ひめねずみとガラスのストーブ

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 235
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784097264514

作品紹介・あらすじ

風の子なのに、さむがりのフーは、くまストーブ店で、とびきり上等のガラスのストーブを手にいれました。森のなかで、ゆらゆらゆれる火を見ていると、ちっちゃなひめねずみがやってきました。風の子フーとひめねずみのすてきなすてきな物語。

感想・レビュー・書評

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  • 風の子なのに寒がりのフーとちっちゃなひめねずみ。
    二人がとっても素敵なガラスのストーブを囲んで食事をするシーンはほのぼのと温かく微笑ましい。
    ガラスのストーブが放つみかん色のほのかな灯りは、寒さで震える孤独な夜の寂しさも、全てやわらかく包み込んでくれる。
    見ているだけでとても幸せな気持ちになれる。

    この作品を読んでいて、我が家の二人の娘たちと照らし合わせてしまった。
    今は二人とも中学生・高校生で地元にいるけれど、いつかは地元を離れてしまうのだろう。
    ひめねずみを一人置いて、オーロラの国へと旅立ってしまったフーのように。
    一人ストーブの番を任されたひめねずみと同じく、私も娘たちの帰りを待ちわびる。
    娘たちが成長する姿はとても嬉しい反面、ちょっと寂しい。
    娘たちのいる家は温かで賑やか。
    食卓を囲んで家族でお喋りしたり笑ったり。
    この絵本のように温かみのあるみかん色の光にほんのり包まれて。
    こんな当たり前の光景もいずれ娘たちの旅立ちと共に、遠い思い出に変わってしまう。
    ひめねずみのフーを待つ姿を見ると切なくなった。

    けれど、そんなに落ち込んでばかりもいられない。
    ひめねずみのように私も新しい居場所を創っていかなくては。
    新しい仲間に囲まれて新しい生活をおくるひめねずみに励ましてもらった。
    フーは二度とひめねずみに逢うことは叶わかなったけれど、ひめねずみの想いが込められたガラスのストーブはこれからも、ずっと誰かの体と心を温め続ける。

    別れの切なさの反面、希望ももらえた、とても素敵な一冊となった。

    • nejidonさん
      mofuさん(^^♪
      タイトルを見ただけでクリックしてしまいました(笑)いつもすみません。
      安房直子さんが大好きなのです!
      以前にもお...
      mofuさん(^^♪
      タイトルを見ただけでクリックしてしまいました(笑)いつもすみません。
      安房直子さんが大好きなのです!
      以前にもお話しましたっけ?
      小6の教科書に「きつねの窓」が載っていて、それ以来のファンです。
      大人になったら自分のお金で全集を買うのが長年の夢でした。
      そして、それは叶いました☆☆☆
      作品が単行本化されてどんどん出ていますね。
      このお話も大好きです。
      嬉しくて、ほとんどひとりでお喋りしました(*'▽')
      どうも失礼しました。
      2021/02/08
    • mofuさん
      negidonさん、いつもありがとうございます(^^)

      安房さんのお話は以前お聴きしましたね。
      全集を揃えるなんてすごい!

      negido...
      negidonさん、いつもありがとうございます(^^)

      安房さんのお話は以前お聴きしましたね。
      全集を揃えるなんてすごい!

      negidonさんのオススメ通り、美しい文章が心に響きます。
      そして絵もとても素敵でうっとり。あのガラスのストーブほしい!
      内容はどうしても自分の境遇に合わせて読んでしまいました。切なさと、その先に生まれる新たな希望が胸に刺さります。
      人の実際の暮らしの中に寄り添う内容でしたね。
      これからも安房さんの作品を読んでみたいです。

      コメントをありがとうございました(*^^*)
      2021/02/08
  • あたたかくもあり、少し寂しくもある不思議な世界観。自分と他人は違う。

  • 図書館。初、安房さん。ああ、好きだ。

    2021/12/4追記:
    以前読んだ『うさぎのくれたバレエシューズ』、安房さん作だったのだと気づいた。初は『うさぎ〜』だった。ピンクとウサギと踊りが好きな娘が好きそうだと思い選んだ本。優しくも独特な世界だと思った記憶。もう一度借りて読んでみたい。

  • 安房直子さんの未発表作品を、新たに読めるとは思わなかった。あんまりもったいなくて、なかなか開けなかった。

    図書館で見つけて、胸に抱きしめているだけで、あの世界の存在を思い出し、ほっくりと暖かい気持ち。

    「ひめねずみとガラスのストーブ」

    1969年、目白児童文学に載っただけで、ちゃんと出版されたのされたのははじめて。絵もとてもいい。

    …素晴らしい、やっぱり素晴らしい、じいん。

    やわらかく優しいうつくしい言葉で世界を情感ゆたかに彩る描写。
    その素直で柔らかな情緒は、五感の捉える鋭敏な世界への感覚を蘇らせ、世界全体を、新鮮な驚きと歓びに満ちたものへ、と、再生させてゆく。

