間宮兄弟 (小学館文庫 え 4-1)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 4318
感想 : 439
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082180

作品紹介・あらすじ

兄・明信は酒造メーカー勤務。弟・徹信は小学校の校務員。30歳をすぎても一緒に暮らすこの兄弟は、女性にはもてませんが、日常を楽しむ術をよく知っています。職場の女性を誘ってホームパーティを開いたり、上司の不倫の恋にまきこまれたりするなかで、兄弟の気持ちは揺れ動きます。ふたりのほのかな恋の結末は? 江國香織が初めて繊細な男ゴコロを描いて、森田芳光監督による映画化も話題になった作品の待望の文庫化です。解説は三浦雅士。

感想・レビュー・書評

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  • R4.3.15 読了。

     面白かった。こういう作品は、好きですね。
     正義感が強く、物知りで几帳面で気持ちのやさしい酒造メーカーに勤務している兄の明信と楽観的でおおらかで手先が器用でまじめな性格で小学校職員の弟の徹信。
    二人にはそれぞれのこだわりや決まり事、世界観があり毎日を二人で穏やかに暮らしている。
     まさか兄弟それぞれが好きな人に告白する場面や兄弟げんかが始まりそうな場面で、ドキドキするとは思わなかった。いつかは二人にはそれぞれを等身大のそのままの男性として受け入れてくれる女性と巡り会って、素敵な恋をしてほしいと願ってしまう。
    読み終わった今もこの二人は、四季の移ろいとともに毎日の生活を今日も送っているんだろうなあと思いを巡らしてしまう。

  • 家にあった本。今の自分とはほど遠い人達の物語を読みたくて。江國さんを久しぶりに読んだが、イケてない男達を描いても何だかとてもおしゃれでいいなぁと。贅沢でなくても自分達の好きな物に囲まれ好きな事をして心許す人と暮らすのには憧れる。

  • 実家に帰るときには指定されたお土産をたくさん買っていくとか。
    毎年母親の誕生日には、食事に連れていくとか。
    冬至には柚子湯とかぼちゃを欠かさないとか。育ちが表れているんだろうなと思う。
    間宮兄弟はいい人たちだ。そして、女性とうまくいかないのもよく分かるのだ。

    兄弟で暮らしているというのは子供時代の延長のようで、完全に安心できる家の中にずっと居るみたいだ。
    他人と家庭内ルールをすり合わせる必要がない。自分たちを形作った常識は、無条件で二人の暮らしの常識になっている。
    彼らが彼らのルーティンと心地よさで暮らすところに、色々なことや人々が近寄って来ては離れていったり、通り過ぎていったり、それでも兄弟は変わらず生きていくんじゃないかと思えてしまう。
    懐かしさと安心感があって、いつまでもこのままでいられるのかなんてことは今は考えなくていいよ、という気持ちになるのだ。

  • 間宮兄弟が、未来の私であって欲しいな。

  • ありのままに受け入れてくれる家族に見守られて、時に見守って…とにかく真面目に仕事をして生活を楽しんで。恋愛は全然上手くいかないけど、なんだか愛すべき間宮兄弟。

    都合の良い勘違いも多いからふわっとしているようだけど、ちゃんと地に足がついている。だからか?そこそこ友達も出来る。

    いろんな不安はあるけど、おじいちゃんになっても間宮兄弟はこのままでいてほしい。

  • 「自分のスタイルと考え方を持ち、たとえ世間から多少『へん』に思われても愉快に快適に暮らす」間宮兄弟の、ありふれた日々を淡々と、しかし、魅力的に描いた物語です。
     
    酒造メーカーに勤める35歳の兄・明信と、小学校の校務員を勤める32歳の弟・徹信。
    共に独身で、2LDKのマンションで二人暮しをする彼らは、その冴えない風貌や人見知りがちな性格のせいで女性にはもてませんが、勤勉に仕事をこなし、たくさんの趣味を持ち、性質の異なるお互いや離れて暮す老母を尊重し労わり合いながら、平凡でも充実した日々を過ごしています。

