あぶない一神教 (小学館新書)

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252565

作品紹介・あらすじ

世界の「混迷」を解き明かす最強の入門書

一神教世界はかなり「あぶない」。だが日本は、もっと「あぶない」。ではどうする!?(社会学者・橋爪大三郎)

大陸から隔絶された島国で暮らす日本人にとって、いま何が足りないのか。目に見えない知を論理的に突き詰めて、超越的な世界を知ろうとする態度―― 一神教に対する理解だと思うのです。(元外務省主任分析官・佐藤優)

9.11テロから「イスラム国」誕生まで。キリスト教世界とイスラム教世界の衝突が激しさを増している。だが、歴史を遡れば、両宗教は同じ「神」を崇めていたはず。どこで袂を分かち、何が異なり、なぜ憎しみ合うのか。社会学者・橋爪大三郎氏と元外務省分析官・佐藤優氏による白熱対談。

キリスト教徒23億人。イスラム教徒16億人。世界の半数を占める一神教信徒のルールを知ることで、日本人が国際社会で闘うための術が見えてくる。

【目次】
まえがき
序章 孤立する日本人
第一章 一神教の誕生
第二章 迷えるイスラム教
第三章 キリスト教の限界
第四章 一神教と資本主義
第五章 「未知なるもの」と対話するために
あとがき



【編集担当からのおすすめ情報】
両氏の対談は計4回、約10時間50分に及びました。「イスラム国」問題を入り口にした対談は、キリスト教文明――欧米の抱える問題をめぐって白熱し、最終的には日本人の進むべき道に議題が移っていきます。一神教を理解することは国際社会を理解すること。これから世界と対峙する若者やビジネスマンに、ぜひ手に取っていただきたい本です。

感想・レビュー・書評

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  • バビロン パウロ カリフ 資本主義 旧約聖書 反ユダヤ主義

  • ルターが、農民を皆殺しにしたほうが良いと述べたことについて、「あぶない一神教」の性質を感じた。

    オレはルターが好きだし、ドイツ語聖書が引き起こした歴史的な作用はあまりにも大きかったと考えてて、わざわざルターが住んでたドイツの家まで訪ねて行ったくらいなんだけど、同時に、ルターには、一神教の危なさを感じないわけにはいかない。

    ルターが1543年に書いたユダヤ人を差別する文章『ユダヤ人と彼らのうそについて』では、ユダヤ人をけちょんけちょんに貶す非常に過激な言葉が綴られており、ここまで差別する?っていうくらいひどい。
    日本人から見れば、意味が分かんないほど激しい憎悪。
    キリスト教とユダヤ教の、埋めがたい溝を感じた。

    当時は、ルターだけが偏狭だったのではなく、キリスト教社会全体にユダヤ人差別が蔓延していて、カトリック側のユダヤ人差別はもっとひどかったらしいのだが。

    ヒトラーが、最も尊敬するドイツ人としてルターをあげてたらしいんだけど、あのユダヤ人差別の文章とも、関係があるんだろうな。

    「シナゴーグを焼き払い、ユダヤ人の家を打ち壊し、ユダヤ教の経典を没収し、従わないラビを処刑し、高利貸しを禁じて金銀を没収し、ユダヤ人を農奴として働かせるべきだ」
    って書いてあった。

    イスラエルで、シリアで、イラクで、ヴァチカンで、アメリカ合衆国で、EUで、中国で、インドで、インドネシアで、これからも、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の、危険な相互作用は、続いてゆく。
    地球上の人口の多くの割合を占めるのは一神教の信者たちだからだ。

    橋爪大三郎が、アメリカでは、ユニテリアンに所属しているという話はおもしろかった。

  • ときに異教徒に攻撃的になる一神教は確かに危険性をはらんでいる。でも、そんな宗教観を持つ外国人の考えも知っておかなければいけない、それはわかった。
    でも細部は各宗教の宗派の歴史ばかりで。

  • お二方の該博な知識を元に、世界宗教であるイスラーム、キリスト教、それにユダヤ教の、それぞれの教義や歴史からくる考え方の違いと、一神教に共通する考え方や限界とを深堀りされています。

