エゴイスト (小学館文庫 た 42-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094071757

作品紹介・あらすじ

「愛した彼は体を売って、生きていた」 2023年初春、本作品の映画化が決定。出演は鈴木亮平、宮沢氷魚。文庫版には鈴木亮平の特別寄稿を収録。「母が死んで、『死にたい』と思っていた僕の何かは死んだ」。14歳で母を亡くした浩輔は、同性愛者である本当の自分の姿を押し殺しながら過ごした思春期を経て、しがらみのない東京で開放感に満ちた日々を送っていた。30代半ばにさしかかったある日、癌に冒された母と寄り添って暮らすパーソナルトレーナー、龍太と出会う。彼らとの満たされた日々に、失われた実母への想いを重ねる浩輔。しかし、そこには残酷な運命が待っていた・・・。龍太と母を救いたいという浩輔の思いは、彼らを傷つけ、追いつめていたのか? 僕たちは、出会わなければよかったのか? 愛とは、自らを救うためのエゴだったのか? 浩輔の心を後悔の津波が襲う。人は誰のために愛するのか。賛否両論渦巻く、愛のカタチ。 【編集担当からのおすすめ情報】 【著書プロフィール】高山 真東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる傍ら、エッセイストとして活躍。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』(小学館)、『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』(集英社)、『愛は毒か 毒が愛か』(講談社)など。2020年没。

感想・レビュー・書評

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  • 愛って何なんですかね。
    突然ですが、この本を読み終わったらふと思いました。

    好きなだけではどうにもならない愛ってある。
    愛を与える側と受け取る側。
    好きだから相手に何かをしてあげたいと思う事は、エゴなのか、愛なのか?
    読んだ後に何かが引っかかるのは、この答えが自分の中で出ていないからなのかもしれません。

    この物語は浩輔側の視点で書かれているので、龍太の本音は想像でしかわからないのだけど、自分なりに考えてみました。
    浩輔と出会ったことで、本当の愛を知ってしまったのではないかあ、と思います。
    本当の愛を知ってしまうと、今までうやむやにしていた辛さとか痛みとか、自分をごまかしていた物たちに気づいてしまうと思うんです。
    反対に自分をごまかしながらでないと生きていけなかったのが龍太なのかもしれません。
    浩輔と出会い、楽しみと苦しみの狭間でもがき苦しみ続けていたのかもしれません。
    とは言え、最期なぜあのような選択をしたのか、私には全部を理解することはできません。
    他の道はなかったのか、考えたところで答えが出る物でもなく。
    ただ、龍太の言った「俺だって浩輔さんのことが好きだ」は本心なのだと思いました。

    お互いに愛し合っているのに、切ない。
    生い立ちが愛を歪ませてしまう事もあるのかもしれません。

    余談ですが、表紙の写真を見て、この本の興味を持ったのですが、本を読んだらますます映画が見たくなりました!
    映像映えしそうなストーリーなので、いつか見たいと思います。鈴木亮平さんの浩輔役、かなりハマってそう。
    巻末の鈴木亮平さんのあとがきを読むと泣けてきます。

  • 後半からはずっと号泣しながら読んでいました。
    主人公は、自分自身のしたことをエゴだと思っていて、そのせいでこんな結末を迎えたんだと思っているのだろうけれど、好きな人になにかしてあげたいと思うことは自然なことだし、それを相手も受け入れてくれたのだから、決して独りよがりなエゴではないと思いました。
    同姓同士の恋愛も描かれていますが、とてもピュアで羨ましいなと思える関係でした。
    ただただ好きな人と一緒にいたいというだけなのに、ごめんなさいと思わなければいけない世の中に違和感を覚えました。

  • 「同性愛」というキーワードで読まないのはもったいない一冊。同性愛という言葉に違和感がある方や、本書の映画のパンフでよく見る男性2人がよりそっている写真に思うところがある方もいるかもしれません。しかし、これは本書の大事なところではありません。その先の龍太の母親も含めた「愛」の物語なのです。「愛」の物語というとなんか胡散臭い感じかもしれないですが、読んでみれば分かります。こういう愛もあるということを。自分は他人にここまで愛を持って接することができるだろうか、そんなことを考えさせられました。

