千歳くんはラムネ瓶のなか (1) (ガガガ文庫)

  • 小学館
3.88
  • (40)
  • (44)
  • (23)
  • (8)
  • (5)
本棚登録 : 777
感想 : 32
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094517965

作品紹介・あらすじ

主人公は、超絶リア充。

『五組の千歳朔はヤリチン糞野郎』

学校裏サイトで叩かれながらも、藤志高校のトップカーストに君臨するリア充・千歳朔。
彼のまわりには、外見も中身も優れた友人たちがいつも集まっている。

圧倒的姫オーラの正妻ポジション・柊夕湖。
努力型の後天的リア充・内田優空。
バスケ部エースの元気娘・青海陽……。

仲間たちと楽しく新クラスをスタートさせたのも束の間、朔はとある引きこもり生徒の更生を頼まれる。
これは、彼のリア充ハーレム物語か、それとも――?


第13回ライトノベル大賞、優秀賞受賞。
新時代を告げる“リア充側”青春ラブコメ、ここに堂々開幕!!


【編集担当からのおすすめ情報】
ガガガ文庫で受け継がれる「青春ラブコメ」血統、そのニューフェイスです。
ぜひご期待ください!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  コペルニクス的転回というべきだろうか。リア充のリア充であるがゆえの、リア充で優秀であるがゆえの、トップを走り続け、前を向き続けているがゆえの、もっとも輝いているがゆえの、その苦しみ、切なさに焦点をあて、また、人間らしく生きるとはどういうことか、他人をヘイトするとどういうことが起こるのか、どんな人生訓の本よりも面白くわかりやすく示した、まるで現代のサミュエル・スマイルズだ。渡部昇一が読んだら絶賛するだろう。
     この話は二つの柱によって成り立っている。一つは主人公の哲学だ。あるカリスマなのだが、かといって、底辺を見捨てない、合理主義者ではないノブレスオブリージュである。ほかのリア充はやや合理主義者で、たぶん弱者救済は弱者救済福祉事業の仕事であり、我々とは無関係であるとするが、彼は異なる。彼は、自分の才能、自分の体力の多さ、カリスマ性、容姿、教養をもって、救いに徹する。なぜならば、優秀な人間であり、優秀な人間になるために努力したからだ。ぐうの音もでない、おそるべき正論と現実に、ごまかされているものがズバズバでてきて、読んでいて心地よさすらある。こういうことで政治的なことは絡めたくないが、マジモンのリベラルの姿がここにあると思う。ここまでぶっちゃけてくれるリベラルであれば、国民みな、自民党でなくそちらについていくのではないかと思われる面白さだ。
     もう一つが、この話はマイフェアレディ形式をとっていることだ。その代わり、対象はレディではなく、ひきこもりのキモオタだ。そのキモオタが主人公の指導のもと、主人公を神とあがめ、主人公の言いつけをまもり、だんだんと一般ピープルに出世し、最後は、自分を追い出したサークルをざまあして卒業する。
     主人公は、このキモオタに、お前は絶対に俺にはなれないし、リア充にもなれない、階層は絶対にあることを述べる。リア充のグループに入れてもらっていて、自分が凄くなったと思うな。お前は努力しなければならない。それをするかしないかの瀬戸際なんだという。そして、お前自身の幸せの形を得るのだ。なぜなら、もしお前がリア充になったとしても、リア充はリア充なりのドロドロしたりしのぎを削ったり日々美容に気を遣ったりする大変さがある。高貴であったりウィットに富んだりする話のテクニックもいる。お前が楽園だとおもって飛び込んだ先は、楽園で生きるための苦労を強いられることを忘れるな。だから、お前なりの幸せを考える。考え続けて、日々努力せよ。それがこの話に繰り返し説かれている哲学だ。
     見事なもんだと思う。ライトノベルがすごい!で一位を取るはずだ。これは、現代のサミュエル・スマイルズである、と、再度述べておく。

  • 地元でコラボキャンペーンが始まったので、大人がラノベってどんなもんだろう?と興味本位で読んでみました。ライトノベルってどういう定義だっけと分からなくなるくらいちゃんとした小説でした。

    リア充とか非リアとか陽キャとか陰キャとか、昔はなかった言葉が溢れていて、それに惑わされて自分をどこかの枠にはめなきゃいけない。しかも仮にどの枠にはまったとしても、周りの目を気にしながら自分の立場を演じていかなきゃいけないのですね。最近の子は大変だな〜。

    若い読者を励ます素敵な言葉がたくさんあったので、学生さんはぜひ読んでください。

  • オタク主人公・リア充が悪役というパターンが多いラノベには珍しく、イケメン超絶リア充を主人公にしたラノベ。

    ラノベ系譜的には俺ガイル→弱崎くん→なろう的な俺tueee要素も合わさって生まれたのかな。人気なシリーズなだけあって、スクールカーストを冷ややかな視点で描くところとか、口八丁で周囲を手玉に取る展開とか、本質を見極めてそうなダメ教師キャラと、主人公全肯定ヒロインとかとか、人気が出そうな要素押さえてる〜って感じ。

