きいろいゾウ (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094082517

作品紹介・あらすじ

夫の名は武辜歩、妻の名は妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、田舎にやってきたところから物語は始まる。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった-。

感想・レビュー・書評

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  • 『ねえおつきさま、どうしてぼくのからだはきいろいの?
    ー それはね、わたしのからだのこなをあびているからだよ
    ねえおつきさま、どうしてぼくは空がとべるの?
    ー それはね、おまえはとくべつな、せかいでいっとう、えらいゾウだからだよ』

    小説にも色んなタイプがあります。すぅーっと作品世界に一気に引き込まれてしまうもの、まるで読者が作品世界に入ることを拒み岩壁のようにそそり立つもの、そして作品世界に引き摺り込まれるのを読者が必死に抵抗を試みたくなるものなど、これはもう作品の数だけ千差万別です。どうしてこういう書き方でこのレビューを始めたのか、それはこの作品「きいろいゾウ」が、私が今まで経験したことのないタイプの作品だったからです。全6章から構成されるこの作品ですが、読み始めて100数十ページで現れる第2章の表記を目にして戸惑いました。”第1章に何が書かれていたのか何も記憶に残っていない!単に目で文字を追っていただけだった”という事実。作品世界に入るのを拒まれているわけでも、自分が拒んでいるわけでもないのに、頭に入ってこない、気持ちが入ってこない不思議な物語。”1.放棄する”、”2.読み返す”という二者択一から、私が選んだのは”2”の選択肢。途中から続けて読み返すという初めての経験をしたこの作品。その作品にはこれまで味わったことのない独特な繊細さに包まれた世界が広がっていました。

    『お風呂に入ろうと思って服を脱いだら、浴槽に茹で上がった蟹が浮いていた』という理解不能な状況。『慌ててムコさんを呼んだら、ムコさんは廊下の板をみしみしいわせながら、こちらに歩いてきた』ので、『ムコさん、あいつが死んでる、茹で上がってる』と言う『私』に『服を着なさいな』という『ムコさん』。『「あいつ」というのは、蟹の正式な名前』で『「ムコさん」というのも、私の旦那さまの正式な名前』、そして本名が『武辜歩(むこあゆむ)」という名前、変わってるし、最初見たときは読めなかった』と言う『私』。そんな『私の名前は、じゃーん、ツマといいます』という主人公。『すごいでしょ、ムコとツマ。もう、出会う運命にあった!とゆう、感じ』と続ける『ツマ』の『本名は、妻利愛子(つまりあいこ)』。『釜茹での刑や!ひさんー』とまだ蟹の話題を続ける『ツマ』をおいて『ムコさんは哀れなあいつをひょいとつまむと』行ってしまいました。場面は変わり今度は『テレビをつけても、同じような番組しかやってないから、つまらない』という『ツマ』。その一方で『ラストミステリー、ふしぎ、発見!』というテレビから聞こえてくるのは、お馴染みのあの声。『ムコさんは』、『相変わらず、テレビを熱心に見ている』と冷静に見る『ツマ』。『草野仁が笑ってる。ミステリーハンターの女の人が、ショパンみたいな格好をして、庭園を話しながら歩いている』のを見て、『器用だな、頭も良さそうだし、可愛い』という一方で『ムコさんが女の人を熱心に見ているときは、もっとつまらない』という『ツマ』。『黒柳徹子のパーフェクトがかかった問題、ムコさんは正解する気でいるのだ』という状況を見て『私はいくつでしょうか。いくつでしょうか』と関係ないことを言って邪魔する『ツマ』。『かっち、かっち、かっち』、『ああ!やめてくれ、焦る、ちょっと、もう一回、もう一回』と言い合う二人。『答えは、東京ドーム二十五個分です』と答えるテレビ。『えー何が?あー何か分からん、気になるやんけー』と答えを聞き逃して残念がる『ムコさん』。『ムコさんのひとしくん人形は没収』と喜ぶ『ツマ』。そして『ふしぎ発見が終わったから、私は眠ることにする』という『ツマ』。『毎晩日記をつける』という『ムコさんは、小説家。小説家といっても、今まで二冊本を出しただけ』という『ムコさん』。本の売れ行きは『本を読まない私はいまいちよく分からない』という『ツマ』。『さあ、今日はどんな夢を見よう』と寝に行く『ツマ』。『おやすみなさいムコさん、明日もトマト、取りに行こうね』と眠りにつく『ツマ』の一日が終わりました。そんな『ツマ』と『ムコさん』の二人の日常が描かれていきます。

