間宮兄弟 (小学館文庫)

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  • 小学館
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レビュー : 375
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082180

感想・レビュー・書評

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  • 「自分のスタイルと考え方を持ち、たとえ世間から多少『へん』に思われても愉快に快適に暮らす」間宮兄弟の、ありふれた日々を淡々と、しかし、魅力的に描いた物語です。
     
    酒造メーカーに勤める35歳の兄・明信と、小学校の校務員を勤める32歳の弟・徹信。
    共に独身で、2LDKのマンションで二人暮しをする彼らは、その冴えない風貌や人見知りがちな性格のせいで女性にはもてませんが、勤勉に仕事をこなし、たくさんの趣味を持ち、性質の異なるお互いや離れて暮す老母を尊重し労わり合いながら、平凡でも充実した日々を過ごしています。

    相手に何かを要求してしまう結婚生活や恋愛に疲れて不満や虚無感に悩む、兄弟の同僚や知人女性たちの生活や心のあり方との鮮やかな対比を目の当たりにすると、意中の女性へのアプローチこそ玉砕しますが、支えあって実直に生きる兄弟の生活にも確かに魅力があることに気付かされます。

    他の登場人物とは違うこの兄弟の魅力は、自分自身の性質を正確に理解した上で、他人を貶めたり自分と他人を比較して惨めな気持ちになるということはせずに、誠実な姿勢と適切な努力で身の丈にあった生活を送ることに努めていることではないかと思いました。
    それは決して彼らが悩んだり悲しんだりすることがない、という意味ではありません。彼らも悶々と悩んだり感傷的になったり行き詰ったりはします。
    それでも彼らは何かを人のせいにすることはしないのです。

    この小説には、劇的な展開はありません。しかし、誰かに依存したり振り回されるのではなく、自分のスタイルと考え方を持つことで平凡な日常を豊かに生きていく兄弟の姿には、読み手自身の心のあり方や生活習慣を振り返らせる不思議な力があります。物語の中で彼らと接した女性たちが思わずそうしていたように。
     
    2時間もあれば十分読めてしまう作品ですので、一度、自分自身を軽い気持ちで見直してみたいときなどによい小説ですね。

  • 女性にもてない兄弟の話なのに、読み終わってこんなに優しい気持ちになれるなんて、何だか不思議な物語です。
    彼らの健全さが、逆に世間から取り残されているようで、メルヘンチックというか、キュートというか。
    こちらがすっかり安堵させられてしまっているところが、不思議でしょうがないです。

  • 江国さんの本はあまり読まないのですが、これはとても好きでした。自分の苦手なものと好きなものを知って、選んで生活する兄弟の暮らし方は、「それは理想だけどチョット」と二の足踏んで、窮屈に暮らしている人間には軽やかに羨ましく映ります。

  • 間宮兄弟は、タイトルや装丁が雰囲気じゃないなーなんて敬遠していたのだけど、読むとすっかりすきになった。タイトルも装丁もぴったり。

    似ているようで似ていない兄弟。兄弟は面白い。親もしらない、絆といってはきれいすぎるようなきがするけれど、そういうものでつながっている。家族という社会を、共有している。

    どこかで、彼らのようなひとたちが、生活を送っているかもしれないと思うと、不思議にほっとするのだった。

  • 仲が良い・・・良すぎる兄弟のお話。
    がんばってと応援したくなるような二人。
    映画よりも、せつない感じがしました。

    もし近くにいたらお友達になって、
    一緒にごはんを食べて遊びたい。
    だけど実際にあんな仲の良すぎる兄弟がいたら、
    異様な感じでちょっと近よりがたいのかもしれないですね。

    そんな感じの2人のお話なのですが、
    読んだ後はほのぼのとして
    ほんわか あたたかい気持ちになりました。

  • 女にモテない、格好もよくない、なんだか気になるし、一緒にいるとそれなりに楽しいけれど、惚れはしない。なんだかこのまま過ごしていくのも不安、でもたまに刺激的なこともある穏やかな日常も素晴らしい。大事件が起こるわけでもなく、兄弟はやっぱり相変わらずだし、感動したとか、考えさせられたとかそういう気持ちではないのだが、なんとなーくいい気分になって、楽しくなれる話だった。
    理由をあげるのは難しいけど、なんだか好きな本。

