- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094083347
作品紹介・あらすじ
ノーベル賞作家である父アクセル・ラグナーフェルトは、脳疾患で全身麻痺となり施設に入っている。息子ヤン=エリックはその威光で尊敬を集めて生活しているが、家庭は崩壊し浮気三昧の日々だった。物語は、高齢で死んだ老女の身元確認から始まる。彼女はかつてラグナーフェルト家で家政婦をしていた。葬儀のために探し物をすることになったヤン=エリックは、事故死と聞かされてきた妹の死因に不審を抱く。やがて彼は、高潔なはずの父が何かをひた隠しにしていることを知る…。人は、ここまで堕ちることができるのか-生きることの絶望と希望に迫る問題作。
感想・レビュー・書評
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なんとも救いのない…読ませます。
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著名であるとか栄光とか名誉とか、そういうものは必ずしも幸せには繋がらない、ということか。みんながアルコールの問題を抱え、それぞれに足掻くような悩みを抱え堕ちていくところはなんとも・・・!それでもやっぱり女は強いよなあ(生贄とされてしまった娘はともかく)、と思わずにもいられない。
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人はあっけなく、なんのひっかかりもなく、簡単に堕ちてしまう。
ノーベル文学賞作家は、脳疾患で全身麻痺になっている。その息子は、父の威光に頼って仕事をしている。そして家庭は崩壊しかけている。
かつてその家につかえていた家政婦の死によって、家族の闇がうかびあがってくる。
人と過去が交錯する手法が心にくいばかりです。
全ては絡み合い、もつれながら、それでも解かれていく。明らかになったとき、唖然としてしまう。何があったのか、読んでいく中で推察できるし、その想像を大きく超えたものでは決してない。けれど、あっけにとれてしまう。
人が堕ちていくとき、それはもっとためらいや躊躇があるものではないのか。こんなにあっさりと、滑り落ちるように堕ちていくそんな俗悪なものなのだろうか。
積み重なっていった悪意というものは、人をこれほどまでに愚鈍にさせるのだろうか。
…でも、一番醜悪なのは、その死によって静まった湖面に石を投げ入れた形になった家政婦なんだと、私は思う。