永遠の詩 (全8巻)4 中原中也 (永遠の詩 4)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784096772140

作品紹介・あらすじ

傷つきやすい魂は、中也節とよばれる独特のリズムにのって、喪失の海をさまよう。やさしく、やるせなく、時に残酷に。稀代の天才詩人が遺した傑作詩を、現代仮名遣い、鑑賞解説付きで収録。

感想・レビュー・書評

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  • 中原中也の詩集ですね。
    私の中也との出会いは、解説の川上未映子さんと同じく中学校の国語の教科書でした。トラウマのように、詩と言えば中也を彷彿します。
    実際は中也の詩の深い意味を理解していたとは言えず。蝶のイメージが強烈に焼きついて私の心に住み着いただけようでした。
    中也の詩集をあらためて読んで、中也の内包の格闘を解説の高橋順子さんと共にふれる事が出来たように思えます。
    もちろん、宮沢賢治さんと同じようにすべてを思い至れる訳ではないので、中原中也さんの詩を吟じてみて感じたままに私流に想い受け止めてみました。
    永遠の詩のシリーズは、作家の作品から選び抜いた作品集です。選択がとても好ましくとても気にいってしまいました。

     一つのメルヘン

     秋の夜は、はるかの彼方に、
     小石ばかりの、河原があって、
     それに陽は、さらさらと
     さらさらと射しているのでありました。

     陽といっても、まるで硅石か何かのようで、
     非常な個体の粉末のようで、
     さればこそ、さらさらと
     かすかな音をたててもいるのでした。

     さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
     淡い、それでいてくっきりとした
     影を落としているのでした。

     やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
     今迄流れてもいなかった川床に、水は
     さらさらと、さらさらと流れているのでありました……

    中原中也さんの詩集を少しずつ読み起こすきっかけになりそうです。

  • この永遠の詩シリーズは8人の詩人が取り上げられていますが、最も早熟の天才は中原中也ではないでしょうか。
    高橋順子さんの解説によると、幼いころは神童といわれ、17歳で女優と同棲、のちに失恋、愛児文也の死、そして自身の早すぎる死まで短くて波乱に満ちた生涯だったようです。
    中也のファンとしても有名な川上未映子さんも巻末のエッセイ「悲しみとはいったい何か」で中也の背負っていた悲しみについて語られています。
    その作品は、静かで明るいものから激しさを秘めたもの、七五調までと多岐にわたってその天才ぶりをうかがわせています。

    「春と赤ン坊」
    菜の花畑で眠っているのは…
    菜の花畑で吹かれているのは…
    赤ん坊ではないでしょうか?

    いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です
    ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です
    菜の花畑に眠っているのは、赤ン坊ですけど

    走ってゆくのは、自転車自転車
    向こうの道を、走ってゆくのは
    薄桃色の、風を切って…

    薄桃色の、風を切って…
    走ってゆくのは菜の花畑や空の白雲

    ー赤ン坊を畑に置いて


    <解説より>
    1934年(昭和9)10月、長男文也が生まれた。長男の誕生は中也の憂いをはらう出来事だった。
    この詩はその翌年に発表された。赤ン坊の誕生を寿ぐもろもろのものたち…。
    あまりに明るく透明なので、なにか怖いほど、第三連で自転車は向こうの道を走っているのだが、第四連では風景が走っている。詩人の心が走っているのだ。「妹よ」とともに諸井三郎により歌曲として発表された。


    「帰郷」「盲目の秋」「生い立ちの歌」「頑是ない歌」「一つのメルヘン」「月夜の浜辺」もよかったです。


    中原中也(なかはら・ちゅうや)
    1907年(明治40)~1937(昭和12)
    幼時より神童とうたわれ、中也節とよばれる独特のリズムが耳に残る詩を生み出した。
    しかし、繊細すぎる心と体は徐々に変調を来たし、30歳の若さで病没。死後、その評価は高まり、いま、もっとも愛唱される詩人の一人である。

