78 (小学館文庫)

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  • 小学館
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レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094083392

感想・レビュー・書評

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  • 時間潰しの図書館で
    たまたま手に取って読んだら
    まんまとハマってしまい、
    そのまま一気読みしてしまった小説(笑)(>_<)


    10歳の夏
    バンシャクとハイザラは
    廃線になった鉄道路線をレール沿いに歩き
    駅長室で
    今はもう絶滅した
    78回転のレコードを見つける。

    そして二人は時を越え
    「78(ナナハチ)」というSPレコード店で再会し
    お互い同じ女性を好きになってしまう…


    今はもう失われてしまった古き良きレコードを軸に
    章ごとに語り手を変えながら
    時間も空間も越えてリンクしていく構成は
    お見事というしかないです。


    しかし相変わらず
    この人の文章は心地いい。

    詩的で寓話的な世界観。

    今はもう「ないもの」に対する
    憧憬と鎮魂歌。

    かつてそこにあった
    懐かしくて切なくて美しい世界。


    バンシャクは
    レコードを手に入れたものの
    蓄音機がない。

    お気に入りの宝物を隠した
    ベッドの下の秘密の一角から
    夜中にこっそりレコードを取り出し
    飽きずに眺める場面の胸を打つこと。
    (映画「リトルダンサー」や「あの頃ペニーレインと」の名場面を思い出してしまったなぁ)


    そして「スタンドバイミー」を思わす
    少年たちの
    ひと夏の旅のイノセンス。

    有刺鉄線で引っかき傷をつくり
    鬼ごっこをしたり
    かくれんぼをしたり。

    延べ3000リットルの立ち小便(笑)と
    ヌードグラビア漁り(笑)。

    冒険に明け暮れた幼少期を送った者なら
    懐かしさに目を細めること必至です(笑)


    やがて物語は現代から
    伝説の楽団「ローリング・シェイキング&ジングル」が活躍した古き良きSPレコードの時代へと
    時を遡りリンクしていくのです♪



    初めて好きな音楽に
    触れた時の気持ち
    今でも憶えてますか?

    今よりもっと柔軟で
    ドキドキする心を抱えながら、
    いろんな街のレコードショップで
    時間を忘れて
    大切な一枚を探してたあの頃。

    便利になったすべてを否定はしたくないけど、
    レコードの時代には
    音楽への愛が確かにあったなぁ。
    (レコードには録音した時の空気の振動が記録されているので、その時代、その空間の、匂いや空気感までもを再現してくれるものなのです)

    • 円軌道の外さん

      遅くなりましたが
      MOTOさん、
      素敵なコメントありがとうございます!

      吉田さんの文体や
      世界観って、
      スゴくピンポイント...

      遅くなりましたが
      MOTOさん、
      素敵なコメントありがとうございます!

      吉田さんの文体や
      世界観って、
      スゴくピンポイントで
      ハマる人にはズッポリハマって
      抜け出せない中毒性がありますよね(笑)
      (人によっては何も起こらないことが退屈だと感じる人もいるようだけど)

      特にこの作品は
      レコードの時代を知る世代や
      音楽を切実に必要とする人にとっては
      たまらない魅力を放ってると思います。

      それにしてもMOTOさんの比喩は上手いなぁ〜♪

      音楽の感動を言葉で表現するって
      最も難しいことの一つだと思うけど、

      MOTOさんの言うように
      音楽を聴いてるときの心地よさを
      活字から感じられるのは
      なんて贅沢なんやろって
      うっとりしてしまいます(笑)

      あと音楽って
      真空パックされた表現だから
      (ユーミンがそう言ってました笑)

      匂いと同じように
      一瞬にしてその頃の記憶や空気感までも
      甦らせてくれる。

      新しいから
      質が高いわけでもなくて
      古い雑音だらけのレコードが
      涙が止まらなくなるほど
      激しく胸を打つことだってあるし。

      吉田さんの小説も
      そんなレコードと同じく、
      何年経っても
      時に流されることのない
      普遍的なものを
      いつも描いているような気がします(^_^)v

      MOTOさんが一番お気に入りの
      吉田作品はなんですか?

      2013/05/27
    • MOTOさん
      私は、
      自分さえわかればそれでいい的な文章しか書けないのですが、
      そのわかりにくいを、読み解いて頂き(?)、すごくすごく嬉しいです!感謝~(...
      私は、
      自分さえわかればそれでいい的な文章しか書けないのですが、
      そのわかりにくいを、読み解いて頂き(?)、すごくすごく嬉しいです!感謝~(^^♪

      吉田さんの作品に一番は付け難いのですが、
      あえて言うなら、やはり最初に読んだ
      『つむじ風食堂の夜』ですね。

      真っ暗な闇の中、ぱっと開いた両手から、
      ぽろりといっこ、光る星が落ちてきたような、
      ぽっと、柔らかな灯りが灯ったような、

      不思議な安らぎに満ちた手品のようなお話、
      面白かったです。
      (又、わかりにくい…書いちゃいました。ハハ)

      円軌道の外さんのお気に入りも聞かせて下さいね。


      2013/05/30
    • 円軌道の外さん

      MOTOさん、
      早速の返信ありがとうございます(^O^)

      おおーっ
      やはり
      「つむじ風食堂の夜」でしたか〜♪

      自分...

