ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 9476
感想 : 940
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094088434

作品紹介・あらすじ

恐怖のゲームがはじまった

真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。
花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。
執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。
一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから、窮地に追い込まれていく。
直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。

感想・レビュー・書評

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  • ほぼ私と同年代の主人公が会社帰りにある男を注意した後に、家族を巻き込むストーカー被害に遭い、会社では上司の不正を発見し、その渦中に巻き込まれていくストーリー。

    普通の暮らしがほんのちょっとのことで一変するさまが、あまりにも普通に起こりそうでゾワっとします。

    最終的なハッピーエンドは池井戸作品の真骨頂!
    いつも楽しく終われる読後感が時々欲しくなりますね。オススメ!

  • 円満な社会生活を送っていくために、大人が身につけたもののひとつ「見て見ぬふり」。
    ほとんどの人は「注意した方が良いよなぁ・・・」と思う場面に出くわしたことがあるはず。そしてそれはほとんどのひとが常識のある人だと言う証拠でもある。
    だけど、実際に行動に移せるかというというとそれは別問題であり、行動に移せないことを責める人はいない。
    だって、自分自身も行動に移せる勇気はなかなか湧いてこないのだから。
    勇気を振り絞って行動に移したとして、それがトラブルに発展したら…、と思うとなおさら。
    主人公の倉田も普段はもめ事を嫌い、控えめに暮らしていたはずなのに、ある時、自分でも思いがけず行動に移してしまった。
    それがもとで、平凡な日常が一変する。

    面白くて、一気読みでした。

  • 久しぶりに池井戸さんを続けて読んでいる。
    本作は8年ほど前の作品に加筆訂正をして文庫化したもののようだ。

    私が池井戸ファンになったきっかけの『空飛ぶタイヤ』、大好きな『下町ロケット』、『ルーズ―ベルトゲーム』のように、窮地に追い込まれギリギリのところから解決へのきっかけをつかみ、さらに逆転劇へと進んでいくような、ハラハラ、ドキドキ、興奮の連続という華やかさは少々薄い。
    少し前に読んだ『仇敵』もこの本と同時期のものようで、ストーリーの持つポテンシャルは似ていると思う。

    主人公の倉田は銀行から出向させられた先の中堅企業の総務部長。
    仕事を終えて帰宅途中で、電車に割り込んで乗ろうとした男を注意する。普段は、そういうことをするタイプではなく、気持ちのメーターがたまたま正義の方に揺れた瞬間、行動に出ていたという感じ。
    しかし、逆切れした男に追い回され、自宅を知られ、いろいろな嫌がらせを受ける羽目になり・・・。
    じわじわと身に危機が迫りくる恐怖。
    心強いのは互いに支えあい、この危機に立ち向かおうとする家族がいることか。
    特に、大学生の長男くんは、なかなか冷静で頼もしい。

    また、倉田は会社で行われている不正に気づく。
    外様で孤立無援に見えた彼にも、信頼できて片腕として動いてくれる優秀な部下が身近にいる。その上、古巣の銀行にも力になってくれる同僚がいる。

    些細なきっかけから逆恨みされる恐怖。
    逆恨みのエネルギーを取り去るのは、かなり難しそう。ありふれた毎日の中に潜む悪意。
    こういうのを避けようとすると、人との関わりに消極的になってしまうもの。
    けれど、会社での危機から解決策を見いだせたのも、複雑な人間関係を避けたい気持ちを抑え、自分を奮い立たせて正面から立ち向かえたから。
    少しばかり苦手と感じる正義感の強い部下と、高圧的で全く自分を認めない敵との間に挟まれ、不正を見ないふりをすることもできた。それでも、信義に従って自分にできるベストを尽くせたことで、突破口を見つけることができた。

    半沢さんほどのスーパーヒーローではないにせよ、これでも、現実的にはヒーローだなあと思う。

    『仇敵』のように、若手社員が成長したり、本書のように家族のさまざまな課題を棚卸して、改めて強固な関係を築いたり、会社での仕事と人間関係で同時に結果を出したり、結局、仕事や家庭での危機を乗り越える過程で人間を十分に描いているところが、おもしろい。

    池井戸さん
    半沢さんはとても面白いです!!
    最近の作品の人物造形のおもしろさや企業のさまは池井戸さんにしか描けない境地にあると思います。
    それでも、今の池井戸さんが描く、こういう普通の人たちの成長も、また読みたいなあと思います。
    進化系の普通の人たちも是非!

  • そう言えば以前ドラマ化されていたっけ?と思い、手に取った本。
    あっという間に池井戸ワールドに入り込んでしまう。
    ちょっと気弱で真面目な主人公、倉田。
    ある日、駅のホームで割り込み男を注意するところから事件が始まる。いつもなら、そんな行動は取らないのに…
    次々に起こる倉田家への嫌がらせ、ストーカー行為。
    この事件ともうひとつ、職場での事件。
    池井戸作品らしく、倉田は銀行から中堅企業へ出向している。
    その社内での不正疑惑。
    気弱な主人公倉田は、この二つの事件に同時に立ち向かう。
    終盤では、社内事件の解決に向けた盛り上りで、思わずストーカー事件の事を忘れかけてしまうほど。
    もちろん、しっかりそちらも解決する。
    本当に楽しい読書時間だった。