    相手に何かを要求してしまう結婚生活や恋愛に疲れて不満や虚無感に悩む、兄弟の同僚や知人女性たちの生活や心のあり方との鮮やかな対比を目の当たりにすると、意中の女性へのアプローチこそ玉砕しますが、支えあって実直に生きる兄弟の生活にも確かに魅力があることに気付かされます。

    他の登場人物とは違うこの兄弟の魅力は、自分自身の性質を正確に理解した上で、他人を貶めたり自分と他人を比較して惨めな気持ちになるということはせずに、誠実な姿勢と適切な努力で身の丈にあった生活を送ることに努めていることではないかと思いました。
    それは決して彼らが悩んだり悲しんだりすることがない、という意味ではありません。彼らも悶々と悩んだり感傷的になったり行き詰ったりはします。
    それでも彼らは何かを人のせいにすることはしないのです。

    この小説には、劇的な展開はありません。しかし、誰かに依存したり振り回されるのではなく、自分のスタイルと考え方を持つことで平凡な日常を豊かに生きていく兄弟の姿には、読み手自身の心のあり方や生活習慣を振り返らせる不思議な力があります。物語の中で彼らと接した女性たちが思わずそうしていたように。
     
    2時間もあれば十分読めてしまう作品ですので、一度、自分自身を軽い気持ちで見直してみたいときなどによい小説ですね。

  • ちょっと〝ヘン〟でモテないけれど、心優しく真っ直ぐな兄弟の物語。兄弟の母親はちゃっかりしているし、女子高生カップルは見た目に反して良い子達で…何だかホッとした。
    近くに間宮兄弟のような人がいたら、と想像してみたりもした。二人には幸せになって欲しいし、いつか続編が出るといいなと思った。

    本編とは関係ないが、三浦雅士氏の解説がいまいち入ってこなかった。文庫が出版されたのは十数年も前なのだから仕方ないのかもしれないが、時代錯誤感は否めない。

  • 女性にもてない兄弟の話なのに、読み終わってこんなに優しい気持ちになれるなんて、何だか不思議な物語です。
    彼らの健全さが、逆に世間から取り残されているようで、メルヘンチックというか、キュートというか。
    こちらがすっかり安堵させられてしまっているところが、不思議でしょうがないです。

  • 30代の兄弟(明信と徹信)ふたりで暮らす、間宮兄弟。
    「もう女の尻を追うのはやめた」と言いながら、
    近所のビデオ屋の店員を心の恋人にしたり、兄の同僚の妻に一目惚れしたり、忙しい。
    ふたりの失恋についても、30代だし、かわいそうというより、「あらまぁ」という気持ちで、だんだんとくすりと笑えてくる。
    母的な気持ちになってしまうのだ。
    間宮兄弟の母(映画版では、中島みゆき!)も、良い。息子たちのことを誇りに思っている、という表現が良い。
    息子のことを「かわいい」でも「好き」でもなく(もちろんその両方の感情は包含しているはず)、30代の息子に対して「誇りに思う」という相手を尊重した感情、素敵だ。

    徹信の仕事は、学校職員。私が通っていた小学校にもいて、私は用務員さんと呼んでいたなぁ。なつかしい。
    私の母校はすごく古い学校だった。その学校の1階の片隅に畳の部屋があって、その部屋に、当時30代くらいのいつも作業着を着た用務員さんがいた。
    そうか、用務員さんって、こういう仕事をしてくれていたんだ。
    夏休み期間中に同級生誰も水やりをしていない植物が、夏休み明けにきっちり成長していたり、いつの間にかヘチマにネットと支柱が設置されていたりしたのは、あのおじさんのおかげだったんだろうなぁ。
    徹信のおかげで、ちょっと懐かしい気持ちになった。

  • 14年くらい前に映画にもなったんですね。知らなかった。間宮兄弟は世間では「イケていない」部類に間違いなく入ると思いますが、2人の生活は好きなものに囲まれていてとても居心地良さそう。何は無くともお互いがいるし、美味しいカレー、コーヒー、雰囲気のある音楽、趣味の読書やパズルなど、自分もそこに居たくなる。
    弟のほう、なんだか私の兄を彷彿させられて胸が熱くなった。私の兄は天国に行ってしまったけれど、小説の中で兄に会えた気分になりました。映画も観たいな。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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