    物語と言葉の力だ。

    風の子フーの感じる吹きさらし木枯らしの寒さに、暖かなうつくしいガラスのストーブの描写。そして、ストーブが呼び寄せた、小さな優しいひめねずみ。

    一人ぼっちだったフーに、一緒にあたたかいシチューを食べたりお茶を飲んだりする、たったひとりの友達、家族と帰る場所ができる。

    「森の中はそれはつめたくてまっ暗ですが、たったひとところだけ、ぽつんと明るいのでした。ガラスのストーブがもえているそこだけが。

    フーは、なんだか胸がわくわくしました。たったひとつのストーブのために、たったひとりの小さい友だちのために、こんなにも心のおどる思いを、今まで知らなかったのです。

    ずっとひとりぼっちだったものですから。」


    だが、ある夜、遠い異国の街から駆けてきた風の子、ちょっと派手で失礼な女の子のオーロラに誘われて、フーは、ひめねずみに、ちょっとまっていておくれ、と言い残し、オーロラと一緒に、異国へと旅立って行ってしまう。

    ちょっとしばらく、のつもりが、何年も。

    大人になって、ふるさととひめねずみが恋しくなって帰ってきたフーを待っていたものは、フーを待って、そのまま、とっくに亡くなってしまった、ひめねずみの、大勢の子孫たち、彼らが受け継いだ、フーとひめねずみのものだった、ストーブ。

    彼らがあたたかく灯す、ふたりのものだった、小さな小さな炎、懐かしいおなべとやかん。「でも、そこはもう、フーには入っていくことのできない世界でした。」

    (ぼくはほんとにおとなになったんだ。)

    そのときフーは、目に見えない、夢をみることも、ものをいうこともない、心をもたないただの風になってしまうのである。


    この絵本のカバー見開きには、「風の子フーとひめねずみのすてきなすてきな物語」とある。

    嘘である。
    …いや、語弊がある、というべきだろう。

    寧ろ、非情なんである。
    読後感は、寧ろ、胸の痛くなるような切なさなのだ。

    安房直子さんの作品には、非常に優しく美しい、おいしい楽しい、あたたかいものを愛しむ心があふれている。なのに、それらは決して、怖さ、別離、哀しさ、寂しさ、切なさと切り離されることはない。

    誰が悪いのでもなく、ただ、かなしみは訪れ、大人になることが、強烈な、決定的な大切なものの喪失、ひとつの死を意味する、という、淡々とした時間の無常。

    この、無常さ、非情さが、けれど、そのままに、たとえようもなく、美しい。
    美しいものを美しく、愛しいものを愛しく。そのかけがえのなさを讃える大きな深い優しさで包み込む作者のまなざしによって、世界は、意味に満ちた、価値に満ちたうつくしいものへと浄化されることができる。

    安房直子さん、亡くなられてしまったときは、ひどくショックだった。
    本当に、もっともっともっと、たくさん、たくさん、書いて欲しかった…

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「安房直子はもう私のバイブルなのです」
      大事にしなければならないコトを教えられるような気がする、琴線に触れる作品が多いですものね。
      「安房直子はもう私のバイブルなのです」
      大事にしなければならないコトを教えられるような気がする、琴線に触れる作品が多いですものね。
      2013/02/15
    • yamamomonさん
      何か辛い心持ちのとき、ふうと静かな気持ちになれる切ないけど優しい気持ちになれる、浄化の物語、という気がします。
      何か辛い心持ちのとき、ふうと静かな気持ちになれる切ないけど優しい気持ちになれる、浄化の物語、という気がします。
      2013/02/15
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「浄化の物語」
      そうですよね。心に残るのは自分自身も浄化されたいからかなぁ、、、
      「浄化の物語」
      そうですよね。心に残るのは自分自身も浄化されたいからかなぁ、、、
      2013/03/28
  • そうかそうか、向こう側の世界でも子ども時代はこっちに寄ってきてるのか

    いやこの話はどっちがこっち側なのかようわからんけど…
    いやどっちも向こう側か
    子ども時代は自由に動けるんかな

    それにしてもガラスのストーブとは…すごいときめきアイテムやないか
    しかもよくあるときめきアイテムである薪ストーブではないのよ…石油ストーブよ…
    ただのたまねぎスープもおいしそうやしさすがであるよ…

  • >風の子のくせに寒がりのフーは、くまのストーブ店でガラスのストーブを手にいれます。
    美しいストーブに火をつけて暖まっていますと、ひめねずみがやってきました。
    「お日さまがおっこちてきたのかと思った」ガラスのストーブは、心まで温かくなるようでした。
    時間と空間をこえて旅をするうちに、フーは大人へと成長していきます。

    1969年『目白児童文学』に発表された作品とのこと。
    時代を感じさせないのが、すごいなと感じました。
    風の子フーが大人になって帰ってきた時の様子がすごく切なかったです。
    降矢ななさんの絵もよかった!

