出星前夜 (小学館文庫)

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レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (714ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094087963

作品紹介・あらすじ

寛永十四年、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)が一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に集結した。折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを彼らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負う。松倉家入封以来二十年、無抵抗をつらぬいてきた旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった…。第35回大佛次郎賞受賞の歴史超大作。

感想・レビュー・書評

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  • 題材は島原の乱、主人公は多すぎる年貢にも黙って従う大人たちに業を煮やし決起した青年、寿安(ジュアン)。領主たちに対して声を上げ、一石を投じることが目的だったのが、いつしかキリシタンたちの反乱として広がってしまう。己の預かり知らぬところで人が死んでいくことに苦悩するジュアンの姿が胸に迫る。戦というのは、ひとたび起こってしまえば手が付けられなくなるのだと・・・突きつけられる。エピローグでは医師として人々の役に立ち人生を全うする姿が描かれているが、仲間も帰る場所もなくし、自分が起こしたことなのに自分だけが生き残ってしまったという言葉にならない彼の想いが行間からにじみ出てくるようだった。

  • 読み進めるに連れて読む速度が遅くなり、しかしあるところから転げ落ちるように速度が早くなり、だけども読み終えることが辛くて、その速度を何度も落とそうとしたのだけども…読み終えました。
    この本に出会えて苦しくとも幸せでした。読んでいる時期に自身の環境の変化があり、余計に感慨深いものがありました。
    江戸初期に実際にあった、キリシタンに対しての苛烈を極めた弾圧と過酷な課税、そのためにすべての普通の生活を奪われ、天災による不作と貧困のために伝染病が蔓延し、もうどこにも引き返せなくなった農民たちが起こした、最大規模の反乱の話である。
    キリシタンであることが反乱のすべての理由ではないのに、最後は討伐軍側の都合のいいように、都合の悪いことは隠蔽され、見せしめのために叛乱軍は全滅させられる。女子供すべて。
    解説にもあったとおり、元々史実であり、絶望しかない物語なのだけれど、それでも微かな希望は撒かれ、僅かにでも広がっていく。
    人の救いは、信じるものは、絶望の中でも決して無くなりはしないと、信じたい。悲しみの物語が終わり、エンディングに僅かな希望を読んだ時に、そう思った。

  • 農民たちの苦労が延々と語られるを読むのに疲れる。本書を読むと、島原の乱の最大の原因は、信仰の迫害というより為政者の無能だという印象を受ける。本書に記載されている松倉家の為政はそれほどひどい。しかし、社会構造の中で、自分もこの松倉家のように、弱者を搾取する側に回ってしまっているかもしれない。そんなことを考えさせられる。

  • 2015.8.20.読了。島原の乱の背景を描いた作品。島原の乱は、弾圧されたキリシタンの信仰のための抵抗戦争だと思っていたが、背景にこんなことがあったんだなあと、自らの単純さを恥ずかしく思った。今のイスラム教信者のテロの報道に際して宗教っておそろしいと思っていたが、一人一人が幸せならば狂気とも思える行動に走るわけもなく、あらためて考えさせられるきっかけになる作品たった。ただ、長い上に同じような名前〜右衛門、〜左衛門ないっぱい出てきて誰が誰かこんがらがり大変だった。

  • 最近軽い本ばかり手を出している私は、ずいぶん苦戦しました。
    天候不順も一切考慮されない通常の倍の年貢、栄養失調から子供たちの間に伝染病が広がる。そんな松倉家の苛政に武装蜂起する若い寿安。朝鮮出兵で戦いの悲惨さと無意味さを知り、農業の発展により苛政を凌ごうとする庄屋の甚右衛門。そんな二人がいつか入れ違い、甚右衛門は島原の乱を貫き、暴徒と化した民衆に失望した寿安は、長崎で子供たちの伝染病治療に邁進する。
    島原の乱を題材にした700ページにわたる歴史大作です。司馬史観という言葉がありますが、この作品も飯嶋史観といった雰囲気もあります。ずいぶん濃密な書き込みでなかなか前に進まず。特に後半は戦闘場面が延々と続き、途中から少し流し読みみたいになってしまいました。
    しかし悲惨な中に救いもあって、読後感はいいですね。
    読み応えのある読書でした。

  • 島原の乱が起こった背景を丁寧に描く時代小説。乱の首謀者といわれている天草四郎を主とするのではなく、生活苦に悩む人々に焦点を当てて、物語は進んでいく。

    これを読むとキリスト教というより、悪政に苦しんだ結果、蜂起がおこったというのが正しい見方なのかも知れない。キリスト教を禁止するための名目にこの反乱が利用されたのだろう。

    本作は悲劇的な話だが、政治に翻弄される人民、反乱そのものを政治利用する政府(幕府)、騙される人民という構図は今も変わっていないのだろうと思う。

  • 凄い。圧倒される。

    棄教したとはいえ、受け継がれてきたキリストの教えを忠実に守ることによってその苛政に耐えてきた農民たち。
    そんな農民たちを踏みにじるように搾取し続ける松倉家の武士たち。

    幼い子どもたちの原因不明の流行り病がきっかけとなり農民と武士との均衡は一気に崩れる。

    追い込まれた人間たちが確固たる信念とともに覚悟を決めたとき、大きなエネルギーとなって歴史の転換点を生み出す。

    そのエネルギーの強さに圧倒され、呆然としながらもページをめくる手が止まらない。

    久しぶりに歴史小説の醍醐味を味わった。

  • 2019.7.4

  • 「一万円選書」で送られてきましたシリーズ。
    なんの予備知識もなく、つまり時代小説だということも知らずにいきなり読み始めたので、ある意味新鮮な読書体験でした(笑)
    島原の乱については学校の教科書以上の知識はなかったので、最後まで興味深く拝読しました。
    長い小説が好きなので、面白かったです。

  • 初飯嶋。学生時代に習った“島原・天草の乱”の裏側?というか、実際はこうだったのかのではないかと思う程の描写に力がありました。この時代のトップらもやはり糞ばかりでホント反吐が出る…。傑作でした!最後のジュアンがこの物語の唯一の希望の光でした^^ 個人的には松平伊豆守を刀で斬り伏せて欲しかったなぁ。星四つ半。

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著者プロフィール

小説家。1952年山形県生まれ。1983年「プロミスト・ランド」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。88年「汝ふたたび故郷へ帰れず」で文藝賞受賞。(上記の二作は小学館文庫版『汝ふたたび故郷へ帰れず』に収録)2008年に刊行した単行本『出星前夜』は、同年のキノベス1位と、第35回大佛次郎賞を受賞している。この他、94年『雷電本紀』、97年『神無き月十番目の夜』、2000年『始祖鳥記』、04年『黄金旅風』(いずれも小学館文庫)がある。寡作で知られるが、傑作揃いの作家として評価はきわめて高い。

「2013年 『STORY BOX 44』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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