中国の核戦力に日本は屈服する 今こそ日本人に必要な核抑止力 (小学館101新書)

  • 小学館 (2011年2月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784098251025

作品紹介・あらすじ

この本を読んでも「核保有」に反対ですか?

尖閣事件は中国の「勢力圏拡大戦略」の前奏曲でしかない。今後中国は露骨に日本の主権を侵害してくる。ワシントン在住で国際政治・経済のアナリストである著者は、何年にもわたって国務省、国防総省、CIAの高級官僚や軍事委、外交委の政治家、そして著名学者らと日本の安全保障について議論してきた。その結論は「日本にアメリカの核の傘はない」「MDでは核ミサイルを防ぎきれない」「アメリカに届く核を持つ中国と、日本のために戦争する気はない」であった。
2020年代、アメリカは経済破綻に瀕し、軍事費は大幅に縮小し、中国の経済規模、軍事予算はアメリカを抜く。そしてアメリカは東アジアから後退せざるを得なくなる。その時日本はどうするのか。ハンチントン教授は「日本は中国の勢力圏に吸収されるだろう」と述べていた。それで良いのか。どうすれば中国の属国にならずに独立を維持できるのか。中・朝の核の脅威から国民を守り、隷属を避け、戦争を抑止する…そのために必要最小限の核武装をする、これは平和を希求する日本人にとって道徳的義務でもある。この本を読んだ後も、あなたは核保有に反対ですか?


【編集担当からのおすすめ情報】
巻末に田母神元空幕長と著者の対談が収録されています。

感想・レビュー・書評

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  • 大変興味深い本だった。
    日本は核戦力を持つという著者の意見につい同調したくなる。

    中国は発展を続ける。
    中国の考えていること。
    米国は減衰していく。
    米国の考えていること。
    周りはみんな核を持っている。
    昔、欧州は核の傘に入らず核をもつことを選んだ。
    敗戦後の日本の歩み。

    きっといろんなことを含めて考えなければいけない。
    その中で、特に重要なことは日本というこの国がどう
    生きるかということを真剣に考えることだろう。
    そして、安全保障特に軍事面に関して、正面から向き合う
    ことだろう。
    敗戦後、国家としては当然考えなければならない安全保障
    について、米国におんぶにだっこをされてきたツケは大きい。

    いまここにある日本の平和と独立は決して当たり前のものではない。米国に依存してこそあるもの。生存を左右する安全保障について、自分ではなく、他者に任せているということの意味をよく考えるべきなのだろう。

    きっと向き合うことが大切。
    誰も面と向かって話さないから、よくわからないことになってくる。すべてのピントがぼけちゃうから。

    <メモ>
    ○ 仏元大統領ド・ゴールの言葉
      人間は価値判断するからこそ、人間でありうる。
      アメリカは巨大な惑星。中小国は小さい惑星。小さい惑星が巨大な惑星に近づきすぎると、自分の軌道を見失い、大きな惑星の軌道に吸い込まれてしまう。
      アメリカ人はアメリカ人、彼らはヨーロッパ人ではない。我々は、米欧の同盟関係を維持しなければならない。しかし、ヨーロッパ人がアメリカ人の覇権主義をそのまま受け入れるならば、我々は、自分自身に対する信念すら失ってしまうだろう。
      彼は、アメリカ政府にフランスの安全保障を任せるならば、フランス人はアメリカの軌道に吸い込まれてしまうと確信していたのである。

    ○ 商・軍・哲のバランス国家に
     ① 目先の利益を追求する商人的要素
     ② 安全と秩序を守ろうとする軍人的要素
     ③ 利害打算と権威権力を超えたところに永続的な真の価値判断を求める哲人的要素
     → 昭和初期の日本:軍人的要素の突出
     → 敗戦後の日本:価値判断は損得(商人国家)

  • 中国は東アジアの覇権を狙っている。平和的に台頭しつつ、米からの封じ込めを手遅れな状態にする。米は経済的に大きな問題を抱えており、東アジアから必ず撤退する。そんな中で日本が独立を維持するには核抑止力を持たねばならないってのが基本的な話。
    個人的には今の中国とビスマルクのドイツの外国戦略が似ているんじゃないかって話とか、MIRVとか、巡航ミサイルは報復にしか使えず軍事バランスを安定化するミサイルって話は新しかった。
    核武装するにも他国からの制裁も覚悟せにゃならんのじゃないか、おれが気になるのはその点。

  •  著者はワシントン在住の評論家。外交政策には「ウィルソニアン」と「リアリスト」の二つのパラダイムがあるとして,後者の立場から中国の脅威と日本の核武装の必要性を説く。
     今の中国は,「平和的台頭」戦略をとっていて,それは19世紀末のドイツの戦略とすごく似ている。三十年戦争以来,ドイツは「二百年の屈辱」に耐えてきた。統一を成し遂げて以降,ビスマルクのもとで,平和裏に富国強兵に励む。そして経済的にも成功し,軍事的にも強大な国家となった。欧州諸国はドイツの封じ込めに失敗し,二度の世界大戦を招く。英仏は,他の大国が対処してくれるという依存心,バランスオブパワーに対する道徳的な反発,安定した民主制ゆえ宥和政策が歓迎されたこと,相互間の覇権競争などのために,適切な対処ができなかった。
     中国の軍事予算は年々増えているが,逆にアメリカは減らさざるを得ない。今後,ベビーブームの大量引退による年金で財政負担が急増,医療費も高騰し,ヒスパニック化も進み,家庭の過剰債務,基軸通貨ドルの非合理性の露呈,などから,退潮傾向にある。今でも「核の傘」は機能しないし,将来的にアメリカは東アジアから手を引かざるを得ないし,日本が自主防衛するには核を持たなきゃいけない!という話だけど。さて,どんなもんだろう?まだまだそういう議論にはなりそうもないよね。現状にそんな顕著なデメリット感じられないしなぁ。

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著者プロフィール

伊藤貫

1953年東京都生まれ。政治思想家・国際政治アナリスト。東京大学経済学部卒。コーネル大学で国際政治学を学ぶ。その後、ワシントンのビジネス・コンサルティング会社で、国際政治・米国金融政策のアナリストとして勤務。『フォーリン・ポリシー』『シカゴ・トリビューン』『ロサンジェルス・タイムズ』『諸君!』『正論』『Voice』『週刊東洋経済』等に、外交評論と金融分析を執筆。CNN、BBC、米国公共放送等の政治番組で、外交政策と金融問題を解説。著書に『中国の核戦力に日本は屈服する』(小学館新書)、『自滅するアメリカ帝国』(文春新書)などがある。

「2020年 『歴史に残る外交三賢人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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