未来のための江戸学 (小学館101新書 52)

著者 :
  • 小学館
3.95
  • (5)
  • (11)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 84
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098250523

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 著者は、近代の物質主義や拝金主義と対比して、江戸時代を「循環」の時代と説く。また、いわゆる鎖国論を否定し、江戸時代を本格的なアジア外交の始動期と位置付ける。

    筆者曰く、江戸時代と同時期のアジアは豊かだった。そのアジアからの豊かな物資の輸入に頼っていた「日本」だったが、その支払いに用いていた銀は生産高を少なくする一方。また、スペインの南アメリカの銀山開発により大きな打撃を受ける。このような世界システムの中におかれた「日本」は、アジアからの自立を図ることによって、「日本」内での自給自足、技術力の開発を達成した。そして著者は、江戸時代の始まりを外圧でなく、むしろグローバル化に伴う外圧を回避し、従来の拡大主義(豊臣秀吉の朝鮮出兵)を収め、自国生産へと転換することでなされたとする。

    全体的に、著者の近代や欧米へのまなざしは厳しいものがあるが、それを差し引きバランスを取りながら、江戸時代の本質に触れられた良書。
    特に、筆者の述べる江戸時代の始まりには感銘を受けた。
    TPPが発効された現代と照らし合わせ、思索を深めたいと思う。

  • 江戸時代を参考に現代との思想、哲学の違いから本質的な考えや物質社会との関わり合い方などある意味生きるヒントを提示してくれる。

    また、鎖国と言われながらもその当時の諸外国との関係性はすでにグローバル化しており、その理由を教えている。

    アメリカや中国との関係もしかり今後日本が社会問題に対して、どう向き合い対応して行くのか課題は多い。

    そんな中、物は基本、人間と同様にいつかはなくなり自然に帰るものであり、世界は循環していく社会が必要であると著者は述べていると思う。また、それは過去の歴史が教授してくれるとも言っている。

    これらのヒントが日本だけでなく世界で起こっているグローバル問題を紐解く鍵の一部になるのかもしれない。


  • 江戸時代初期に大規模な鉄砲の製造と所持をやめたが、新田開発や開墾の結果としてイノシシが出るようになったため、農村では増えていった。

    窒素肥料の硫安は、毛根を焼き切ることによって窒素を吸収させるが、根は酸化鉄をまとって養分吸収ができなくなる。硫酸イオンが葉を焼いてしまうため、虫や菌に食べられやすくなり、農薬が必要になる。酸性土壌を改善するために石灰を大量にまくと、土がセメント化して連作障害が発生する。

    1520年代に日本で銀山開発が始まり、生糸、絹織物、木綿織物、磁器などのアジアの物資を買いあさるようになった。これらは、1640年頃までに国産化することができるようになった。

    南北朝が分裂した時に南朝が、海賊(水軍)勢力や、夜盗、強盗、山賊などの悪党を拠り所としたことが、倭寇を活発化させた。

  • 3

  • 未来のための江戸学 田中優子 小学館

    未来を奪い合う金融と過去を引きずる執着と権利による
    右肩上がりのみの競争という暴力社会でなく
    循環のプロセスを大事にする全ての部分の
    それぞれが創る価値観を磨きだす

    その教科書として江戸の内需中心の循環思想と暮らしがある
    今を中心に過去の経験を参考に未来を描く
    自分と相手の距離間を見い出す自在性と自由は違い
    自由は勝手という距離感を踏みにじる暴力を内包している

    非暴力なしに武装解除できないし
    正当化された抑止力で平和を作ることもできないし
    嘘や秘密でごまかしても必ず化けの皮が剥がれるし
    力ずくで調和するダンスを踊ることもできない(51)

    江戸も非暴力で無かったが利己に価値をおかず
    利他性を重んじる仏教や儒教の教えが浸透した意識があり
    「強欲と浪費」よりも「配慮と節度」を
    大事にする価値観があったのだろう(52)

    江戸は世界で最も大きな人口を持つ都市だったという
    下水の代わりに農家における肥料として
    換金の仕組みであるくみ取り制度が行こわたっていたし
    水道も江戸中の巷まで行き届いていたというから
    非情にきれいな都市だったようだ

    問題を孕む参勤交代だがそれによって経済の循環もあって
    分中の発展をきたすと同時に内需による循環を可能にした
    税制が一次産業にのみ偏っていることで
    商業やサービス業を甘やかす結果を招いた
    産業革命と植民地を求める大航海につながるヘーゲルから見ると
    内需による安定した循環経済も退廃する鎖国として
    避難しなければならないのだろう
    鎖国と言う言葉も後々つくられたものであって
    キリスト教の布教を含めた西洋からの商人なども
    朝鮮人も中国人も琉球からの使節団も参勤交代と同じように
    ニホンを徒歩で縦断させることで様々な接触と情報を
    世間にもたらしていたという
    江戸での西洋医学の発展や銅版画や写真やレンズの国産化や
    博物学図版や書籍の輸入と国産化や学校制度や技術のマニュアル
    などなど多くの情報を巷に取り込んでいた
    江戸幕府が嫌っていたのはカトリックを尖兵とする
    「善意」を装った侵略であり無限拡大思想だったのだという

