さくら (小学館文庫)

著者 : 西加奈子
  • 小学館 (2007年12月4日発売)
3.75
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  • 本棚登録 :3991
  • レビュー :505
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082272

作品紹介

ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四か月で死んだ。超美形の妹・美貴は、内に篭もった。母は肥満化し、酒に溺れた。僕も実家を離れ、東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾にピンク色の花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた十二歳の老犬が一匹だけ。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏に薄い鉛筆文字で書かれた家出した父からの手紙が握られていた-。二十六万部突破のロングセラー、待望の文庫化。

さくら (小学館文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  きっかけ
     
     すこし調子が悪いときに、試験の同期が、
    「すごく悲しくて幸せな本」と紹介してくれたのがこの本でした。

    構成、の代わりに物語の彩り
     僕、さくら、お母さん、おとうさん、彼女、ミキ、ばあちゃん、
    おじいさん、フェラーリ、望月君、難関、湯川さん、パラボラ猫、
    おばさん、妖怪、矢嶋さん、サキコさん、ゲンカン、薫さん、警察
    官(ぬけていたらすいません)


    印象に残った文章、せりふ
     ぼくは貯金が出来ない。
     女の子はいつか赤ちゃんを産むけど、きっとこの子は小さいか
    ら、桜の花びらを産んだんよ。

    「ああこの人の前で、思い切り餃子が食べられるような関係
    になりたい」

     「ミキ、生まれてきてくれて、有難う。」
    大人になるというのは、ひとりで眠ることじゃなくて、眠れない
    夜を過ごすことなんだ。

     「嘘をつく時は、あんたらも、愛のある嘘をつきなさい。」

     「薫さん黒帯やで。」

     兄ちゃんが食べ残したごはんを食べるように、母さんは
    少しずつ太りだした。

     さく、さく、さく、さく

     「この体で、また年を超すのが辛いです。 ギブアップ」

     「あんたらが三人揃ってたら、それだけで笑えんのよ。」

     「病院なんかなんぼでもある。」

     「あのランドセルは、捨てたぞ。」

  • 温かい家族のお話。
    人生なにもかも上手くいく事はないけれども、誰にも必ず大事なものはあるし、大事な人はいる。私も私の思う大事なものを守って生きていきたい。

  • 西加奈子らしさが前面に出た作品だと思います。
    歪んだ中でも安定感とか、おかしな明るさとか、感動とかじゃないけど思わず泣きそうになる、というか泣いてしまう。
    またさくらがね、そこをさらに刺激してくるんですよ。
    同じ内容とか題材でも、やっぱり西さんのこの文体じゃないと伝わらないものがあるなぁと思います。

  • 6人家族の美しい描写に熱くも冷たくもないあったかいお風呂に入っているような気持ちになりました。愛し合っているお母さんとお父さん。かっこいいお兄ちゃんに、美人の妹に挟まれた平凡な薫くんとサクラというわんこ。
    長男次男末っ子の一般的な性格診断の通りに育った子供達は、まっすぐでユニークで温かい。長男の一くんと次男の薫くんの恋愛描写がリアル甘酸っぱくて、学生の頃を思い出しました。

    性的描写が柔かく温かく表現されていて、中高生に『性と愛』を伝えるには良い作品です。


    バランスって言葉がぴったりの家族。
    6人のうち一人でも欠けてしまうと崩れてしまう、お互いが大好きな家族。
    恋心が引き金に小さな罪が重なって、許されないものになって。
    あったかいお風呂みたいだったのに、悲しみと悔しさで冷たくなっていく様が悲しかった。
    悲しみの底から這い上がってくれてよかった。
    残り100ページあたりからのどんでん返し。最後は、ハッピーエンドでよかった。

  • 「窓の魚」が合わなかった西加奈子さんに再挑戦。うん、前作で諦めないでよかった!まったく印象がちがう。すごくよかった。

    登場人物ひとりひとり(+1匹)が生き生きとしていて、まるで家族の日常をお隣さんとして内から外から覗いているようで、読んでいるうちに長谷川一家が愛おしくてたまらなくなった。
    お兄さんが亡くなることがはじめから明かされているから、前半の愛に溢れた家族の情景がすごくまぶしくて、壊れて欲しくないと願ってしまう。
    そしてその分、後半はすごく苦しい。。それぞれにもがく家族の姿が、辛かった。でも、最後のミキの言葉。「生まれてきてくれて、ありがとう」。これが全て。たとえ姿かたちが変わってしまっても、マイノリティでも、この世界からいなくなってしまっても。
    夫婦、親子、兄妹、恋人。強く結びついているようでいて、その関係は脆い。でも、掛け値なく、まさに「美しく貴い」ものだとあらためて思わせてくれた。
    号泣しました。家族ができた今、読んでよかった。

  • 個性的な両親に育てられたこれまた個性的な3兄妹、そんな小説世界にありがちな幸せ5人家族の幸せ劇とその崩壊と再生の萌芽までを描く、西加奈子らしい小説。

    彼ら家族をつなぐ愛犬「さくら」がなんともエエ味を出していて、確かにタイトルになるよなって感じ。他の登場人物たちのアクの強さに、作中の目立ち方はさほどでもないが、読み終わってみると、なるほど彼ら一家に「さくら」がいたから再生があり得たのかもなぁと思えてしまう。この辺、西加奈子のペースに嵌められてるんだろうなと思うが、悪い気はしない。

