おこだでませんように

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784097263296

作品紹介・あらすじ

ぼくはいつもおこられる。いえでもがっこうでも…。きのうもおこられたし、きょうもおこられている。きっとあしたもおこられるやろ…。ぼくはどないしたらおこられへんのやろ。ぼくはどないしたらほめてもらえるのやろ。ぼくは…「わるいこ」なんやろか…。ぼくは、しょうがっこうににゅうがくしてからおしえてもらったひらがなで、たなばたさまにおねがいをかいた。ひらがなひとつずつ、こころをこめて…。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログの画面だと見辛いかもしれないが、表紙の男の子の目には涙が浮かんでおり、それでも決して声に出すことはなく、ただ、何かを噛み締めるように、じっとこらえている。

    七月七日、小学一年生が、学校の授業で七夕さまへのお願いを短冊に書くとしたら、「サッカーせんしゅになれますように」とか、「ピアノがじょうずにひけますように」等が、ありふれたように思われる中、彼はどんな願い事を書いたのか?


    ぼくは いつも おこられる。
    いえでも がっこうでも おこられる。

    「また いもうと なかして!」
    (いもうとのくせに わがままばっかり いうからや)

    「まだ しゅくだい してないの!」
    (いもうとと あそんでやってたからや)

    けれど、ぼくが、そういうと、
    おかあちゃんは もっと おこるに きまってる。
    だから、ぼくは だまって よこを むく。
    よこを むいて、なにも いわずに おこられる。

    あーあ、ぼくは いつも おこられてばっかりや。


    「また やったの!」
    (ふたりが さきに いじわる いうたんや)

    「ぼうりょくは いけません!」
    (でも、『なかまに いれてやらへん』と いわれたのは、ぼくの こころが もらった パンチやで)

    けれど、ぼくが なにか いうと、
    せんせいは もっと おこるに きまってる。
    だから、ぼくは だまって よこを むく。
    よこを むいて、なにも いわずに おこられる。

    あーあ、ぼくは いつも おこられてばっかりや。


    難しい問題だと思う。
    男の子の中には、「いもうとのくせに」や、実際に殴ったりしてしまうような、確かに見直すべき点もあるとは思うが、なんといっても、そこはまだ小学校にあがりたての自立心や教養も少ない、小学一年生なのである。


    きのうも おこられたし……、
    きょうも おこられてる……。
    きっと あしたも おこられるやろ……。

    ほんまは ぼく、「ええこやねえ」って いわれたいんや。
    けれど、おかあちゃんも せんせいも
    ぼくを みるときは、いつも おこった かおや。

    ぼくは どないしたら おこられへんのやろ。
    ぼくは どないしたら ほめてもらえるのやろ。
    ぼくは……「わるいこ」なんやろか……。

    せっかく しょうがっこうに にゅうがくしたのに。
    せっかく 1ねんせいに なったのに。


    私たち大人だって、あまりに同じ思いを繰り返し痛感させられる辛さには、どうにかなってしまいそうな精神的苦痛を感じるであろうに、それが、小学一年の男の子が背負っている時の心境となると、はたして如何ほどのものなのだろうか?

    大人だって、本当は怒りたくないのであろう。
    しかし、しょうがないじゃないかと、そこで思えるのか?
    そこで、子どもに、察してちゃんを要求するのは、あまりに酷なのではないか?
    母も大変、先生も大変。でも、子どもだけ大変じゃないってことには、ならないでしょ?
    乱暴な子どもにだって、乱暴ではない一面もあるんだよ。

    それは、同じ子ども時代を経てきた大人なら、気付くはずなのに、どこか記憶の片隅に仕舞われたまま、その在処を忘れてしまっているようで、何とも悩ましく思える中での、彼なりに必死で考えた思いとは?


    ぼくは かんがえた。
    いちばんの おねがいを かんがえた。
    いっしょうけんめい かんがえていると、
    「はよう かきなさい」
    と、また おこられた。

    ぼくは、しょうがっこうに にゅうがくしてから
    おしえてもらった ひらがなで、
    いちばんの おねがいを かいた。
    ひらがな ひとつずつ、こころを こめて かいた。


    その願い事の短冊をアップにした、それのある机の絵には、他に噛み痕のある鉛筆と、半分以下になった、使いすぎて薄汚れてしまった消しゴムの欠片もあり、なんだかそれが、男の子の不安感や、か細い弱々しさを表しているようで、沁みるものがある。が、しかし!

