- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094087864
作品紹介・あらすじ
栗原一止は、夏目漱石を敬愛する信州の内科医だ。「二十四時間、三百六十五日対応」を掲げる本庄病院で連日連夜不眠不休の診療を続けている。四月、東京の大病院から新任の医師・進藤辰也がやってくる。一止と信濃大学の同級生だった進藤は、かつて"医学部の良心"と呼ばれたほどの男である。だが着任後の進藤に、病棟内で信じがたい悪評が立つ。失意する一止をさらなる試練が襲う。副部長先生の突然の発病-この病院で、再び奇蹟は起きるのか。
感想・レビュー・書評
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第2弾!
内科医には武器がない。
外科医や婦人科医のように、いざとなったらメスが出てきて滞った現状を打破してくれることはない。あるのは、ただ病室を訪れる二本の足だけである。その二本の足を互い違いに踏み出して、遅々たる歩みを続けるのが内科医なのである。
確かにそうかもしれんけど、ずっと病室にいてくれる、それこそがメスよりも頼りになるのかもしれん。
毎日、人が逝くのを目にすると自身の無力を実感して、更に患者と真摯に向き合う…
ええ感じの医者たち、看護師たち、ええ感じの地 信州。
何も人を病気から助けることだけが、医療でもないんやな。あまり、無茶はしたらアカンかもしれんけど、患者さんの事を思ってなら…ええで〜
病院の柱の一つが召される…
それをみんなが継いで、守っていって〜
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やはり信州の風景。神々しい山々。透き通った空気と澄み渡った星空。そして落ち着いた口調の文章がとても心地よい作品です。人間の本質に真摯に向き合い、ひた向きな努力を怠ることなく患者達を人間として治療し、最後までその人生に向き合う医師たち。もう理想的です。
第1巻に引き続きこの作品にもいい人ばかりが出てきます。しかも登場人物達の輪郭がより鮮やかになり、深みを増している。
この作品では「木曾節」がいいスパイスとなっていました。木曾節の中には「御嶽山」も出てくる。本当に地元の人が歌う木曾節は味わい深いモノであったことを思い出しました。
帰宅途中の電車の中で読み始めたのですが、帰宅後も読む手が止まらず、テレビを見ている家族の横でも読み続け、家族が寝静まっても読み続け、結局深夜に読了。人の死に向き合ってはいるのですが、読後感はどうしても清々しい気持ちになってしまう。
夏川さんの魔術ですね。 -
相変わらず栗原一止の古風な言動に読んでいてとても好感が持てます。そこに細君である、榛名の佇まいがなんともお似合いで、さらに一止を引き立ててくれます。
一巻に引き続き、周りの登場人物も優しい人たちばかりで、羨ましい限りです。
『あなたは医師である前に人間です』
当たり前のことなのに、とても心に突き刺さるフレーズでした。
仕事と家庭との両立、難しい問題ですが……お互いが解り合えてこそ、できることなのかなと感じます。自分自身もそれぞれの時間を有意義に過ごしていきたいと考えさせられました。 -
時間を止めて、の一冊。
涙だらけの読書時間だった。
地域医療に対しての志。
その志の根底に流れる幾つもの悔しい思い。
それが一つ一つ明かされるたびに涙が溢れた。
生があれば次は死、それは当たり前のことなのに。
わかってはいてもいつだって悔しさは拭いきれない。
幸せな時ほど、これからっていう時ほどその人の周りは倍の速さで時間が流れてしまう気がする。
夫婦の時間を、今、二人に流れている時間を止めてって、何度も思った。
そしてなんでこんなにみんな優しいの、強くて優しいの…最後はその想いが溢れた。 -
いやぁ~。
最高です(*´▽`*)
素晴らしい良書。
何て初々しくて、何て切なくて、何て清々しくて、
温かみのある小説なんだろう。
「医者の話ではない、人間の話をしているのだ」
帯に書かれた文字は、何のことかと思ったが、
そういうことだったのか。。。
1巻より、更に良い。
素敵な職場仲間、素敵な住処の仲間、素敵な細君。
どれをとっても素晴らしい。
何て素敵な世界観なのだろう。。。
読み終わり、うっとりしてしまう。。。 -
好みすぎて何冊でも読める確信がもてた。
シリーズ2作目。