    比喩表現が少々しつこいことや、中学生がセックスしまくることへの違和感や、妹美貴のとある行動がなんぼ小説でもちょい嫌悪感抱いたこと等、若干瑕疵と思える部分もあるし、荒削り感も否めないが、全体的にパワーを感じる小説。今に至る西加奈子の活躍の片鱗が分かる作品でもある。

    生き方、家族のありようは、もっと自由であっていいよな…と思える1冊でした。

  • 家族にはその家族だけの幸せな時や悲しい時がある。
    でも何もない普通の日常が一番幸せなんだろうな。
    サクラも大切な家族。

    好きやって、言う。迷わんと言う。
    ・・・・
    生まれてきてくれて、ありがとう。

    この本を読んで自分の家族の幸せだった頃少しだけ思い出した。
    むかしの事だけど思い出した。

  • 西加奈子さんの作品にはリアルがある。
    隣の家で起きているような、ごく親しい友人に起きているような、何年かに一度会うか会わないかの親戚に実は起きているような、だけど私は死ぬまで知らずに終わるかもしれない、そんなリアルがある。登場人物はとても変わっていて、だけどどんどん読んで行くと、変わっているのは私の方かもしれないと思ってしまうほど、彼らは自然でまっすぐで素直なんだ。

    主人公の薫には、宇宙一幸せな父さんと、美しく明るい母さん、太陽のようでどんな場所でも中心にいるような人気者の兄さんと、そんな兄さんに恋をする、乱暴者で愛想のないとびきり美人の妹がいる。その家族には、大して美しくはないが賢く愛嬌のある「さくら」が、幸せの象徴として飼われている。

    太陽のような兄さんと僕はいつも一緒にいて、可愛い妹の誕生を喜んだり、両親の仲睦まじさに目を合わせたり、互いの初体験やなんやかやを語り合ったりしたのだが、そしてそこには僕の、兄さんに対する絶対的な信頼と羨望があった。
    世界で2番目か3番目に美しい妹は生まれながらに兄さんしか見えなくて、父さんも母さんも当然ながら太陽の恵みを毎日受けていた。

    兄さんの事故と後遺症と、それらに苦しめられた末の自殺によって、家族の笑顔は奪われたのだが、「さくら」だけは変わらずボールを追いかけたわしと戯れる。
    変わり果てた家族が、また少しずつ共に歩き始められるまでの希望を感じさせる物語だ。

    いくつも心に残る場面があるのだが、
    三兄弟が両親のセックスの声を聞いてしまった翌朝、ミキ(妹)が勇敢にも「何やってたの?」と聞いた時の母さんの回答は、我が子に同じことを尋ねられた時に真似しようと思ったし、
    父さんが「不幸」に耐えきれずに出て行ってしまった時に、主人公が、我が家の幸せを支えていたものがは兄さんの笑顔や母さんの歌声なんかの「燦々と降り注ぐ夏の太陽みたいな暖かさ」ではなくて、父さんがチェスを楽しむ音やメガネを拭く音なんかの「秋口の遠慮がちな太陽みたいなそれ」だったと悟るところなんかは、あぁそうだよ、幸せは、慶びは、静かにそこにあるものなんだよ、なんて思ってしまった。
    それから、人生について。兄さんや主人公が、「ボール」を受けたり投げたりすることと自分の人生とを重ねていく中で、「さくら」は目の前にあるただ戯れずにはいられないものとして「ボール」と対峙する。面白い。

    圧倒的なのは西さんがあとがきで書いていることだ。
    「『何かを書くこととは?』ということを忘れることが出来るのは、何かを書いている間だけである」

    意味なんてない。いや、あるのかも知れないけど必ずしも考えてその場で理解しようとしなくていい。
    今ここに立って、没頭してみるんだ。
    意味を知るとしたら、その後だ。

  • すごく、すごく良かった!どれぐらい良かったかなんて、それは本当に美味しいものを食べた時に「塩加減が良い」とか「味付けが絶妙」なんて事を全て取っ払って、”美味しかった”というように、この本は本当に”面白かった”です。久しぶりに何度もあと何ページかを確認したし、それは早く終わって欲しくてではなく、いつまでも終わらないで、ずっとずっとこの家族に寄り添っていたかったからです。全てのことが幸せにいくわけではないけれど、生きてるって幸せ!そんな当たり前のことを、ドラマチックに教えてくる素晴らしい本だと思います。

  • 西さんは美しすぎて温かすぎて胸が詰まるような悲しくなるような、「幸せ」、瞬間でしかないそれを確かな形で見せてくれる。

    だから辛いだけじゃない。家族が一時は壊れかけても、大切な何かを失っても。
    そして、救いを見せてくれる。

    車内でのミキの告白。薫さんの演説シーンが印象的で良かった。

    この世界にはいろんなひとがいて'フェラーリ'の世界を生きる人がいること、自分もそうなるのかもしれないこと、そうなっていたかもしれないこと、当たり前のことなんてないこと、そんなことを想像できるひと、わかるひとでありたい。とこの作品を読み終えた今、そう強く思う。

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