- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094086911
作品紹介・あらすじ
北海道の大地で一人羆を追う孤高のハンターと比類無き才能を持つ猟犬フチとの迫力と感動に満ちたノンフィクション。大学を卒業後、就職せずに狩猟のみで生きていくことを決意した著者。猟銃と僅かな装備だけを手に山を駆け巡る生活の中で体感した自然の驚異と現実を瑞々しい感性で描く。
感想・レビュー・書評
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命を感じた一冊。
著者の狩猟人生を綴ったノンフィクション。
終始、命なるものを感じた時間だった。
命をいただくという畏敬の念、そしていただいたからには決してその命に対して最後まで生半可な気持ちで向き合うことはしない、そんな信念なるものが素晴らしかった。
著者に身も心も寄り添う愛犬フチ。二人の時間、二人にしかわからない時間が胸を打つ。
そしてフチがもたらす忘れかけていた初心。
悔やんでも悔やみきれない思いを巡らせる時間、何もできない時間に涙せずにはいられない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
羆猟師・久保俊治さんによるドキュメンタリー。
「命の大切さ」と一言で表せない命についてが詰まっています。
山で命と対峙すること、ハンターとしての人生、最良の猟犬・フチとの一生、描かれた半生のどこをとっても学ぶことが多い一冊です。
都会にいると、命と真摯に向き合う機会がないと気づかされました。毎日のように動物を食べているのに生きている姿を目にすることはほとんどない、まして命を獲る瞬間なんて想像さえしません。街を飛ぶ鳥の名前も草花の名前も知らない。軽んじているわけではないけれど、命と向き合うことに臆病になっているから、考えないようにしているところがあるように思います。
久保さんの記述は、まるで一緒に山に入って、隣で猟を見ているような気持ちになります。山の匂い、獲物の血の匂い、鳥の鳴き声、土の感触…知らない動物や草花の名前も多く、読みながら何度となく調べました。
読み終えて「教えてもらった」と感想が漏れました。 -
自然と共に生きるドキュメンタリー。ライフルで熊を撃ち殺すことを残酷だとも思うが、そのような感想を抱く事自体が自然の中で生きるとはどのようなことか理解していないということなのだろう。都市圏の中で人生が完結する私達には非現実的な生活だが、ハンターのリアルが描かれている。
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もはや伝説のハンター久保俊治さんの、自伝的な作品。
北海道を舞台に、若きハンターが自然の豊かさと過酷さに身を委ねて、ハンターとしての腕を高めていくとともに、自然についての思慮も深めていく。
テレビで久保さんの特集を観たことがあるが、並々ならぬじじいだと思った。少し偏屈そうで、世捨て人のような印象をうけた。社会に馴染めなくても生きていける人、社会を特に必要としていない人。
そんな人が書いた本が、口コミでは絶賛されまくっている。早速読んでみたら、映像でみた久保さんの印象からはとても想像できない文章だった。繊細で、緻密で、でもくどくない。心情と景色をそのまんま書き出しているような、とても素直な文章だった。
決して綺麗な描写だけではない。銃で熊を撃って、小熊も殺すのだ。生々しい表現が続く。でも決して酷さへ偏らない。
真剣勝負のひとつひとつをつむぎ、命が終わる瞬間の輝きを丁寧に描写している。
「こんな凄いことをしているんだぞ」っていう自己顕示が全くなくて、「ありのままの俺の一日」のようにさらりと書き連ねているから、なお心地よい。
冬山での連泊ビバークの場面(※舞台は北海道)は、体力と気力を含め、もはや選ばれし才能の持ち主なんだなと思った。風邪引いたり、心が病んだりしないんだね。
フチの最期の場面では、久しぶりに泣いてしまった。
久保さんは、命が終わる瞬間の描写がとても上手い。命の駆け引きをしているからだろうか。 -
北海道のヒグマ猟師によるルポルタージュ。
著者久保俊治氏は、娘の「みゆきちゃん」らと共にたびたびTV番組にも登場している人だ。
この本を読むのは実は約6年ぶり2回目なんだけど、クマを追う迫力と猟犬を失った悲しみゆえに、前回はブログに書けなかった。(実際、その体験の大きさの前では感想もへったくれも出て来ないのである)