    …というのが冒頭ですが、実はこの作品。さらにその前にこんな一文から始まる見開き2ページの物語が存在します。『とおいとおい、空のむこう、雲をこえて、かぜをすりぬけて、そのもっともっとむこうに、一頭のゾウがすんでいました』という平仮名がぐっと増える童話のようなその物語。そのあと、このレビュー冒頭のセリフが続く「きいろいゾウ」というその物語は、絵本として別途刊行もされていて、それだけで起承転結のある物語になっています。この作品の主人公である『ツマ』が幼少期に読んだ絵本という設定の物語。そのフルバージョンが全6章のこの作品のそれぞれの章の冒頭に散りばめられ、物語とリンクしながらそちらはそちらで話が進んでいくというとても凝った構成です。前述した通り、本編の方に気持ちを入れるのに苦労した私は、「きいろいゾウ」の方に逆に魅せられ読書のモチベーションを維持しながら読み進めていくという展開となりました。

    そしてこの作品はさらに凝った作りがなされています。それは全6章のうち4章までを、『ツマ』視点の物語が展開したあと、まるでその内容を解説するかのように『ムコさん』が書いた日記が続くという構成です。そのワンセットで一日が流れるという面白い作り。例えば上記した『ツマ』視点の物語も『ムコさん』視点の日記だとこうなります。『八月△日(晴れ) 朝、いつものトマトを取りに行く。まだ早いと言ったのに、青いやつをツマが取ってしまう。どうもせっかちでいけない』と始まり、上記したシーンは、『ツマがお風呂場で茹で上がったあいつを発見。裸で飛び出してくるので驚く。痩せているからか、下腹が張っている』と何とも冷静な視点。さらに『ニュース、続いて「ふしぎ発見」を見る。今日はベルサイユ宮殿の不思議。リポーターが明朗で良い。頭も良さそうだ。名前は忘れたが、今後注目』と『ツマ』視点を『ムコさん』視点でなぞります。『ツマがいつの間にかクイズを出していた。答えたかったのに、残念。東京ドーム二十五個分とは、どんな問題だったのか』と、クイズに答えられなかったことを日記に記す『ムコさん』。これは、余程悔しかったのでしょう。そして、『ツマ、歯を磨かないで寝てしまう』と最後まで冷静な記述が続くその日記。そんな日記は18日分あります。非常に長文の日もあればたった一行『半月』とだけ記されている日など。そして、この『ムコさん』の日記が『ツマ』視点の物語をなぞることで、二人の距離感や視点の違い、そして思いやりの感情の向きなどが上手く読み手に伝わってきます。また、この日記自体が後半の物語の展開に大きな意味を持ってくることにもなります。

    そんなこの作品で上手いなあと感じたのは西さんの関西弁の表記です。テヘランで生まれ、大阪で育ったという西さん。色んな小説を読んできましたが、関西弁の表記のレベルは千差万別だと思います。そもそも私に関西弁のレベルを語る資格があるかどうかは別として、読んでいて自然に感じるものとそうでないものはあると思います。前者だと瀬尾まいこさんの「戸村飯店青春100連発」、後者だと森絵都さんの「この女」でしょうか。そして、この作品の関西弁がすごい、これは上手い!と感じたのが『ほなな!ほんまに八月十四日火曜日に、ない姉ちゃんが来たんや』という一文。『ほなな!』という表記はあまり小説で見たことはないですが、関西弁でこの言い方はよくあると思います。そして『男と別れたんかな、あんま覚えてないけどな、ふらーと現れてな、うちのおかんもおとんもびっくりや』と続く、その後の表現。『あんた何しとったんじゃー、ゆうて、おかんが怒ってなぁ。それだけちゃうで』と続く表現。どうでしょうか。特に『いうて』ではなく『ゆうて』という書き方は、より口語での関西弁をそのまま文字にした絶妙な表記だと思います。ということで、私なんかより、きちんと関西弁を語れる方には、是非、その視点からこの作品の本物度を見ていただきたいと思いました。

