ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 6267
レビュー : 791
  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088434

作品紹介・あらすじ

恐怖のゲームがはじまった

真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。
花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。
執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。
一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから、窮地に追い込まれていく。
直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。

感想・レビュー・書評

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  • 円満な社会生活を送っていくために、大人が身につけたもののひとつ「見て見ぬふり」。
    ほとんどの人は「注意した方が良いよなぁ・・・」と思う場面に出くわしたことがあるはず。そしてそれはほとんどのひとが常識のある人だと言う証拠でもある。
    だけど、実際に行動に移せるかというというとそれは別問題であり、行動に移せないことを責める人はいない。
    だって、自分自身も行動に移せる勇気はなかなか湧いてこないのだから。
    勇気を振り絞って行動に移したとして、それがトラブルに発展したら…、と思うとなおさら。
    主人公の倉田も普段はもめ事を嫌い、控えめに暮らしていたはずなのに、ある時、自分でも思いがけず行動に移してしまった。
    それがもとで、平凡な日常が一変する。

    面白くて、一気読みでした。

  • 久しぶりに池井戸さんを続けて読んでいる。
    本作は8年ほど前の作品に加筆訂正をして文庫化したもののようだ。

    私が池井戸ファンになったきっかけの『空飛ぶタイヤ』、大好きな『下町ロケット』、『ルーズ―ベルトゲーム』のように、窮地に追い込まれギリギリのところから解決へのきっかけをつかみ、さらに逆転劇へと進んでいくような、ハラハラ、ドキドキ、興奮の連続という華やかさは少々薄い。
    少し前に読んだ『仇敵』もこの本と同時期のものようで、ストーリーの持つポテンシャルは似ていると思う。

    主人公の倉田は銀行から出向させられた先の中堅企業の総務部長。
    仕事を終えて帰宅途中で、電車に割り込んで乗ろうとした男を注意する。普段は、そういうことをするタイプではなく、気持ちのメーターがたまたま正義の方に揺れた瞬間、行動に出ていたという感じ。
    しかし、逆切れした男に追い回され、自宅を知られ、いろいろな嫌がらせを受ける羽目になり・・・。
    じわじわと身に危機が迫りくる恐怖。
    心強いのは互いに支えあい、この危機に立ち向かおうとする家族がいることか。
    特に、大学生の長男くんは、なかなか冷静で頼もしい。

    また、倉田は会社で行われている不正に気づく。
    外様で孤立無援に見えた彼にも、信頼できて片腕として動いてくれる優秀な部下が身近にいる。その上、古巣の銀行にも力になってくれる同僚がいる。

    些細なきっかけから逆恨みされる恐怖。
    逆恨みのエネルギーを取り去るのは、かなり難しそう。ありふれた毎日の中に潜む悪意。
    こういうのを避けようとすると、人との関わりに消極的になってしまうもの。
    けれど、会社での危機から解決策を見いだせたのも、複雑な人間関係を避けたい気持ちを抑え、自分を奮い立たせて正面から立ち向かえたから。
    少しばかり苦手と感じる正義感の強い部下と、高圧的で全く自分を認めない敵との間に挟まれ、不正を見ないふりをすることもできた。それでも、信義に従って自分にできるベストを尽くせたことで、突破口を見つけることができた。

    半沢さんほどのスーパーヒーローではないにせよ、これでも、現実的にはヒーローだなあと思う。

    『仇敵』のように、若手社員が成長したり、本書のように家族のさまざまな課題を棚卸して、改めて強固な関係を築いたり、会社での仕事と人間関係で同時に結果を出したり、結局、仕事や家庭での危機を乗り越える過程で人間を十分に描いているところが、おもしろい。

    池井戸さん
    半沢さんはとても面白いです!!
    最近の作品の人物造形のおもしろさや企業のさまは池井戸さんにしか描けない境地にあると思います。
    それでも、今の池井戸さんが描く、こういう普通の人たちの成長も、また読みたいなあと思います。
    進化系の普通の人たちも是非!

