小説・震災後 (小学館文庫 ふ 18-1)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094087048

感想・レビュー・書評

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  • 震災から1年経った今、是非読んでもらいたい作品。

    文章の中には、戦後社会の歴史と現状に対する深い洞察に溢れている。
    それを全肯定、というわけではないんだけど、全体としては鋭い洞察であると思うし、読者としても心に留めるべきだと思う。


    「『未来』の対になる言葉は、おそらく『将来』」。本文中のこういった言葉が、非常に印象に残った。

    最後に示されるものの具体的な内容は陳腐といえば陳腐だろうけど、現在の社会を深く分析し、「未来」を示すことの重要性も提示しているこの作品は、なるべく多くの人に読んで欲しいし、特に僕達若い世代には強く勧めたい。



    福井さん、文章が少し柔らかくなった?

    • hitomiさん
      とっても共感できる感想です。
      恐らくこの作品は、万人受けすることを前提に作られているため、
      福井さんとしては平易な文章なのでは、と私は思いま...
      とっても共感できる感想です。
      恐らくこの作品は、万人受けすることを前提に作られているため、
      福井さんとしては平易な文章なのでは、と私は思いました。
      もちろん「op.ローズダスト」などは非常に練られた文章になっていて、
      以前よりだいぶ読みやすくなったと感じましたけどね。
      2012/09/06
    • kさん
      >瞳さん
      コメントありがとうございます。遅くなってしまってすみません。

      素敵な感想をいただけて大変嬉しいです。あの文章、確かにそんな理由も...
      >瞳さん
      コメントありがとうございます。遅くなってしまってすみません。

      素敵な感想をいただけて大変嬉しいです。あの文章、確かにそんな理由もありそうですね。
      2012/10/03
  •  福井晴敏 著「小説・震災後」を読みました。

     東日本大震災後、東京に住む平凡なサラリーマンの家庭が舞台。原発事故を経て、希望を失い心の闇にとらわれてしまう息子。その息子に希望を取り戻すためにあがいていく家族。そして、祖父・父・息子の三世代が紡ぐ「未来の物語」が語られていく。

     フィクションでありつつも、そこに描かれている世界はまさに現実の世界、現実の家族であり、自分の家族や子供たちのことを考えずには読めませんでした。

     あの震災後、どの家庭でも今の生活のあり方やこれからのことをそれまで以上に考えずにはいられなかったと思います。

     そこに、未来や希望を見つけることは大変なことでした。

     しかし、作者が描くように、これからの世代の子供たちに前に進むべき未来を見せていくことが、今社会を支えている私たちには必要なのだと強く感じました。

     この小説で知った明るい未来を感じさせる新技術が現実のものとなることを一人の大人として期待したいです。

     自分の子供たちにもこれからの未来が思い描けるように自分自身の生き方を見つめていこうと思います。

     作者福井晴敏の熱い思いが描かれた小説でした。

  • 不勉強なものでこの小説に書かれていることがどこまでが現実なのかはわからない。
    しかし、ページを進ませるエネルギーは半端なかった。
    野田の最後の演説は福井さんの作品だなーと思わさせられるが読み切らせるだけの力があったように思う。

    あと、いつものことながら福井さんの作品は親父がかっこいい。
    そして女が強い。

    震災から少し時間がたち少しずつ忘れかけていた3.11あたりの記憶がよみがえった。
    また、時間がたったら読みたいとおもえる小説であった。
    次は自分の子が生まれたときにでも。

  • 福井さんの小説は好きなので、ほとんど読んでいる。震災を題材にした小説という事で気合を入れて読み始めた。
    この本をこの時期に読んでおいて良かったと思う。
    早めに購入して置いてあったので、もう少し早く読めば良かったかもしれない。

    福井さんの作品だといつも舞台はどこか自分たちとは少しかけ離れた感じの事が多かったけれど、今回はごく普通の家庭のお父さん、野田が主人公だ。自分の父の仕事が元防衛省だったのが少し特殊ではあるけれど、しっかり者の妻と難しい年頃の息子、娘が登場する。

    自分が震災後どうだったか?そんな事を省みながら読み進めた。とても辛くなるような場面もある。
    読みながら、野田の家庭の動きを追いながら、自分はどう考えているんだろうと整理できる一冊でもあった。

    福井さんの小説には父と子についての事がたくさん出てくると思う。
    今回も仕事一筋に生き、野田に語り・託す父。
    そして野田がこれから息子へ見せたい未来。

    自然と人間の関わり、未来への思いなんかについてはこの本の前に読んだガンダムUCでも描かれていたのに繋がりそうだ。

    なんにせよ、野田の父はとてつもなく格好良かった。

    それと、亡国のイージスに出てくる人物がこの作品にも登場する。
    嬉しかった。もしや!と思いながら読んでいたけど、名刺もらう場面で思わずニヤついた。

  • 最初にハードカバーでこの本を見たとき、胸が震えた。
    文庫本になって、美しい装丁を手にしたとき、充分な重みを感じた。
    でも読み終えたいま、その短さが心惜しい。
    文庫本295ページの小説が、決して短いわけはないのだが、
    従来の福井作品と比べると短編のようにすら感じる。

    (短編集の「6ステイン」と比べたら長いはずなんだけど。
    ・・・とりあえず、今度また「6ステイン」も読もう 笑)

