- 本 ・本 (720ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094087963
作品紹介・あらすじ
キノベス1位&大佛次郎賞受賞作!
大佛次郎賞+キノベス第1位の2冠に輝いた、歴史超大作!
寛永14年(1637)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)は、一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に立てこもった。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを少年らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負った。
松倉家入封以来20年、いっさいの抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった‥‥。
結局は幕藩体制そのものに抗うことになる海民・土豪らの絶望的な戦いがここから始まる。向かう先は破滅にほかならなかったが、それでも彼らが戦うことを選んだのはなぜだったのか?
原稿枚数1200枚! 大部ながら一気に読ませる本作もやはり「飯嶋和一にハズレなし!」である。
感想・レビュー・書評
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島原の乱のお話
以下、公式のあらすじ
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寛永14年(1637)、突如として島原を襲った傷寒禍(伝染病)は、一帯の小児らの命を次々に奪い始めた。有家村の庄屋・鬼塚甚右衛門は旧知の医師・外崎恵舟を長崎から呼ぶが、代官所はあろうことかこの医師を追放。これに抗議して少年ら数十名が村外れの教会堂跡に立てこもった。
折しも代官所で火事が発生し、代官所はこれを少年らの仕業と決めつけ討伐に向かうが、逆に少年らの銃撃に遭って九人が死亡、四人が重傷を負った。
松倉家入封以来20年、いっさいの抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった、それは初めての武装蜂起だった‥‥。
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読み始めは江戸時代のパンデミックの話かと思ってたけど、立てこもる少年達のあたりで「これは島原の乱か?」と思い至る
島原の乱と言えば、天草四郎が率いた宗教一揆と思っていたけど
それはあくまで幕府側の残した歴史認識であって
実は重税と圧政に苦しめられた農民達の一揆が主体であり
その背景には宗教弾圧があり、またキリスト教の「耐える」という教えの最後の箍が外れた事で起こったという解釈になっている
キリスト教はうまく使えば民衆に耐えさせる道具にもできるけど
その結果、却って手痛いしっぺ返しを食らったというものですね
普通の一揆と違って、途中からは殉死する事が目的にもなり
結局は死兵となってしまったというのは、支配者層の無能エピソードだよなぁと思う
ただ、この島原の乱はキリスト教として殉教とはされていない
何故なら、耐え忍ぶというキリスト教の教えに従っていないから
やはり、遠藤周作の「沈黙」でも語られていたけど、キリスト教も日本に入ってきた時点で、どれだけ忠実に教義を守ろうとしても土着の思想と融合して、まったく異なる宗教になっている気がする
それにしても、蜂起勢を鎮圧するために何万もの軍勢を数ヶ月養える物資があるにもかかわらず
そうなる前になぜもっと早く救ってやれなかったのかという矛盾がある
まぁ、江戸表への報告と統治の実態の差異のせいではあるんだけど
幕府の中央の方では本当はどんな認識だったのかね?
それはそうと、「黄金旅風」の主人公、長崎代官末次平左衛門も結構活躍している
蘭学の医療を学んだ外崎恵舟とのやり取りでも、ひととなりが伺い知れるエピソードなどあって嬉しい
先々の事まで見据えた上で、民のために現状対策を行えるのは為政者として優れているよなぁ
あと、立花宗茂もおじいちゃんになって登場している
戦国無双とかで名前を知ってる程度ですけど、こんなに長生きしてたんですねぇ
そして、タイトルの意味
星とはあの人の事であり、そうなった経緯
そして、同じ道を選んでいたら辿ったであろう人たちの終焉がこの物語なのですね
その医者は実在した人のようで
出自など辻褄をあわせる形で物語の設定に組み込んでるようだ
この話、どこまで史実なんでしょうね?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦歴の兵であり、島原・南目の村を支える庄屋、甚右衛門は悪政に耐えかねて年貢の準備をやめた。一方、反乱の引き金を引いた寿安は長崎で医道へ。
寡作ながら書けば名作ハズレなしと言われる飯嶋さんの、最高傑作との呼び声も高い本作は島原の乱の顛末を描いた歴史大作です。島原の乱といえば、学校の授業では天草四郎が主導した宗教戦争と習いましたが、近年では重税と圧政に苦しんだ民衆の一揆が主体だという説になっているそうです。一方で宗教戦争説も見直されたりして、本当のところはよくわかりません。
