とある飛空士への誓約 (6) (ガガガ文庫 い 2-18)

著者 :
  • 小学館
4.20
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094515060

作品紹介・あらすじ

葛藤と煩悶……かつての仲間との一騎打ちへ

敵対する三つの勢力に分かたれた「エリアドールの七人」は、あの誓約を胸にそれぞれの場所で頭角を現しつつあった。秋津連邦首都「箕郷」の防空任務についた清顕は軍の思惑により「若き英雄」として祭り上げられ、いまやヴォルテック航空隊のエースとなった「白狼」イリアを撃墜するよう強いられる。
両国の威信をかけた最新鋭戦闘機を託されたふたりは、単機で戦局を決定づけるほどの戦闘力を翼にのせて、燃えさかる箕郷上空で再会する……。葛藤と煩悶の末、互いを想い、仲間を想うふたりは高空の一騎打ちへ!

――感傷は捨てろ。感情もいらない。ぼくはもう、人間ではない。

TVアニメにもなった「とある飛空士への恋歌」の先には、こんな過酷な物語があった! 時代のうねりに翻弄されてきた若者たちを描いた、第二部「第二次多島海戦争」これにて完結。

感想・レビュー・書評

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  • 第2部「第二次多島海戦争」

    第1部終幕にてエアハント士官学校が崩壊し、ミオ離反後エリアドールの7人は6人へ…それぞれの道を歩き始める6人、そして2部ラストの決戦まで一人のキャラに偏重することなくそれぞれを上手く描ききっている。

    そして根底にある戦争という背景を、犬村氏は非情ながらもしっかり描いている、前半までは「ウラノス」なる絶対的脅威、みんなの共通の敵がいたが、国家間の戦争というものは一元的なものではなく多元的に、偶発的でなく必然的に起こりうるものであると語っている。結果7人はそれぞれの勢力に分かれ、かつての仲間を敵として葬らざるを得ない状況へ追い込まれていく。

    その状況下でも「誓約」を胸に秘め己の「天命」を全うしようとしていく7人、3部作の中盤という転結の最も起伏に富む最高に面白い部であった。


    第4巻
    エアハント崩壊後、かぐら、清顕、イリアは「ヴォルテック航空隊」に配属され実戦へと。航空隊の新しい仲間との交流、そして2つの飛空要塞の攻略がメイン。そして最後に登場するヒロイン!みえみえなのにやっぱり息を飲んでしまう展開。

    第5巻
    飛空要塞攻略に成功したものの、セントヴォルド帝国と秋津連邦の戦端が切られてしまう。軍警察に捕らわれてリンチの憂き目に遭う清顕とかぐら。敵対する国家間に分かれてもエリアドールの誓約の元に二人の奪還に動く、バルタザール、イリア、セシル、ライナ、そしてヴォルテック航空隊の面々。今回は他の評判通りにバルタザール大活躍、彼とセシル、彼とかぐら、それらのやりとりが一番の見所。そして最後にライナ(ハチドリ)の正体が清顕によって明かされる。最後のセリフ『俺のノーズアートはハチドリだ』これが印象的。彼も戦闘機に乗って大空の戦いに参加するのか?

    第6巻
    7人は完全に3つの陣営に分かれ、互いの命をかけての決戦へとなだれ込む、空戦シーンがメイン。清顕のうだうだ加減に腹が立つ。しかし仕方ないのかな?決戦の決着があのようなカタチなのも仕方ないか?そして激変するセシルとバルタの関係、亡国のお姫様、そして女王になるんだものね?あの手紙の再登場に期待。そしてそして女王になっちゃったニナ・ヴィエント!ニナ陣営にミオとライナがついて「プレアデスの奇跡」の舞台は整いつつあるようで期待高まる。


    3部作といえば自分的に思い起こされるのは「スターウォーズ」であり「帝国の逆襲」にあたる箇所がこの4~6巻である、最終決戦へ向けてそれぞれがどのような試練を突破してそこに辿りつくのか?というプロセスをキャラそれぞれに描き、序盤から続く誰かに感情移入しやすい潮流はそのままに、やはり根底にある戦争をしっかり描いているところは好感が持てる。まぁラノベという分野であるから、甘い部分を挙げればキリはなかろうが、それでも完結へ向けて期待は高まるのだ。

    海猫さんは登場しないのかな?

  • 評価:☆4.5


    落ちるところまで落ちたイリア父が、娘の写真や記事を大事に取っていてくれたことに気付くシーンは胸が熱くなった。

    列機をつけ、大切なものがまた増えてしまった清顕は再び、なんのために戦うのかについて考える。
    イリアやレオ達を相手にしたときに引き金を引けるのか・・・、迷いを抱きながら多くの人達の想いが込められた最新鋭機・斑鳩に乗って出撃し、今は自分の出来ることをする・・・その葛藤が見所でした。

    イスラ艦隊との戦いを避けてアルを助けるためにウラノス王になることを決めたクレアですが、こちらもまだまだひと波乱ありそうな気が。
    これにて第二部完ということですが三部も期待。