    『この家に来たときから、その前から、そのずーっとずーっと前から、お前たちはここにいたんだねぇ』、と『お水をやりながら、私は木や葉っぱや花のひとつひとつに話しかける』という一文にある通り、『自分が人と一緒じゃないことは分かってる。だって、庭の木や草や花の声を聞いたり、そうゆうのって普通じゃないに決まってる』という『ツマ』は『私の頭は、どうかしてるんだ』と動植物と会話できる能力を持つことに思い悩みます。一見、ファンタジーとも取れる世界観が支配するこの作品ですが、どちらかというと私は『繊細なのか敏感なのか、ツマはどうも人が感じないもの、気に留めないことに反応するときがある』という『ムコさん』の日記にあるように『ツマ』という女性の非常に繊細なその感覚が、ファンタジーを思わせる情景を見せているだけのようにも感じました。つまり、言葉を発しないものたちの感情を、読み取ってしまう繊細な感覚の持ち主、それが『ツマ』ではないか、と思うのです。『月が欠けていってるときは、言葉とか、気持ちとか、考えてることが、いつもよりするすると出る』という一方で『満ちてるときは、言いたいことがたくさん溜まって、どんどんどんどん溜まって…』と、その吐き出す術が分からなくなるという『ツマ』。そんな『月の満ち欠けに圧倒的に支配されている』という繊細な感覚の持ち主である『ツマ』のことを、深く理解した上で、自らの日記にも『半月』『満月』『三日月より、もっと細い月』というように月の満ち欠けを記していく『ムコさん』。そんな『ムコさん』の『ツマ』への思いが極まっていく結末に、『ツマ』の繊細な感覚とこの月を用いた伏線の盛り上げがとても効果的に物語を作っていくことになります。このあたりの構成、本当に上手い!と思いました。

    一つの小説内に、フルバージョンの絵本の本文が散りばめられているというとても凝った作りのこの作品。一方で、冒頭に展開される独特な世界観が故に、その作品世界に入っていくには少しエネルギーを必要とするこの作品。しかし、一旦その世界に入ってしまえば、そこに展開されるのは、人の心の機微を感じさせるとても繊細な心と心が繋ぐ物語でした。乱暴に読むと決して見えてこないその繊細な世界が織りなす物語は、まさしくキュンとするような切なさとあたたかさを感じさせる読後感へと読者を導いてくれました。

    「きいろいゾウ」、その印象的な表紙とともに、とても不思議な余韻を残す、そんな作品でした。

  • これまで読んだことのなかった構成でした。
    絵本と、それに実世界、現在と過去がうまく構成されています。

    まわりの動物たちに名前を付け(ネーミングがまた上手!)て、会話しています。動物たちもちゃんとお話しています。なんともかわいい。ここでカタカナの名前をもらえるかどうかが、実は大事だったりします(解説より)。なるほど~♪

    私たちはまわりの人、動物含めいろんな環境と調和して生きています。
    そう、みんな大事な存在で、それをツマはとても愛おしく思っています。
    最も大事な存在はなんでしょう。

  • 中盤までは「ツマ」の世界観がどうにも分からなくてイタイ子なのか?と戸惑ったけど、それが話の真ん中ではないことに漸く気付いてから面白くなった。

    誰しも大事な人がいて、自分を大事に思ってくれる人がいる事が生きるにつながるのだなぁ。…改めて。
    色々あってちょっと疲れちゃってる私には、改めて周囲に目を向けるいいきっかけになったと思う。

  • 「庭になんかおる。」「楚の軍勢か?」「ソノグンゼ? 何それ?」「あのな、昔、楚の国でな、いや魏やったかな。」の件だけで持って行かれた...。構成も素晴らしい。キャラも物語に引き込んでくれる。どうのこうの言わずに触れてみることで気づく世界がある。幸せな時間でした。

  • 夫婦になるってなんなんでしょうね。
    相手に対しての、本音を出しきれない感じは共感しました。

    みな様々な過去があって今がある。
    大切な人を、「あー、やっぱりこの人は自分にとって大切な人なんだ。」って確認しながら生きていくことは大事だな。

  • 伝説のスピーチライター久美さんが、
                    ↑
    (『本日はお日柄も良く』  原田マハ 著より。)

    結婚式で披露した、あのスピーチの中での言葉が
    読後、
    脳内でぐぁん、ぐぁ~~んと響き渡った。

    「愛せよ。それだけが人生のなかでたったひとつの良い事である。」
     (記憶内からの再生なので、正確ではないです。)

    その通り…
    その通り…

    本当にその通りだよ。

    どんっ、どどんっ、と連続で打ちあがる美しい花火に目も心も奪われてしまったかの様に、
    最後のページをいつまでも開いたまま、
    私はそれ以外の言葉を
    ひとつも捜せなくなっていた。

    それまで都会にいたムコさんツマさん(←呼び名カワイイ♪)の二人
    が、田舎暮らしをスタートさせる所からページは捲られる。

    まるで、絵本を眺めてるように、鮮やかな色彩が目に眩しい、
    そのわけは
    物語をきいろいぞうや美しい鳥が、飛び回っていること、
    ツマにも、
    ムコさんにも
    実はいろいろ秘密があるのだが、
    色、が光のなかにしか存在しないように、
    形を変えたある『光』が、
    物語内に常に満ちていること、

    そのせいかな、と思った。

    シンプルだけど、
    両者の間に愛があるか?

