「奨学金」地獄 (小学館新書 い 21-1)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098252930

作品紹介・あらすじ

知らずにはすまされない奨学金の実態

今や大学生の2人に1人は奨学金利用者です。その背景には、格差や貧困の拡大で親の経済的援助を受けられない学生の急増と、学費の高騰があります。国立大学の年間授業料は、1971年が1万2000円だったのに対し、昨年度は約54万円、初年度納付金は80万円を超えます。多くの学生は奨学金を借り、生活のためにバイトに明け暮れ、そして数百万円の借金(奨学金)を抱えて卒業するのです。しかし、今は3人に1人は非正規雇用という時代です。生活するのさえ苦しく、奨学金を返したくても返せない人が増えています。一方、2004年に日本育英会から変わった日本学生支援機構の奨学金制度は、金融事業になってしまいました。返済が3ヶ月滞ると金融機関の「ブラックリスト」に入ります。4ヶ月滞納で「サービサー」と呼ばれる債権回収会社の回収が始まり、9ヶ月で裁判所を通じた支払督促がきます。中高年の人の記憶にある、育英会時代ののどかな奨学金とは別物なのです。本書は、返済苦にもがいている人の実例をもとに、今の奨学金制度が抱えている問題点、返済に困った時の救済手段などを、長年この問題に取り組んできた弁護士である著者が詳細に解説します。

【編集担当からのおすすめ情報】
この企画にあたり、実際に奨学金の返済に困っている方々や関係者に取材をさせていただきました。共通しているのは、返済しなくてはいけないという強い責任感です。そのために、就職した会社の給料ではまかなえず風俗で働く人がいます。「自分が返さないと次の若者が借りられなくなる」と過酷な労働の会社で働き続け、過労のため事故死してしまった人がいます。
借りたものを返すのは当たり前です。しかし、3人に1人が非正規雇用という今の社会の中で、就職に失敗する、リストラされる、あるいは病気になって収入が得られなくなるなどは、誰にでも起こりうることだと思います。格差社会の中で苦悩する人々の現実と、昔と違う、奨学金を取り巻く現在の状況を知っていただければと思います。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:373.4A/I96s//K

  • 入り口は奨学金、出口は金融
    返済が困難になった場合、返還期限猶予、減額返還制度、延滞金の免除、返還免除の救済制度がある。
    重くのしかかる延滞金

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685969

  •  以前、サラ金地獄というのがあった。それを髣髴させるタイトルだ。かなり悲惨な実例が紹介されている。うちの子も「奨学金」という名の学資ローンを借りているので、他人事ではない。小泉政権の「行政改革」のせいで、奨学金は「教育事業」から「金融事業」へと変わってしまった。国による高等教育への支出増が強く求められると思った。

  • 8 教育費を負担するのは誰か[鳥山まどか先生] 2

    【ブックガイドのコメント】
    「日本学生支援機構の奨学金制度の問題を、具体的な事例にもとづきながら理解できる。」
    (『ともに生きるための教育学へのレッスン40』183ページ)

    【北大ではここにあります(北海道大学蔵書目録へのリンク先)】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001776335

  • 「奨学金」地獄。岩重佳治先生の著書。経済的に余裕がない家庭で育った子供にとって奨学金は助け舟になる存在。それなのに奨学金によって逆に苦しめられて奨学金地獄になるなんて本末転倒。奨学金地獄で苦しむ人がいなくなるような制度を一日も早く実現してほしい。

  • 「奨学金はヤバい」ということは最近よく言われるようになってきたが、「なにがどうヤバいのか」「なぜヤバいことになったのか」など、具体的な事例をふんだんに用いながら、日本の奨学金の構造的な問題と、その原因、および著者が提起する解決・改善策を手短にまとめた一冊。事例を前半にまとめて一気に紹介しているが、ちょっとダレてくる。とはいえ、文章の端々から著者の現行の奨学金に対する怒りが伝わってきて、熱量が感じられる良い本ではある。

  • 自分も奨学金には、お世話になったので、近年なんでこんなに返済不能になるのか、不思議だったけど、納得。
    昔の奨学金とは違い、単なるローン、しかも返済に超厳しい、でしかないのに、愕然。
    金儲けにしか目がいかず、利益に結びつかないものを切り捨てる国に未来はあるんでしょうか

  • ショッキングなタイトルは、作者も悩みながらつけたらしい。
    私は日本育英会のイメージがいまでも日本学生支援機構にそのまま引き継がれているものと思い込んでいままで保護者に説明などもしてきたのですが、これはちとまずいぞと本気で反省しました。
    取り上げられたケースが誇張されているとも思えませんし、全体からみた影響も決して小さいとは思えない内容です。
    幸い、子どもには奨学金を適用していなかったのですが、私のように以前奨学金の恩恵にあずかった親たちはあまり考えることなく、自分の子には奨学金を薦めてしまうのではないかと思いました。
    何よりも驚いたのは、日本のように学費の無償の道がほとんどない国は世界にはあまりない、という事実でした。
    多くの方が、望む教育を受けられるような国になるために、この奨学金問題をきっかけにできることをやっていきたいと強く思いました。

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