    それは、この絵本で初めて見る、男の子のやわらかい優しげな目もとにも表れているように、その後のせんせいと、おかあちゃんとのふれあいは、見ていて、とても心暖まる感動的なものだった。


    作者の「くすのき しげのり」さんは、実際の短冊にそう書かれていたのを見て、涙が出そうになったそうで、そこから、この絵本が生まれ、その「あとがき」にも書かれているように、お母さんや先生や友達に言うのではなく、七夕さまの短冊に書こうとした、彼の思いを察すると、あまりに健気で純粋な、その願いには言葉も出ない。

    こうやって、周りの人たちが気付くことの出来る日が、いつかきっと来ることを願って、子どもたちだけではなく、是非、子を持つ親御さんや、学校で働く先生方にも読んで欲しい、七夕の存在が彼に希望の光を与えた、素晴らしい絵本だと思います。

  • 七夕の絵本だとは思わなかった…。
    正確に言えば七夕に関してのことなのだが。

    男の子が七夕におねがいごとをするのに短冊に書いたことばが「おこだでませんように」である。

    おともだちは、「サッカーせんしゅになれますように」とか「ピアノがじょうずになりますように」なのに。
    おこられませんように、というのはこの男の子にとっては、いちばんのおねがいであることに気づいたとき…
    先生は、ええおねがいやねえと泣いてほめてくれた。
    おかあさんも先生からの電話のあとで、ぎゅうっとだきしめてくれた。

    たなばたさま ありがとう。
    ほんまに ありがとう。
    きょう、ぼくは ものすごく しあわせです。
    おれいに ぼく もっと もっと
    ええこに なります。

    この最後の一文に泣けてくる。

    おこられてばかりなのは、けっしてこの男の子だけが悪いわけではなくて、いいことをしてもやりすぎてしまったり、けんかになるのも原因が必ずある。
    だけど結果としておこられてしまう。

    毎日おこられているとお願いごとは、おこられませんように…って祈りのことばになるのかもしれない。

    子どもの気持ち、わかっているようでわかっていない。大人も反省しなければ…と思った。





    • たださん
      湖永さん、こんにちは。

      タイミング良いですね。
      私もちょうど読んだばかりで(^^)

      私の場合、いつもの図書館の、絵本の特設コーナーに無け...
      湖永さん、こんにちは。

      タイミング良いですね。
      私もちょうど読んだばかりで(^^)

      私の場合、いつもの図書館の、絵本の特設コーナーに無ければ、おそらく本書の存在に気付かなかったと思いますし、雨の本もあったから、何のテーマだろうと、その場でペラペラ捲ってみたら、つい見入ってしまうものを感じまして、読むことが出来て良かったなと、改めて実感いたしました。
      2023/07/08
    • 湖永さん
      たださん こんにちは。

      そうなんですよね。
      まさか七夕関連だとは思いませんでした!
      表紙の男の子の顔が、すごく印象深くて悔しいのを我慢して...
      たださん こんにちは。

      そうなんですよね。
      まさか七夕関連だとは思いませんでした!
      表紙の男の子の顔が、すごく印象深くて悔しいのを我慢してるようでいて…けっして泣くまいと溢れそうになっている涙にジーンときました。
      裏表紙は、笹の葉に飾られた短冊なので、七夕なのですが…読んだあと気がつきました。
      2023/07/08
  • ページを開けると、きかんきの強い男の子を力強い筆遣いで、描かれています。
    この男の子が、魅力的で、とてもいい顔をしています。

    小学生の男の子が、良かれと思ったことも、母親や、小学校の先生に怒られます。
    なぜ怒られるのか……。
    少し人と違うからか……。
    少し人との距離の取り方が違うからか……。

