さくら (小学館文庫)

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  • 小学館
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本棚登録 : 4639
レビュー : 561
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082272

感想・レビュー・書評

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  •  きっかけ
     
     すこし調子が悪いときに、試験の同期が、
    「すごく悲しくて幸せな本」と紹介してくれたのがこの本でした。

    構成、の代わりに物語の彩り
     僕、さくら、お母さん、おとうさん、彼女、ミキ、ばあちゃん、
    おじいさん、フェラーリ、望月君、難関、湯川さん、パラボラ猫、
    おばさん、妖怪、矢嶋さん、サキコさん、ゲンカン、薫さん、警察
    官(ぬけていたらすいません)


    印象に残った文章、せりふ
     ぼくは貯金が出来ない。
     女の子はいつか赤ちゃんを産むけど、きっとこの子は小さいか
    ら、桜の花びらを産んだんよ。

    「ああこの人の前で、思い切り餃子が食べられるような関係
    になりたい」

     「ミキ、生まれてきてくれて、有難う。」
    大人になるというのは、ひとりで眠ることじゃなくて、眠れない
    夜を過ごすことなんだ。

     「嘘をつく時は、あんたらも、愛のある嘘をつきなさい。」

     「薫さん黒帯やで。」

     兄ちゃんが食べ残したごはんを食べるように、母さんは
    少しずつ太りだした。

     さく、さく、さく、さく

     「この体で、また年を超すのが辛いです。 ギブアップ」

     「あんたらが三人揃ってたら、それだけで笑えんのよ。」

     「病院なんかなんぼでもある。」

     「あのランドセルは、捨てたぞ。」

    • 79kaさん
      SSSさんのレビューを見て、読んでみたくなりました。今度探してみます。ありがとうございました!
      SSSさんのレビューを見て、読んでみたくなりました。今度探してみます。ありがとうございました!
      2010/06/21
  • 毎日は、些細な時間の積み重ねであるけど、あと一本抜かれたら壊れるジェンガみたいに荒々しくも繊細に紡がれていて、それが、神様の悪送球で崩れたら。それでもいつかは、抱えた苦しみが合わさって一筋の光に変わる、きっとそう。 

    映画化されるんだくらいの軽い気持ちで手に取ったが最後、時間を忘れて彼らに浸った。

  • 「窓の魚」が合わなかった西加奈子さんに再挑戦。うん、前作で諦めないでよかった!まったく印象がちがう。すごくよかった。

    登場人物ひとりひとり(+1匹)が生き生きとしていて、まるで家族の日常をお隣さんとして内から外から覗いているようで、読んでいるうちに長谷川一家が愛おしくてたまらなくなった。
    お兄さんが亡くなることがはじめから明かされているから、前半の愛に溢れた家族の情景がすごくまぶしくて、壊れて欲しくないと願ってしまう。
    そしてその分、後半はすごく苦しい。。それぞれにもがく家族の姿が、辛かった。でも、最後のミキの言葉。「生まれてきてくれて、ありがとう」。これが全て。たとえ姿かたちが変わってしまっても、マイノリティでも、この世界からいなくなってしまっても。
    夫婦、親子、兄妹、恋人。強く結びついているようでいて、その関係は脆い。でも、掛け値なく、まさに「美しく貴い」ものだとあらためて思わせてくれた。
    号泣しました。家族ができた今、読んでよかった。

  • 西加奈子さんの作品にはリアルがある。
    隣の家で起きているような、ごく親しい友人に起きているような、何年かに一度会うか会わないかの親戚に実は起きているような、だけど私は死ぬまで知らずに終わるかもしれない、そんなリアルがある。登場人物はとても変わっていて、だけどどんどん読んでいくと、変わっているのは私の方かもしれないと思ってしまうほど、彼らは自然でまっすぐで素直なんだ。

    主人公の薫には、宇宙一幸せな父さんと、美しく明るい母さん、太陽のようでどんな場所でも中心にいるような人気者の兄さんと、そんな兄さんに恋をする、乱暴者で愛想のないとびきり美人の妹がいる。その家族には、大して美しくはないが賢く愛嬌のある「さくら」が、幸せの象徴として飼われている。

    太陽のような兄さんと僕はいつも一緒にいて、可愛い妹の誕生を喜んだり、両親の仲睦まじさに目を合わせたり、互いの初体験やなんやかやを語り合ったりしたのだが、そこには僕の、兄さんに対する絶対的な信頼と羨望があった。
    世界で2番目か3番目に美しい妹は生まれながらに兄さんしか見えなくて、父さんも母さんも当然ながら太陽の恵みを毎日受けていた。

    兄さんの事故と後遺症と、それらに苦しめられた末の自殺によって、家族の笑顔は奪われたのだが、「さくら」だけは変わらずボールを追いかけたわしと戯れる。
    変わり果てた家族が、また少しずつ共に歩き始められるまでの希望を感じさせる物語だ。