単身で山に入り、孤独のうちに自然の中で寝食し、野性と向き合う。次第に研ぎ澄まされていく感覚。山との、そして獲物との「対話」。そして自ら手塩にかけて仕込み、「これ以上ない」というほどに育った猟犬フチへの深い愛情。
2回目も圧倒された。 -
ありがちなプロフェッショナルな人の一人語りかと思って読み始めましたが、これは深淵なる自然との交歓の記録であります。羆ものは好きなのでどうしても読んでしまいます。
ただ、やはり基本的に野生動物を狩って首を飾ったりするのは生理的に受け付けないので、アメリカのハンティングに弟子入りしている所では素直に頷けない部分もありました。他国の文化なので否定はしたくないですが、動物の首をトロフィーといって、壁に飾ったりするのはどう考えても悪魔的。食べる為でなく飾るためってどうかしていると思っています。
でも日本で愛犬フチと共に野山を駆け回って、狩った動物に感謝と愛を持って生活の糧にしている所は神聖な空気を感じる事が出来ました。そもそも生き物を殺す事を云々する人がいますが、自然に無関心な人が自然を壊すんですよね、特に川で遊んだ事無い役人のする公共工事は本当にえげつないです。以前秩父の山中ので前年まで誰も来なかった小さな渓谷が翌年護岸されていた時はまさに怒髪天を衝くという気持ちでした。話は逸れましたがこの本は自然への敬愛に溢れています。
ちなみにアイヌ犬フチがとてもいじらしくてかわいいので愛犬家にもお勧めします。絶対泣くので人前で後半は読まない方が良いでしょう。 -
久しぶりにすごい本を読んだ。
私が「ヒグマもの」にはまっていたときに買った本で、買った当初数ページだけ読んでそのまま積ん読にしてあったものです。
今回なんとなく「今かな」という気がして読み始めたら、もう止まらなくなりました。
もう驚きの連続でした。
私の「ハンター」の想像というのは、車で山まで行って、そこから山の中ウロウロして獲物を探して、いなかったら諦めて下山して家に帰って、後日また来る……というものでした。
ところがところが!
久保さんはまず山の中にキャンプを張り、そこから獲物の足跡などを追って山の中深く入り、追ってる獲物がその日のうちに見つからなかったらビバークするっていうんですから。
北海道ですよ、ヒグマいますよ。
「えーっ!」と信じられない思いでした。
そして獲物を倒したら、その場で解体。
それも心臓とか、その場で炙って食べながらやるっていうんですから、もう想像もつかないことばかりで「すげーっ!」の連続。
淡々と、誰かとの会話文なんてほとんどなく、獲物を追って山の中を歩いてる描写が続くのですが、それがすごく臨場感があって、書評で「まるで森の中にいるよう」と言われたのも頷けます。
なんという人がいたんだ、気づけてよかった、本を出してくれてよかったと思いました。
そして猟犬フチとの出会いと別れ。
たった一人で狩りをしていた久保さんにとっては、フチの才能は本当に心強かっただろうなあ、それだけにフチを失った悲しみは計り知れないです。涙なしには読めませんでした。
読んだらブック〇フ〜くらいに思ってましたが、絶対に残しておきたい本になりました。
私は持っていたので他の本に差し替えてもらいましたが、一万円選書をお願いした時にも候補に挙がっていた本なのもわかる! -
最高に感動した。
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一万円選書で選んでもらった作品の中のひとつ。ノンフィクションで自伝的作品。北海道で狩猟を仕事として生活を営む猟師の人生。簡潔な文章にも関わらず、一つひとつの描写が目に浮かぶようだ。ハンターとしての自身の成長、優秀な猟犬フチとの出会い、狩猟に生きる人間の真髄を楽しむことができた。動物嫌いなんだけど、犬の飼い方をネット検索してしまうくらい、作者と猟犬の友情にはあこがれを持った。しかし、やっぱり動物は苦手だった。
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今話題のクマ問題。人間と熊はどう共存していくべきなのか。
正直勝手ながらハンターという人種に対しては血も涙もない、只々殺戮を好む人たちというイメージを持っていたのですが、主人公の獲物に対する敬意や猟犬フチとの絆は見事なもので、命を自然を誰よりも大事にする人なんだなと思いました(例外もあるかもですが)。
共存に対する明確な解がこの本にある訳ではないですが、五感で大自然を感じ、山と一体化するかの様な気分を味あわせてくれるような素敵な小説で、一人一人が自然との共存を考える材料としてこれ以上ない作品だと思います。