    途中で登場する捻くれた引きこもりオタクくんに向けて人生の説教をぶちかますイケメンリア充主人公。当初は妬みや偏見で主人公に反感を持っていたオタクくんだったが、あまりの主人公の完璧っぷりに、好感を超えて尊敬の感情を抱いていき、最終的には完璧すぎるが故の"歪さ"に気付き同情さえするようになる。このオタクくんはこのラノベを読んでいるメインの読者層であり(偏見)、オタクくんへの説教は読者への説教で、オタクくんの心情の変化は、作者が読者に感じて欲しい変化であるような気がした。その作者の狙いにハマれば楽しめるだろうし、ハマらなければ楽しめない、自分は無理だった。

    一見してメイン読者層が好きじゃないようなキャラクターを主人公にしてしかも説教までかますという読者に喧嘩を売るような作品だけど、「普段君が嫌っているリア充はリア充界の雑魚で本物のリア充は違うよ」っていう主張をすることで、上手く読者層の反感を買わないようにしてる。

    この「"本物"のリア充はそんなことしない」みたいな主張は、ネットに蔓延る「本物の金持ちはそんなことしない」「本物の天才はそんなことしない」みたいな、過度に"本物"を幻想化しすぎるオタクっぽくて好きじゃないかな。

    それにリア充を過剰な悪役にする昨今のラノベ・なろうのテンプレ展開を批判をしていたのに、クライマックスで同じようなことをしていたのもどうかと。それで余計に冷めた。

    オタク全肯定な作品よりは健全かもしれないけど、ちょっと中盤からの自己啓発セミナーみたいな展開は気持ち悪かった。これは弱崎くんでも感じたけれど。

    主人公の友達としてキャラが無駄に大勢登場するものの、1巻ではそれを置いて全く無関係なオタクくんがメインの話になるので、特に女キャラは最後まで誰が誰だか分からないまま読み終わる。

    あとリア充同士の寒い会話シーンがなんのオチもなく続くのもキツい。今はこういうのがウケるのか。

  • 青春恋愛モノを予想していたけれど、いい意味で裏切られた(ラブコメはラブコメだけど)。
    主人公はトップカーストのリア充。周りからねたまれつつも好きな友人たちと楽しい毎日を過ごしている。
    先生から、引きこもりのクラスメイトを登校させるよう頼まれたことがきっかけで、オタサー姫に振られて引きこもってしまった非リアの健太が「ざまあ」するのに手を貸すことに。リア充仲間たちの手も借りて、健太を雰囲気イケメンに仕立てていき…。

    青春ものの形を借りた、男の美学、いかに生きるかの哲学の話だった。
    千歳くんは何でもこなして飄々としているようで、とてもストイックでいろいろ考えているし、「あの日見た月のように美しくありたい」と自己を律し続けている。
    これを読んだ若い読者が憧れて彼を目指してくれたらいいな、と思うようなキャラだった。
    手を貸す相手である健太が同性なのもよかった。異性だと雑音が入ってしまうけれど、恋愛感情のない同性だと純粋に手助けであり仲間のためになる。

    洒脱でおもしろい会話、文章のテンポもよく、読むこと自体が楽しかった。作者はもともと純文学や一般文芸側の人だったというのは納得。
    いい作品を読みました!

  • あー、これは面白い。好き。

    よく異世界でチートな俺TUEEE系の話があるけれど、これも言わば現実世界のチートなリア充のお話。
    それって、なんだか鼻持ちならない感じになりそうだけど、でも主人公の千歳に全く嫌みがなくて読んでてとても楽しかった。

    千歳は好きだなあ。
    その考え方、努力の方向、弱音の吐き方、はぐらかし方。
    多分いろんなものを背負ってるんだろうけど、それにちゃんと向き合えるのがいいね。

    まったくベクトルは違うけど例えば「俺ガイル」がボッチの経典だとしたら、この物語はリア充の教科書と言ってもいい。
    上辺だけでない心のリア充。なんかその考えの一つ一つに感化されそうだ^^ 

    そしてリア充お約束のハーレム女子の誰もが可愛いかわいい。
    それぞれタイプが違って、でもみんな素敵。
    いやあ、夢でもこんな青春送りたいよね(爆)

    ヒーローは遅れてやってくるばりのラストもカッコよかった。
    そして彼が憧れる先輩女子はそれ以上にかっこいい。
    彼女との絡みをもっと見たかったかな。
    続編も出ているようなので先輩だけでなく今回絡みが少なかったそれぞれの女の子とのお話も期待したい。

    • あっきーさん
      まず主人公がリア充のトップであるというのが新鮮で、リア充視点から見る物語はとても面白く勉強にもなりました笑(僕リア充じゃないんで!)
      とにか...
      まず主人公がリア充のトップであるというのが新鮮で、リア充視点から見る物語はとても面白く勉強にもなりました笑(僕リア充じゃないんで!)
      とにかく主人公達に対して尊敬しましたもう山崎くんみたいになりました。周りのことをしっかりと見ていてそれにしっかりと向き合っていて、重荷に感じることもあっても仲間の助言などもありながら自信を持って進んでいく主人公はほんとにかっこよかった。トークの最後の落ちも笑わせてもらいました。
      2020/11/28
  • スクールカーストトップに君臨するイケメンリア充の千歳朔。そんな千歳は、担任からの以来で引きこもりの山崎を学校に連れ戻すことになる。山崎は失恋をきっかけに引きこもりになった非リアだったが、千歳は山崎をリア充にすべく、「非リア成り上がり計画」を企てる。