    ●タイトルが秀逸
    他の方の感想にもありますが、タイトルがすごい。この言葉は自虐なんです。ラストで主人公はエゴイストではないという結論に至ります。一方で本書は著者の自叙伝的小説でもあります。だからエゴイストではないという結論に至ってから本書を執筆しただろうに、それでもなお、「エゴイスト(である自分の話)」とするなんて・・。もしかしたら実際はラストみたいな展開にならなくて、「こうなれば救われたのに」という想いがあったのかもしれないと思うと胸が苦しくなります。真相はわかりませんが・・。

    ●鈴木亮平さんの特別寄稿がある文庫版またはオーディブルで読んでほしい。
    本書の映画版で主人公浩輔を演じている鈴木亮平さん。(龍太の配役もイメージ通りでぴったりで素晴らしいです)この役になるにあたって、自分が行ったことが紹介されています。その上で、子供たちへのメッセージまであって、著者に負けず劣らずの「愛」のある方だなと思いました。とてもよかったのでぜひ、読んでほしいです。

    ●浩輔と龍太はきっと最高の夜を過ごしていない
    インパクトがあるのでこの二人が小説や映画のポスターとして出てくるのですが、この小説には恋人として最高の夜を過ごしたことは書いていません。いつか心配事無く過ごすことを夢見て必死に生きていた。それがとても切なく、読後に涙を誘います。

    ●わたしの息子です
    このシーンで車内で聞いていたわたしは涙しました。はじめは浩輔のエゴから始まったこの関係は龍太もその母親も救いました。それが見出しの言葉なのだとわたしは感じています。他人を助けるために(自分も助けるために)貯金残高をみて「はぁ・・」て肩を落とすほどお金を出せますか?結局、浩輔はラストのシーンのあと、二人を心のよりどころにして力強く生きていけたのでしょうか。その後が気になりました。

  • 著者 高山真さんの自伝的小説。

    内容は重い。
    母への愛、パートナーへの愛…難しい。

  • エゴイストという題名、なんでそんな題名なんだろうと思っていたけど、主人公が彼自身を心の中で非難し続けて、周囲の旅立っていく人たちにごめんなさいとしか言えなかった在り方につけられたものだったんだなぁと読み終わってから思った。
    その彼の自責は母親が死んでしまう前の一年間の彼自身の盲目(客観的にみたら仕方がないと思うけど、それもわかってるから彼は「しょうがない」って言ってたんだろう)から起こっているもので、それをずっと受け入れられなかったんだなと。
    彼がやっていたことは、確かに彼自身のエゴによるものだったけど、人との関係性ってつまるところ自分のエゴが他人の溝にハマるかハマらないかだと私は思っているので、最後に彼のその在り方が、恋人と恋人のお母さんの溝にハマってよかったな思った。

  • 「エゴイスト」は映画化され、評判が良かったのでずっと気になっていた。
    同性愛の切ない内容だと思って読み進めたが違っていた。いや、違ってはいないが家族愛がテーマの作品だと思う。

    大切な人の為にしてきた事は愛なのかエゴなのか…自問自答する主人公。浩輔(高山真さん)に言いたい。エゴではなく愛です。と





  • 映画を観てから本書を取った。タイトル「エゴイスト」の意味合いが映画よりもしっかり理解できたと思う。映画を観た時は、龍太の死後なぜ浩輔が龍太の母親の面倒を見るのかハッキリ分からなかったが、本書でスッキリできた。

    自分にとっての身勝手なエゴな行動が、必ずしも相手に迷惑を掛ける訳ではない。逆に相手の幸せに繋がる事もある。お互いがエゴイストとして生きていっても、お互いを助け合えるような奇跡的な関係性が理想なのかもしれない。

    そう考えると、エゴと対立するかのように感じてしまう愛とは何か?逆に、自分を押し殺してまでも相手のためにする行動は愛なのか?

  • 同性愛の物語というよりも、母への贖罪と愛の物語でした。
    自分の体験を元に書かれたようですが、現実離れした美しい部分と現実的な部分が混在し、それだけに、作者の現実での苦悩を感じさせる作品でした。
    弱さと、優しさと、真摯な愛を併せ持った主人公を鈴木亮平がどう演じるのか、映画も気になります。

  • 愛とは何か?
    自分がしていることは愛ゆえか、それともエゴなのか?
    色々考えさせられるた。
    たとえ愛と呼べなくても、温かい人間関係であることは確かで、人生で一番素晴らしいものに違いない。
    涙なしでは読めなかった。
    鈴木亮平が主人公を演じる映画もぜひ観てみたい。

  • セクシャリティーのことで誰かに「ごめんなさい」しなくてよい当たり前の世界が早く来ますように。

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