    周囲の理解が得られずに
    怒られる男の子が、学校で七夕の日に、短冊にお願いを書いて
    「おこだでませんように」
    それを見た先生が、涙を流して男の子の気持を理解してくれます。
    これから男の子は、笑顔で……。

    【読後】
    何かきっかけが有ると、良い方向へ向かって行くことが有ります。
    男の子が苦しみ、もがきながら、心の想いを短冊に願いを掛けます。
    その願いを先生がキャッチし、母親に連絡し、学校と家で男の子を褒めてあげる、読んでいて涙が出て来ました。
    この男の子の将来が、幸福でありますように。
    あとがきに、小学校の教師時代のくすのきさんが、この短冊を見たとき「私は涙が出そうになりました」と書かれています。

    おこだでませんように
    2008.07発行。字の大きさは…大。
    文/くすのき しげのり(楠 茂宣)
    絵/石井聖岳(きよたか)
    2020.10.27読了

  • 【ネタバレ注意】う~、涙が出る、これは。僕はいつも怒られている小学生。夕方、母親を待つ間妹と遊んで、頑張っても怒られる。友人から仲間外れにされても怒られる。カマキリをつかまえてクラスの女子に見せただけで怒られる。掃除の時大きな声で歌っていたら怒られる。七夕の短冊に「おこだでませんように」と書いたのを見つけた先生。そこから一気に話しが変わる。先生が泣き、母親も優しくなる。自分では「何故、僕とお話ししないんだ!」と母親、先生に対して憤りを感じた。ちょっと乱暴なだけで、基本優しい奴なんだよ。僕はいい奴だよ。⑤↑

    • アールグレイさん
      こんにちは♪ポプラさん

      おこだでません・・・とは、怒られません、だったのですね。
      最初題名を見て、またポプラさんは変わった本を読んだな、と...
      こんにちは♪ポプラさん

      おこだでません・・・とは、怒られません、だったのですね。
      最初題名を見て、またポプラさんは変わった本を読んだな、と思ってしまいました。
      何方かの方言でしょうか?
      (・<・?)
      2022/02/04
    • ポプラ並木さん
      ゆうママさん、こんにちは。今日は有給休暇でゆっくりしていました。この本は是非読んで欲しい本ですよ!大人に対する絵本です。子どもへの愛情の注ぎ...
      ゆうママさん、こんにちは。今日は有給休暇でゆっくりしていました。この本は是非読んで欲しい本ですよ!大人に対する絵本です。子どもへの愛情の注ぎ方を間違ってしまうと大変!!一番重要なのは常にいお話しをしながら子どもと一緒に大人も成長することだと気づかされます。是非手に取って欲しいな!!これは別サイトで盛り上がっている絵本ですよ。
      2022/02/04
  • めっちゃ泣ける(ToT)
    子どもに読み聞かせながら泣いてる(ToT)

    ついつい怒ってしまう自分を反省(ToT)

  • 小学校の「放課後教室」の読み聞かせに使おうと借りた作品。

    「ぼくは いつも おこられる。
     いえでも がっこうでも おこられる」でお話は始まります。
    小学一年生の、男の子が主人公。
    この子は、悪いことをして周りを困らせようなんて思ってもいないのです。
    ただ、ちょっとやり過ぎだったり、タイミングが悪かったりして、結果として大人から怒られるのです。
    自分でも、「どうしたら怒られない子になれるんだろう」と悩んでいました。
    さて、七夕の日が来て、この子は精一杯の願い事を短冊に書きました。
    それが「おこだでませんように」だったのです。

    先生に願いが届き、お母さんにも通じる事が出来た。
    「たなばたさま ありがとう。ほんまにありがとう。
     きょう ぼくは ものすごくしあわせです。
     おれいに ぼく もっと ええこになります。」
    このラストの4行は泣けます。素直な良い子じゃありませんか。

    ちょっと乱暴で分かりにくい男の子の気持ちが、この本を読むと女の子にも分かることでしょう。
    言葉に頼る女の子に比べ、男の子は行動に頼るもの。
    そのぶん、大人の理解が必要なのですね。
    本当は「良い子」でいたいし、褒められたいし、愛されたい。
    いや、これは男の子に限らず子供全般に言えるのかもしれません。
    表には見えにくい切実な子供の願いを、ちゃんと受け止めて来たかどうか大人も泣かされます。
    挿絵の表情も生き生きとして、力があります。