    それがあるか、ないか、によって、全てのことは
    良い、良くないにわけられるような気さえしてしまった。

    リサイクルコーナーにて、なんとなく手にした本ではあったが、
    最高に良い本に出会えたな~と、愛ある偶然の出会いにも感謝である♪

  • 感想
    ほんわかする夫婦。登場人物が面白い。ムコとツマのやり取りもほんわかしていて良い。いつもチャック全開のアレチさんとかもキャラ立ってる。アレチさんの奥さんのセイカさんはボケていて、豆腐にミロをかける。隣のチャボのコソク、野良犬のカンユ、不登校の大地に、大地を誘惑しようとするオマセの洋子、妻鹿さんの犬のメガデスなど

    ツマには犬や虫、植物など色々な声が聞こえてしまう。

    前半の穏やかな展開と打って変わって、後半は怒涛の展開。一見穏やかに見える日々も脆く、どんな人も危うい均衡の中で何とか生きている。人の生死はいつも隣り合わせで重くのしかかっている。

    あらすじ
    ムコさんとツマは若い夫婦。駆け落ちをして田舎のムコさんのおじいさんの家だったところで暮らしている。

    個性が強い人達と支え合いながら日々を過ごすムコさんとツマ。ある日、ムコさんに東京から手紙が届き、その日を境にムコさんの無邪気さが消える。

    それは昔、ムコさんが不倫していた相手の夫から妻を助けて欲しいというSOSだった。ツマを置いていくことに不安を覚えつつも、過去と向き合うため、ムコさんは吸い寄せられるように、その夫婦に会いにいく。

  • ツマとムコさん夫婦は、ご近所の人たちや変なあだ名の動物と、のんびりと田舎暮らしをしている微笑ましいお話しかと思って読んでいました。しかしムコさんの過去が迫ってくると怪しい雲行きになります。夫婦が子どものときに読んでいた、きいろいゾウの話しが所々にあって、最後にはこの夫婦に重なったのだと感じた。
    「大きな耳を羽のようにぱたぱたしなくても、長い鼻をプロペラみたいにぐるぐるまわさなくても..」のフレーズがいい。

  • 読みたかった著者の本を初読み。
    最初は正直、読みにくかったなぁ…
    世界観に入り込むのに少し手こずった。

    なんせ、田舎暮らしを始めた「ムコさん」と「ツマ」の物語。
    ツマは虫や動物、草花の声が聞こえ、野良犬のカンユにチャボのコソクなどなど独特の世界観。

    ツマの世界観で描かれた日常をムコさんの日記で通常の人の感覚で書き直されたどこか不思議な田舎の日常。

    さらに、絵本としての空を飛ぶきいろいゾウまで出てくるものだから、読み終えるまでに数日かかってしまった。

    でも読み進めるうちに自分の中でムコさんとツマの理解が進み、後半にかけて二人のすれ違いが切なく感じ、お互いを理解し、お互いを取り戻そうとするムコさんとツマの切ない物語。

    読み終えた後にジワジワと感じるものがある。


    説明
    内容紹介
    宮崎あおい×向井理主演映画化原作

    夫の名は無辜歩(むこ・あゆむ)、妻の名は妻利愛子(つまり・あいこ)。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会からやってきた若夫婦が、田舎暮らしを始める。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりゆっくりとその年の冬まで進んでいき、「ある出来事」を機にムコがツマを残して東京へ向かう。それは背中の大きな鳥に纏わる出来事に導かれてのものだった。
    「いつかこの小説のツマを演じてみたいです」という帯コメントを寄せいただいた宮崎あおいさん、雑誌「ダ・ヴィンチ」でのオススメの一冊として紹介していただいた向井理さんの二人が主演となる映画化も決定(2013年公開予定)。

    【編集担当からのおすすめ情報】
    ともに原作のファンという、宮崎あおいさん×向井理さん主演で映画化が決定しました!2013年公開予定です。
    内容(「BOOK」データベースより)
    夫の名は武辜歩、妻の名は妻利愛子。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会の若夫婦が、田舎にやってきたところから物語は始まる。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった―。

  • 2006年の作品‥‥初期の西加奈子も良かった。至福の時間でした。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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