    面白いと感じたところ
    ・地の文が魅力的。随所に出てくる比喩や情景描写が素敵。良い意味でラノベっぽくない。
    ・盛り上がる展開がちゃんとあり、読者が飽きないための工夫がされている。

    イマイチに感じたところ
    ・そもそも世界観が面倒くさい
    自分の通っていた学校が比較的少人数の中高一貫校だったために特殊だっただけかもしれないが、当時は周りにリア充や陽キャ、スクールカーストといったことを日頃から意識して過ごしている人なんていなかった(クラスをまとめる存在はいたが、それに対抗する派閥だとか、それを僻むような人はいなかったと思う)ため、そういうのをいちいち気にしてる千歳も山崎も面倒くさいなと思ってしまった。くどい。
    ・千歳のポリシーが矛盾しているように感じる
    千歳は序盤で、リア充と非リアという分類に対して「俺は心底しょうもないと思う」「(その分類が)定着してしまった以上、できれば前者に、最低でも後者にならないよう泳いでいくしかない」と言っている一方で、自身のことを「カーストトップのリア充」と公言している。また、千歳たちに対抗してくるリア充派閥に対してはリア充に絶対評価と相対評価の二つのタイプがあるとした上で、「亜十夢たちは相対評価だ。他の人間と比べて自分のカーストはどの位置にあるのかを常に気にしている」
    と評価し、「俺たちは前者(絶対評価)」「他人が自分をどう思うかよりも、自分が自分を誇れるかどうかを指針に生きている」と言う。
    しかし、物語全体を通して見てみると、上記のセリフと千歳の(とりやけ山崎や亜十夢、山崎の元オタク仲間に対する)言動が矛盾しているように思える。本当の絶対評価なら、カーストだとか学校の裏サイトだとか気にしないだろうに。マウントタイプのリア充を批判するわりには、山崎に対してリア充とはかくあるべきといった説教を垂れている。もうよくわからない。

    というわけで、面白い点もあるが、それ以上に自分は納得できずにモヤモヤしたまま読み終えてしまった。要するに自分には合わなかった。カーストとか派閥争いが実際に存在する学校にいたらもっと面白く思えたのかな。

  • 著者初読。KU。リア充の千歳朔が担任の先生からのミッションを受け、リア充仲間と共にオタクな引き篭もりの山崎健太の意識を変え、学校に来られる様にする物語。ちょっと鼻につくと言いますか・・・なんだか自分の高校生時代と比べてキラキラし過ぎでなんだかなぁと思って読んでたけど、それにしても文章から目が離せない。少し不思議な読書体験でした。多分凄く面白かったんだけど、自分の心の奥底ではその気持ちを認めたくないんだと思うw。私も非リア充精神なのかも。続編がどうなるのか気になってしまうから続きも読もうと思います。

  • ラノベ界隈ではかなり評価が高いので購入。

    事前にみたレビューでは「けっこう人を選ぶ作品かも」とあり、読んでみてなるほどなと感じた。予想以上にラノベ濃度が高く、作品の雰囲気というかテンションも高い。いわゆる「リア充」の主人公グループのノリに着いていけない人が一定数出てくるかも。かくいう自分はけっこう苦手なノリだった。笑

    とりあえず一巻しか読んでいないが、主人公はカーストトップのイケメンで、同じくカースト上位の女の子たちから好意を向けられながら学園生活を満喫している。そんななか、主人公のクラス内には不登校の生徒がおり、その生徒に対してリア充指南をして再び学校に来られるようにする、というのが一巻の展開。

    主人公が不登校の子に施すリア充指南はかなり上から目線で、個人的にはあまり好きではなかった。登場人物たちの会話はテンポがよくとっても読みやすい。が、やっぱり個人的には「合わんなあ」と感じた。
    というわけで⭐︎2つ。

  • 第55回OBPビブリオバトル「マッチョ」で発表された本です。
    2020.11.25

  • 友達のおすすめで普段あまり読まないラノベを読んでみました。最初は主人公のすかした態度が嫌で惰性で読み続けていたが、窓ガラス割った場面辺り(読めばわかる)からなんか面白くなって気づいたら完読していました。最初は主人公の性格に抵抗を示すかも知れないが、風景描写は美しいし、読みやすい文体なのでラノベ初心者の方にもおすすめです!

全32件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

裕夢(ひろむ)
福井県出身の作家。『ラムネの瓶に沈んだビー玉の月』で第13回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞。受賞作を改題したデビュー作、『千歳くんはラムネ瓶のなか』を2019年6月18日に刊行。

裕夢の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×