あの日、君は何をした (小学館文庫 ま 23-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094067910

作品紹介・あらすじ

『完璧な母親』著者が放つ慟哭のミステリー

北関東の前林市で平凡な主婦として幸せに暮らしていた水野いづみの生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって、一変する。深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていた大樹は、何をしようとしていたのか――。
15年後、新宿区で若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が行方不明に。無関心に見える妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は、必死で辰彦を探し出そうとする。
刑事の三ッ矢と田所が捜査を進めるうちに、無関係に見える二つの事件をつなぐ鍵が明らかになる。
『完璧な母親』で最注目の著者が放つ、慟哭のミステリー。

【編集担当からのおすすめ情報】
「この小説は価値観を一変させる力がある。軽い気持ちで読み進めれば火傷するかもしれない」(内田剛さん/フリー書店員)
「まさきとしかは、この1作で間違いなく飛躍する。イヤミスの先頭集団に、躍りでるはずだ」(浅野智哉さん/ライター)
発売前から反響続々、ミステリー好きなら必読の一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • まさきとしか 彼女の作品を読むのは二回目であり、顔見知り(一方的)くらいの浅い仲(一方的)だ。それなのに「母親の狂気」と=で強く繋がる彼女のイメージは伊達じゃないことを思い知らされた。

    優しい夫と可愛い子供達に囲まれ平凡ながらも幸せな家庭を持ついずみ。ある日息子の大樹が夜中、逃亡中の殺人事件容疑者に間違われ警察を振り切り逃げ出した後、事故を起こし亡くなる。そこから崩れる平凡と平常によって産まれる母親の狂気に、読者は自身に置き換える者、好奇心で釘付けになる者とに別れるかと思う。
    私は人間的に残念ながら後者だ。
    何故素行良好だったはずの息子が家族に隠れて夜中に外に出たのか、何故警察に声を掛けられ逃げ出したのか。何故彼は死ななければならなかったのか。沢山の何故が蔓延る中、いずみに産まれた狂気を残し場面は唐突に切り替わる。

    こちらは至って単純だ。時は15年後。
    ある女性が殺され、容疑者の男が逃亡、警察がそれを追う。ふむ、シンプルである。
    気になるのは容疑者辰彦の妻、野々子と辰彦の母、智恵。後に頻繁に登場する野々子の母、瑤子の存在だ。なんともまぁ  母、母、母だらけである。
    辰彦に対して無関心な野々子、正反対に必死に探す智恵。そして野々子の人格を作り上げたであろう毒親瑤子。読み進めれば進めるほど事件の真相に近付いてる気になるのに、どうしても15年前の事件との繋がりが見えない。むむぅ、ヤキモキしちゃう。

    この無関係に見える二つの事件を繋いだのが、変わり者刑事三ツ矢とその飼い犬...失礼。子犬系メンズの岳斗くんだ。少し脱線するが、刑事にスポットの当たった作品ではないものの、彼らの関係性が「...なんか好き」とホッコリした人も少なくないと思う。素敵なバディだった。
    そんな二人が真実を突き止め飛躍する後半は緊張感溢れるスリリングな展開だ。温めすぎてこの道しか残っていない車幅の狭さは感じたが、それでも昂る気持ちは減退しなかった。

    真相全て白日の元に!真実はいつもひとつ!なコナンくんオチとはならない曖昧模糊な着地は賛否ありそうだが、エピローグとなる「知らぬが仏」な展開は色んな感情が溢れ出た。
    小説として楽しい、
    描写が胸糞悪い、
    人として理解出来ない、
    でも多分これは現実に忠実だ、背くなかれ
    脳内がとても忙しい事になった。

    ーーあの日、君はなにをしたーー
    たとえ露見しようがしまいが、自身の行動によって他人の未来を変える事もある。これは良くも悪くも避けられないのだろう。よもやよもやだ。
    しかしつまり、大樹くんはお母さんを愛していた。救いが無いように思えるけど、暗黒書物大好きマンからすればハッピーエンドな気もしちゃうなぁ。よもやよもやだ。┐(´-`)┌

  • 幸せな家族だったはずの悲劇。ある日息子が逃亡した殺人事件の容疑者と間違われて事故死。なぜ息子は死ななければならなかったのか。母の立場から様々な感情が渦巻き人生が堕落していく悲哀溢れる物語。

    本作品は2部構成。
    1部は前述の物語、2部は15年後に起きた新たな殺人事件。一見、全く別の物語なのだが、共通して母親の愛情と、背中合わせの狂気が歪みを成して描かれている。

