凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂 (小学館文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094087321

作品紹介・あらすじ

一九九二年七月、北海道釧路市内の小学校に通う水谷貢という少年が行方不明になった。湿原の谷地眼(やちまなこ)に落ちたと思われる少年が、帰ってくることはなかった。それから十七年、貢の姉、松崎比呂は刑事として道警釧路方面本部に着任し、湿原で発見された他殺死体の現場に臨場する。被害者の会社員は自身の青い目を隠すため、常にカラーコンタクトをしていた。事件には、樺太から流れ、激動の時代を生き抜いた女の一生が、大きく関係していた。いま最注目の著者唯一の長編ミステリーを完全改稿。待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 会社の先輩にお借りした一冊。

    この本もなかなか本の世界に入り込めず難儀してしまった。

    樺太の描写になるとページを捲る速度が上がるのだが、メインの刑事側の描写、現代の事件捜査の方になると気もそぞろになって、文章が物語として頭に入ってこない(^^;;


    1992年、小学校に通う水谷貢が釧路にある湿原にキタサンショウウオを採りに行くと友達に言い残して、帰ってこなかった。
    それから17年、貢の姉、松崎比呂は刑事となり、湿原で発見された他殺死体の現場に臨場する。
    被害者の会社員は、青い目をしていた。
    この時間には、樺太から逃れ、激動の時代を生き抜いた女性の一生が大きく関係していた。


    樺太から逃れた女性の物語をもっとメインに書いてくれたら夢中になって読めたかもしれないが?何故か刑事さんたちの方には全然感情移入出来なかった(^_^;)

    そして、あれ??湿原で亡くなった男性は何で殺されたの!?大事なところを流し読みしてしまったらしい(^_^;)

    アホや、私(^_^;)
    でももう一回読む気にもならず、、、このままお返ししよう。。。

  • 読み進めるのが辛い作品でした。
    北方領土に関する描写は常に日本人として知らなければならないものと感じた。
    現実と比較して読み進めると世界では同じようなことが続いて、作品と同じようになる方もいらっしゃるのかと考えさせられる。
    辛い作品でした。


    少女は、刑事にならねばならなかった。

    1992年7月、北海道釧路市内の小学校に通う水谷貢という少年が行方不明になった。両親、警察関係者、地元住民の捜索も実らず少年は帰ってこなかった。最後に姿を目撃した同級生の杉村純少年によると、貢少年は湿原のほうへ向かっていったという。
    それから17年、貢の姉・松崎比呂は刑事となって札幌から釧路の街に帰ってきた。その直後、釧路湿原で他殺死体が発見される。被害者は、会社員・鈴木洋介34歳。彼は自身の青い目を隠すため、常にカラーコンタクトをしていた。比呂は先輩刑事である片桐周平と鈴木洋介のルーツを辿るように捜査を進めてゆく。
    事件には、混乱の時代を樺太、留萌、札幌で生き抜いた女の一生が、大きく関係していた。
    『起終点駅(ターミナル)』で大ブレイク! いま最注目の著者唯一の長編ミステリーを完全改稿。待望の文庫化!




    【編集担当からのおすすめ情報】
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  • 初めての桜木紫乃さん。
    何て言えば良いんだろう、話は面白いし、時代が行ったり来たりする構成も無理なく分かりやすくて読み易いんだけど、ちょっと荒削り?
    キクの系列と比呂の系列の、2つの系列があるけど、この関連性がよく分からなくて。で、どこでどう関係してこういう事件が起きたのかがどうも腑に落ちない。そのあたりが薄くて残念だった。

  • 題名にある女性刑事松崎比呂が、『氷の轍』の大門真由同様、彼女自身が事件に深く関わりを持っている。
    一方、捜査の主役は『氷の轍』と同じく片桐周平が担当する。後読みになったが、本書が先行刊行作品のようだ。
    1992年7月の出来事で幕が開け、次は1945年8月の終戦前夜の話になり、そして2009年に事件が起きる。
    過去の出来事が現在の事件を引き起こす要因となるミステリーではよくある展開のパターン。
    しかし、『氷の轍』同様、ミステリーというより、直木賞受賞の著者らしい文芸作品の色合いが濃い。
    ソ連侵攻の樺太から逃れ、戦後の激動期を生き抜いた女性の一代記の感があり、濃霧に覆われた釧路の情景が作品に香華を添える。
    捜査の過程で、片桐が比呂に告げる。
    ある人物の「霧が晴れれば、今度は違うだれかの視界が曇るんだよ。水になったり水蒸気になったり、いつもどこかで曇り続けるんだ。見えない度胸も、ときには必要なんだ」