    安房直子さんのお名前は耳にしたことがありましたが、これまであまり読む機会がありませんでした。
    とても不思議な魅力があって好みの予感。
    少しずつ読んでいきたいです。

    • nejidonさん
      はぴさん、こんにちは♪
      いつもポチをくださって、ありがとうございます。
      この本は登録してあるだけなのですが、安房直子さんの作品なのでコメ...
      はぴさん、こんにちは♪
      いつもポチをくださって、ありがとうございます。
      この本は登録してあるだけなのですが、安房直子さんの作品なのでコメントします。
      実は全集を持っています♪
      その中から少しずつ絵本化されているので、挿絵とともに楽しめますよね。
      はぴさんも「好みの予感」と言われているのが嬉しいです。
      「きつねの窓」などもお読みいただいたらもっと嬉しいなぁ。。
      はぴさんのお好みの作品が、安房直子さんの中から見つかりますように。
      2018/03/18
    • はぴさん
      nejidonさん、こんにちは。
      こちらこそいつもありがとうございます^^

      全集をお持ちなんですね♪
      安房直子さん、ずっと気になっ...
      nejidonさん、こんにちは。
      こちらこそいつもありがとうございます^^

      全集をお持ちなんですね♪
      安房直子さん、ずっと気になっていたんですが、やっと読む機会が巡ってきたみたいです。

      「きつねの窓」ぜひチェックしてみますね。
      2018/03/19
  • ああ‥

    素晴らしい相乗効果

    ちょっと淋しいあたたかな話と
    かわいくて素晴らしい絵

    すてきなストーブを買った風の子と
    料理の上手なひめねずみの話

    ちょっと北の国にいって
    数年して大人になって帰ってきたら
    ひめねずみはひいおばあちゃんでとっくに死んでた
    って話

    ほしいなこの絵本‥

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「素晴らしい相乗効果」
      安房直子の話って、向こう側と深く繋がっているけど、この「ひめねずみとガラスのストーブ」も、、、
      でも優しさに溢れてい...
      「素晴らしい相乗効果」
      安房直子の話って、向こう側と深く繋がっているけど、この「ひめねずみとガラスのストーブ」も、、、
      でも優しさに溢れていて好きです。。。
      2013/07/10
  • 「風の子なのに、さむがりのフーは、くまストーブ店で、とびきり上等のガラスのストーブを手にいれました。森のなかで、ゆらゆらゆれる火を見ていると、ちっちゃなひめねずみがやってきました。風の子フーとひめねずみのすてきなすてきな物語。」

    降矢ななさんの絵だもの。魅力的。風の子の服、くまの毛並、ストーブの赤々とかがやくあたたかさ。ストーブでスープを作って食べる風の子とねずみの姿。女の子オーロラ。ページをめくるたび、「わぁ、いいなぁ」思ってしばらく絵を眺めていたくなる。

    ハッピーエンドでもバッドエンドでもない。そっと心に残る。余韻を残す終わり方。成長して家を出て広い世界にでた子どもと、寂しく感じながらも見送った母 を、思い浮かべた。ねずみを置いていく風の少年、何年もかえってこない少年、ひどいなぁ~ねずみがかわいそうだなぁ~と思ったけれども。親子はこんな感じだね。

  • ガラスのストーブが素敵で物語もとても良かったです。
    ○小学校中学年1人読み~

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著者プロフィール

安房直子(あわ・なおこ)
1943年、東京都生まれ。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事、「目白児童文学」「海賊」を中心に、かずかずの美しい物語を発表。『さんしょっ子』第3回日本児童文学者協会新人賞、『北風のわすれたハンカチ』第19回サンケイ児童出版文化賞推薦、『風と木の歌』第22回小学館文学賞、『遠い野ばらの村』第20回野間児童文芸賞、『山の童話 風のローラースケート』第3回新見南吉児童文学賞、『花豆の煮えるまで―小夜の物語』赤い鳥文学賞特別賞、受賞作多数。1993年永眠。

「2022年 『春の窓 安房直子ファンタジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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