テムズ川の娘 (小学館文庫 セ 2-1)

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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (720ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094070590

作品紹介・あらすじ

英ベストセラー作家が贈る歴史幻想ミステリ

19世紀、ヴィクトリア期のイギリス。ある冬至の夜、テムズ川沿いのちいさな村ラドコットにある酒場兼宿屋〈白鳥亭(ザ・スワン)〉では常連客たちがいつものように酒と物語に興じていた。すると突然ドアが開け放たれ、顔に重傷を負い、女の子の人形を抱えた大男が現れる。人形に見えていたのは、実は少女の死体だということが判明するが、少女はその日のうちに息を吹き返す。この奇跡が近隣の村にまで広まると、少女は自分の家族だと主張する3つの家族が現れる。少女は誰なのか? どこから来たのか? あの晩、少女に何が起きたのか? 謎が明らかになるにつれ、それぞれの家族の抱える秘密が複雑に絡み合いーー。
世界的ベストセラー『13番目の物語』の著者が贈る、タイムズ紙ベストセラーリスト1位、世界20カ国で刊行の歴史幻想ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 「13番目の物語」(NHK出版)復刊しないかな?

    Profile - Diane Setterfield
    https://www.dianesetterfield.com/profile/

    テムズ川の娘 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09407059

  • Amazonでおすすめに出てきたので、何の気なしに、試し読みをしてみた。
    魅了されてしまった!
    舞台は19世紀のイギリス、テムズ川のほとりである。
    冒頭で語られるのは、白鳥亭なる店のなりたち、常連客の面々、女将と夫のなれそめなどである。
    もとの文がよいのか、翻訳がよいのか、つまり両方がよいのだろう、物語るとはこういうことかと、嬉しくなるような文章だった。
    まあ、一度読んでみてほしい。パソコンからなら試し読みができる。

    集まる客の色合いは店それぞれだが、白鳥亭の客は皆「語り聞かせ好き」である。
    ろうそくの灯とエールビールに助けられて、クレソン栽培者も、土砂採取人も、自分の見た話、聞いた話を語り出す。
    その冬至の夜もそうだった。

    そこに、大男が現れた。
    醜悪な顔をして、雄叫びを上げたその男はふらふらとよろめいて倒れる。
    彼の抱えていた人形を受け止めたのは、白鳥亭の末息子ジョナサン。
    ずっしり重いその人形は――人形ではなく、死んだ少女だった。
    二人の躰が奥の部屋に運ばれ、信頼の厚い看護師が呼ばれる。
    大男は治療され、少女の死亡は確認され――されたはずなのに、少女の目が開いた。
    そのうえ、胸が上下している。呼吸しているのだ。

    生き返った!

    動く少女を目の当たりにした面々は皆驚いた。
    驚いて、そして――それを、物語にしはじめた。
    蘇りという"奇蹟"の物語は口々に語られ、聞いた者がまた誰かに話し、一帯に広められた。
    すると、うちの娘ではあるまいかという人が現れたのだ。
    しかも、3人。

    『テムズ川の娘』は、犯罪小説ではない。
    殺人事件、探偵登場、「あなたが犯人です!」という話ではない。
    しかしミステリーではある。解くべき謎はあるのだ。

    この子は誰なのか。
    この子になにがあったのか。

    これをテーマに話は進んでいく。
    これが、まったく退屈しない。面白くてたまらない。
    出てくる人々が皆物語を持っているのだ。
    白鳥亭の女将夫婦はもちろん、その末息子、常連の面々、農場主、その家族、看護師、実業家、牧師、家政婦、写真家etc.etc.etc......
    皆、なにかしらの過去を、事情を、秘密を抱えて、今、ここにいる。
    だから、出てくる人々は、哀しみに沈んでいてさえ、生き生きとして見える。
    一人一人の物語が寄り集まってできる物語に、引き込まれずにはいられない。

    実際、テムズ川にラドコット橋は存在する。
    すぐ近くには、白鳥の名を冠する宿とパブがある。
    その店の女将がマーゴットの名を継いでいるのか、物語好きの客が集うのかは知らない。
    ただ、老舗のその店が、舞台となった1880年代にもそこにあったのは間違いない。

    作者ダイアン・セッターフィールドの語り口に、すっかり魅了されてしまった。
    日本で紹介されているのは、この『テムズ川の少女』と、デビュー作の『13番目の物語』だけである。
    もう一冊あるという既刊のものでもいい、新しいものでもいい、彼女の他の物語もぜひ読んでみたい。
    翻訳を心待ちにしている。

  • 夢中で読んだ。人物描写がいい。ミステリーではあるが登場人物の骨太物語が合間合間に挟まれて、一冊でたくさんの物語を味わえた。

  • 持ち歩くのが大変な700頁で、開く手も痛いぐらい。読了に丸1週間かかりましたが、余韻も大きい。

    心臓が止まっていたはずなのに生き返った少女。彼女のことを行方不明だった家族だと言い募る3組。ある者は自分の娘、ある者は自分の孫、ある者は自分の妹だと。

    彼女が運び込まれた酒場では物語を紡ぐ人が重宝がられ、その様子がとても面白い。上手い話は時に美味い物よりも良い酒の肴になるものなのですね。

    各人の話に心を奪われて最後まで。特に王子と奴隷の間に生まれたと噂される彼の話は、それだけでじゅうぶんひとつの話として語れそうです。

  • 幻想味を受け付けるかどうか次第。
    しかし、ラドコット付近のテムズ川は案外に狭く表紙写真と大違い。

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