夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

著者 : 又吉直樹
  • 小学館 (2016年6月1日発売)
3.73
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  • 本棚登録 :1528
  • レビュー :232
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098235018

作品紹介・あらすじ

芸人、芥川賞作家・又吉直樹 初の新書

芸人で、芥川賞作家の又吉直樹が、
少年期からこれまで読んできた数々の小説を通して、
「なぜ本を読むのか」「文学の何がおもしろいのか」
「人間とは何か」を考える。

また、大ベストセラーとなった芥川賞受賞作『火花』の
創作秘話を初公開するとともに、
自らの著作についてそれぞれの想いを明かしていく。

「負のキャラクター」を演じ続けていた少年が、
文学に出会い、助けられ、
いかに様々な夜を乗り越え生きてきたかを顧みる、
著者初の新書。

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)の感想・レビュー・書評

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  • 「小学館よしもと新書」の第一弾となる書で、又吉直樹さんがそれはそれは真摯に文学と向き合い、読書論を展開している。
    これまでこの方の作品を読んできた人でも、この真摯さには胸打たれるだろう。
    難しい表現をさけて、丁寧に言葉を選んで紡ぐ姿勢には尊敬の念さえ抱く。
    それが、冒頭の言葉によれば『本を読む理由がわからない方、興味はあるけど読む気がしないという方々の背中を、頼まれてもいないのに全力で押したい』という、本人の意思によるものだとしても。

    本当の自分と周囲からの評価とのギャップに悩みつつも笑いをとる快感を知った少年時代。
    その頃の内面の葛藤を和らげてくれた芥川や太宰の作品との出会い。
    『火花』誕生の舞台裏を振り返る章では、執筆状況を日々報告に行ったバーのマスターとの交流に、妙にじんとしたり。
    発表後、かつてのコンビ「線香花火」の相方が語った愛にあふれる感想も印象に残る。
    後半は近代文学のみでなく現代文学にもふれて、作家と作品の魅力を語っている。

    「登場人物の心情や世界観への共感だけが読書の喜びではない」と語るその部分は納得の章で、現在長くて苦しい夜を乗り越えようとしているひとの助けになると、読書はそういうものでもあると、最後までやさしく真摯に語り掛けてくれる。

    不思議なもので、読みつくしたはずの作品たちなのに、ここで紹介された文章を読むと今一度開いて読み返したくなってくる。
    うん、きっとそうするだろう。

    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      言われる通り、繰り返し読み返すことによる良さも、説明されています。
      今までなかった視点が自分の中に増えていくと。
      でも次々に読みたい本は出てくるし。他にもしたいことがあるし。
      そうです、私も時間がありません。
      私の場合時間の使い方が下手なだけかもしれませんが(笑)。
      何度でも読み返したくなる良い本との出会いを、無駄にしているような気もします。。
      mkt99さんに、ゆっくり再読出来る時間が巡ってきますように。
      2016/06/28
    • ruko-uさん
      nejidonさん、フォローとコメントありがとうございます!

      nejidonさんの本棚の名前「絵本と猫と…」
      絵本も猫も、当方大大大好きなのでもう本棚の名前を見ただけでもグッときました。アイコンの写真の猫ちゃんもすんごいかわいらしい!本棚のラインナップと言いもう、グッ!と来るとこばかりです(笑)

      こちらの本は私も気になっている一冊。nejidonさんの本棚には気になっている本がたくさん並んでいます。これからの参考にさせてくださいね!今後もどうぞよろしくお願いいたします(^^♪
      2016/07/30
    • nejidonさん
      ruko-uさん、ご訪問ありがとうございます!
      嬉しいなぁ、ruko-uさんも猫好きさんでしたか。
      アイコンの子は19歳で、我が家の長女です。
      にゃんこを褒められると、とたんに舞い上がってしまうので(笑)お気をつけくださいね。

      私の本棚が何かのお役に立てたら嬉しいです。
      これからも楽しい本に出会ったらご紹介させていただきますね。
      ruko-uさんも、ぜひぜひ私に教えてくださいませ!
      2016/07/31
  • 珍しく図書館から借りるのではなく自腹で購入しました。そこら辺のタイトルだけの新書よりも立派な内容で驚きでしたが、1,2章で読むのに時間がかかってしまった。(ひたすら過去形で書かれている文章がつらかった…マジでつらかった。)