    率直な感想として、たとえ歪があれど母の愛情の熱量は理解でき伝わるも、物語の構成・至る結末は腑に落ちなかった。秀逸さを感じなかったのだ。

    恐らくだが、これは私が男だから、父親だからという立場の問題ではない。端的に私の個人的な好みであろう。

    ただし、作中に登場する三ツ矢という刑事がいるのだが、キャラが今まで垣間見たことがないほど個性的で魅了された。彼が相手に問う言葉はなぜか心に刺さるのだ。

    もし彼が再来する作品が出たならば、間違いなく躊躇いなく、私は手に取って読み耽るに違いない。

  • 最後でやられた!と思いました。

    2004年、連続殺人事件の容疑者と間違えられて死んだ息子の母親の息子に対する愛情が異常に感じられました。

    そして、物語は二部に移って15年後の全く違う殺人事件と失踪者の話になります。
    と、思いきや東京で起きている事件にもかかわらず、一部と同じ群馬県前林市が出てくるのです。
    同じケーキ屋のクローバーという店のケーキではっとしました。

    一体、二つの物語はどう関係しているのかと思いながら読んでいくと、驚愕のラスト。

    母親の狂気を悲しみ、死んだ息子の遺したことばは母親への愛に溢れていましたが、ゾクリとして、最後のページを二度読みしました。

    この事件を解決した刑事の三ツ矢と田所の続編も読もうと思います。

  • 母親の狂気の物語。
    そして親子愛の闇の物語。

    全体として2部構成ですが、最後つながって..という展開です。

    平凡な主婦いずみ。
    息子の大樹が夜中に連続殺人事件の容疑者に間違われ事故死。
    ここからいずみの生活は一変します。
    いずみの家は誹謗中傷・嫌がらせ。

    息子はなぜ深夜に家を抜け出したのか?
    そして、警察に職務質問声をかけられたときになぜ逃げたのか?
    さらに、なぜ死ななければならなかったのか?
    いずみが壊れていくと共に狂気じみていきます。

    15年後、新宿区で若い女性が殺害。重要参考人の不倫相手の男が行方不明。
    そして、この男の母親がこれまた狂気じみています。
    さらにこの男の奥さん、奥さんの母親と母親目白押し(笑)

    で、二つの事件が徐々に関連ついていきます。
    いずみの狂気も深まっていきます!

    この二つの事件を結び付けていくのが刑事の三ツ矢。
    そして、明らかになる真実。
    という展開です。

    ある意味、母親たちの物語。

    そして明らかになった真実の後、大樹がその日何をしようとしていたのかが、明らかになります。
    うーん、そうきたか...

    愛するが故の狂気
    そんな物語でした。

  • 悲しみの形は一つではない、と思えた一冊でした。
    真面目で人気もあって、地域で一番の高校に受かっていた息子が、ある日、深夜2時に自転車に乗っているところを、連続殺人犯と勘違いされ事故死してしまう。
    急に息子を亡くしただけでも辛いのに、夜中になぜうろついていたのか?職務質問をされなぜ逃げたのか?と世間から非難を浴びる。
    息子を亡くして、心を病んでしまった母は、自分と100%同じ気持ちで苦しんでいない夫や娘に苛立ちを感じてしまうのだけど、夫や娘が苦しんでいないか?悲しんでいないか?というと、決してそうではない。
    母(妻)と同じように悲しみを表に出せない自分は冷たい人間なのか?と自分をどんどん責めていってしまう。
    でも、それだけではない。母は母で、『家にいるのがイヤだったから夜中に家を抜け出していたんだ』と言われれば自分を責め、『いつまでも泣いていないで前を見ろ』と言われればまた自分を責める。
    大事な人を亡くしたらみんな、誰だって悲しいんだ!苦しいんだ!
    心はその人だけのもの。心に“こうあるべき“なんてものはない。
    周りに惑わされず、一人でそっと悲しむ、苦しむ時間があればいいのに。
    本当は家族みんなで気持ちを分かち合えるのが一番なんだろうけど、それぞれの心はそれぞれのものだから、きっとみんなが同じ気持ちになるのはとても難しい。
    悲しみの形は一つではない。自分の心は自分で大切にしてあげないと。

  • 面白かった!!
    一部と二部で、全然違う人の話でアレ??ってなったけど、どんどんパズルが完成していくような感覚。伏線回収が素晴らしい!
    あーなるほど!あーーーそうか!!!と面白くてスラスラと読めた。
    いづみの頭おかしい感じにはだいぶイライラした。娘も夫も可哀想だなと思った。
    智恵の息子溺愛も痛いなー。贔屓目凄すぎてキツいな〜あんな姑は絶対無理だなと思った。
    あー本当面白かった!!
    三ツ矢さんのお母さんはどうして恋人に殺されてしまったんだろうな…。