    短編に感じるほど、この作品は大変読みやすい。
    多くの人が関心を持たざるを得ないテーマをかかげ、
    多くの人の心に伝わる正確な言葉で、
    多くの人に共感を得やすいストーリーを語り、
    多くの人へ向けたメッセージでラストシーンは埋め尽くされる。

    正統的な小説だと思う。
    解説の言葉を借りれば、
    「世代間の断絶と理解」「公と私のあり方」「個と社会のあり方」がテーマ。
    まさしく、福井作品の特徴的なテーマが並ぶが、
    決して、使い回しの表現を感じさせない点にも、驚く。

    唯一、「男とは・・・」の語りは、おなじみの話。
    「生きること、働くこと、死ぬこと……。
    なんにでも意味を見つけ出さなきゃ気が済まない。
    見つからなきゃ、自分で作ってでもなにかに自分を賭けようとする。
    その点、女は自然体だよな」
    わたしは女で、確かにいろんな意味付けはしないわね、と思う。
    でも、すべてに意味を見出そうとするサガに惚れるのは、
    わたしが女だからなのかしら、と考え、
    ま、意味なんてどうでもいいわね、とただ文字を見つめてみる。

    『他人が他人に示せる善意には限度があり、
    それを踏み越えた先には個人生活の破綻が待っている。
    まだ社会のなんたるかを知らない少年には、
    そんな不文律も大人の欺瞞としか聞こえず、
    世界をまるごと救おうと突っ走ってしまうものなのか』

    これは中学生の息子を語った、父の言葉。
    福井氏が描く、若者と中年男性の関係性は見事なバランスと形だといつも思うが、
    今回は息子と父、そして祖父の三世代である。

    如月行、フリッツ、一功と朋希・・・
    いわゆる女性読者が惚れるスター(笑)の役割が、今回はこの息子かと思いきや、
    さすがにそこは中学生。
    もっとたくさん動いてくれればいいのに、と思ったりもしたが、
    もし彼が歴代のスター並みにかっこよくて、
    わたしが惚れちゃったりしたら、それはもう年齢差から言って、
    犯罪になりかねない 笑

    もちろん、中学生の息子によって、このストーリーは動き出したこと、
    未来の象徴として、重要な人物であることは明らか。
    さらりと、若者の特徴を香らせているところも、いい。
    惚れはしなかったけど、彼のことをとても好ましく思った。

    福井作品ファンとして、祖父には、いろんな人物の面影が重なる。
    あの小説のあの人の老後は、こんな感じかしら、と
    こんな感じだといいな、と願う。

    「日本人を日本人たらしめる感性は失われ、
    欧米的な合理精神のみが人を動かすようになる。
    それはつまり、わしのようなつまらん人間が増えるということだ。
    いつでも最善の対処方法を考え、切り捨てたものには見向きもしない。
    そうしなければ生き残れないという理屈で自分を正当化して、
    誰もが孤独の穴に落ちてゆく……」

    「これを最後の任務と思っとったが、結局なにもできなかった」

    ファンにとっては、しびれる台詞。
    この言葉だけで、いろんな背景をイメージできる。

    この作品だけを読む人間には、どんなふうに映るのか想像もつかないが、
    きっと深い人間性は、誰の目にも読み取れることだろう。

    そして無辜の民の代表である父。
    リアリティあふれる無辜の民が、
    自然で驚きの変貌をする点もすばらしい。
    成長物語ともいえる作品です。

  • あっという間の文庫化に、衝動買い。
    私的にガンダムucで、イマイチな評価になった福井晴敏評が復活!というぐらいに良かった。
    震災後の2011年を舞台に、日本人が持っている地震以降の不安の原因が、この著作に表現されている。
    あの日の日本政府のバタバタ感を冷静にインテリジェンスとして分析し表現されている。フィクションとは言えないぐらいに限りなくノンフィクションに近い。

    見どころは、
    ・家族でボランティアで気仙沼に行くシーン
    ・最後の主人公の演説シーン

  • 先の震災を題材にある家族を通して、人が生きることの意味を描いた小説。細かい部分では青臭く聞こえてしまう部分もあるけれど、描いているテーマはローレライと同じ。それは私自身、若かりし日に仕事の方向を決める時に考えたことと通じるものがあり、すんなりと受け入れられる。

  • 久しぶりの福井晴敏。読み始めたときは、福井は原発廃棄路線でこの物語を綴るのか?という思いで読んでいた。物語は中盤から、震災後の日本を語る話から、一家族の話にスケールダウンして行く。その一方で、父が子に、親に語りかける言葉から、むしろ日本や近代社会への思いが強く伝わってくる。原発への思いは人其々だけれど、原発反対の人も、容認の人も、是非読んで欲しい作品だった。新幹線の中でちょっと泣いた。

  • 父から子へ、未来を示す。
    俺にもできるのかな・・・
    もう一回読もうか。

  • 「亡国のイージス」以来の傑作。現在の日本人全員に読んでもらいたい本、特に政治家!

著者プロフィール

1968年東京都墨田区生まれ。98年『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年刊行の2作目『亡国のイージス』で第2回大藪春彦賞、第18回日本冒険小説協会大賞、第53回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2003年『終戦のローレライ』で第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞を受賞。05年には原作を手がけた映画『ローレライ(原作:終戦のローレライ)』『戦国自衛隊1549(原案:半村良氏)』 『亡国のイージス』が相次いで公開され話題になる。他著に『川の深さは』『小説・震災後』『Op.ローズダスト』『機動戦士ガンダムUC』などがある。

「2015年 『人類資金(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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