    経済とは国土を経営し物産を開発し内部を富豊にし誰もが貧困に
    落ちこぼれないようにすることだという

    民主主義が誠でありお互いの自由が本当に守られるのであれば
    暴力や軍隊や警察国家による脅迫の必要などないだろう

  • 今にあって、江戸時代にないもの…

    江戸時代ものですが、少しばかりこの本は
    見方が違った感じで新鮮さすら感じさせてくれます。
    まず、かの将軍に関して酷評していますから。
    (まあ、現実に性的嗜好も批判されるような…)

    この本でのメインとも言えるのは、
    幸せに関する捉え方の差異。
    実際に現代での幸せは「ものあること」に
    重きが置かれがちです。
    (かという私もそうですが)

    だけれども、本当の「幸せ」は
    江戸時代の人のほうがしっかり
    答えを持っていたのかもしれません。
    彼らは足るを知っていたのですから。

  • 江戸のリサイクル社会の背景にあったのは、自らが行った行為は必ず自らに返る、「循環」そして「因果」の価値観だった。鎖国を行ったのも、無限に拡大してくる西洋の価値観から身を守るためともいえる。
    自分で行ったことには自分で「始末」をつけ、持つべきもの以上は持たない。この思想のもとに、江戸時代の日本は国内の技術力を磨き、世界の中で「自立」することを目指した。

    江戸時代といえば、平和であるとともに停滞の時代といわれる。しかもそれは、武士が自らの支配を守るために民衆を押さえつけていたようなイメージを持っていた。
    でもそれは、今の時代と比べてみたときの感じ方で、ほんの一面的な歴史の見方だったかもしれない。
    当時の東アジア世界に共通していた「徳」の価値観が、江戸時代を理解するキーワードである。
    グローバリズムの中で自らのありようを見極める、という点で、今の日本にあるのはどんな価値観だろう。

  •  「温故知新」の書。江戸文化は「循環(めぐること)」の価値観であり、「因果(原因と結果)」を検証しながら物事を決めていく方法である。大震災前に書かれているが、今後日本が進むべき道を、著者の考えとして具体的に書いてある。その考えを支える史実や引用文献も豊富で、読んでいて学ぶ箇所が多くあった。
    ・江戸時代に「鎖国」という言葉は無かった・その後の欧米崇拝の時代に「開国」を善で「鎖国」を悪として脱亜入欧を政策的に進めた・現代は拡大し勝利し大量消費が良しとされるが、江戸時代は縮小、収めること、質素倹約が良しとされた。・子ども部屋は作らず、自分の必要としている空間を探し、開拓し、落ち着く方が良い。

  • [ 内容 ]
    江戸学者による、過去と未来をつなぐ新講義。
    江戸文化の本質は江戸趣味として表面に現れるものだけでなく、「循環(めぐること)」の価値観であり、「因果(原因と結果)」を 検証しながら物事を決めてゆく方法である。
    これらを失ったことによって、近代日本人は勝ち負けを考えることに力をそそぎ、 欧米依存的となった。
    働くことを賃金でしか判断できなくなり、モノの価値を値段でしか理解できなくなった。
    自らが行った行為が 必ず自らに戻ってくる、という感覚を失ったとき、目の前の富のためなら、文化も自然も破壊することを厭わなくなる。
    この国のカタチをどう作るのか。

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 江戸時代って心が豊かな時代なのではないかなそんなことをきずかせてくれた

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

田中 優子(たなか ゆうこ)
1952年横浜生まれ。江戸文化研究者。法政大学社会学部メディア社会学科教授・法政大学国際日本学インスティテュート(大学院)教授。社会学部長を経て、2014年4月に法政大学総長就任。専門は日本近世文化・アジア比較文化。
1986年『江戸の想像力』により芸術選奨文部大臣新人賞、2000年『江戸百夢』でサントリー学芸賞、芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。上記受賞作のほかにも、『江戸の恋』など江戸時代を紹介する一般向け啓蒙作が多い。
サントリー美術館企画委員、サントリー芸術財団理事、放送文化基金評議員、大佛次郎賞選考委員、開高健ノンフィクション賞審査委員、サントリー地域文化賞選考委員などを務めてきた。

田中優子の作品

未来のための江戸学 (小学館101新書 52)を本棚に登録しているひと

ツイートする