      MOTOさん、
      早速の返信ありがとうございます(^O^)

      おおーっ
      やはり
      「つむじ風食堂の夜」でしたか〜♪

      自分も迷ったけど
      古い映画館が好きなのと
      将来移動サンドイッチ屋を始めようと思うキッカケになったこともあって、
      (自分にとっては
      それくらい吸引力があったのです)

      「それからはスープのことばかり考えて暮らした」かな。


      てかてか
      MOTOさん、
      ロマンチックエンジン
      何基搭載してるんスか〜(笑)

      「つむじ風食堂の夜」の説明に
      読んでて胸がきゅい〜んってしましたよ(>_<)

      「真っ暗な闇の中、ぱっと開いた両手から、
      ぽろりといっこ、光る星が落ちてきたような…」の件は
      思わず目を閉じて想像してしまったし(笑)

      吉田さんの作品は
      空や月や星のイメージが
      スゴくありますよね。

      あと自分がよく読んでて思うのは
      おとぎ話的な異国情緒です。

      昔ながらの商店街や
      懐かしい夜鳴き蕎麦屋なんかが出てきても
      どこかここではない世界へ
      連れてってくれる
      不思議な気分に浸れるんですよね。


      2013/06/12
  • 吉田篤弘さんらしいオシャレな大人のおとぎ話のよう。やっぱりこの雰囲気が大好き。
    吉田篤弘さんの著書を読んでると、自分がとてもオシャレな人になった気分にさせてくれる。

  • 時間とは、

    留まる事なく失われていくだけのモノだと、思っていたが、
    刻まれて、残っていくモノでもあるんだな、と言う事に改めて気付かされた。

    例えばそれが、
    大会社の設立とか、
    歴史を大きく変えたとか、
    たくさんの人の為に尽くした、とか、

    自分以外の人達にも残るような立派な記憶ではないとしても
    言わばコレクションの様に
    一人でこっそり取り出して、いつまでもニヤニヤと眺めているようなモノだとしても…。

    それがあるだけでかなりステキだな、と思った。

    >78とは78回転のレコードの事。
     (私は33回転と45回転しか知りませんでした。(^^;
      針を落とすと流れてくる名曲には、思わず目を瞑って聞き惚れてしまいます。)

  • ちょっと風変わりなタイトルですが、〝78(ナナハチ)〟とはレコードの回転数のこと。蓄音機でないと聴くことのできないSPレコードの回転数が78なのだそうです。その78回転のレコードにまつわるいくつもの味わい深い物語が、時を越え、場所を変え、くっついたり離れたりしながら、いつしかひとつの流れにたゆたうように紡がれていきます。ノスタルジックで、センチメンタルな雰囲気を醸しだす物語世界に、いつまでもゆったり身を浸しておきたくて、ページ数が残り少なくなってくると、読み終えるのを先延ばししたくなるような一冊でした。

  • 不思議な味わいの作品。タイトルがこの物語のすべてを言い尽くしているのだな。
    出だしの一編は「鉄塔武蔵野線」を思い出させた。その雰囲気で物語が進むのかと思いきや....この先はネタバレになるので書きません。

    ぜひ一読あれ!

  • 78回転のSPレコードにまつわる全13編を収めた短編集。様々な時間や場所が舞台となるが、どのエピソードも実は微妙に繋がっていて、ひとつの長編作品としても楽しめた。情景的で叙情的な文体で紡がれる物語はノスタルジックで時に感傷的。殺伐とした現代社会とは一線を画した穏やかな時間の流れや、沁み渡るような優しさが心地良い。著者の作品は「電球交換士の憂鬱」に続き二冊目だが、明快な物語性やエンタメ性のあったそちらに比べ、こちらは掴み所のない童話やお伽話のよう。恐らくこちらが本来の作風だが、前者の方が自分の好みではある。

  • 杉村さんは何処へ?

  • 吉田篤弘らしい物語たち。つながっているようで、つながっていないのかもしれない。彼の言葉を借りれば、どちらでもいい。どちらでもあるのだろうから。

  • 繊細な糸で丁寧に紡ぎ上げられたような、ノスタルジーに満ちた優しい一冊。

  •  途中、何度も読むのをやめようかと思った。後半2,3章くらいからようやく読み進めづらくはなくなったが、とにかく入り込みづらかった。
     登場人物、靴、レコード、場所や時代がさまざまにリンクして、短編が紡がれている。なんだかお洒落だし、その構成力はすごいのだろうけれど、ただわたしの肌には合わなかった。
     締めの数行が気になってしまう章がいくつかあった。意味ありげな書き方をされているのだが、次の章に続いているわけでも、その章の中の何かがクリアになるわけでもなさそうで、でもその章を締めるのに相応しいとでもいうように書かれている最後の数行。わたしに意味が読み取れなかっただけだろうか。

     物語性が強いわけではない作品というのは、文章や空気感が肌に合わないと読むのがつらくなるなあ。

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著者プロフィール

吉田篤弘(よしだ・あつひろ)
1962年東京生まれ。作家。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による著作とデザインの仕事を続けている。著書に『フィンガーボウルの話のつづき』『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『木挽町月光夜咄』『電氣ホテル』『台所のラジオ』『金曜日の本』『神様のいる街』『あること、ないこと』『雲と鉛筆』『おやすみ、東京』など多数。

「2018年 『おるもすと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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