  •  まさきとしかさん初読みでした。本作は〝イヤミス〟の括りなのでしょうか? 読後、爽快感は確かにないものの、「嫌な気分」とは異質な〝何か〟が残る感覚でした。

     人間の心の闇、歪んだ心情、特に複数の母性愛と狂気‥、これらに迫る描写が緻密かつ濃密です。
     これらが、15年の時間軸が交錯することで何層も重なり、読み進むほど胸が詰まります。
     光り輝く幸せの絶頂から一転、光も色も失われた状況への転落の対比が酷ですし、母親の愛情の深さと異様な変容ぶりが比例するような描写が、何ともやるせない雰囲気を助長するようです。
     母親へ少し加担してやれることは、子どもの死が余りに突然・簡単・理不尽で、自己責任のような扱いを受けたこと、そして自分が無力であり執着する以外の道を選べなかったことでしょうか。

     改めて、読後の嫌な気分とは異質な〝何か〟の正体は、文芸作品のような、考えさせる余地を残しているからかな、と思いました。
     この物語で最後の砦になってくれたのが、三ツ矢なのだと思います。他者への想像力や共感力が欠けているように見えて、弱者の無力さを誰よりも深く理解していたのですから‥。
     苦しい喪失感と共生していくには、自分と向き合う以外ないでしょうね。そして理解者がいることで人は救われるんだと感じました。

  • 一部は、高校に合格したお祝いの夜、水野大樹は夜中に自転車で家を抜け出し、途中、逃走犯を捜索中の警察官が職務質問しようとしたところ逃走し、トラックに衝突して死亡してしまう。
    何を彼は何をしていたのか?彼はなぜ逃げたのか?彼はなぜ死ななければならなかったのか?
    何も分からないまま、母親は周囲を攻め、家族を攻め、自分を攻め続ける。必死な姿が痛々しかった。

    二部では、事故から15年後、女性が絞殺され、不倫相手の百井辰彦が重要参考人として手配されるも、行方不明。百井の母親も息子の無実を信じ、無事を心配し続け、嫁に疑念を向ける。
    三ツ矢刑事と田所刑事が事件を捜査する中で15年前の少年の事故が絡み合ってくる。それらを紐解くことで、真相が明らかになる。犯人を知り、その動機が自分勝手と言い切るには悲しくて重たかった。

    大切な息子を失い、平穏な日々が一変した母親達の叫びが辛かった。母親は、自分が思う愛する息子像とは違う息子の姿を教えられると、やはり受け入れ難いものなんだろうなぁ。

  • うひゃあ、こんな終わり方か〜

    あんまり好きな終わり方じゃなかったです
    のわりに★5っていうね

    途中何がどう繋がってどういう結末が待ってるんだろう?ってもう気になって気になって
    積み上げ方がうまいなぁって思いました

    それと、作中二組の母子が出てくるんですが、その母が息子に向ける愛情がとても醜悪に感じられて…
    取りようによっては無償の愛ともとれるんですが
    そのあたりの見せ方もうまいなぁと
    なんかモヤモヤが溜まっていく過程がね
    登場人物それぞれがたくさんの「なぜ」を抱えていて、読者にも「なぜ」がどんどん溜まっていって
    最後に一気に「なぜ」が解消され、たのかどうかよくわからないあるいは新たな「なぜ」が生まれたのかも

  • 2つの事件の接点は何かと読み進め、わかり始めた時点から真相が気になって、(気分は)一気読みでした。
    母親の狂気には驚きですが、我が子を思う気持ちは同じ。何かあれば自分を責めてしまうのはすごくわかるので、胸が痛かったです。家族が抱える愛情と闇。それが危険な方向へズレてゆく過程が秀逸に描かれていました。
    何故、それで殺意が?犯行自体にも無理がありそうだなとか、現実味がない展開だからか、読んで辛いというより面白かったです。変わり者だが、真っ直ぐな三ッ矢刑事に魅力を感じました。彼にも過去が。
    様々な母と子の関係性があり、母親の存在は子に大きな影響を与えるのだと。わかってはいるけど、更に肝に銘じた次第です。ミステリーであり、(自分的には)母と子の物語だなと伝わるものがありました。
    タイトルと装丁から想像していたイメージと、若干違った。思いの外深く、読み応えがありました。
    やはり、人は今世で課題を与えられている。

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。1994年『パーティしようよ』が第28回北海道新聞文学賞佳作に選ばれる。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。
著書に『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ある女の証明』『祝福の子供』『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』などがあり、近刊に『レッドクローバー』がある。

「2022年 『屑の結晶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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