  • タイトルには「あぶない」ってありますが、内容は真摯なユダヤ教、キリスト教、イスラム教についての解説。実証主義からみた場合には、キリスト教の土台が危ういものだという意味で「あぶない」というのは語られていましたが。
    対談形式ですが、途中、ルターの宗教改革を論じるあたりからは白熱し、資本主義とキリスト教の相容れない関係を語ったり、最後は日本の教育論まで、お二人が刺激を与え、受けながら対談をされている様子がヒシヒシと伝わってきました。

  • 一神教の神とはの概念が少し理解できた。まだまだ勉強

  • 一神教について佐藤優と橋爪大三郎が対談した一冊。

    とかく日本人にはわかりくい一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)についてわかりやすく解説してて、勉強になった。

  • 一神教だから戦闘的でもなく、ヒンズー教徒と仏教徒が争ったカンボジア。イスラム教には罪があってもキリスト教のような原罪はないから、人間の審判は予測がつく。キリスト教はこの世の権威を認めたから,国家を認めたが,イスラム教はアラーしか認めないから,現実の国家よりアラーをトップにした国しか認めない。

  • 難解な問題をわかりやすく説明してくれていて、興味深く読みました。読み終わって少し賢くなった気がしました。

  • イスラム教、キリスト教と世の中の関係を知るには最適な入門書。雑学のように気軽に読むことができる。
    アメリカはイスラムを嫌うことや、イスラムでもシーア派とスンナ派の分裂など、世の中で起きているいざこざや混沌を、二人の著者が自分の知識の引き出しから議論する。
    宗教的な場面を目にした際に「なるほど、こういう背景があるのか」と理解させてくれる書籍。

  • 知識が増えた
    同じ作者をもっと読みたい

  • うーむ。。。とても興味深く読ませていただきましたが、2/3過ぎから文字が右から左へ頭を通り過ぎて行ってしまいました。
    あらためて純粋の日本人だと実感しました。私のアタマでは理解不能の★ふたつでした。

  • ルターの「農民を皆殺しにせよ」に起因する表題のようだが、仏教系のオウムはテロ事件を起こしているし、一神教だけが危ないわけではない。が、宗教には法や論理(倫理?)を超越してしまう部分があるので、危ない部分があるという事だろう。そこから反知性主義に展開していつもの安倍批判に持っていくのは少々強引な気もするが。
    日本の場合は神様は絶対的なモノではなく、人間的で親しみのあるもの(七福神なんてゆるキャラみたいなもんだし)。よってみんな仲良くで、調和し、空気を読むという国民性になったというのは頷ける部分がある。その代わり他者を差し置いて超越する・突き抜けるところはないので、創造性にも欠如しているというのは、それもそうかなと思う。
    宗教そのものに対するある程度の理解は必要に思うが、そこに国際政治や国際情勢が絡むとついて行くのが面倒。対談本なので時事問題で話が飛ぶのも読みにくいという事もあるが、自分は世界情勢や国際問題には興味はないので、そこは誰かが適当にやっといてよという感覚になる。この領域に時間を費やしているヒマはないので、宗教理解の際にはちゃんと切り分けて、読む本を選ぶ必要性を感じた。

  • 題名と内容が微妙にずれている。
    一神教についてのブリーフィングには良いかもしれないが、
    いまいちな気もする。

  • ふしキリに続く宗教社会学対談w

    イスラムの話をしてるうちに、キリスト教の話で締められてるのはご愛嬌www
    大雑把にイスラムを理解しようと思うなら、良いかも。イスラムの内部に内輪揉め要素があるから、安定しないという話は、そういうことかとよくわかる。

  • 第5章に入ると突然身近な話題が展開されて理解できたが、前章までは私にはたいへん難解でありました。

  • 「ふしぎなキリスト教」ですごくわかりやすく宗教世界の思考ルールを解説してくれた著者なので、最近のイスラム国問題をより理解するためにも、迷わず手に取りました。内容としては、対談形式だから仕方ないか・・と思いつつ、けっこう話がポンポン飛ぶし、結論に至らないまま言いっ放しで次に言ったりするので、前ほどはすっきりしなかった。キャッチーなタイトルとも内容がちょっと合ってないかな?という感じも。

  • 神学を学んだ佐藤氏と社会学の立場で宗教を語る橋爪氏との対談。
    宗教について明るくない僕にとっては、難しい部分もあるのだけれど、面白かった。
    宗教理解が深まると世界の見え方が変わる。

