さくら (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 4557
レビュー : 553
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082272

作品紹介・あらすじ

2020年初夏、映画化!

ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四か月で死んだ。超美形の妹・美貴は、内に篭もった。母は肥満化し、酒に溺れた。僕も実家を離れ、東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾にピンク色の花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた十二歳の老犬が一匹だけ。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏に薄い鉛筆文字で書かれた家出した父からの手紙が握られていた-。二十六万部突破のロングセラー、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 家族の日常がとても温かく書かれているのと同時に、とても残酷な出来事から崩壊する家族の様子も率直に書かれています。

    それぞれのエピソードが印象的。

    お母さんが小さな子供に夜の営みのときの声を聞かれてしまったときのエピソードはすごく感動的でした。
    誰もが親になった時に返答に困るところだと思うけれど、これがあるべき性教育ではなかろうか、と思えるほどでした。
    それと、お兄ちゃんへのラブレターの話は衝撃的でした。
    しかも挟み込むタイミングが強烈。

    そしてなにより、表題にもなっている、サクラちゃん。
    話しかけてくるのをセリフで表現していて、なかなか新鮮に思えたのですが、無邪気で空気読めてなくてカワユイ。
    わりと重たいエピソードも多かったと思うのですが、サクラちゃんのふんわりした存在感が和らげている印象でした。

    西加奈子は、「i」「サラバ!」に続いて3作目。
    3作に共通しているのは、愛、信じること、なんじゃないかと思います。

  •  きっかけ
     
     すこし調子が悪いときに、試験の同期が、
    「すごく悲しくて幸せな本」と紹介してくれたのがこの本でした。

    構成、の代わりに物語の彩り
     僕、さくら、お母さん、おとうさん、彼女、ミキ、ばあちゃん、
    おじいさん、フェラーリ、望月君、難関、湯川さん、パラボラ猫、
    おばさん、妖怪、矢嶋さん、サキコさん、ゲンカン、薫さん、警察
    官(ぬけていたらすいません)


    印象に残った文章、せりふ
     ぼくは貯金が出来ない。
     女の子はいつか赤ちゃんを産むけど、きっとこの子は小さいか
    ら、桜の花びらを産んだんよ。

    「ああこの人の前で、思い切り餃子が食べられるような関係
    になりたい」

     「ミキ、生まれてきてくれて、有難う。」
    大人になるというのは、ひとりで眠ることじゃなくて、眠れない
    夜を過ごすことなんだ。

     「嘘をつく時は、あんたらも、愛のある嘘をつきなさい。」

     「薫さん黒帯やで。」

     兄ちゃんが食べ残したごはんを食べるように、母さんは
    少しずつ太りだした。

     さく、さく、さく、さく

     「この体で、また年を超すのが辛いです。 ギブアップ」

     「あんたらが三人揃ってたら、それだけで笑えんのよ。」

     「病院なんかなんぼでもある。」

     「あのランドセルは、捨てたぞ。」

    • 79kaさん
      SSSさんのレビューを見て、読んでみたくなりました。今度探してみます。ありがとうございました!
      SSSさんのレビューを見て、読んでみたくなりました。今度探してみます。ありがとうございました!
      2010/06/21
  • 毎日は、些細な時間の積み重ねであるけど、あと一本抜かれたら壊れるジェンガみたいに荒々しくも繊細に紡がれていて、それが、神様の悪送球で崩れたら。それでもいつかは、抱えた苦しみが合わさって一筋の光に変わる、きっとそう。 

    映画化されるんだくらいの軽い気持ちで手に取ったが最後、時間を忘れて彼らに浸った。

  • 西加奈子らしさが前面に出た作品だと思います。
    歪んだ中でも安定感とか、おかしな明るさとか、感動とかじゃないけど思わず泣きそうになる、というか泣いてしまう。
    またさくらがね、そこをさらに刺激してくるんですよ。
    同じ内容とか題材でも、やっぱり西さんのこの文体じゃないと伝わらないものがあるなぁと思います。

  • 「窓の魚」が合わなかった西加奈子さんに再挑戦。うん、前作で諦めないでよかった!まったく印象がちがう。すごくよかった。

    登場人物ひとりひとり(+1匹)が生き生きとしていて、まるで家族の日常をお隣さんとして内から外から覗いているようで、読んでいるうちに長谷川一家が愛おしくてたまらなくなった。
    お兄さんが亡くなることがはじめから明かされているから、前半の愛に溢れた家族の情景がすごくまぶしくて、壊れて欲しくないと願ってしまう。
    そしてその分、後半はすごく苦しい。。それぞれにもがく家族の姿が、辛かった。でも、最後のミキの言葉。「生まれてきてくれて、ありがとう」。これが全て。たとえ姿かたちが変わってしまっても、マイノリティでも、この世界からいなくなってしまっても。
    夫婦、親子、兄妹、恋人。強く結びついているようでいて、その関係は脆い。でも、掛け値なく、まさに「美しく貴い」ものだとあらためて思わせてくれた。
    号泣しました。家族ができた今、読んでよかった。

