逆説の日本史 15 近世改革編―官僚政治と吉宗の謎 (小学館文庫 い 1-25)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094087284

作品紹介・あらすじ

8代将軍吉宗は名君に非ず

『週刊ポスト』連載の大好評歴史ノンフィクション第15弾! 本巻の主役は、御三家紀州徳川家から江戸幕府第8代将軍となった徳川吉宗。目安箱の設置、大岡忠相の登用など歴代将軍随一の名君と称される吉宗だが、その一方で、
「政治家としての最大の欠点は、生きた経済というものがまるでわかっていない」という問題を抱えていた。吉宗の経済政策失敗の背景にある「商業軽視」という徳川政権の根本的課題に斬りこみ、積極的な経済政策で繁栄する名古屋藩藩主徳川宗春との対決の真相を解き明かす。 さらに、「賄賂政治」を行なったとして悪名高い田沼意次の再評価に挑む。本当に彼は非難されるべき政治家だったのか? 田沼を失脚させて政権を握った松平定信(吉宗の孫)の寛政の改革は誰のための政治だったのか? 幕府という巨大組織の権力闘争の内幕に迫る。歴史の常識といわれている事柄がいかに空疎なものかを暴く著者渾身の一冊!

感想・レビュー・書評

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  • 教科書では良いとされてきた改革の全てを逆説的に解説。悪人とされてきた人も実は経済的感覚を持った人ということで逆説的に解説。
    やはりこの時代はなかなか難しくて何度も寝てしまいました。
    タイトルの通りの内容だったと思います。

  • 吉宗から田沼~松平定信まで。このあたりはマンガ「風雲児たち」にも詳しいけど、田沼親子は悪臣ではなく名宰相だったこと、松平定信の改革は幕末の腰抜け幕府への「はじまり」だったこと、など、「風雲児たち」と同じ解釈を取ってる。

  • 歴史ってのは流れなんだよなぁ。つくづく思います。

  • この巻では、新井白石の正徳の治から、吉宗の享保の改革、田沼意次時代を経て、松平定信の寛政の改革までがあつかわれています。

    田沼意次にかんしては、大石慎三郎が名誉回復を図ったことが知られていますが、著者もその立場を引き継いでいるようです。とくに辻善之助の『田沼時代』(岩波文庫)については、田沼の業績を正当に評価していないとして、厳しく批判されています。そのうえで、儒教思想の商業蔑視の考えが江戸時代の経済政策を大きくゆがめていたとして、吉宗や松平定信に対しては辛い評価をくだしています。

    江戸幕府の経済政策の問題点を指摘する著者の議論は、おもしろく読みました。その一方で、国際的な環境の変動も視野に入れた、経済史的な観点に立った議論が欠けており、もっぱら貨幣政策によって日本の経済のありようが決定づけられていたかのような印象をあたえる記述になっている点が、多少引っかかるような気分にさせられます。

  • 6代家宣、8代吉宗、吉宗と尾張宗春、田沼意次と松平定信。
    平成の経済知識からみるそれぞれの将軍と側用人の施策のうまさとまずさが、とてもわかりやすく書かれている。
    古きを敬うという儒教がいかに何度も何度も革新的経済政策を元に戻したか。
    江戸時代の儒教呪縛のように、今の世の資本主義にもきっと呪縛があるのだろう。
    未来からみたら笑ってしまうような、でもさなかにいると気づきにくい呪縛が…。