  • 中学か高校で読んだ時は、風変わりなの兄弟の面白い話という感じでさくっと読んだ気がしたけれど、今回は、「モテない」という部分にすごく引っ張られた。容姿という理不尽さが凝縮されたようなものとの、折り合い。自分がどうしようもなく自分でしかないということを耐えて、日々を暮らすことの強さ。そして自分に対しても他人に対しても正直であり、まっとうであること。そんなことを考えた。

  • 酒造メーカーに勤める兄・間宮明信と、小学校の事務員である弟・間宮徹信。二人は同じ家に暮らし、マイペースな毎日を過ごす。女性にもてなくとも幸福に生きる兄弟の日常の物語。

    「人生を楽しむ」とはまさに間宮兄弟の生き方そのものである。二人は自分がどうすれば幸せを感じるか、心地よく過ごせるかを熟知している。それだけではなく、その術を日々実践している。私たちにはその“実践”が、なかなか難しい様に思う。「私はこうしているときが幸せだ」と分かっていても、一般的な価値観で否定してしまったり、周囲の人の目が気になって恥ずかしくなったり、つい見栄を張ってしまったりするものである。間宮兄弟の楽しみは、例えば贔屓のプロ野球球団の試合のスコアを欠かさずつけること、レンタルビデオ店で3本ずつ選んだ洋画を、昼も夜もひたすら観ること、夜の公園で紙飛行機を飛ばすこと、といったもの。お金がかかったり派手であったりするようなものでは決してない。しかし等身大の幸せがそこにある。
    生きていく中で辛いことや嫌なことはあるけれど、その分きっちり楽しいことをすればいい。「人生を楽しむ」とはどういうことであるかを間宮兄弟は教えてくれた。

  • 「間宮兄弟」という映画があることも小説があることも知っていたけれど、なんとなく、映画の佐々木蔵之助と塚地武雅の印象から離れられずに(映画も観ていないけど)読まないでいた。
    でも久しぶりに江國香織の本を読みたいと思って、手にとってみると、あれ、おもしろそう。
    するすると、物語に入りこむことができた。
    兄弟の個性というか、それぞれのこだわりが強い。他人同士だったらもっとひどい喧嘩になってしまうんじゃないかということも、家族というのは不思議で、ぶすぶす言いながらも相手を許している。そういう優しさが根っこに流れているんだと思う。
    人との関係で、憂鬱になりながらも、兄弟は自分たちの好きなこと(パズルゲームや音楽や食事)を、いっしょに思う存分楽しんでいる。まったく進歩していないように思うところも、それでもいいんじゃないかと思わせてしまう。
    ゆっくりと日々の暮らしを楽しんでいる。そう、楽しんでいるということがひどく羨ましく映る。

    この兄弟、読んでいると、佐々木蔵之助と塚地武雅がぴったりだ。物語から浮き出てきそうなくらい。映画も観てみようと思った。

  • やっぱり江國香織さんの書く文章好きだなあ。

    ズレててもいいじゃんって、背中を押されてる気がする。

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著者プロフィール

江國 香織(えくに かおり)
1964年、東京生まれの小説家。1986年、児童文学雑誌『飛ぶ教室』に投稿した「桃子」が入選。2004年、『号泣する準備はできていた』 で、第130回直木賞を受賞。他、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。代表作として、映画化もされた『きらきらひかる』や『冷静と情熱のあいだ』など。女性のみずみずしい感覚を描く作家として、多くの読者を魅了している。また、小説から絵本から童話、エッセイまで幅広く活躍中。翻訳も手がけている。2019年5月2日、2年ぶりの長編小説『彼女たちの場合は』を刊行。

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