  • 西加奈子さんの作品にはリアルがある。
    隣の家で起きているような、ごく親しい友人に起きているような、何年かに一度会うか会わないかの親戚に実は起きているような、だけど私は死ぬまで知らずに終わるかもしれない、そんなリアルがある。登場人物はとても変わっていて、だけどどんどん読んでいくと、変わっているのは私の方かもしれないと思ってしまうほど、彼らは自然でまっすぐで素直なんだ。

    主人公の薫には、宇宙一幸せな父さんと、美しく明るい母さん、太陽のようでどんな場所でも中心にいるような人気者の兄さんと、そんな兄さんに恋をする、乱暴者で愛想のないとびきり美人の妹がいる。その家族には、大して美しくはないが賢く愛嬌のある「さくら」が、幸せの象徴として飼われている。

    太陽のような兄さんと僕はいつも一緒にいて、可愛い妹の誕生を喜んだり、両親の仲睦まじさに目を合わせたり、互いの初体験やなんやかやを語り合ったりしたのだが、そこには僕の、兄さんに対する絶対的な信頼と羨望があった。
    世界で2番目か3番目に美しい妹は生まれながらに兄さんしか見えなくて、父さんも母さんも当然ながら太陽の恵みを毎日受けていた。

    兄さんの事故と後遺症と、それらに苦しめられた末の自殺によって、家族の笑顔は奪われたのだが、「さくら」だけは変わらずボールを追いかけたわしと戯れる。
    変わり果てた家族が、また少しずつ共に歩き始められるまでの希望を感じさせる物語だ。

    いくつも心に残る場面があるのだが、
    三兄弟が両親のセックスの声を聞いてしまった翌朝、ミキ(妹)が勇敢にも「何やってたの?」と聞いた時の母さんの回答は、我が子に同じことを尋ねられた時に真似しようと思ったし、
    父さんが「不幸」に耐えきれずに出て行ってしまった時に、主人公が、我が家の幸せを支えていたものがは兄さんの笑顔や母さんの歌声なんかの「燦々と降り注ぐ夏の太陽みたいな暖かさ」ではなくて、父さんがチェスを楽しむ音やメガネを拭く音なんかの「秋口の遠慮がちな太陽みたいなそれ」だったと悟るところなんかは、あぁそうだよ、幸せは、慶びは、静かにそこにあるものなんだよ、なんて思ってしまった。
    それから、人生について。兄さんや主人公が、「ボール」を受けたり投げたりすることと自分の人生とを重ねていく中で、「さくら」は目の前にあるただ戯れずにはいられないものとして「ボール」と対峙する。面白い。

    圧倒的なのは西さんがあとがきで書いていることだ。
    「『何かを書くこととは?』ということを忘れることが出来るのは、何かを書いている間だけである」

    意味なんてない。いや、あるのかも知れないけど必ずしも考えてその場で理解しようとしなくていい。
    今ここに立って、没頭してみるんだ。
    意味を知るとしたら、その後だ。

  • 温かい家族のお話。
    人生なにもかも上手くいく事はないけれども、誰にも必ず大事なものはあるし、大事な人はいる。私も私の思う大事なものを守って生きていきたい。

  • 作家デビュー2作目の本。小さくて、弱っちくて、ちっとも素敵じゃない雌犬、尻尾に付いていたピンクの花びらでサクラと命名されてから ずっとずっとこの五人家族と共に暮らして来た。おばあちゃん犬になっても寄り添ってきたこの家族は当たり前以上に大きく変わって行くのだけれど 、それでもずっと寄り添い続けて来たしこれからも傍に居てやりたいと思っていますワン♪ 2005.3発刊の作品、良かった。

  • 家族にはその家族だけの幸せな時や悲しい時がある。
    でも何もない普通の日常が一番幸せなんだろうな。
    サクラも大切な家族。

    好きやって、言う。迷わんと言う。
    ・・・・
    生まれてきてくれて、ありがとう。

    この本を読んで自分の家族の幸せだった頃少しだけ思い出した。
    むかしの事だけど思い出した。

    • 9nanokaさん
      読みたいと思って買って、でもなんとなく始まりで躓いて置いたままになっている本でした。
      komoroさんの感想を読んで改めて読んでみようと思い...
      読みたいと思って買って、でもなんとなく始まりで躓いて置いたままになっている本でした。
      komoroさんの感想を読んで改めて読んでみようと思いました(^^)
      komoroさんの家族が幸せだった頃がむかしのこと、とあって少し切なくなりました。
      2018/01/25
    • komoroさん
      コメントありがとうございます。家族が幸せだっ頃というのは僕の子供の頃の話です。もう父もいないし4人家族だったけれど平凡で幸せだったなとこの本...
      コメントありがとうございます。家族が幸せだっ頃というのは僕の子供の頃の話です。もう父もいないし4人家族だったけれど平凡で幸せだったなとこの本を読んで思い出したんです
      2018/01/27
  • 参りました。
    やられたわーー
    読んでいて場面場面が映像で浮かんでくるなんて、、、
    素敵な作品に出会えました。

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著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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