  • 教科書では名君、名相扱いされている徳川吉宗や松平定信が、幕府側からはそう見えるけれど、庶民からすればその評価が正反対になっていたのを知る。表面的に評価されている人々は儒教、それも朱子学を学んだ人ばかりだった。そういった人々は貴穀賤金という経済思想に取りつかれており、お金よりも米穀重視の政策を取る。
    いや、むしろお金をケガレだとして、商業を見下していた。そのために経済政策が下手で、幕府の経済だけを良くしようと農民から米を搾れるだけ搾り取った。
    それが正しい政策だと狂信的に信じていた松平定信たちは、重商主義を掲げた田沼意次が出現した時に、その息子田沼意知を暗殺してでも止めにかかった。田沼意次が不運だったのは、彼が政務を取り仕切っている時に飢饉が起きてしまったこと。それさえなければ、彼への評価もあるいは変わっていたかもしれない。
    ただ、教科書にもある通り、賄賂はやはり沢山受け取っていたよう。中でも京人形一体という大きな箱に、本物の舞妓さんを入れて送った人がいるというエピソードに驚き。
    吉宗は目安箱を設置して庶民の意見を聞いたり、町火消しの制度を設けたり、小石川養生所を整備したりといいこともしている。
    松平定信も、人足寄場という無宿者や軽犯罪者に職業訓練を施す施設を設置している。でも、経済が上手く回っていれば、農村から都市に出て無宿者になることもないのを考えれば、マッチポンプという気もする。
    二人に共通するのはやはり経済音痴だったということ。
     また、平安中期から光格天皇が登場するまで、「天皇」という称号が使われていなかったという。冷泉院など「院」と呼ばれていても、天皇という称号は使用停止になっていたそう。日本最高の権威であるのに、事実上は武家政権が続いたためかとの仮説。それを復活させた光格天皇の時代からにわかに朝廷の権威が高まり始める。

  • 吉宗vs尾張宗春、田沼意次vs松平定信あたりのお話。しかし、宗春や意次の再評価はまあ聞いた事ある話だが、一橋治済の野望と光格天皇の功績は知らなかった。そして、一橋慶喜って、水戸家からの養子だったのか!(無知)ようやく慶喜が朝廷(官軍)に弓を引けなかったのが理解できた(今更

  • 儒家的厭商主義,導致重視經濟振興的田沼意次或者德川宗春等人都在歷史上受到抹黑,種農主義的吉宗和松平定信被拱成名君。

    作者認為繪島生島事件可能是冤獄,重點是讓大奧和權力內部本來尾張一面倒的氣氛一下子逆轉,後來竟然變成紀州吉宗空降即位。吉宗的町火消制度、實用主義允許蘭書翻譯、目安箱這種傾聽民意的行為固然相當值得肯定,推廣番薯(作者強調番薯的存在在歷史上相當重要,只要不要太冷都可以亂長,一舉拯救飢荒,只是天明大飢饉是寒冷種不起來的東北因此還是無法避免)。

    吉宗最大的問題就是重農排商,儉約制度讓宗春(鼓勵藝能)失權。民間已經採取金錢本位的制度,幕府還是一樣用米來當貨幣的米本位制,這導致相當大的矛盾,因為米畢竟是商品,如果要用他拉抬稅金或經濟(幕府不屑收商業稅),一旦豐收大量生產反而會導致米價下跌,越增產越窮,但吉宗不改貴穀賤金的制度,無視經濟有自己的邏輯運作,吉宗自己介入堂島米市場來炒米價並且把其他商人弄垮(因為儒教覺得這些人是寄生蟲般的存在)。另外把稅收固定改成定免制(以前是看收成評價),也造成農民叫苦連天。作者認為,在經濟上,完全是經濟白癡。另外他也不像電視那麼颯爽而是記仇型的,把宗春弄垮之後還創立了御三卿制度,並且特別規定這三家是不會因為絕後而消滅的特權,要確保將軍家以後都是自己的血脈。

    田沼採取促進商業,收商業稅,也準備開國,但是在任中就是好死不死遇上火山爆發氣候異常和天明大飢饉,因此評價並不好,以儒家思想來看氣候異常就是為政者沒人德。但是卻被重視出身門閥的松平定信抹黑說賄賂政治云云。定信的名君說也很可疑,到關西去搶米壟斷反而可能造成他藩飢荒更慘,姑且不說這些,他把田沼鬥垮(作者認為田沼意知被暗殺和定信也有關係,這是和一橋治濟攜手的陰謀之一)之後,政策緊縮回非常極端的珠子學,因此連其他儒家學說通通禁止,蘭學也是,因此林子平的海國兵談無法上梓被禁,造成日本之後的黑船SHOCK更嚴重,作者認為要是讓這本書刊行,有識之士應該會比較早察覺,也不至於造成後來無知的災禍。定信還廢除田沼的貨幣統一政策,恢復世襲身分制度。唯一值得讚許的是人足寄場可以舒適領先社會的教育刑,但那主要是長谷川的提倡,定信的著作可以看出他其實根本分かってない,覺得在裡面過苦一點正常的懲罰型思考。