新キャラの医師(0巻で登場)が本庄病院に赴任し、院内に不穏をもたらす。
そこからいつも通り課題が積まれてゆくなか、古狐先生夫妻のエピソードにうつる。
私的につらい話でした。
また本作も、いつもは冷静な一止が、熱が入った弁をする様があまりにも胸を打ってくる。
読む環境次第では本を一旦閉じてしまうくらい。
一止はやはり良い。
そして細君。
天使かよ。
この夫婦に悲しみなんて訪れませんように。 -
1からしばらく間がありましたが続編の2を読了。あたりまえですが医者も人間だし心身の病気になるということを思い知らされた。異動してきた大学の同級生である友の家庭の事情。古狐先生が重い病いで倒れるなどのエピソードがありました。ドラマのERでもそうでした。コロナ禍でなくても現実的に不眠不休で働く医師達はたくさんいらっしゃるのでしょう。敬服します。たまに休日出勤するくらいがなんだ⁉︎ということですね。
やはり、ハルのような細君を持つ主人公がほんとうに羨ましい。。。 -
夏目漱石を敬愛するゆえ語り口が独特な(あなたの言葉は難しくていけない、と看護師等から指摘される)内科医栗原一止が主人公の、医療小説第2弾。
引き続き信州の病院で勤務することになった一止。
悲愴とも言える医療の過酷な状況(特に地方医療での)が綴られている。
「医者は、患者のために命懸けで働くべき」
「私たち医者にとって、患者をとるか、家族をとるかという問題は、いつでも最大の難問です」等々。
しかも、同期の辰也の不可解な行動や、副部長の突然の発病もあり、事態は深刻。
しかし、一止の周りの人たちのユニークなキャラ(漱石の『坊ちゃん』みたいに主人公の周りの人物をあだ名で語られる)ゆえに、心がホッとし、続けてまた読みたくなる。
なかでも、一止の細君ハルがなんとも魅力的。お互いへの愛情がこもっている夫婦の会話には、読者もうれしくなってくる。
さらに、同期の一止と辰也の(アッと驚く奇矯な)行動にもお互いを思う気持ちが溢れていて、清々しくさえ。
医療現場で再三語られる「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬だ」が、医師でもある著者の、医療従事者たちへのメッセージだろう。 -
信州松本の24時間365日対応の本庄病院の内科医・栗原一止。
愛妻・榛名との時間を持てないほど、過酷な勤務が続いている。
東京の大学病院から大学同期生・進藤辰也が本庄病院に赴任してくるが、何か訳アリで…
患者のために命がけで働くことを求められ続け、結果、自分の家庭を犠牲にしてしまう。
本当にそれでいいのか。
医者である前に人間なのに。
そこまで言えるのか…
古狐先生の痛恨の過去…
そんなことは二度とあってはならないと、懸命に働き続ける大狸先生と古狐先生。
そんな中、古狐先生が病に倒れ…
大狸先生の慟哭。共に歩いてきた同志への想い。
医師は医師であるまえに人間である。
重い言葉である。
一止と榛名は、古狐先生と千代のように歩いてほしい。
古狐先生も自分の医療の理想を追うために、家庭を顧みなかった。そして、陰ながらそれを支え続けた千代。
一止も榛名との時間をほとんど持てないほど、過酷な労働環境に置かれている。
榛名の存在がそんな一止を支えているのだろう。
このままの2人であって欲しい。
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私のイチオシ小説の第二作目です。一作目より内容は少しシリアスになりますが、作者の人物の描き方がうまく暖かくて、柔らかい印象に落ち着きます。
今回は医師同士のつながりの部分がリアルです。外科系、内科系の医師の特徴も良くとらえてあります笑
一作目に続き、オススメです! -
こちらも再読です。
一作目より好きだし、すごい泣ける。
副部長さんの物語が素敵で睡眠前の読書で号泣でした。ひとのあたたかさを感じるストーリー、小説の中だけじゃなくて現実もこうやってひととひとがつなかっていけたらいいな。 -
1作目も良かったが2作目は更に良かった。
とくに後半、一つの文章をしっかり読ませる内容、表現でとても良かった。
イチさんの言葉遣いも全く気にならず、細君とのやり取りもホント前向きになれる。
解説に心地よいと書いてあったのが、まさにその通りで、それ以外の感想が思いつかないほど適切な表現だと思った。
次作も読もう。買いに行こう。 -
凄く凄く良かった。1作目を読んで一止先生の話し方に慣れたからかな?