    一般に、北海道には梅雨がないと言われているが、蝦夷梅雨という言葉があるのをこの書で知った。

  • この小説はを推理小説と思って読むと少しガッカリするだろう。最後まで犯人の動機については納得がいく説明がなかった。しかしながら、作者が得意とする影のある幸薄い女性の一生を描いた作品だと思って読めば、やはり味のある仕上がりになっていると思う。

  • 一九九二年七月、北海道釧路市内の小学校に通う水谷貢という少年が行方不明になった。湿原の谷地眼(やちまなこ)に落ちたと思われる少年が、帰ってくることはなかった。それから十七年、貢の姉、松崎比呂は刑事として道警釧路方面本部に着任し、湿原で発見された他殺死体の現場に臨場する。被害者の会社員は自身の青い目を隠すため、常にカラーコンタクトをしていた。札幌、小樽、室蘭、留萌。捜査行の果てに、樺太から流れ、激動の時代を生き抜いた顔のない女の一生が、浮かび上がる!文庫化に際し完全改稿を行なった、新・直木賞作家唯一の長編ミステリー!

  • ある女性の大河ドラマのような壮大なスケールの話だと思うけど、ただただ鈴木洋介がかわいそう。簡単に殺されすぎ。
    桜木紫乃は2冊目だけど、北海道=湿原=暗い、寂しいの印象で、ここにさらに今回は樺太、引き上げ・・・というワードも加わってさらにうら悲しい。天気で言うといつも曇りのイメージ。
    十河キクの工房や暮らしぶりの描写は、唯一の晴れのイメージだったんだけどな。

  • 一度読んだだけでは掴みきれない何かがこの物語にはある。
    時間を置いてもう一度読んでみたとき、何とも言えない寂寥感が迫ってきた。
    誰が悪いのでもない。ただ生きることに必死で、自分という存在を許してあげたくて、懸命に本当の自分を隠しながら生きてきただけだ。
    哀しいなどという言葉が薄っぺらに思えてしまうほど、凄まじい人生がこの物語には描かれている。
    比呂の先輩刑事にあたる片桐はこんなふうに表現している。

    「事件は湿原の草花に似ているという。
    一日放っておけば養分を吸って翌日には信じられないほど成長していたりする。
    根だけ伸ばしていることもあれば、葉ばかり繁っていることもある。
    見えない場所で花を咲かせていたり、思いもよらぬものを糧にしていたり」

    そのまま、この物語に登場する人たちの人生のようにも聞こえる。
    独特の空気が流れているこんな物語に、たまには入り込んでみるのもいい。

  • 人間ドラマの要素が濃いが、それでもミステリー小説ではあるのでストーリーの詳しくは割愛。テーマはそれほど目新しさはないもの、第二次世界大戦後に樺太から追われた者たちの苦悩や混沌、釧路湿原に代表される道東の持つ特有の雰囲気はよく描かれている。

    とはいえ殺人に至る犯人の動機や背景が読者にとっては希薄に映るし、鈴木洋介の葛藤にも少し焦点を当てるべきだったかもしれない。中盤以降は伏線回収という名の御都合的な展開もやや気になる。

    登場人物の抱える孤独や哀しみを重層的に描く作品であっただけに、肝心のミステリー部分にはやや物足りなさを感じた。

  • 北海道で起こった事件を過去にトラウマがある主人公が追っていく話

    主人公の過去の事件とともに全てが明らかになってくるので伏線回収などはしっかりされていた物語、ミステリーとしては面白かったと感じる。
    背景なども面白く歴史も踏まえて読んで良かったと思う作品ではあった。
    しかし、点数が低い理由としては二つある。
    一つ目に物語が頭に入ってきにくく、伏線らしきミステリー要素はわかりやすい。という点にある。人によっての読解力や想像力などの違いなどはたるが、視点や感情がコロコロ変わり、登場人物も多い。スケールも大きく内容上時系列も遡ったりが大きい為、整理しながら読み進めていくのが難しい(速読タイプよりも、じっくり考えて内容を深めていくタイプの方に合うのではないだろうか)
    二つ目、主人公率いて誰にも感情移入がしにくい。
    そもそも主人公は誰なのかを決めつけてはいけないのかもしれないが…
    主人公は、物語を進める役割に値した人物として割り切らなければと思うほど、、薄すぎる。


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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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