    定信的失腳是尊號問題,光格天皇出身於白石所創的閑院宮,想追贈父親太上天皇,定信堅持不准,但是因為同時也遇到家齊想要封自己父親一橋治濟為大御所,甚為尷尬。一橋此人可謂當時的大黑幕,把兒子和孫子送到各家去御三家御三卿除了水戶極力抵抗之外其他通通都淪陷(連蜂須賀家這種外樣大名都被空降),把定信先弄到白河松平家讓自己的兒子進田安家(定信覺得是田沼主導的,所以終身恨他)讓定信失去繼承將軍家的機會,然後家治在位中因為田沼政權穩固,將軍家嗣子家基被毒殺(之後家齊終身都在鎮魂命日必拜,根據怨靈信仰原理應該是冤死並且和一橋家有關。怨靈信仰主要是朝廷公家,作者認為但是到江戶中末期也開始滲入武家),空缺後來就由家齊取而代之了。

    另外作者提到德川家康引進儒教是為了政權持久,在忠臣藏事件獲得更一步的穩固,但是也因此埋下尊王的根。光格天皇是恢復皇權很重要的角色,可能是因為他家入繼梅那麼被看重,因此反而更想要重建天皇權力,恢復很多被簡略化或被遺忘的祭典諸如大嘗祭新嘗祭,然後重新用回天皇稱號。從冷泉天皇起已經九百多年都幾乎稱院,但是在他很堅持一定要用天皇。天明大飢饉時,民眾間開始流行御所千度参り,大家自發性在御所繞圍牆,以前被遺忘的御所政權不會有人去那裏請願,現在大家要開始重視這個權威因此有非常重要的意義,表示民眾又開始對天皇抱著某些期待。在這件事上光格天皇破了規矩,家康創立的家法是天皇不可以和政治牽扯上,只准弄文化相關,但是光格天皇開口要求幕府救濟民眾,而幕府後來也照辦了,造成一個天皇可以插嘴政事的先例;而尊號問題天皇家是慘敗,但是被儒學者宣稱為幕府的慘敗,這也導致一步步走向後來尊皇變成一個常識的時勢。

  • 八代将軍吉宗の政策と実情を解説。ジリ貧になること間違いない徳川幕府の方針とその原因をリアルに説明。吉宗がドラマや小説で扱われるような名君ではないことを検証している。
    単なる暗記科目でしか捉えない日本史が面白いものであることを証明する評論。
    みなもと太郎の漫画「風雲児たち」とセットで日本の学生に読ませたい必読書ですね。

  • 井沢氏の基本的な歴史の見方には同意できる事も多い。なので、ずっと読んでるわけだが。

    ただ、本書は繰り返しが多くくどい。また、近世には入ってから、少し鼻につくのは対中国、韓国に関するくだり。井沢氏は、これを書きたいために、本シリーズを延々書いているのだろうから、仕方ないといえば仕方ないが。

    また、自説を主張するあまり、筆が滑っている部分もあるような気がする。もうちょっと公平な記述もできるのではないかな。

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著者プロフィール

1954年、名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSに入社。報道局在職中の80年に、『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞を受賞。退社後、執筆活動に専念。独自の歴史観からテーマに斬り込む作品で多くのファンをつかむ。著書は『逆説の日本史』シリーズ(小学館)、『英傑の日本史』『動乱の日本史』シリーズ、『天皇の日本史』、『お金の日本史 和同開珎から渋沢栄一まで』『お金の日本史 近現代編』(いずれもKADOKAWA)など多数。

「2023年 『絶対に民主化しない中国の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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