戦前の大金持ち (小学館新書 て 1-2)

制作 : 出口 治明 
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098253296

作品紹介・あらすじ

昔の日本にはジョブズ並みがゴロゴロいた!

これまで日本の経営者といえば、「メザシの土光」に代表される質素倹約型が理想像とされてきたはずだ。しかし、それは果たして本当に伝統的な「日本の大金持ち」の姿なのだろうか。歴史を紐解けば、戦前の日本には、個性的でスケール感溢れる起業家たちがゴロゴロいた。戦前の日本は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ並みの人材が揃ったシリコンバレーのような場所だったのだ。武器商人から一大財閥を築いた大倉喜八郎、孫文の辛亥革命をパトロンとして支えた梅屋庄吉、パリで「蕩尽王・バロン薩摩」として名を馳せた薩摩治郎八……彼らの豪快なカネの稼ぎ方・使い方を見ていると、今の日本のビジネス界がずいぶんとこじんまり見えてくるに違いない。戦後のサラリーマン型経営が終わりを迎えた今こそ、彼らの型破りな発想力に学びたい。

【編集担当からのおすすめ情報】
ライフネット生命の創業者で歴史にも造詣の深い出口治明氏が案内人となり、歴史に埋もれた戦前の起業家たちの人物像を紹介していきます。この本を読めば、真面目で質素倹約という日本の経営者像が高度経済成長以降に作られたイメージに過ぎないことに気づくはずです。日本人はもっと自由に、のびのびとビジネスを楽しんでいた。そしてド派手に稼ぎ、ド派手に使っていたのです。

感想・レビュー・書評

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  • 明治・大正期に活躍した7人の実業家の自伝や評伝を読みながら、波乱万丈の彼らの人生を見ます。
    経営やビジネスに興味のある人たちの心に直接響くものがあることでしょう。

    でも私のようにそういったものに全く興味のない人間の心にも響くことがありました。
    出口さんは次のように言います。

    「例えば、「一日に一つぐらいは賢くなってやろうとする人」と「別に給与がもらえていればそれでいいや」と考える人とでは、最初の能力が同じでも日に日にその差は広がっていきます。それが自分の好きなこと、やりたいことであればなおさらでしょう。
    7人にそれぞれの形で共通していたのが、まさに物事を学ぼうとするこの意欲、世界に対する好奇心であったと僕は感じました。」

    「お金持ちになりたい」でなくても、
    趣味に熱中する人とか「自分はこういう人間になりたい」という理想をもつ人たちにも
    とても参考になる話だと思います。
    「あの時、もっと努力すればよかった」と後悔しないように、時間を大切にしたいと思いました。

  • 島根県の足立美術館を訪れた際に、なぜ20年間連続で日本一をとる庭園の創設者の名前があまり世に知られていないのだろうと疑問に感じた。
    そこで、創設者足立全康がどう財産を築いたのかを知るためにこの本を手に取った。

    「自分以外は全員師匠である」と言う足立全康の姿勢を見習おうと思った。

    お金持ちたちの軸を持った姿勢に惹かれた。

    それぞれの偉人たちの成功の背景には一概にいい面だけではなく、悪い面(社会的に?周りに反対されるみたいな)もあった。

    反対されても突き通す強さ、柔軟に意見を取り入れる優柔さ、各偉人たちにはそれぞれの特徴があった。

  • 島根にある世界的に有名な足立美術館。先日思い立って行きました。その美術館の中にあるショップで見かけて購入しました。出口先生の本は今まで数冊読んできましたがこの本は知りませんでした。はしがきに記載ありますが、出口先生が大学に学長になられて後に島根を訪問されて、神社訪問のあとふとこの足立美術館まで足を運んで、この美術館の創立者足立全康氏の事を知り、より多くの人にその足跡を知って欲しいという動機で、この本の最終章をお書きになったそうです。生き方そのものがMBAの教科書になるというご指摘もあり、併せて「庭園日本一足立美術館をつくった男」という自伝も読みました。

  • 何となく聞いたことはある名前ですけど詳しく知らない人ばかりでした。皆さん、スケールご大きくてエネルギッシュ。他方、大金持ちになるけど、学校とか美術館とか「公」に惜しげもなく投資されてますよね。ノブレス・オブリージュ。そういう気風、今、日本に求められている気がします。

  • 島根県安来市にある「庭園日本一」の足立美術館を訪れ、その庭園の美しさと、美術館の広さ、そして魯山人や横山大観といった収集品の見事さに感動し、同時に大いに疑問を抱いた。いったい、この美術館を作り上げた足立何某とは、何者なのか。