    『第2図書係補佐』の読みやすさ、『新・四文字熟語』でのユーモアさとは違った面が書かれていて好感が持てた。

    4章の「僕と太宰治」で太宰作品に対する真摯な眼差しに つい泣きそうになってしまったし、まさか『夜を乗り越える』というタイトルがこの章につながると思っていなかったので驚いた。

    紹介されている本を手にしてみたいと思わせる力はさすがだなぁ…と思った。(けど町田康の『告白』の分厚さにひるんでしまった)。いつかは読んでみたいと思う作品が本棚に置きっぱなしなので、いつかじゃなくてまず手に取ってページを開いてみようと思いました。

    キラキラした想いだけではなく、黒い(悪魔な)本音も書かれていて(133ページあたり)嬉しかったし 感動した。欲を言えば紹介されている本が『第2図書係補佐』とかぶっているのが多かったのでちょっぴり残念だった。又吉さんお薦めの作品をもっと知りたいな。

    (本棚保存)

  • 又吉さんが「なぜ本を読むのか」という問いに、真剣に向き合った1冊。
    丁寧だけれど話し言葉に近い文章のせいか、テレビでお話されているそのままの口調で頭の中で再生されました。

    読書家であることは知っていましたが、本当にたくさんの近代文学・現代文学を読みこんでいらっしゃいます。
    太宰や芥川を読みながら笑いやボケを意識したことはなかったので、その視点が新鮮でした。

    そして、それらの作品が又吉さんの表現の下地を作っていることもわかりました。
    本書を読みつつ、『第2図書係補佐』(幻冬舎)の巻末対談の「本をたくさん読んでいる人の中には変な海みたいなものが出来上がる」というお話を思い出しました。
    さまざまな価値観やわからないことも、とりあえず自分の中に取りこんで熟成させてみる。
    いろいろなものが混じり合い、互いに影響しながら形成される自分の素地を、これからも大切に育てていきたいと思いました。

  • 生きていると、ただ夜が明けるという時間の経過が「乗り越える」という程の重みを持つことが誰にでもあると思う。長い人生を振り返ればただの一瞬でも、その一瞬を一人で乗り越えることはとても辛い。それを、会ったこともない、もしかしたら今は生きていない他人の言葉が支えてくれることがあるということ。本の存在、読書という行為の持つ力を様々な角度で、色んな言葉で伝えている本でした。又吉さんの36年の来し方、執筆の過程、そして何よりも受賞後の怒りにも似た葛藤が如実に書かれていて、それはこれまでの又吉さんからはとても珍しいことだと思います。
    これからも沢山の夜を乗り越えて、これからの時代で抱えるであろうより複雑な葛藤を、近い未来に、新しい作品として世に出してくれることを、何よりも楽しみに応援し続けます。彼の素直で複雑な文章は、ずっと味方でいたくなるような、不思議な気持ちになるんです。

  • 『火花』の何十倍も面白かったです!
    でもそのことは「又吉さんが小説家よりエッセイストに向いているのではないか」
    という話ではなくて、
    私自身が小説に馴染んでいないということが原因かと思います。

    太宰治、芥川龍之介、夏目漱石、三島由紀夫、谷崎潤一郎…
    「読みたい」「読まなきゃ」…という気持ちは常々もっているのですが、
    なにしろその前に次々面白そうな本が障害物のようにはいってきてしまって。
    どんどん遠くに行ってしまうのです。

    でも、約束します。
    中村文則さんの『何もかも憂鬱な夜に』は、年内に必ず読みます!

  • 「よしもと新書」なるものがあるのを初めて知った。

    本書「夜を乗り越える」のほかには、トレンディー・エンジェルの斎藤さんの「ハゲましの言葉」(笑)や、レーザー・ラモンRGの「人生はあるあるである」等がラインナップを飾っていた。お笑いは好きだが、本を買って読みたいとは・・・正直のところ・・・。

    本書も図書館で借りたのだが、ハッキリ言って、コレはめちゃめちゃ面白かった!!!

