死ぬという大仕事: がんと共生した半年間の記録 (小学館文庫 か 28-1)
- 小学館 (2012年12月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094087840
感想・レビュー・書評
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作家上坂冬子さんが、がんでなくなられたのは2009年4月14日。
本書は「緩和ケア」にふれた筆者が自身の体験として、そしてジャーナリストの視点から緩和ケアを綴った遺作となる。
2009年6月に刊行されたものの文庫版で、編集者からの追記が加えられている。
上坂冬子さんの希望が綴られているとともに、当時(ほんの数年前)のがん医療、緩和ケア、終末期医療の課題が浮き彫りにされている。
上坂冬子さんらしい語り口と、それに対する慈恵医大病院の医師、理事長の率直な意見がお茶を濁すことなく記されている。
ユーモアあり、ストレートな問題提起ありと満足できる内容となっている。
がん患者の立場から、また、医療を行う立場からの視点と、深く味わうことが出来た。
患者の立場からという点では、上坂冬子さんのようなある種達観した状態で入れるのはまれだと思うけども、だからこそ展開できた話題は大変貴重だと思える。また、医療者の視点から、特に慈恵医大の建学の精神「病気を診ずして病人を診よ」という根底にある精神が貫かれていることに胸を打たれた。
緩和医療実践のためにとる行動にはどのようなものがあるのかはっきりとは分からないけども、現状をしっかりと見つめるという点で非常に勉強になった。
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【内容紹介】
女流作家の話題の遺作がついに文庫化
2009年4月14日に死去した作家・上坂冬子氏の遺作が文庫化。08年秋にがん再発が見つかり、手遅れと言える状態から、「緩和ケア」医療を選択することで残された時間を有意義に生きた記録。それは同時に、自らの病状を受け入れて、「いかに自分らしく死ぬか」を徹底して追求した時間でもあった。
また上坂氏は、望む治療が受けられない「がん難民」が多発する医療制度に疑問を抱き、自らの闘病を詳細に明かすとともに、病室で医師らにインタビューして原稿にまとめた。かつてない赤裸々な筆致で末期がん患者の本音と真実が語られた「最後の傑作」である。
発売当初から大反響が起きて原書は版を重ね、「死」をテーマとしたノンフィクションとしては異例のベストセラーとなった。
今回、文庫化に当たって当時の主治医ほか医療スタッフに再取材し、この3年間で医療現場、緩和ケア体制がどのように変わったかを追補した。
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【目次】
追悼 最期の日まで作家として
第1章 がんは治すな、付き合うべし
・終末期医療と緩和医療はどこが違うか
・「高齢者は進行が遅い」は迷信
・「悶絶死」でなければ本望です
・もう住んでいた家も売り払ってしまった
第2章 医者と患者をつなぐ「命を懸けた信頼関係」
・女性は枯れ木が朽ちるように、男性はバキッと折れるように
・命をあずけたからには担当医の人生観に従います
・「散る桜」に美しさを感じる日本人の死生観
第3章 自分らしく生きるために
・「がん難民」を生む医療は許せない
・死期は自分でわかりますか?
・できることなら誰にも知られずに死にたい
第4章 すべての患者に全人的医療を
・慈恵医大病院長が語る「医療制度の大きな課題」
・受け継がれた「病人を診る」精神と、日本人が失ったもの
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