    それにしては、☆3つというのがひっかかるように思いますが、これには訳があります。
    この本は、あくまでも大人側の好みで書かれた作品。
    コンクール用に先生が手をくわえた絵のようなもの。
    子供側の気持ちで読むと嫌な思いが残るかもしれませんね。
    読み聞かせに使うこともないでしょう、残念ながら。

  • 「この子が大人になったときに困らないように」

    そういう気持ちで、子どもに注意をする。
    少しでも助けになればと思っている。

    だけどふと、本当にこれは子どものためになっているのか、
    ただ追いつめているだけなんじゃないかと思う時がある。

    怒ると叱るは違うという。
    ほんの少しの言い方で子どもの反応が劇的に違ったりする。
    それを頭ではわかっているけれど、
    ついカッとなって、声が荒々しくなったりする。

    子どもが読んでくれたのだけれど、
    あの子の気持ちを代弁しているみたいで泣けてきた。
    自分で読んだときは全然大丈夫だったのに。
    自分への戒めになった。 

    • ゆずさん
      そうですね!
      同意です。
      そうですね!
      同意です。
      2023/10/20
    • うさぎのしっぽさん
      ですよね。
      大人になるとつい忘れてしまう時があるので
      たまに絵本を読むのはいいなと思いました。
      ですよね。
      大人になるとつい忘れてしまう時があるので
      たまに絵本を読むのはいいなと思いました。
      2023/11/07
  • 読み聞かせのために図書室から借りてきて読んだのだが、これを子供たちの前で泣かずに読めるかどうか心配である。

    一生懸命やっているのになぜかいつも怒られてしまう「ぼく」。
    怒られている内容は、実はたいしたことではないのだ。妹と遊んでいるうちに泣かしてしまったり、宿題をやる時間がなくなったり。
    友達に意地悪を言われてやり返したのがやりすぎだったり。
    ふつうの男の子がふつうにやるようなことが、全部大人の都合に合わないことばかりで、それで怒られてばっかりなのだ。

    親として読むと本当に心が痛い。いつもこんなふうに一方的に怒ってしまっている自分がいるから。
    「ぼく」の精一杯の願い「おこだでませんように」を私も忘れずにいようと思った。

  • 〝僕はいつも怒られる。家でも学校でも…。昨日も怒られた し、今日も怒られている。きっと明日も怒られるやろ…。僕は、どないしたら怒られへんのやろ? 僕はどないしたら褒めてもらえるのやろ? 僕は…「悪い子」なんやろか…。僕は、小学校に入学してから教えてもらったひらがなで、七夕さまにお願い書いた。ひらがなひとつずつ、こころをこめて…「お こ だ で ま せ ん よ う に」 ・・・ 〟子どもの心の中の切なる祈りのような思いと、大人の気づきの心が描かれた、静かな感動につつまれる絵本。

  • 私には兄弟がいないし、まだ子どももいないので、この子の気持ちは実際のところ理解していない。

    でも、一年生や二年生あたりに読みきかせをしていて、ポロポロと涙がこぼれてしまう子を見かけることがある。

    小さな子どもの中で、本人も気づかないうちに膨張している我慢や葛藤を、この本と子どもの涙から教えられた気がする。

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著者プロフィール

児童文学作家。1961年生まれ。徳島県鳴門市在住。鳴門教育大学大学院修了。小学校教諭、鳴門市立図書館副館長などをへて、児童文学を中心とする創作活動と講演活動を行う。絵本の主な作品に『おこだでませんように』(小学館)、『Life(ライフ)』(瑞雲舎)、『ええところ』(学研)、『ともだちやもんな、ぼくら』(えほんの杜)、『あなたの一日が世界を変える』(PHP研究所)、「いちねんせいの一年間」シリーズなど多数。2019年、新しい文学のスタイルにチャレンジした短編集『海の見える丘 あなたの未来へ贈る5つのものがたり』)(星の環会)を上梓。

「2020年 『5つの風の絵ものがたり(全5巻)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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