不思議な読後感のお話しでした。

  • 恒川光太郎のような世界観に森見登美彦の得意の京都の風味を効かせたミステリーホラー。
    影と光、表と裏の入り口を彷徨う人たち。魔の境界では人はどうしても引き寄せられてしまうのか。
    不思議な誘人がおどろおどろしくなく、いやに人間くさいのもよかった。
    森見登美彦の新境地のような小説で今後もこんな小説を書いてほしい。

  • 表と裏。パラレル?
    夜行と曙光。
    怪談だけどファンタジー。
    森見登見彦氏らしい作品。
    でも今までのものより数段進化した感じ。
    これを読んでしまうと、これから出る森見作品は全部読みたいと思ってしまう。
    とても良い作品だと思います。

    • いるかさん
      伊坂好太郎さん コメントありがとうございます。

      伊坂さんの小説の最後の収束感はすごいですよね。
      重松清氏が好きです。
      海堂尊氏も応...
      伊坂好太郎さん コメントありがとうございます。

      伊坂さんの小説の最後の収束感はすごいですよね。
      重松清氏が好きです。
      海堂尊氏も応援したいと思っています。
      これからもよろしくお願い致します。
      2019/12/13
    • sinsekaiさん
      いいね!ありがとうございます
      ぜひ、四畳半タイムマシンブルースも読んでみてください
      いいね!ありがとうございます
      ぜひ、四畳半タイムマシンブルースも読んでみてください
      2020/08/15
    • いるかさん
      sinsekaiさん

      ありがとうございます。
      森見登美彦の世界観は独特ですね。

      是非読んでみたいと思います。
      ありがとうござ...
      sinsekaiさん

      ありがとうございます。
      森見登美彦の世界観は独特ですね。

      是非読んでみたいと思います。
      ありがとうございます。
      2020/08/15
  • 鞍馬の火祭りか…よく考えたら行ったことないわ。今、行こうとしても、コロナで中止やけど( ; ; )
    この作者のは、京都を中心のが多いから、地理的には分かり易い。
    他の作者の作品では、あんまり京阪電車出てくる話ないし。(この辺は、阪急電車一強やし 笑)

    しかし、不思議な話やな。
    分かり易い話でないけど、何かゾッとすというか…
    こんな話聞いたら、夜の長い細道とか歩けんやん!どっかに迷い込んでしまいそうで…
    絵も見るのが怖い!吸い込まれそう…
    パラレルワールド?でも、何か表裏一体というか、反対の事が起こってる感じ?
    普段、生きてる自分は、本物?って不安感満載になる。でも、こういう雰囲気は好き!
    まぁ、夜の世界でも、光の世界でもどっちでも、ちゃんと根を張って生きて行こ!

    • sinsekaiさん
      京都の地理がわかってると森見作品の面白さや、この作品だと怖さみたいなものがより伝わるでしょうね!
      羨ましいです

      自分は何度か旅行で行ったこ...
      京都の地理がわかってると森見作品の面白さや、この作品だと怖さみたいなものがより伝わるでしょうね!
      羨ましいです

      自分は何度か旅行で行ったことのある京都の
      風景と想像力で楽しんでます♪

      京都だと、なんだか本当に起こり得そうな話だからすごくゾッとしますよね!

      森見さんはこういう怖い話とダメ大学生とかダメ狸とか振り幅が広くて、しかもどっちも面白いですよね
      2021/10/23
    • ultraman719さん
      sinsekaiさん、
      コメントありがとうございます!

      知ってるところが出てくると、頭に思い描ける事が出来るので、イメージし易いし、更に親...
      sinsekaiさん、
      コメントありがとうございます!