    いくつも心に残る場面があるのだが、
    三兄弟が両親のセックスの声を聞いてしまった翌朝、ミキ(妹)が勇敢にも「何やってたの?」と聞いた時の母さんの回答は、我が子に同じことを尋ねられた時に真似しようと思ったし、
    父さんが「不幸」に耐えきれずに出て行ってしまった時に、主人公が、我が家の幸せを支えていたものがは兄さんの笑顔や母さんの歌声なんかの「燦々と降り注ぐ夏の太陽みたいな暖かさ」ではなくて、父さんがチェスを楽しむ音やメガネを拭く音なんかの「秋口の遠慮がちな太陽みたいなそれ」だったと悟るところなんかは、あぁそうだよ、幸せは、慶びは、静かにそこにあるものなんだよ、なんて思ってしまった。
    それから、人生について。兄さんや主人公が、「ボール」を受けたり投げたりすることと自分の人生とを重ねていく中で、「さくら」は目の前にあるただ戯れずにはいられないものとして「ボール」と対峙する。面白い。

    圧倒的なのは西さんがあとがきで書いていることだ。
    「『何かを書くこととは?』ということを忘れることが出来るのは、何かを書いている間だけである」

    意味なんてない。いや、あるのかも知れないけど必ずしも考えてその場で理解しようとしなくていい。
    今ここに立って、没頭してみるんだ。
    意味を知るとしたら、その後だ。

  • 予期せぬ出来事で壊れた、幸せな毎日。
    どんな家族にも大変な時はやってくる。
    それでも、不幸であり続けることはない。

  • この本があればどれだけ苦しくても生きていける、私のバイブルみたいな本です。

    登場人物の恋心や愛する気持ちはほとんど叶うことは正直ありません。でもこの物語が教えてくれるのは、実らなくても誰かを愛することがどれだけ生きていく上で尊くてかけがえのないことなのか、苦しみを凌駕する誰かを想う気持ちの価値の高さです。

    内容のひとつひとつはシリアスです。ただ、それが人生という旅路の中で、ひとりひとりを創り上げるに欠けてはいけない事実だということを、ぐるんとひっくるめて教えてくれるのがこの作品であり、西加奈子さんの偉業だと思います。

    なにかを喪うことの苦しみを必死に自分の人生に引き受けようともがいて、その先の光みたいなものを見つけたいという人のお手伝いをしてくれると感じます。それくらいしっかりと苦しみに真摯に向き合っている作品。生半可に苦しみを見つめていないし、かといって美しさだけにも囚われていない、その真ん中をいく犬「さくら」ちゃんの善悪をつけない在り方にも救われます。

  • 心が満たされておなかいっぱいになるほど、良い本に出会った。
    数年後また読みたい。また違う想いがある気がする。

    今日はいつもより更に愛犬をなでまわそうとおもう。

  • すごく、すごく良かった!どれぐらい良かったかなんて、それは本当に美味しいものを食べた時に「塩加減が良い」とか「味付けが絶妙」なんて事を全て取っ払って、”美味しかった”というように、この本は本当に”面白かった”です。久しぶりに何度もあと何ページかを確認したし、それは早く終わって欲しくてではなく、いつまでも終わらないで、ずっとずっとこの家族に寄り添っていたかったからです。全てのことが幸せにいくわけではないけれど、生きてるって幸せ!そんな当たり前のことを、ドラマチックに教えてくる素晴らしい本だと思います。

  • 自分がこれまでの人生で触れた小説の中で、「家族であることの幸せ」をこれほど見事に書き切った作品は……もう、今後出てこないんじゃないかと思ってしまうくらいに感動した。涙の理由は多分、家族の繋がりに尊さを感じたからなのかもしれない。
    サラバ!以来の西加奈子さん作品だけど、やっぱりこの人は本当にスゴい。ため息が出るような比喩表現と、それを過不足なく並べてみせるバランス感覚。「物語」というよりは「小説」であることに意味があるというか、この作品は小説だからこそ光り輝くものになっているのだと思う。
    ブクログを使うようになって、初めてひとつの作品からお気に入りフレーズが3つノミネートです。叶うなら星6つつけたいくらいの傑作でした。感服……

  • 再読。
    こんなにも素晴らしい本だったかと感動。
    美しく明るい母さん、働き者で宇宙一幸せな父さん、太陽みたいに中心にいるヒーローの兄ちゃん、美しい妹、賢い女の子の犬サクラ。
    そして主人公の平凡な僕、薫。
    幸せで、愛に溢れていて、笑い声の絶えない家族。
    しかし、一人欠けたことにより、崩壊していく。

    公園に出没していた、みんなに恐れられていた男「フェラーリ」。
    自分達とは違う世界にすんでいると思ってた。
    それなのに、まさか自分がフェラーリ側の人間になるなんて思ってもみなかった。
    という兄ちゃんの言葉。
    妹ミキのイビツな恋。
    一度は崩壊した家族が、サクラの存在に助けられ、再生していく。
    心に響きすぎて、号泣してしまった。
    本当に素晴らしい作品です。

著者プロフィール

西加奈子(にし かなこ)
1977年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロ、大阪府堺市で育つ。関西大学法学部卒業。雑誌「ぴあ」のライターを経て、2004年『あおい』でデビュー。
2007年『通天閣』で織田作之助賞大賞、2011年咲くやこの花賞、2013年『ふくわらい』で第1回河合隼雄物語賞、2015年『サラバ!』で第152回直木三十五賞を受賞。
その他代表作として、宮崎あおい・向井理出演で映画化された絵本『きいろいゾウ』、同じく映画化された『円卓』、20万部を超えるベストセラー『さくら』、本屋大賞ノミネート作『i』など。2020年初夏、『さくら』が映画化決定。プロレス好きとして知られる。お気に入りの本は『アントニオ猪木詩集』。

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