    • まことさん
      nejidonさんも、詩がお好きなんですね(*^^*)
      私は、最近読み始めました。
      立原道造は、友人の影響で読み、こちらの本棚にも1冊だ...
      nejidonさんも、詩がお好きなんですね(*^^*)
      私は、最近読み始めました。
      立原道造は、友人の影響で読み、こちらの本棚にも1冊だけ置いてあります。
      一番好きなのは、黒田三郎さんです♪
      2019/09/27
    • nejidonさん
      まことさん、大変失礼しました<(_ _)>
      立原道造の本もちゃんと見つけられました。
      高校生の頃読んで、「水引草」の存在を知り、そこから...
      まことさん、大変失礼しました<(_ _)>
      立原道造の本もちゃんと見つけられました。
      高校生の頃読んで、「水引草」の存在を知り、そこから山野草好きになった私です。
      今も庭に増殖中です・笑
      黒田三郎さんもいいですね。
      よけいな語りがないところが、詩を読む楽しさだと思っています。
      2019/09/28
    • まことさん
      とんでもないです(*^^*)
      立原道造は友人がかなり好きみたいで、手紙に添えて、毎回詩が送られてきていました。
      彼女も、植物が好きなので...
      とんでもないです(*^^*)
      立原道造は友人がかなり好きみたいで、手紙に添えて、毎回詩が送られてきていました。
      彼女も、植物が好きなので、きっと紹介したらnejidonさんとすごく気が合いそうな方です♪
      黒田三郎さんは中学の頃から好きな方です。
      私は字の細かい本をたくさん読みすぎたときに詩を読むとホッとしたりしています(^^;
      2019/09/28
  • 詩というものに馴染みがないのだけど、
    永遠の詩シリーズは、そんな私でも読みやすくて、この本をきっかけに八木重吉など詩を好きになるきっかけを得ている。

    装丁も綺麗で、解説も読みやすく、
    中也がどんな人生を歩んで詩をつくってきたのかということが分かる。
    川上未映子のあとがきも、中也ファンの心境がよく表されていて、いい。

    生々しくて、痛々しい言葉、
    リズミカルで反芻したくなるような美しいリズム、
    あやうさ、
    いいです。

  • (2023/07/01)

  • 中也の詩は、やはりどこか哀しげで、寂しい。
    かわいくて、にくめない人。

  • 教科書に載っていたものしか知らなかったので、改めて解説もついたものを読む。リズムが良くて何度も繰り返し口ずさみたくなるのが歌みたい。今でも好きな人が多いのがわかる気がした。

  • 冬の風のような頼りなさと、雪のような弱さと、それゆえのうつくしさを感じました。夢想の世界にとんでいってしまうものもあれば、自分の弱さに素のままに向き合っているものもあって。自分の生涯を雪にたとえたものが象徴的だなと思いました。はたして彼は、自分をよごれっちまった雪のように思っていたのでしょうか。

  • 【詩をたのしもう(日本編)】
    日本の近・現代詩史に燦然と輝く詩人たちの作品を選り抜きでご紹介します。
    新学期、新生活にお気に入りの詩人をみつけてみませんか?

    <閲覧係より>
    中原中也(1907-1937)。
    30歳の若さで病死した中也は、繊細で傷つきやすい青春の悲しみを独特の調べとともに謳いあげています。
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    所在番号:911.568||エイ||4
    資料番号:10205740
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  • 中原中也は高校の授業で取り上げられて少し気になっていた詩人。
    やっと「永遠の詩」シリーズで見つかったので読みました。
    「頑是ない歌」「湖上」「雨が、降るぞえ」あたりが気に入りました。
    後は七五調のもいいですね。
    今度はもう少しちゃんとした詩集も読んでみようかな。

  • 「私はその人生に、椅子をなくした」
    気持ちの流れは、ここから始まったと思う。

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著者プロフィール

中原中也(なかはらちゅうや)
1907年4月29日、山口県生まれ。23年、山口中学を落第し、京都の立命館中学に編入。劇団女優、長谷川泰子と知り合い、翌年から同棲を始める。25年、泰子とともに上京。泰子が小林秀雄のもとに去る。26年、日本大学予科文科に入学したが、9月に中退。29年、河上徹太郎、大岡昇平らと同人誌「白痴群」を創刊。33年、東京外国語学校専修科仏語修了。遠縁の上野孝子と結婚。『ランボウ詩集《学校時代の詩》』刊行。34年長男文也が誕生。処女詩集『山羊の歌』刊行。36年、文也が小児結核により死去。次男愛雅(よしまさ)誕生。37年鎌倉に転居。『ランボオ詩集』刊行。詩集『在りし日の歌』を編集し、原稿を小林秀雄に託す。同年10月22日結核性脳膜炎により永眠。享年30歳。翌38年『在りし日の歌』が刊行された。

「2017年 『ホラホラ、これが僕の骨 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中原中也の作品

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