      知ってるところが出てくると、頭に思い描ける事が出来るので、イメージし易いし、更に親近感もひとしおです。

      京都は、怖いとか、怪しさ満点なのは、
      元々、風水とかを考慮して作られた街なんで、そういう雰囲気を醸し出してるのかもしれないですね。
      森見さんの作品は、京都中心のが多いので(全部そう?)、楽しく読めます。

      京都を描く作家は、森見登美彦派と万城目学派に分かれるとか、どっかに載ってました。
      2021/10/23
  • ″夜行″のタイトル、表紙のイラスト、怪談✕青春✕ファンタジーの謳い文句に爽やかなキレイなイメージを持って読み始めた。

    怪談が強め 笑。章毎に語られる話がとにかく怖い。語り手が英会話教室のメンバーで、銅版画で繋がっている事以外は登場人物や情景に接点はなくてストーリーの先を想像すればするほど奇妙な世界へ迷い込んでしまう…えぇ?何?どういう事?引き返す事さえ出来ない…

    読解力を要する作品と思われる為、自分は奇妙な世界から脱する事が出来ませんでした。

  • 先日、京都の下鴨神社に行ってきました♬
    ここへ来るとやっぱりモリミーが頭に浮かぶ〜!
    って事で久しぶりに挑戦してみたくなった\♡︎/

    まだ3冊しか読んでないけど、毎度かなり苦戦してしまう森見さん。
    だけどこの作品はめっちゃ読みやすかった〜!
    とは言え、やはり難解は難解だったけど、、(^_^;)

    モリミーと言えば『夜は短し〜』の様な、ちょっとコミカルなファンタジーの印象が強いけど、この作品にコミカルさはなく、なんだか恒川さんを思わせるような幻想的な感じがした。
    そこに京都愛は今回も♡
    括りで言うと、うっすら怖いホラーファンタジーになるのかな。

    神隠しなのか、異次元なのか、どれが現実なのかも分からなくなる様な不思議な話。
    文中に出てくる「世界はつねに夜なのよ」の言葉通り、どこまでも夜が続いている感覚だった。

    内容はぼやっとしてる部分も多く、結末もどう捉えるかは自分次第なんだと思う。
    とりあえず読み終わってから考察サイトには走りました〜笑
    でも考え方は様々で、このお話はどういう事なのかな〜とあれこれ考えるのもまた面白さの一つなのかな〜と思った。

    きっとちゃんとは理解できてないと思う。
    でもとても面白かった〜\♡︎/

    • 1Q84O1さん
      他の作家さんの作品でも難解、なんだろうコレ?、ちょっと意味がわかない…、って作品もありますね(^_^;)
      けど、そういった作品の方がハマるこ...
      他の作家さんの作品でも難解、なんだろうコレ?、ちょっと意味がわかない…、って作品もありますね(^_^;)
      けど、そういった作品の方がハマることもありますよね!
      気がむいて挑戦したくなる、mihiroさんとモリミーの相性は良いのかもしれませんねw
      2023/03/10
    • mihiroさん
      そういうこと結構あります笑笑
      私の場合、芥川賞関係の本に多いかも〜(^_^;)
      たしかにもうもう読もうと思ってない作家さんもいるなか、苦戦し...
      そういうこと結構あります笑笑
      私の場合、芥川賞関係の本に多いかも〜(^_^;)
      たしかにもうもう読もうと思ってない作家さんもいるなか、苦戦してもまた挑戦したくなるって事は相性悪くはないのかもですね〜(ŎдŎ;)!!
      2023/03/10
    • 1Q84O1さん
      惹きつけられる何か魅力的なものがあるというかとですね♪~(´ε` )
      惹きつけられる何か魅力的なものがあるというかとですね♪~(´ε` )
      2023/03/10
  • 夏に読みたい、怪談話。
    少しゾッとする・ヒヤッとするぐらいの、ちょうど良い塩梅で読みやすかった。

    森見氏といえば、京都の阿呆学生を描いた作品が目立つのですが。。
    今回は阿呆学生が不在。
    主人公が学生時代に通った英語教室の仲間内で起こった不思議で怪奇なお話です。
    短編集的な要素もあるかな。
    1つの連作絵画を巡る、『世にも奇妙な物語』的な感じです。
    装丁に騙されてはいけません。
    幻想的な表現はあれど、ちょっと怖い。
    ただグロくもなく、後味も悪いものではない。

    「怖い話読みたいけど、グロいのはヤだな〜」という方にオススメしたい。

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著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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