    お笑いのノリで面白かったというのではない。芸人又吉直樹の独白として、芥川賞作家又吉直樹の文学論、読書論として、いや読み物として本当に面白かった。

    最近、本書に類する本として、読書論を展開しているものでは、丹羽宇一郎氏の「死ぬほど読書」という本を読んだ。また、文学の読み方を展開しているものでは村上春樹氏の「若い読者のための短編小説案内」というのを読んだ。個人的には、これらの本より断然、又吉氏の本のほうが面白かった。

    丹羽氏の読書論には教養人の最高レベルを感じたが、又吉にはそれを超える非凡さを感じてしまった。村上春樹の文学の読み方にはプロを感じたが、又吉の読み方には未知数の非凡さを感じた。ここまで語れる彼自身を知って、失礼ながら、やっぱりホンモノの芥川受賞者なのだと改めて納得した。

    発想の自由度が非常に高くて、彼の読書論を読んでいると、読書に対する魅力がどんどん拡張されてくる。とらわれない発想がとても魅力的だ。

    例えば、読んだ本が「面白くなかった」と感じたら、それは本のせいでも著者のせいではないという。読んだ自らの読み方に問題があったり、読んだ自分のキャパに問題がある可能性があるととらえ、つまりは自分次第ですべての読書を面白くすることができると断言する。

    読書の楽しさの総合点は、「本+自分」で決まるという発想に、まったく共感してしまった。

    さらには自分にマッチしないと感じた本ほど、自身のキャパを広げてくれるという自由度の高い発想にも。彼の読書には無駄という文字はないようだ。

    太宰治、芥川龍之介、夏目漱石らの近代文学をおもっくそ語っている。よく読んでいるし、その読み方が深い。というより、本当に著者を愛し、読書そのものを愛しているという感じが1000%伝わってくる。

    本書を読むと、彼の読んだ本が無性に読んでみたくなり、彼の語りを検証してみたくなり、自分なりの読み方を感じてみたくなる。

  • ああ、小説が、そして書物が、とても好きなのね。紙に印刷された活字を、慈しみ愛しているのね。
    書物に対峙する真摯な眼差しに共感と尊敬を覚えました。とても真面目に妥協なく綴られた、世界に存在する書物そのものたちへの恋文のようでした。
    たとえばこれが「文学論」なのだとしたら、もっとほかの伝えかたを選べたでしょう。もっと論理的に、情緒を雑ぜるとしてももっとスマートな記述ができたでしょう。でもラブレターだから。恋い焦がれる気持ちを、少しも削らずにまるごとそのまま伝えたいと望む告白だから、こんなに冗長ともとられかねないスタイルで書き綴るしかなかったのでしょう。

    共感できたか、できなかったか。小説を読むうえでは、私はそれは手掛かりになるとは思います。でも、評価するときに共感の有無は、あまり意味を持たない。ストーリーや登場人物への共感なんて、必要はない。小説は、だって、要領のよさや道徳、効率を描くものではないから。
    共感できない反倫理的な、非効率的な、言動を通して、作者は何を伝えたいのか、考える。そういう読みかたも大事。
    あるいは、作者はそこで伝えたいことなんてないかもしれない。でも読み手がそこで何かを感じたならば、そこで読み取ったものが真理になる。かもしれない。
    小説が書きあらわしたいものは、常に道徳ではないし、要領でもない、正義でもない。

    この作品で著者が語る書物への情熱。
    思い当たることも、自分とは違う発想も、すべてひっくるめて、うんうんと頷きながら読みました。同意できる点も反発せざるを得ない部分も。どこを切り取っても、著者の小説への思い入れが伝わってきて、読書好きのひとりとしてひたすら微笑ましかった。読み込んで書かれていることを理解しようとする、解釈しようとする、己が歯で咀嚼して消化液で消化し、自らの血肉として取り込んでいく、その過程はまさに愛でしかない。
    文学に恋心を抱きつづけているひとりとして、ふふふ、ってなりました。

  • なぜ、本を読むのか?
    本を読む理由がわからない方、興味はあるけど読む気がしないという方の背中を全力で押したくて書いたという本書。
    読んでいて胸が締め付けられるようでした。

    私も又吉さん同様に、本に救われてきた人間です。
    自意識を持て余してしまうとき、器用に生きられないとき、本はいつもそっとそばにあって、深い闇を追い払ってくれました。本は読まなくたっていい。けど、そんなに難しく考えることなく、まずは読んでみたらどうよ、と真摯に語り掛けてくれる気がしました。

    読んでいて何よりも感じるのは本への愛情と作者への尊敬の念。本を楽しみたいという気持ちで、わくわくしながら本を開くのは私も又吉さんとまったく同じ。
    悪意を持てば小説をつまらなくすることなんて容易だからこそ、マイナスな情報にばかり目を向けて本を楽しめなくなることは避けていきたい。

    白か黒かではない、二択の間で迷っている状態を優柔不断だと言わないでほしい、と言うあたりに又吉さんの人柄が表れている気がします。
    本は、世界が二択ではないということを教えてくれる貴重な存在ですよね。
    それに、本はその時の自分の能力でしか読めない。「いつ読んでも違う味がする。それが読書の大きな魅力です」という言葉も大好きです。