    「いい顔になった。それでこそ俺の部下だ」
    「――きみのことが、好きだった」

  • 「飛空士」シリーズ史上最も熱い巻、という作者さんの言葉が表す通り、このシリーズの全てが込められた集大成とも言える一冊。
    愛する人と、過去の仲間と戦わなければならないというシーンは、他を当たればいくつでも見つかるだろうけれど、そうした状況下に置かれた人々の心境を、まるで自分の胸の内から溢れ出していると錯覚するほど、ここまで美しく、見事に描いた物語などいままで読んだことがなかった。
    このシリーズでは空戦が一貫したテーマとして描かれているわけだけど、時速数百kmの世界で、一瞬が生死を分ける空戦だからこそ表現できる、生と死の狭間における人間の本当の心のうちというものを、この一冊でまたしてもまざまざと見せつけられた思いがする。
    とはいえまだシリーズが終わるわけではなく、物語は次巻から怒涛のクライマックスに流れ込んでいくはず。七人が誓った永遠の友情が、過去作の主人公たちの活躍が、ここからどんな結末を空に描き出すのか、楽しみでたまらない。

  • 目に見える範囲での空戦の描き方は夜想曲に近い。
    それ以外の部分では??となる場面が幾つか。

    物語はようやく第二部を終え、第三部へ。どこまで続くのか。

  • いやこれは苦しいなあ。
    飛空士シリーズ史上、最も苦しい戦いだった気がする。
    それは戦いそのものの苦しさではなく、愛おしい人や大切な人と戦わなければならないことの苦しさ。
    こんな展開は今回が初めてだ。

    前半はバラバラになったエリアドールの7人のそれぞれ動向が語られて行く中に、ニナの決意と動向が挟まれる展開。
    けれど、次第に物語は清顕とイリアの避けられない決戦へと突き進んでいく。
    大切な人と戦わなければならない現実を、かつて模擬空戦でも最初は撃つことができなかった清顕にそう簡単に割り切れるわけはないのだ。
    だから、かつての仲間と戦う清顕の心の痛みにこちらも苦しくて苦しくて仕方なかった。
    一体なんで両国はこんな戦争を戦わなければいけないのかとの想いが湧いてきた。

    それでも、結局二人の一騎打ちは、激しく、苦しく、愛おしく、繰り広げられる。
    それはもうこの物語の初めから決まっていた二人の運命なのだ。
    空戦のなかで通い合う二人の想いがとても苦しい。

    結末はある程度予想していたとはいえ、その決着にやはりホッと胸をなでおろした。
    そしてラスト、離れ離れだった仲間のうち3人が、いやバルタも入れれば4人が再び集う未来が示された。
    苦しい苦しい展開は一つの終わりを迎えたのだろう。
    ならばこの先には、新しい未来が待っているはずだ。
    きっと希望のある未来が待っていると信じたい。

    でも次巻は取り敢えずニナを巡るお話が中心だろうか。

  • 秋津連邦とセントヴォルト、少し前まで共闘していた勢力が本格的に対立したことで清顕とイリアも戦うことになったわけだけど、ある程度覚悟ができていたイリアに対して一度目の空戦で逃げてしまった清顕はちょっと情けない。顔見知りや大切な人を撃ち落とすことに躊躇があるとはいえ爆撃機を前にして戦線離脱してしまうのは飛空士としてNGだろうと思ってしまうのは私がまだこの作品にそれ程感情移入していないからだろうか?
    二度目の空戦ではきちんと戦ったけど、それが限界だったのかな。イリアとの決着を付けたいという気持ちはあったんだろうけど撃ち落としたいとまでは思えなかったんだろうな。
    これからイリアと共に所属するであろう旧シルヴァニア王国では殺しあう以外の空戦を見せてくれたりするんだろうか?

    一方のニナも風の力を失うと引き換えに王位に就くことに。どう考えても政治屋も居ないし、取引材料も持ってなさそうな陣営だけど大丈夫だろうか?

  • 悲しい……。  
    物語は第二部のクライマックス。登場人物たちが死力を尽くし全身全霊を賭して戦っている場面。 
    通常ならば猛り昂り緊張し震えながら読んでいるような状況なのに……、悲しい。ただただ悲しい……。  
    ライトノベルにあるまじき悲しい戦い。 

    新たな翼は彼らに光をもたらすのか。

  • とある飛空士への誓約の6巻目。
    とある飛空士シリーズの目玉、空戦の巻です。
    第2部完、みたいですね。

    とうとう清顕とイリアの一騎打ちが描かれましたね。
    表紙のイラストで既にわかるくらいですが。
    今までのシリーズの空戦の中で、一番切ない空戦だったと思います。

    しかし清顕は結局ミオとイリアのどっちが好きなんだと思ってしまう…。
    ダブルヒロインだと、こんなシリアスな時なのにツッコミたくなってしまって、良くないですね(苦笑)。
    ミオとライナの関係(特にライナの変化)も気になります。

    この先、物語はどうなっていくのか、楽しみですが、あまり不幸な結末にはならないと良いなぁ…。

  • このシリーズの特色とも言える、主人公格に押し寄せる苦難がこれでもかってくらいって詰め込んでる。

    幸せな世界ってなんだろうなと考えさせられた。

  • 面白いには面白いのだが、ここまで緻密に伏線を張って仲間同士だけど殺しあうしかない状況を作り出しながら、肝心の空戦が終始ポエムなのは拍子抜けしてしまった。

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著者プロフィール

1971年生まれ。小説家。代表作に、「とある飛空士」シリーズ、『レヴィアタンの恋人』(ともにガガガ文庫)などがある。

「2014年 『サクラコ・アトミカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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