トラオ 徳田虎雄 不随の病院王 (小学館文庫 あ 29-1)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094120479

作品紹介・あらすじ

徳田虎雄氏の「正体」に迫る決定版評伝

日本一の病院帝国を築いた徳洲会創設者・徳田虎雄氏がいま、己の「生」と向き合っている。ALSとは身体を動かす神経系が壊れ、全身の筋肉が縮んでいく難病だ。02年春に同病を患った徳田氏は、もはや全身の自由が利かない。
それでも眼球の動きで文字盤を追いながら、こう語るのだ。「これからがじんせいのしょうぶ」。
だがそんな徳田氏にも「運命の時」が近づいている。13年に徳洲会グループは、次男・毅氏の衆院選を巡る公選法違反容疑事件で東京地検特捜部の強制捜査を受ける。さらに徳田氏自身の病も進行し、眼の動きすらままならなくなる「完全なる閉じ込め状態」も、近く訪れるかもしれない。
窮地の徳田氏の「心奥」と徳洲会騒動の「核心」を気鋭のジャーナリスト・青木理氏が描く。

感想・レビュー・書評

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  • 近年の徳田トラオに接近しなければ書けなかった本。秀作だがもう少し徳洲会やかつての過激な選挙戦に踏み込んでほしかったがこれが限界か???
    徳田の称賛本でないところが良い。著者の青木氏はテレビで見る範囲、感じが良く、バランス感覚もある。

  • 徳田虎雄、全国に展開される徳州会の元理事長は、先般の公職選挙違反で一躍有名になったが、ALS (筋委縮性側索硬化症)に侵され寝たきりにながらも実験を握ってグループを率いていたという話も併せて広く知られるところとなった。本書は、公職選挙法違反により、徳州会の存在とその活動が世の中一般で広く知られるようにになる前に書かれたものだ。その事件の前後によって、おそらくは徳田に対する印象と評価がほとんど変わらないであろうということからもその稀有さがわかる。著者と同じく、自分もこの徳田虎雄を悪人だと断罪することができない。

    「一般的には間違っているといわれるようなことでも、正しい目的を成し遂げるためなら、そのために使った手段もすべて正しくなってしまうんですよ(笑)」というグループ幹部の言葉が、徳田虎雄の選挙問題や医師会との軋轢に関するすべての論理であるように思える。

    本書は、不治の業病であるALS罹患が結果として持つ意味と、そのALSに罹った上でいまだ強い意志を持って徳州会という団体に君臨する怪人徳田の物語だ。徳田がALSを患わなければ、またそれ以前に政治に出ていかなければ、どうなっていただろうか、と問うと同時にそんなことは無意味だと思う。当の徳田自身がそういった「たられば」とは最も遠いところで生きている。体の自由が奪われ、栄養の補給も人工的に行われ、いずれ呼吸も自律的にはできなくなり気管切開手術が必要となる。患者の意思の伝達は唯一残る目の動きで示す文字盤の位置によって行われるのみ。介護する家族にも、負担が重くのしかかる。徳田は、医師としてそこから逃れられないことを知りつつ、自らの思いに生きる。全身不随となってからも全国の病院の会議や数字を確認して、病室から指示を出すというのだから正直信じられない思いだ。それは、嫌われることを引き受けることで、自分の意志を通す、それができるのは自分しかいないという想いからの行動なのかもしれない。

    「生命だけは平等だ」というスローガンを掲げ、「年中無休、24時間オープン」、「患者様からの贈り物は一切受け取らない」「困った人には健康保険の3割負担も免除する」というモットーを掲げ、幼き頃の弟の死から誓った離島医療の実現と、徳州会を世界へ拡げるという意志は衰えない。公職選挙法違反に問われたのは、自身の側近を切った意趣返しであったと言われているが、このように情報の入力経路が極端に限定された独裁者が全体をコントロールすることの危うさが伺える。

    徳田が、ALSにかかる前に、死期がある程度わかるので、癌で死にたいと語っているが、その心性は理解できる。ALSに罹った上で戦う徳田の死生観として印象的な言葉ではある。

    公職選挙法違反は間違いないが、そのことと徳州会が突き付ける医療問題、医師会の問題はないがしろにはしてはならないと思う。

  • ユーモアも交えた文書で、あまり知られていなかった病院王を描く。★5

  • トラオさん、近くにいると鬱陶しいと思うけど、こういう人がいるから革新はされていくんだろなと思わせる。
    病気になってもとにかくエネルギッシュ。
    まだご存命なので安心したけど、会の中でゴタゴタが起きてて今の時代やってくのはきついんだろうなと感じた。でも頑張って欲しいなあ。トップが夢を見させてくれるって組織の中にいる限りは居心地良いだろな。

  • ASLと徳田虎雄について知りたかったので゜
    図書館から借りた。日本ALS協会と「ハリーポッター」シリーズとの関係について教えてもらった。

  • 狂気すら感じる徳田虎雄の行動力・執念にあてられ、自分の生き方を考えさせられた。

  • 徳田氏の強烈な個性について知りたく読んだ。期待通りの内容で、徳田氏のような真っすぐで強烈な生き方が自身の中にもあることを気付き、目的に向かってまっすぐ進むべきだと勇気づけられた。

  • 保岡先生との選挙の争いのほか、一代で徳洲会グループを作り上げたことなどが、取材されてくルポ。普通に面白い。

  • 日本一巨大な医療法人を作った徳田虎雄という人物に興味があり読破。徳之島という僻地、幼少で亡くした弟、貧乏という環境が作り出した一言でいうと反骨精神、換言すればハングリー精神の塊である。最後の方でも明記してあったが医療法人の理事長というよりは宗教法人の開祖といった関係で社員と繋がっている。努力、努力、又努力、無理な努力、無駄な努力、無茶苦茶努力をして、初めて道は開ける、
    単純に精神力が凄い!

  • 徳洲会という病院を一代で築き上げた経営者の、壮絶な人生を振り返った話は、幼少時代の悔しい思いが、その後の医師になると言う方向を決めつけ、医師だけでは留まらず、政治に参戦したりと話題に欠ける事がない印象であるが、その志はぶれる事がなく、高尚な目的を果たす事に直向きに生きている姿が分かります。晩年、難病に罹ってもグループの指揮を執り続け、そのカリスマ性は誰も超える事が出来ない。

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著者プロフィール

1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。慶應義塾大学卒業後、共同通信に入社。社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、2006年に退社しフリーに。テレビ・ラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『日本の公安警察』(講談社現代新書)、『絞首刑』(講談社文庫)、『トラオ―徳田虎雄 不随の病院王―』(小学館文庫)、『増補版 国策捜査―暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(角川文庫)、『誘蛾灯―鳥取連続不審死事件―』『抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心』(講談社)、『青木理の抵抗の視線』(トランスビュー)などがある。

「2015年 『ルポ 国家権力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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