    ミュージアムショップに平積みされていたこの新書を購入。彼以外にも項があるが、真っ先に足立氏の項をめくると、筆者も同様の疑問を持っていたそう。興味深く拝読。

    年末の休みの都合を付けて島根へと旅に来ている私は、梅屋庄吉の項で思わず本の端を折った。
    40ページ 筆者の解説より 以下引用
    ……僕は「働き方改革」の基本は、「工場モデル」の「飯、風呂、寝る」の生活から「人、本、旅」の生活への切り替えにあると思っています。   引用終わり

  • 本と旅の人、出口さんならではの本。軽く読める一方で、「今の日本で生きてる私の価値観」が普遍ではないという当たり前のことに気付かされる。
    私は、別の時代、別の地域に生きてれば、確実に今とは違う価値観を正と思って生きてるはず。「自分が正しい」と思うことの視野の狭さを感じさせられた。
    国の違いは旅で、時代の違いは本で。狭くならないよう、閉じないに。

    ■革命のプロデューサー 梅屋庄吉
    ■パリの蕩尽(とうじん)王 薩摩治郎八
    ■初物狂い 大倉喜八郎
    創業と守成 短距離から長距離への切替え
    ■吉野の山林王 土倉庄三郎
    吉野の桜を守った人。
    年々戦勝論 日清戦争は多くの国費と若者の命を奪ったのに、得るものがなかった(三国干渉による領土返還)→であれば、戦争ではなく山に出資しなさい。林業は銃も命も要らない。ヒューマニズムではなく、合理主義の人。自分の本分(林業)を疎かにしなかった。
    ■相場の神様 山崎種二
    相場師からみた歴史 2.26
    ■世界の真珠王 御木本幸吉
    突出したマーケター
    ■庭園日本一 足立全康

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/712623

  • 戦前や、戦後の豪快、アグレッシブな生き方を貫いた日本の経営者たちを紹介した本。

    ここに出てくる大金持ちは、大半は、後世に、それほど名を知られていないものの、素朴で我慢強く真面目で大人しめな日本の経営者像とは異なるベンチャー精神に溢れており、
    読むだけでも活力がもらえる気がした。

    梅屋庄吉
    映画で財をなし孫文の革命を支えた
    協調性を重視する「工場モデル」の教育では、
    彼のような国境のない生き方をする人物は育たない

    薩摩治郎八
    木綿問屋の三代目
    バロン薩摩と呼ばれパリで散財し財産を食い潰す
    お金は貯めるものではなく使うものだ

    大倉喜八郎
    武器商人から日本初の様々な事業を手掛ける初もの喰い
    いち早くリスクをとる一匹狼的ワンマン経営者
    悪名を気にしないが金を子孫に残さない、仕事があればいい

    土倉庄三郎
    吉野の山林王
    戦争より林業が儲かる
    財産は、教育、国、家業の三つに分けて使う
    インバウンドを見越して吉野山を買い戻す
    二代目が財産を食い潰すとしても、それも運で人間の勝手にはならない

    山崎種二
    米問屋から相場師へ
    自分の指針を曲げず慎重さに裏打ちされた大胆な行動
    ケチではなくムダを嫌う

    御木本幸吉
    真珠の養殖を成功させる
    世界中の女性の首を真珠でしめるとアピール
    広告は自腹ではなく、記事にしてもらう

    足立全康
    炭の小売から始め、儲かるためには何でもする
    自分だけ儲けるのではなく、相手を儲けさせる気持ちでトラブルは防げる
    金は生かして使え

    この本でに出てくる人物のほとんどは、財を成した後
    文化や芸術、他人への支援や社会貢献を行っていることが印象に残った。

    時代の活力があった当時と違い、今の世の中は、
    人も含め、会社の成長を抑え込んでいるようにも思えてくる。

  • 足立美術館のショップで購入して、時間がかかって読了。
    明治から戦前の格差は、今の日本など比較にならない。取り上げられている人物は必ずしもエリートではないが、ノブレスオブリージュがある。
    佐藤優さんが灘高の生徒たちに伝えていたことを思い出した。

  • この本が取り上げている7人の実業家に共通することは、「事業だけでなく公共への投資」という視点だったと思う。
    会社の利益は、社会があってこそ実現できることを自覚し、社会への還元を忘れてはいなかったのだと感じた。
    また、印象に残っているフレーズは、「金は使ってこそ価値がある」というもの。
    これを私は、リスクをとって投資を行うものだと理解した。
    事業家の生き方から経営学だけでなく、人として社会にどう貢献するかなどを学べる本だと思う。

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