  • いやー面白かった!一気読みです。

    最近どうも本を読む気にならなくて、読みかけの本が何冊も溜まっている状態で、この本もきっとそうなるんだろうな・・・なんて思っていたら、全然そんなことなく。
    1日も経たずに読み終えました。おもしろかった。

    ホームへの割り込みを注意した後に相次ぐようになった嫌がらせ、というプライベートにおける試練と、
    出向先の中小企業で見つけた、営業部長の不正の疑惑、というビジネスにおける試練。
    どっちもハラハラドキドキ。
    解決の糸口が見えてくるにしたがって、ページを進める手が速まります。

    ネタバレになることは言及しませんが、印象的だったのは不思議な程人と人の繋がりみたいなものを作品全体を通して感じられたこと。
    普段私たちは何者でもない人間として社会に点在しているけれど、それがひょんなことで繋がって結ばれて、時に集まっては離れて、そんなイメージが脳裏に残りました。
    ハラハラするサスペンスで社会の暗い面を映し出しながらも、何か温かなものが根底にあることに救われました。

    ところで池井戸潤さん、お名前はよく見かけますが初読みな作家さんでした。
    銀行の描写がとても詳しくて、調べてみたら、やっぱり元銀行員の方だったんですね。(そしてかの有名な半沢直樹シリーズもそういえば池井戸さんが原作でしたね)
    友人に借りて読めた1冊でしたが、人から勧められると読書の幅が広がっていいな、と改めて感じた次第。

    善とか悪とか、一言で振り分けないところもいいですね。何か救われるように感じたのは、そういう一面が本書にあったからかもしれません。
    週末の読書にぴったりな1冊でした。

  • 池井戸潤の初読み。
    まあ、十分に楽しめた。
    会議室での対決シーンは、手に汗握ってハラハラどきどきからの、スッキリ。

    でも、東野圭吾さんの匂いがするんだよな・・・・・。

    ★3つ、7ポイント。
    2017.10.07.新。






    ※池井戸潤さんが連ドラ「半沢直樹」の原作者で、銀行ものの小説を数多く書いていることは知っていた。あらすじ文からはサスペンス色濃厚な物語を期待していたが・・・・、メインはどうやら、連ドラで見たような経済事案の方だった。

    タイトルからすると、筆者としてのメインは同時進行していた「名無しさん」にかかわる事案の方だったのかもしれないけれど。


    ※やっぱり東野圭吾さんの匂いがする・・・・・・。

    巻末解説文に書かれた「プロットの都合で登場人物を動かすスタイル」という表現に、納得。そのスタイルからの脱却を図ろうとせんとしている時期の作品だということだが、逆に言うとまだ、抜け切れていない時期、ということか。


    ※最終章の最後の最後・・・・そこだけ刑事の視点に切り替わっているのが、面食らったし解せない。

  • 普段とはちょっとだけ違う行動をしただけだった。
    まさかそれで陰湿な嫌がらせを受けるようになるなんて・・・。
    ある日突然、理不尽な悪意にさらされたとき、人はどんな手を使ってそれを回避していくのだろう。
    倉田家を狙う悪意との闘いと、出向先で起きた仕事上のトラブルが同時進行していく物語である。
    主人公である太一は、父譲りの性格で人とぶつかることがどうにも苦手だ。
    疑問を抱きながらも、相手が高圧的な態度で押してくるとそのまま引き下がってしまう。
    だが、「名無しさん」の攻撃は徐々にエスカレートしていき、ついには傷害事件へと発展してしまう。
    企業小説を得意とする池井戸さんの物語だけあって、社内の不正にまつわる場面もとても読みやすい。
    総務部長でありながらも銀行からの出向ということでいつまでも外様のような扱いを受ける太一。
    これまでの実績を笠に来て、当然しなければならない仕事上の説明も太一を飛ばして社長に直接話すだけの真瀬。
    真瀬だけではない。
    社長すらも真瀬へは全幅の信頼を置いているのに、太一に対しては厳しいことこの上ない。
    銀行員として、総務部長として、ひとりの男として、太一は社内の不正に敢然と立ち向かっていく姿はカッコいい。
    「パパって凄いんだ」と言われるだけの働きで、それまで鬱々としていた苛立ちがスッと消えていった。
    「名無しさん」との対決も読みごたえがあった。
    次々と襲いかかる悪意に対抗していく家族の姿は、「わが家」を守ろうとする強い意志が感じられた。
    健太の判断が正しかったのかどうかはわからない。
    気持ちは理解できるけれど、太一の言うようにそれをやったら駄目というものわかる。
    健太がきちんと自分で決着をつける道を選んでくれてよかった。
    外敵がいると結束が固まるというけれど、元々仲のいい家族だ。
    冒頭に描かれている花火大会の場面だけでもそれがよくわかる。
    いまどき、母親と妹に付き添って花火大会にボディーガードとして行ってくれる息子がいるだろうか。
    そんな家族に平穏な日々が戻ったことが嬉しかった。