  • 池井戸潤の作品は、正義は勝つんだ!というヒーロー物語を読んでる気分になるけど、この本は主人公がすごく普通な人なので、日常に起こりそうな話に感じた。
    これはこれで池井戸潤の良さが出ててよい。

  • 2022(R4)8.19-8.22

    約2ヶ月ぶりの読了。
    綾辻行人の『十角館の殺人』が読めずに挫折していたお盆明け。YouTubeの動画も見飽きたこともあって、就寝前の一気読みでした。
    読後感はさっぱり気持ちよかったです。

    特によかったのは、主人公が「スーパーサラリーマン」じゃないところ。逆に頼りないくらいで、ちょっと自分と似たところもあり、「それ分かるわ〜」と共感するところも多々ありました。
    スーパーじゃないけど素敵な家族がいて(息子がスーパーだったりして)、ささやかだけど温かな幸せを守るために奮闘する主人公はカッコよかった。

    2つの事件、というか問題が同時進行していく物語で、それぞれが互いの問題の伏線なのかな?と思いながら読み進めていきましたが、その構造については、個人的にはもうちょっとひねってほしかったなあと欲が出てしまいました。

    よって、星としては「3.5」というのが個人的な評価です。

  • こんなにきれいな伏線回収があるだろうか…!

    物語の最終局面でみせた事件の解決の全てが、散りばめられた伏線をすべて回収しているのだから驚きだ。

    この物語には2つの事件が並行して進んでいる。
    1つは家庭に忍び寄る魔の手について。
    2つは倉田の勤める会社の問題について。

    数々のトラブルに見舞われ、倉田の精神的・肉体的ストレスは相当なものだと思われるが、そこをうまく利用していたのは倉田の従来持つ性格だ。
    争いを苦手とし、出世欲もなく、堅実に与えられた地位で働く倉田はどこか呑気さがあった。
    それに倉田を支える優秀な部下と、家族の存在も大きい。
    事件が忍び寄ってくるスリルと味方による安心感の塩梅が、うまい具合に丁度いい。

    最初どこか頼りなかった倉田は、物語が佳境を迎えると、いつも言い負かしてくる真瀬や社長の持川と対峙し事件の解決を導いた。
    そんな倉田の成長も見られ、物語は山をいくつも超えていく。

    平坦な物語ではなく、次々と問題が降りかかり、読み手の心拍数も上昇する。少しずつストーカーの手口も増して行き、犯人はまさかの…!といった結末も見事だった。

    こんなに贅沢な小説は初めて読んだ気がする。
    あっぱれ!大満足の一冊だった!

  • 些細なことからストーカー被害にあい、それに立ち向かっていく物語!かと思いきや、それだけでなく主人公倉田さんの会社の内部事情のお話しも盛り込んであり、一冊で2つの物語を読んでるような感じになりました!

    私的にはストーカーメインの話だけで良かったような気がします(^_^;)

  • いやー面白かった!一気読みです。

    最近どうも本を読む気にならなくて、読みかけの本が何冊も溜まっている状態で、この本もきっとそうなるんだろうな・・・なんて思っていたら、全然そんなことなく。
    1日も経たずに読み終えました。おもしろかった。

    ホームへの割り込みを注意した後に相次ぐようになった嫌がらせ、というプライベートにおける試練と、
    出向先の中小企業で見つけた、営業部長の不正の疑惑、というビジネスにおける試練。
    どっちもハラハラドキドキ。
    解決の糸口が見えてくるにしたがって、ページを進める手が速まります。

    ネタバレになることは言及しませんが、印象的だったのは不思議な程人と人の繋がりみたいなものを作品全体を通して感じられたこと。
    普段私たちは何者でもない人間として社会に点在しているけれど、それがひょんなことで繋がって結ばれて、時に集まっては離れて、そんなイメージが脳裏に残りました。
    ハラハラするサスペンスで社会の暗い面を映し出しながらも、何か温かなものが根底にあることに救われました。

    ところで池井戸潤さん、お名前はよく見かけますが初読みな作家さんでした。
    銀行の描写がとても詳しくて、調べてみたら、やっぱり元銀行員の方だったんですね。(そしてかの有名な半沢直樹シリーズもそういえば池井戸さんが原作でしたね)
    友人に借りて読めた1冊でしたが、人から勧められると読書の幅が広がっていいな、と改めて感じた次第。

    善とか悪とか、一言で振り分けないところもいいですね。何か救われるように感じたのは、そういう一面が本書にあったからかもしれません。
    週末の読書にぴったりな1冊でした。

  • 銀行から出向で総務部長をしている倉田太一。
    ある日、帰宅途中の電車で順番抜かしをした男を怒ってから、その平凡な生活は一変する。

    妻、息子、娘と暮らす家や車に、悪戯ではすまないようなことが起こり始めるが、なかなか犯人を突き止められずにいた。防犯カメラを仕掛けるも、なかなか犯人の姿は見えない。

    一方で職場でも営業部長の不正やらなんやら、倉田太一の悩みは尽きない。

    犯人は一体誰なのか。

    なんだか不完全燃焼だったかな。
    妻の通っていたレザークラフトの先生なんて、凄く怪しいなと思ってたのに関係なかったしなぁ。
    ミステリーというよりは人怖かしら?

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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