本作では、島原の領主、松倉家が課した非常識な税(年貢)とキリシタン弾圧で疲弊しきった民衆が、キリストの教えの元に結束して一揆を起こす、という圧政説に基づいたお話になっています。膨大な資料を読み込んで緻密に組み立てる飯嶋さんの重厚で圧倒的な描写力で、ある事件をきっかけに転がる様に崩壊に向かっていく人々の姿は他にも「神無し月十番目の夜」などでも描かれていて、どちらもその結末が明らかなだけに読むのが辛くなっていきます。
とくに、本作では反乱の目標が殉教による救い、つまり圧政から解放されて生きることではなく、死ぬことによる救いを目指したというこの世への絶望感が本当に切ないのです。
そしていつの時代でも利権と自分の身の回りの利益にしか目を向けない為政者達は幅を利かせますが、そうした我が身ばかりを大事にして道を踏み外す権力者への怒りと、人として生きるとはどういうことなのかを語りかける静かな情熱に胸が熱くなります。私利私欲・今だけ金だけ自分だけという政治は今の日本や世界でも収まるところを知らず、人間の本質とはこういうものなのだろうと絶望にも似た諦念を抱かざるをえない時代ですが、終章で寿安が人に向き合い、生きる道を選んだように、少なくとも自分は人として恥ずかしくない生き方をしたいものだと切に思うのでした。 -
2020.11.24読了。
「島原の乱」がどのような戦いだったのか、
南目のジュアン少年、鬼塚監物、長崎の医師・外崎恵秋、長崎代官・末次平左衛門のそれぞれの目から語られる。
読み応え特大。
面白かった。 -
題材は島原の乱、主人公は多すぎる年貢にも黙って従う大人たちに業を煮やし決起した青年、寿安(ジュアン)。領主たちに対して声を上げ、一石を投じることが目的だったのが、いつしかキリシタンたちの反乱として広がってしまう。己の預かり知らぬところで人が死んでいくことに苦悩するジュアンの姿が胸に迫る。戦というのは、ひとたび起こってしまえば手が付けられなくなるのだと・・・突きつけられる。エピローグでは医師として人々の役に立ち人生を全うする姿が描かれているが、仲間も帰る場所もなくし、自分が起こしたことなのに自分だけが生き残ってしまったという言葉にならない彼の想いが行間からにじみ出てくるようだった。
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島原の乱について詳しく知ったのはこの小説が初めて
水軍の武将として戦の経験もある甚右衛門達が、城跡に立てこもり、幕府側の何万人という兵士に一歩も引かない姿は圧巻
これはすごい歴史小説でした
この本を予め読んでいたら、島原半島に行ったとき、激戦の原城跡も見学したんだけどな -
島原の乱について書かれた本。
何年か前に島原の乱はカトリックから殉教と認められてないという話を聞いて、実際のところは何が起こっていたのか知りたいと思っててこの本に出会いました。
長崎方面の土地勘がなく地名を聞いてもよくわからず、昔の日本あるあるで似た名前の人たちに苦しめられながら読み進めた前半でしたが、あまりにも酷い当時の状況に心が痛みました。不都合な真実にはキリシタンというレッテルを貼って処罰する圧政を敷かれ、生きることに希望を見出せず乱を起こすしかなかったのはあまりにも悲し過ぎました。
乱後の後半の流れは一つ一つの戦況の説明が詳細すぎるのと最後の結末は知っているためか読み進めるのか辛かったですがなんとか読破しました。読んで辛かったですが読んでよかったです。
物語の最後の方で花火師の人が「討伐軍はここで何をやっていたんだ。これほどの軍勢がありながら、なぜもっと早く、救う道をつけることができなかったものか」というところが一番心に刺さりました。10万の軍勢とそれを4ヶ月も養える物資があるくらいなら領民たちを救うことくらいなんということはなかったはず。島原の乱は武家社会の起こした人災だったと思いました。ただ、こういうボタンのかけ違いによる悲劇は昔に限らず、いつの時代でも起こりうるので繰り返されないことを祈るばかりです。 -
飯嶋和一、やっぱり「力量もある善なる者」が絶望的に負ける話がええのよね、「神無き月〜」とか。こんな読み方性格悪いんかも知れんけど。
島原の乱、正直よく知らんかった、そもそも「島原」なのにリーダーがなんで「天草」なのか、とか。まぁ読み甲斐あるわ。 -
素晴らしい。目の前で、ひとびとが動いているのが、リアルにわかる表現。しかも丁寧な取材をされている。
島原の乱はこうだったんだ、とドキュメンタリー映画を観ているような感覚になった。
虐げられる側に立った優しさと、正義の強さをもった作家の力作だ。
これは、大傑作である。
なんども読み直したい。 -
島原の乱を題材にした700P超の大作。主人公は天草四郎…ではなく、この時代に生きた人々。自らの運命に苦しむ者、自らの矜持に殉じる者、強かに立ち回る者などを時に熱く、時に冷静に描く歴史ロマン!題名の意味が最後の最後に分かる感動!面白かったー!
著者プロフィール
飯嶋和一の作品