  • 解説によると、池井戸潤作品ではじめて連載→文庫化されたもので、サスペンス主体の時期から、人物像を掘り下げて書くスタイルへの移行期にあたる作品らしい。

    倉田という平凡な52歳のサラリーマンのプライベイトが脅かされる話と、出向銀行員としての奮闘記が平行して進む。
    プライベイト編は、便利な大都会の無名性を隠れ蓑にした一般人の悪意を浮き彫りにする。
    職場編では平凡なサラリーマンだって生き延びるのは大変なんだよ、という話。身につまされる...というやつ。

    で、相葉ちゃん主演で月9になるそうですが、彼は倉田の長男という設定とか?
    原作では、長男は 名無しさんの時代に馴染んでしまっているところも見せるが、そのあたりはどうアレンジされるでしょうか?
    がんばってね!
     http://blog.fujitv.co.jp/wagayae/index.html

  • 安定のおもしろさ、ですが、やはり最終的には勧善懲悪なので、結局大団円だよね?と思いながら読み進めてしまう。
    主人公は半沢直樹っぽくないので、最初はハラハラするけど、だんだん強気になっていくので(笑)、結局は似たような感じに・・・

  • ストーカー被害に家族を含め巻き込まれて行く話と池井戸作品らしい会社の話がパラレルに展開する。

    今回はストーカー被害を題材に家族描写が多く出てくる展開で新しい池井戸さんの感性が表現されているように感じた。

    主人公は銀行から出向して数年の総務部長で営業部長と架空請求を巡り真相解明に向けて対立する。

    個人的にストーカー被害の話が入った分池井戸カラーがボヤけた感じを強く受けたが、最後はすべての謎が解ける展開は爽快で面白い。

    後半になるに連れて引き込まれて行く魅力的な作品になっている。

  • 『BT61』みたいに死体が出てくるわけではないが、とにかく怖い本。
    平凡なサラリーマンが電車でマナー違反の男をどやしつけた日から、その一家に嫌がらせがはじまる。同時に会社でも同僚による不正疑惑が持ち上がり…。

    実際、この手の企業絡みの裏金工作があるのかわからないが、説得力がある筆致。
    犯人捜しの謎解きよりも、身近な恐怖を浮きぼりにした現代サイコサスペンス。

  • 正義が貫かれてよかった。先入観によって、捜査や推理が違う方向に行くことがある。真実を正しく見つめることは難しい。けれど、正しい道を見極めようという姿勢や、自分にとって辛くても真実を見つめようとする姿勢は持ち続けたい。

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著者プロフィール

池井戸 潤(いけいど じゅん)
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部および法学部を卒業。子供の頃から本に親しみ、作家になりたいと思っていた。『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。

以降、2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞を、2011年『下町ロケット』で直木賞をそれぞれ受賞。他の代表作に、半沢直樹シリーズ『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』、花咲舞シリーズ『不祥事』、『空飛ぶタイヤ』『民王』『ルーズヴェルト・ゲーム』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』など。多くの作品がドラマ化・映画化されており、非常に高い人気を誇る。
2018年10月、『下町ロケット』ドラマ放送中。

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