  • ユダヤ、イスラム、キリストの3つの一神教について、橋爪先生と佐藤優氏が対談形式で講義。ISはじめタイムリーな話題と絡められており、一神教の理解が深まった。体系的な内容というわけではないので、教科書的な内容については橋爪先生の他の本などを当たるべきでしょう。
    イスラム教・ユダヤ教にはキリスト教の原罪の意識がないという違いが、様々な点で現代国際社会に大きな影響を及ぼしているように思いました。

  • 宗教について論ずるときに、どのキリスト教か、どのイスラム教か、どのユダヤ教か、どの仏教か、どの神道か、と具体的な議論をすることが重要

    ふしぎなキリスト教

    神は超越的な見えない世界と一神教は考えます。宗教の役割は、我々が暮らす世俗の見える世界と、見えない席あいを結びつけること

    時代とともに日本人は見える世界だけを中心的に扱うようになってきた。超越的な見えない世界について論理的に考えることが苦手になってしまった。

    一神教は寛容。他者に対して無関心だから

    スンナ派 合議で選ばれる
    シーア派 ムハマンドの娘婿とその系統が本当の後継者

    イスラムが異教徒を受け入れるしくみをもち、無駄な争いを避けてきたのは、3つの一神教のなかで、最も後発

    キリスト教 教祖はイエス、開祖はパウロ

    キリスト教 執り成し キリストが仲介者として神と人間の間をとりもつこと、他者のために神に祈りを捧げる行為

    ローマ帝国分裂
    西ローマ帝国 ゲルマン民族に倒される 後ろ盾を失ったローマ教会は、ゲルマンの族長たちを改宗、西方教会(ローマ・カトリック)の伝統を作り上げる

    東ローマ帝国 権力基盤がしっかり。東方教会(ギリシャ正教)

    ムハマンドの死後、ムスリムはカリフを選挙で選ぶようになった。
    4代目のカリフのアリーはムハマンドの従兄弟であり、娘の夫。血統としてムハマンドに近い。そこを根拠に、真の後継者は、アリーとその子孫だけだと主張するのが、アラビア語で分派、党派を意味するシーア派 シーア派は最高指導者をイマームと呼ぶ

    スンナ派はムハマンドが伝えた習慣「スンナ」に従うものを意味する。合議で選ばれた代々のカリフが正統
    イスラム原理主義やテロは、スンナ派のハンバリー学派からでている ハンバリー学派のひとつにワッハーブ派がある 創始者のワッハーブ派、18世紀半ばにサウジアラビアの王家と力を合わせて、ワッハーブ王国をつくり、それが現在のサウジアラビアになる サウジの国境 極端な禁欲主義 アルカイダもISもワッハーブ派の武装組織 アフガニスタンやチェチェンのテログルームのながれもくんでいる キリスト教のカルバンはに似ている

    イスラム教 スンナ派、シーア派
     スンナ派 4大学派
      ハナフィー学派 シリア、エジプト、トルコ
      マーリク学派 北アフリカ、西アフリカ
      シャーフィイー学派 東南アジア、北コーカサス
      ハンバリー学派ーワッハーブ派 サウジ、中央アジア
     シーア派
      12イマーム派 イラク、イラン、バーレーン、アフガニスタン、パキスタン
      ザイド派 イエメン
      イスマーイール派 パキスタン、インド
     ハワーリジュ派 イバード派 オマーン

    カタールはパレスチナのスンナ派原理主義組織ハマスにもISにもみかじめ料をはらっている

    エジプトではムスリムとコプト教徒が協力して国家を作った

    工学のような目に見える知
    理屈に合わない目に見えない知 日本は目に見えない知、超越した世界について考えてこなかった

    一神教社会では、人々の思惑や幻想、願望は、絶対的な存在の前で相対化さえると考えます。つまり人間は、神のまえで誤りうる存在です。誤りうる人間が、人間をチェックするというのは、根本的に間違っているわけだけど、背後に自分が正しいと信じる神が控えているから、相手を批判できる

    反知性主義者は、自分以外の人の経験や物語を通して擬似的な体験をする、代理体験が足りない

    反知性主義に抗うポイント 健全な物語を読むこと

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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