    長い人生、どうしても深い闇に落ちてしまって、この夜さえ越えることができたら…という日だってあるはず。ほんの少しの差異なんだろうけれど、そっと光の方へ自分んを押し出してくれるのも、本でした。
    丁寧に紹介された本たちは、どれも読んでみたいし、読んだ後にまた又吉さんのコメントを読んでみたい。

    又吉さんのどこまでも静かな空気感が心地いい1冊でした。

  • 「又吉さんは目がきれい」
    年配の詩人の女性が云いました。
    又吉さんが芥川賞を受賞したニュースを話題にした時のことです。
    云われてみれば、たしかに又吉さんはきれいな目をしていると思いました。
    人間を、上辺ではなく、根本のところで信頼している。
    そんな人に特有の目ではないでしょうか。
    「だから『火花』のような小説が書けるのだな」と、それで合点がいったのです。
    私は又吉さんの芥川賞受賞作「火花」を読んで、いたく感動しました。
    お笑いに賭ける若者たちの情熱が、時に痛々しくもひしひしと伝わってきました。
    登場人物は、一様に器用に生きられない人ばかりです。
    だけど、作者である又吉さんが一人ひとりの登場人物に向けるまなざしは一貫して優しい。
    表面的に優しいのは世の中にいくらもあります。
    又吉さんの優しさはそうではなく、まるで身を賭すような献身的な優しさです。
    件の女性は続けて云いました。
    「だから、これからもいい作品を書いていくと思う」
    目がきれいだというのは、作家に必須の要件なのだと信じて疑わない様子でした。
    いつも通り、前置きが長くなりました。
    本書は、「お笑い界きっての本読み」としても知られる又吉さんが本の魅力について語り尽くした新書(小学館よしもと新書の第1号!)。
    一読して、又吉さんが途轍もない本読みだということが分かります。
    途轍もないというのは、単に多くの本を読んでいるということではありません。
    1冊1冊の本を、本当に丁寧に心を込めて読んでいるということです。
    特に、太宰治に対する愛は尋常ならざるものがあります。
    「人間失格」を読んだ人の多くがそうなるように、又吉さんもやはり主人公・大庭葉蔵に自分が重なったそうです(余談ですが同業者の大手新聞社の底抜けに明るい女性記者が「共感した」と語るのを聞いて少し驚いたことがあります)。
    「『人間失格』からは、太宰がこの作品を事実の垂れ流しではなく小説にしよう、物語として、小説という形式の力を使って真実に近づけよう、としている意識が伝わってきます」
    なんて、本当に深い読み方をしていると感服します。
    私は読んだことがないのですが、太宰に「芸術ぎらい」というエッセイがあり、こんな興味深いことが書かれていて括目しました。
    「創作に於いて最も当然に努めなければならぬ事は、〈正確を期する事〉であります。その他には、何もありません。風車が悪魔に見えた時には、ためらわず悪魔の描写をなすべきであります。また風車が、やはり風車以外のものには見えなかった時は、そのまま風車の描写をするがよい。風車が、実は、風車そのものに見えているのだけれども、それを悪魔のように描写しなければ〈芸術的〉でないかと思って、さまざま見え透いた工夫をして、ロマンチックを気取っている馬鹿な作家もありますが、あんなのは、一生かかったって何一つ掴めない。小説に於いては、決して芸術的雰囲気をねらっては、いけません」
    思わず粛然とする文豪の戒めです。
    又吉さんも肝に銘じて「火花」を執筆したことでしょう。
    そんなことも考えながら本書を読むと、本当に面白いです。
    本書ではこのほか、芥川龍之介や織田作之助、谷崎潤一郎、現代では町田康、西加奈子、中村文則ら影響を受けた作家とその本の魅力が、又吉さん自身の言葉で瑞々しく語られていて読ませます。
    個人的には、渇仰して止まない町田康さんについて書かれたところが最も興味を引きました。
    私は町田さんを伝統や形式に抗うアウトローと見做して敬愛していたのですが、又吉さんは「枝分かれしていった日本の文学の中で、町田さんは近代文学からの系譜を受け継いだど真ん中にいる小説家だと僕は思っています」と書いています。
    又吉さんが云うならそうでしょう、私の勉強不足で不明を恥じました。
    本がもっと好きになる特別な1冊です。

  • 本に命を救われたことはありますか?
    わたしはありますし、著者もそうだったようです。そういう本好きは是非手にとってください。

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