飛ぶ夢をしばらく見ない (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 83
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088236

作品紹介・あらすじ

時間を逆行し生きる女性と中年男の愛の日々

数ある山田太一の小説作品の中でも、初期の最高傑作。骨折で入院中の主人公・田浦の病室に列車事故にあった患者が運び込まれる。衝立ごしに出会った女性患者・睦子との不思議な一夜から、信じられない物語が始まる。主人公が再会した彼女は「若返って」いたのだ。老女から少女、そして幼女へ、さらには……。彼女は自らの若返りを止める術を持たない。二人はいつか訪れる関係の終焉を予感しつつも、互いを愛おしみ、逢瀬を重ねる。
「これは決して悲劇ではない。著者が二人の主人公たちと我々に見せてくれた、美しく壮大な夢の景色だ」(道尾秀介「解説」より)

感想・レビュー・書評

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  • 逆行していくことで、死にゆく実感を、老衰の描写よりも強く感じる。性衝動が強くなっていくのに死に向かって進んでいく、閉じたうねりが凄い。
    少女の命令口調みたいな萌えもきっちりおさえて、ほんと、プロフェッショナル。

  • 超常現象もの・・・と読むのがスムーズなのかな。
    もしくは主人公の空想世界での出来事か。
    の割に何かすごくリアリティがあったんですよね。
    起こっている結果は説明つかないんだけど、結果に辿り着くまでの過程、結果から生まれる道程、
    それぞれが緻密に繊細に描かれていて、何ら不思議じゃないような気がしてしまう。

    女を嫌悪しつつも睦子を求めてしまう田浦の心境も、
    仕事も家族もどうでもいい、どうでも良くないんだけどどうでもいい、みたいな厭世観も。
    自分のすぐ隣にあるもののような気がしましたね。

    睦子が時たま表す理不尽さも、理解する必要すらないような。
    こんな状況で安定している方がよっぽど気持ち悪いですからね。
    『こういうもの』としてそのまま受け止めるべきもののような。素材をそのまま食べているような感覚。

    田浦にとって睦子は、世間に対する不安を関係ないものと割り切らせてくれる一方、
    男冥利に尽きる新しい心配を寄越してくれる存在、
    そんな感じだったんでしょうな。

    ラストも綺麗でした。度々詩が引用されるように、1編の詩を読み終わった気分。

  • 退屈だった。
    なんか全体的に、生理的に受け付けない感じがあってね。

    若返りの話しなら市川拓司の「Separation」は泣けたけどねぇ。

  • 新聞の書評を読んで図書館にリクエストした本。(本棚の本、ほとんどがそうだけど)
    時間が経ちすぎてなんでこれをリクエストしたか、忘れてしまった。
    書評はなんて書いてあったのか。(-_-;)

    山田太一さんなのでどんな展開かと興味津々だったけど…ピストルの件辺りからなんだか興味は急降下。
    ファンタジーと思えばそうなのかな。

    うーん、ファンタジーなのか?
    自分はファンタジーが不向きなので、★2つでした。

  • 淫らで美しく残酷な物語でした。荒唐無稽なスートーリーであるにもかかわらず、歳を重ねることの寂しさ、時の流れの容赦のなさ、二人でいることの、二人でいるからこそなお身に沁みる孤独感、生きることの空しさ、悲痛、寂寥感などがリアルに描かれていました。
    ちなみにタイトルは、吉原幸子さんの〝ゆめ〟という詩から引用されたもののようです。

  • 女性側が年老いた老婆から、若返っていくという恋愛を主軸においた物語である。ストーリー自体は意外な方には進んでいかないが、恋人間の会話で多くを語りすぎない朴訥とした味わいが本作の魅力の一つである。

  •  内容紹介
    時間を逆行し生きる女性と中年男の愛の日々

    数ある山田太一の小説作品の中でも、初期の最高傑作。骨折で入院中の主人公・田浦の病室に列車事故にあった患者が運び込まれる。衝立ごしに出会った女性患者・睦子との不思議な一夜から、信じられない物語が始まる。主人公が再会した彼女は「若返って」いたのだ。老女から少女、そして幼女へ、さらには……。彼女は自らの若返りを止める術を持たない。二人はいつか訪れる関係の終焉を予感しつつも、互いを愛おしみ、逢瀬を重ねる。
    「これは決して悲劇ではない。著者が二人の主人公たちと我々に見せてくれた、美しく壮大な夢の景色だ」(道尾秀介「解説」より)
     この本を読んだきっかけは、読売新聞の≪ポケットの1冊≫足を骨折し入院した男へつい立越しの女性患者との不思議な一夜…「私を犯して下さいますか?」。女性の呼びかけで恥ます、男と女の声だけの情交は、よく笹、偶然に女が白髪の老女であった~5月12日の新聞。。。。ちょっと興味が沸き即図書館にネット予約し読みした。読み終えてから、アマゾンで1991年に 細川俊之、 石田えり 主演で映画化されベルリン映画祭に参加していたこと、2005年にDVDになっていたこと知りました。
    映像で見るか?? 声だけで一夜の情事だったはずか、その後睦子がドンドンと若返って行く…なんか、本の中だけでこの物語の哀しさを感じる…若返った睦子が着物を着て、とっても古風な話し方をする。という描写があるのですが~その辺も思うと本を読みながら情景を思う浮かべることがこの本には似合う気がしました。
     「飛ぶ夢をしばらくみない」このタイトル~私が見る飛ぶ夢は…自分の姿は見えない。。。でも目は地上を見ている…
     それぞれに見る飛ぶ夢があるように、この本を読んでの感想も様々あると思う。山田太一さんの小説…実は初めて読みました。とっても不思議な本でした。

  • 未来に向かう男と過去に向かう女の話。
    彼らが生きる時間軸は正反対の方向に進んでいるから、彼らはその交点でしか重なりあうことはできなくて、すれ違い、離れていくことしかできなかったのだなと、人ごみに消えていく睦子を見送りながら思いました。

    刹那い。

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著者プロフィール

1934年、東京生まれ。大学卒業後、松竹入社、助監督を務める。独立後、数々のTVドラマ脚本を執筆。作品に「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」他。88年、小説『異人たちとの夏』で山本周五郎賞を受賞。

「2019年 『絶望書店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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