歴史の風 書物の帆 (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 32
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094084016

作品紹介・あらすじ

作家、仏文学者、大学教授と多彩な顔を持ち、稀代の古書コレクターとしても名高い著者による、「読むこと」への愛に満ちた書評集。全七章は「好奇心全開、文化史の競演」「至福の瞬間、伝記・自伝・旅行記」「パリのアウラ」他、各ジャンルごとに構成され、専門分野であるフランス関連書籍はもとより、歴史、哲学、文化など、多岐にわたる分野を自在に横断、読書の美味を味わい尽くす。圧倒的な知の埋蔵量を感じさせながらも、ユーモアあふれる達意の文章で綴られた読書人待望の一冊。文庫版特別企画として巻末にインタビュー「おたくの穴」を収録した。

感想・レビュー・書評

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  • まず、「まえがきに代えて」で完全にやられた。
    あまりに素晴らしいので、長いけど引用しちゃう。<blockquote>?最初のページから最後のページまで飛ばし読みをせずに、注も含めて一冊すべてを読んだ上で書評する。
    ?読者としてはある程度の知的好奇心はもっているが、対象としている本のジャンルに関しては、まったく素人のような人を想定している。イントロはそうした読者に訴えかけるつもりで書かれている。
    ?基本的に、書評を引き受けた以上、たとえそれが自分の選択した本でなくとも、読者に、書店で一度は手に取ってみることを勧める方向で書評する。ただ、本として完成度に問題のある場合は、それを指摘することをためらわない。
    ?著者の執筆意図と主張を汲み取りながら、なによりも、内容を的確に要約するよう心掛ける。様々な傾向のエッセイを一冊にまとめた本の場合には、その中で著者の主張や個性が最も色濃く滲み出ているエッセイを中心にして取り上げる。
    ?原著の文体や肌合いを知ってもらうため、あえて引用は多めにする。理想をいえば、引用だけで書評が成り立つようにしたい。引用すべき箇所がうまく捜し出せたら、書評としては、その使命を半ば果たしたといえる。
    ?評価は、その本の絶対的価値よりも、相対的価値に比重をかける。いいかえれば、これまでに出版された他の本と比べてオリジナルな部分があればその点を評価し、その上で、できるなら、その本がどのようなポジションに位置するのかを明らかにする。一定の水準に達してはいても、二番煎じ的な内容の本は選択を避ける。
    ?同時に、思想的統一性、文体の巧拙、構成のバランス、読みやすさなどといった、フォルムの面も重視する。表現だけが難解な本は取り上げない。
    ?本を厚さで判断しない。注の多さに平伏しない。要は、質の問題である。
    ?書評としてそれだけで完結した読み物となるように努める。
    ?書評子が本を評価する以上に本によって書評子が評価されることを肝に銘じておく。
    ?もちろん、以上の原則は?を除いて努力目標であり、必ずしもすべての書評で守られているわけではない。</blockquote>いやあ、参りましたという他ない。
    特に唸らされたのが、?と?。

    この感想雑感は、本を読んだりCDを聴いたりした感想と、その時に感じた事柄を書き記す場所、と<a href="http://mediamarker.net/u/ikedas/profile" target="_blank">プロフィールで宣言している</a>。
    それは、つまり「評」というものが出来ない、と宣言している、ということでもある。
    「評」というものは、そこに書かれている文章を読むことで、作品をより深く、より広く理解する手助けとならなくてはいけない。
    そうではない文章は、すべて「感想」に過ぎないと思う。

    本書を読んで、「評」への道のりがさらに遠くなってしまったなあ、と溜め息が出た。
    簡潔にして的を射た、まさにこれこそが「評」という作品の数々が納められている。
    評の対象となっている作品のうち、読んだことのある作品は全くと言っていいほど無かった。
    しかし、評を読んだ後には、対象の作品がどういう作品なのかという手触りが、確実に残ったように思う。
    そして、その作品を実際に読んでみたいという気にさせてくれた。

    そして、「あとがきに代えて」でも素晴らしいことを書かれている。<blockquote>書評に取り上げる本が本当に優れたものならば、それをどう紹介し、どう要約し、どう評価するかによって、書評子の力量が逆に試されるはずだ。つまり、書評が読まれようと読まれまいと、そんな事は一切関係なく、ただ書評をするたびに、一冊の本に関する書評子の「紹介・要約・評価」の能力が試験にかけられて、その様が公に晒されていると考えるようになったのである。</blockquote>まえがきに代えてで示された原則の?が、ここでも登場する。
    これは本当にその通りだと思う。
    評とは、評者自身が評を読んだ読者から評されるという構図に他ならない。

    精進しなきゃな、と思った。
    得るべきものが数多く含まれている良書だと思う。

  • 読みたい本が増えて困ります・・・

  • 書評本の最大の難点は、欲しい本リストと積読本が増える悪循環に陥るところだ。

  • 『山下洋輔の文字化け日記』の巻末案内で気になったタイトル。表紙がシックで、おまけに解説が堀江敏幸さんという、ザ・仏文なタッグにも撃沈〜。鹿島さんの書評+読書エッセイです。『まえがきに代えて』で、「読者としてはある程度の知的好奇心を持っているが、対象としている本のジャンルに関しては、まったく素人のような人を想定している」って本当?と思えるほど、学術書に限りなく近いラインナップ(特に前半)のような…筆致も硬派。まぁ、学問って広くとらえればエンタテインメントといえないこともないけど…私にはベンヤミン『パサージュ論』をエンタメで楽しむ地力がないー(涙)。硬派のまま突き進むかというとそうでもなくて、『まえがき―』で「注の多さに平伏しない」と小ギャグもかましてあり、選ぶ本も紹介する芸風も、いつもの海千山千な鹿島モードにじりじりゆるくなだれこんでいくような…でも、高アベレージはキープされているように思います。「前半、ハッタリかよ!」とちょっと思いつつ(笑)。ヘタレな私には、ちょっとゆるい間口のエッセイが楽しめました。仏文学ガイドには高確率で出てくる、モーパッサン『ベラミ』が、『私編パリ文学全集を編集する』にも登場。この「勝ち逃げのドラマ(鹿島評)」はやっぱり、外せないほど面白いのー?『パリ憧憬の文学九選』はなかなか粋で、とっつきやすそうに感じました。『わが読書「体系的」読書』は、むちゃくちゃだけど骨太!十数年前の書評のため、入手困難な本があるかもしれませんが、しっかり読める本が選んであるという点では、極上のブックガイドだと思います。でも、ほんとうに「しっかり」してるんですよね…。向き合う根性によって、面白さのアップダウンが激しい本だと思うので、この☆の数です。ごめんなさい。

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著者プロフィール

1949年生まれ。東京大学仏文学科卒。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。フランス文学者。1991年『馬車が買いたい!』(白水社)でサントリー学芸賞、1996年『子供より古書が大事と思いたい』(青土社)で講談社エッセイ賞、2000年本書『職業別 パリ風俗』(白水社)で読売文学賞評論・伝記賞受賞。著作は他に『「レ・ミゼラブル」百六景』(文藝春秋)、『パサージュ論 熟読玩味』(青土社)、『情念戦争』(集英社)、『渋沢栄一』(文藝春秋)、『失われたパリの復元 バルザックの時代の街を歩く』(新潮社)など多数。書評アーカイブWEBサイトALL REVIEWS主宰。

「2020年 『職業別 パリ風俗』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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