友達の進藤先生登場。医者と人間。その通り。医療のあり方を訴えかけてきます。あと古狐先生…。
また、一止とハルさん夫婦のお互い寄り添いや言葉掛けがもう素敵すぎました。
映画もう一回観たいな。
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人が生きて生きて生き抜いて、死んでいくところ。
病院はそういう場所になる場合が多い。
それを最後まで見届けなければならないのが医者で、そんな極限の状態だから、どんなに手を尽くしても、それを理解してもらえないこともある。
それをわかった上で、ただ良心だけに従って働くというのは、物凄いことで、そしてそれを見守り支える周囲も、大変な状態であることは、容易に想像できる。
このお話はあくまでフィクションで、実際のお医者さんが何を考えているのかは分からないし、それぞれ思いは違うだろうけど、すごい仕事だなと思います。 -
前作と異なり、波乱連なる悲痛の物語です。
前作を読んで主人公のコミカルさと榛名への一途な愛の様子から、「もはや恋愛小説」と記していましたが、第二作となる今作では少し様相が違います。
今作で主軸となっているのは、東京から地元へ帰ってきた主人公・一止(いちと)の学友・進藤辰也をめぐる学生時代のほろ苦い初恋の思い出、そして現在の辰也が抱える問題について。さらに、物語のクライマックスである「とある人物の死」について、です。
ネタバレになってしまうのでボカしてしまうのですが、この死の場面の描写には心を掴まれました。抉るようにして読者の心を揺さぶりながらも、先へと読み進める速度は一切緩まないのは、全編通しての語り手である一止のキャラクター性ゆえなのかもしれないと感じました。
――人は誰でも死んでいく、季節が移ろうのと同じ。
頭で納得しようともがきながらも、感情は瞬間を生きていると改めて考えさせられる内容でした。
本作では、「生」のモチーフであると言える「恋愛」と、「死」の対比がグラデーションのように折り重なり、人間の美しさと儚さ、混迷に悩む人々の心が鮮明に映し出されています。
まだ『神様のカルテ』の続きが読める。
読み終えてそう思うほど、感情に染み入る作品でした。 -
《quotation》
思えば人生なるものは、こんなささやかな受け渡しの繰り返しなのかもしれない。
生まれた以上、いずれ死ぬのが理である。人に限ったことではない。どれほど見事な桜でも、季節が巡れば必ず散るのと一般である。
そんなせせこましい理屈の中でも、何かを受け取り、次へとつないでいくのが人だとすれば、それはそれで愉快なことであるかもしれない。 -
人は人であるということ。
ときどき忘れてしまう。
人はある職業の人物である前に人である。
だから、とらなくてはならない行動の前に、
とりたい行動があり、その動機がある。
仕事としての振る舞いの前に、
人としての振る舞いがある。
人としての生活がある。
それは決して忘れてはいけないこと。
そして、人である以上、
人から生まれ、
いつか死ぬ。
僕もあなたも人であるということ。
忘れてはいけない。 -
医者だって人間。
生死に関わる部署で懸命に働いていらっしゃる方々には頭が下がります。
(もちろん医者全員がそうだとおもっているわけでもないが)
医者を支える家族も人並みならぬ苦労があることを認識しなければならない。
昨今の緊急でもないのに救急車出動やら、緊急でもないのち夜間や休日に救急外来に押しかける人たちにも警鐘を鳴らす1冊でもある。
外出先で読んではいけません(笑)