江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか? 落語でひもとくニッポンのしきたり (小学館101新書)

  • 小学館 (2010年6月1日発売)
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本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784098250844

作品紹介・あらすじ

落語に息づくしあわせな生き方を再発見する

Aさんが財布を落とした。中には三両という大金。Bさんが拾って届けたが、Aさんは受け取らない。一度懐から飛び出た金はオレのものじゃない、この金で酒でも呑め! ところがBさんも頑固だ。冗談じゃねェ、拾った金をネコババするようなしみったれた了見なら、とっくに棟梁に出世してらァ! 意地の張り合いから殴り合いになり、大岡越前の裁きを受ける--『三方一両損』という落語には、金と出世を嫌い、「宵越しの銭を持たない」江戸っ子の生き方がよく表れている。
金を貯めるなんざぁ江戸っ子の恥、というわけだが、蓄えもなしにどうして日々の暮らしが成り立ったのか? 古典落語32席を丁寧にひもといてゆくと、仕事とお金との正しい関係、隣どうし助け合う暮らしが見えてくる。
大ヒット企画『落語 昭和の名人 決定版』好評連載に大幅加筆。江戸学の旗手・田中優子(法政大学教授)による、初めての「落語論」。人生に「勝ち」「負け」はない、自分ひとり幸せになる魔法もない--落語の登場人物がリアルに浮かび上がり、現代を生きる人々に語りかける、「しあわせ」への道しるべです。

【編集担当からのおすすめ情報】
一般社会からドロップアウトしそうな「与太郎」や「粗忽者」が、なぜ落語界ではスーパースターなのか。その理由がよくわかり、落語通にもオススメの一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 落語をもとに江戸時代の生活を解説してくれています。ただ江戸の生活を理想化しているように思えること、他の地方都市、農村の生活がどうだったかという疑問がどうしても頭から離れないのです。江戸のリアルを検証したいのなら漫画の「仁」もあわせて読んでもいいかもしれません。

  • っぺらいなー。
    江戸パンフレットみたいな内容である。いいこと、理想的なことばかり述べているが人間が密集しひしめきあう江戸の暮らしがそれほど快適だったとは思われない。宵越しの銭を持たないのは紛れもなく悲惨である。その悲惨さを骨抜きにしていいことずくにしてしまうと、落語の持つ人間臭さという美点すら骨抜きにしてしまうと思う。

    長屋の構造や時刻の数え方など雑学は、まあ役には立つけれど……。
    ちょうど志ん朝の「文七元結」聞いてたところであって、長兵衛がぶん投げた50両というのが現在の金にして600万近い大金だっていうのは驚いた。
    雇い主の主人に返されてもさらに「やったもんを返されたって」と突き返してしまう。
    わけがわかりません。

    ・「いきとはり」とは反抗と風刺の精神
    ・往来物といって今でいう教科書や専門書、あるいは雑誌の類は手紙の文体で書かれていたというのが興味ぶかい。教科書も今みたいに無味乾燥なもんじゃなく、手紙文にしたほうが頭にも入りやすそう。

  • <閲覧スタッフより>
    「落語」とは?
    江戸中期に始まった庶民的な話芸。 人情ものや怪談ものなど、様々なカテゴリがあり、噺の最後に「落ち」と呼ばれる結末がつくため、「落語」と言われます。 また、同じ噺でも噺家によって違ったりと、色々な楽しみ方があります。

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    所在記号:新書||382.1||タナ
    資料番号:10200675
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  • 今の学生たちが落語を知らないというのは驚きだった。本書は落語を手掛かりに江戸の文化や江戸人の生活を知ろうという試み。江戸初心者向けなので、ある程度江戸を知る人には、いささかもの足りないかも知れないが。でも、これを読んでいると、江戸っていうのは、今こそ回帰すべき何かなのだと思う。なんたって、現代には失われた「こころいき」ってものがあるのだから。

  • 江戸時代に戻れば良い?三丁目の夕日と同じ一種のノスタルジア。
    「足るを知る」失われた美徳、しかし戻れまい。
    でも本当に江戸時代が良いのか?中期から末期なら良いかも。→昭和30年代に通じる

  • [ 内容 ]
    大ヒット企画『落語 昭和の名人 決定版』連載に大幅加筆。
    古典落語32席から江戸のしきたりや人間関係をひもとき、現代人が忘れてしまった地球に優しい暮らし、金銭より義理人情を重んじる生き方を再発見する。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 著者の「循環」をキーワードにした江戸論を、落語にひっかけて解説。もとは音源つきの落語ムックシリーズの解説として起こした文章を新書化したもの。たいへん読みやすいが、落語ファン、田中優子の江戸論ファン、どちらへ向けても中途半端という一面もあり。

  • 江戸がリサイクル社会だったことはよく言われているけれど、相互扶助の社会だったということも言えるんですね。
    火事が多くていつ自分が焼け出されるかわからない。蓄財したって一旦大火事が起これば町ごと灰になってしまう。だから今ある金はとっておいても仕方がない、自分のためにも使うけれど、今困っている人のために惜しまず使ってしまえって?
    そういう人が多ければ、自分が焼け出された時だって誰かが助けてくれるわけで、金は天下の回り物ということになります。
    かぼちゃ(唐なす)売りはかぼちゃだけを、大根売りは大根だけしか持ってこないけれど、軒下まできてくれるし魚はさばいてくれるとなれば、年寄り世帯にとっては現代より暮らしやすいかも。
    おつむの巡りの遅い与太郎に口上を教え込んで飴売りで身を立てさせるなんて、大家はソーシャル・ワーカーか?
    江戸は現代より進んだ福祉社会だったのかもと思います。

  • (要チラ見!)/新書

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著者プロフィール

1952 年神奈川県横浜市生まれ。江戸文化研究者、エッセイスト、法政大学第19 代総長、同大名誉教授。2005 年紫綬褒章受章。『江戸の想像力』( 筑摩書房) で芸術選奨文部大臣新人賞受賞、『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』( 筑摩書房) で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞を受賞。近著に『遊郭と日本人』(講談社)、
『江戸問答』( 岩波書店・松岡正剛との対談) など

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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